2025年10月20日月曜日

ガザ合意発効1週間 イスラエル軍、24人殺害 人道支援の制限続ける

 ガザ地区の停戦合意が発効してから17日で1週間になります。この間にもイスラエル軍はパレスチナ人少なくとも24人を殺害しました。明らかに「停戦合意に反する行為」です。
 それだけでなく特に停戦で多くの人が戻った北部には食料と水が「切実に必要」となっているほか、「大量の援助物資、燃料、調理用ガス、救援・医療物資の流入」が緊急に必要です。そのためには、検問所を複数開く必要がありますが、イスラエルはこれにも応じていません。
 さらにイスラエルは、ハマスによる人質の遺体の返還の遅れを□実に、いつでも軍事作戦を再開する態勢を続けています。そもそもイスラエルによる攻撃で瓦礫の下で亡くなった人質の遺体を掘り出すためには重機が必要なのに、そんなものはガザにはありません。
 それにもかかわらず「早々に遺体を引き渡さないのは合意違反だ」などと言い募るのはイスラエルの理不尽さを示すもので言語道断です。こうしたイスラエルの姿勢を見ると今後何を口実に攻撃を再開するのか心底恐怖です。
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ガザ合意発効1週間 イスル軍、24人殺害 人道支援の制限続ける
                       しんぶん赤旗 2025年10月18日
 イスラエルとハマスによるパレスチナ・ガザ地区での停戦合意が発効して17日で1週間です。イスラエル軍は約2年間実施してきたような激しい軍事攻撃を停止しているとはいえ、住民の殺害、人道支援の制限を続けています。イスラエルは、ハマスによる人質の遺体の返還の遅れを□実に、いつでも軍事作戦を再開する態勢を続けています。

 ロイター通信によると、ガザ地区保健当局は16日、同日にイスラエル軍の砲撃により少なくとも7人が死亡したと発表しました。ガザ地区の住民は、南部上空にドローンや戦闘機が飛来し、時折銃声が聞こえたと述べています。
 ハマス幹部は16日、停戦発効以降、イスラエル軍がパレスチナ人少なくとも24を殺害したとして、「合意を損なう行為だ」と非難しました。
 同軍は、軍の撤退ラインを越えて近づいてくるパレスチナ人に対し「脅威を排除するために発砲した」と述べています。合意により部分撤退したイスラエル軍は、ガザ地区の53%をなお直接支配しています。

検問所を開放せず
 停戦後、ガザヘの援助物資搬入は増えたとはいえ、国連によれば、飢饉(ききん)を解消するにはほど連い状態です。
 カタールのテレビ局・アルジャジーラ16日に伝えたところによると、ガザのメディア局は、戦闘鎮静化後、ガザ地区に入った支援は「大海の一滴だ」とし、「大量の援助物資、燃料、
調理用ガス、救援・医療物資の流入が緊急に必要だ」と述べました。
 特に、停戦で多くの人戻った北部には食料と水「切実に必要」(国連児童基金〈ユニセフ〉の広報担当者となっています。
 ガザの人道危機の解消のためには検問所を複数開く必要がありますが、イスラエルはこれにも抵抗しています。
 イスラエル軍は、昨年月以来、ガザ地区南端、エジプトの境界にあるラフ検問所を掌握。同検問所は「食料、医薬品、テント、その他の救命支援物資の重要なライフライン」(国連緊急援助調整官のトム・フレッチャー氏)です。
 イスラエル軍は16日、ラフア検問所の再開について、エジプトと協議中と発表。ただし同検問所の再開は停戦合意に含まれていないとして、支援物資搬入のためには開放せず、支援物資はすべて、イスラエルが検査した後、ケレム・シャロームを通過することになると述べました。
 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ地区住民を3ヵ月間養える食料が同地区の外にあるが、イスラエル当局は依然その搬入を阻止していると報告しています。

虐殺再開いつでも 人質遺体返還遅れ□実に、攻撃態勢
 ハマスはこれまでに生存する人質20入全員を解放。遺体については28人中9人を返還しました。
 ハマスは荒廃したガザ地区での遺体収容には特別な機器が必要だと主張。米国のレビット大統領報進言でさえ「(遺体収容には)時間がかかる」と述べている中、イスラエル軍は「停戦違反」だと非難を強めています。
 イスラエルのカッツ国防相は、ハマスの合意履行拒否の場合には、「戦闘を再開する」として、ハマス打倒の「包括計画」の準備を軍に命じました。過去2年間、イスラエルが続けてきた国際人道法違反の民間人虐殺をいつでも再開できる態勢を崩していません。

議員定数削減容認できない 民主主義の根幹揺るがす(しんぶん赤旗)

 選挙制度は民主主義の根幹をなすもので一部の政党が党利党略的に改定して良いものではありません。
 維新が自民に求めている国会議員の定数削減ーそれも比例代表制の定員削減ーの問題点と危険性について、しんぶん赤旗が3人の識者に聞きました。

 また「選挙制度関係資料集」(2025年版)によると、主要7カ国(G7)の国会議員1人当たりの人口は、日本が17万5千人で、ドイツの11万9千人(2位)~英国4万6千人(7位)を大きく上回っています。
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議員定数削減容認できない 民主主義の根幹揺るがす
                      しんぶん赤旗 2025年10月19日
 日本維新の会が連立入りの条件として自民党に求めている国会議員の定数削減の問題点と危険性について各界の識者に聞きました。

国会の機能を弱くする
         東京慈恵会医科大名誉教授 小沢隆一さん
 欧州などでは日本より人口が少なくても日本と同じくらいか、多い国会議員を擁している国がほとんどです。日本の国会議員が多すぎるという議論は基本的に成り立ちません。
 全国民の代表として、主権者である国民のさまざまな声を政治に反映させるという大切で、かつみんなですべき仕事を担う国会議員が減れば減るほど、唯一の立法機関であり国権の最高機関である国会の機能が弱くなってしまいます
 議院内関制のもと、大臣や副大臣、政務官などは国会議員の身分を持ちながら行政側で働くことになります。その数は現在だいたい50~60人ぐらいおり、残りの国会議員が行政監視の役割を担うことになり、議員削減すればそれを担う議員、とくに野党議員がさらに手薄になります。国会が立法と行政監視の両方の機能をしっかり発揮するためには議員削減などしてはならないはずです。
 維新は、国会議員としての自らの存在意義を分かっておらず、本気で議員活動をやろうとしないから、こんなとんでもない提案を出してくるのでしょう。
 企業・団体献金禁止も本気で追求するつもりがないので、何か目玉になるものを差し出さねばとあせり、身を切る改革″というすでにうそが見破られた古いパフォーマンスをかつぎ出したのではないでしょうか


比例こそ女性の声反映
         楽しく比例制をめざす会 三井マリ子さん
 比例代表制を対象に議員定数削減を日本維新の会が自民党との連立の「絶対条件」にしたことに強く抗議をします。少数政党や少数意見の切り捨てを自ら宣言したようなものです。
 衆院の比例代表制は小選挙区制の補完制度として導入されました。小選挙区制では少数意見の意志を反映できないとの理由があったからです。それが、何回もの定数削減で比例代表は減らされてきました。今回また減らすなんて言語道断です
 女性をはじめ社会的弱者の議席を議会に増やすには、比例代表制中心の選挙にすることが絶対に必要です。比例代表制は理念や公約で政党を選ぶ選挙です。人権尊重や平等推進、選択的夫婦別姓の導入や男女賃金格差の是正などへの政党の姿勢を見て選ぶことができます。参院選の比例代表には重複立候補がなく、女性や社会的弱者が比較的当選しやすい状況もあります。
 ジェンダーギャツプ指数の上位国のほぼ全ては、比例代表制中心の選挙であることを、日本国民は知ってほしいと思います。


少数派の声届きにくく
         中央社会保障推進協議会事務局長 林信悟さん
 維新の会は自民党との連立政策協議で、国会議員の定数を1割削減する政治改革を盛り込んでいますが、少数派の声が議会に届きにくくなり、民主主義の根幹を揺るがす大問題です。
 社会保障政策では、2025年通常国会で3党合意した医療費4兆円削減の確実な履行を求めています。これは現役世代の負担軽減を口実に11万床もの病床削減やOTC類似薬の保険外しなど、国民の命を脅かす社会保障切り捨ての「全世代型社会保障改革」をいっそう加速させるものです。
 例えば医療機関で日常的に処方されるアレルギー薬や解熱鎮痛剤、皮膚の塗り薬など医療用医薬品が保険から外れると患者負担は大幅に増えることになります。負担増が治療の中断・抑制を引き起こし、症状悪化を招くのは必至です。
 定数削減により、社会保障改悪反対の声が届けられなくなる可能性が出てきます。この動きを断固として許さない声を大きく広げましょう


国際的にも少ない日本の国会議員数
                       しんぶん赤旗 2025年10月19日
 日本維新の会が衆院比例代表を念頭に国会議員定数の1割削減を自民党との連立入りの条件として主張し、自民もこれに応じようとしています。しかし、日本の国会議員数は国際的にみて、けっして多くはありません。
 衆議院調査局第二特別調査室が4月に公表した「選挙制度関係資料集」(2025年版)によると、主要7カ国(G7)の国会議員1人当たりの人口は、日本が17万5千人です。(グラフ)

主要国の国会議員1人当たりの人口(単位:千人) 









 ※米国は1人当たり632だが、州の権限が大きい連邦制国家のため事情が異なる
  (衆議院調査局第二特別調査室「選挙制度関係資料集」から作成)

 英国が4万6千人、フランスが7万人、カナダが8万7千人、イタリアが9万8千人、ドイツが11万9千人です。日本と英国とでは、3・8倍の開きがあります。
 米国は63万2千人ですが、同国は50州などからなる連邦国家で州の権限が大きく、各州のほとんどが上下両院からなる議会をもっているなど特殊な事情があります。米国を除けば、日本はG7で最下位です。
 今でも少ない日本の国会議員の定数を削減すれば、さらに国民の声が国会に届きにくくなってしまいます。

落ち目の自維金権腐敗連立(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 維新は自民との連立政権に参加するための「絶対的な条件」として「議員定数削減」を提示しました。本来であれば「1.萩生田光一幹事長代行の人事差し替え 2.企業献金廃止」が連立参画への最低条件の筈なのに、縁もゆかりもない「議員定数削減」が絶対条件とは呆れる話です。
 そもそも議員定数は「政治とカネ」と何の関係もありません。議員歳費は確かに30億円ほど減りますが、国政の規模でみればあまりにも微々たるもので、別掲の記事の通り、それによる弊害が甚大であって話になりません。そもそも議員1人当たりの人口でも日本はG7中最大で、その点からも議員数を減らさなければならない理由はありません。
 国民党の「103万円の壁」云々と同様に、維新の国会議員としても見識が疑われます。
 植草氏は、「比例代表の議席数を減らすことは少数政党の議席を減らすことに他ならない」、「衆院と参院の議員定数を削減して全議員を比例代表で選出する改革を断行するなら意味がある。全議員を比例代表で選出すると死票が大幅に減る。少数政党も得票に応じて正当な議席数を確保できる」と述べます。
 国会議員たるものせめてこうした見識を持つべきです。
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落ち目の自維金権腐敗連立
               植草一秀の「知られざる真実」2025年10月18日
腐敗臭が立ち込める日本政治。「政治とカネ」の腐敗臭が広がっている。
公明が腐敗臭に耐えかねて自民に申し入れをした。
自民は公明の指摘にゼロ回答。公明は連立からの離脱を決断した。

日本の主権者が自公を過半数割れに追い込んだ最大の理由は「政治とカネ」。
主権者国民は「政治とカネ」の腐敗臭に耐えかねて自公を過半数割れに転落させた。
この選挙で主権者が厳しい審判を下したもう一つの対象が維新。
参院選での維新の比例代表得票は
2022年 785万票  2025年 438万票 に激減。

          比例代表選挙得票数

この維新が自民党にすり寄った。
自民にすり寄るには「政治とカネ」でのハードルを用意することが必須。二つが必須事項
1.萩生田光一幹事長代行の人事差し替え
2.企業献金廃止
これが自民との連立参画への最低条件。

ところが、維新は二つとも条件に提示していない。
代わりに「議員定数削減」を提示したが驚くべき厚顔無恥だ。
議員定数は「政治とカネ」と何の関係もない。
衆院と参院の議員定数を削減して全議員を比例代表で選出する改革を断行するなら意味がある
全議員を比例代表で選出すると死票が大幅に減る。少数政党も得票に応じて正当な議席数を確保できる

死票を減らし、国民の意思を正確に議席数に反映させるなら全議席を比例代表で選出することが適正だ。
逆に比例代表の議席数を減らすと何が起きるか。少数政党が議席を減らす。
小選挙区では大政党しか当選者を出すことができない。
比例代表の議席数を減らすことは少数政党の議席を減らすことに他ならない。
いすれにせよ議員定数は「政治とカネ」と何の関係もない。
維新のブラックさを際立たせる提案だ。
議員定数削減の対象が比例代表議席であるなら邪(よこしま)な目的も明確だ。少数政党排除を目論む。

昨年来の最大の問題は「政治とカネ」。これを解決するには企業団体献金全面禁止を断行するしかない。昨年10月総選挙で自民が大敗して自公が衆院過半数割れに転落。
理由は明白。「政治とカネ」。裏金事件が巨大事件に発展した。
1000万円ラインで線を引いても自民党議員の21名が該当する。21名が刑事事件で立件される必要があった。前代未聞の巨大事件。

「政治とカネ」問題での焦点は以下の二点だった。
第一は政治資金規正法第21条の2の2項削除。
第二は企業団体献金全面禁止。
第一の問題はようやくクリアされたが第二の問題が残る。
維新が「政治とカネ」問題を重視するなら自民への協力の条件に「企業団体献金禁止」を設定するのが当然。ところが、維新はこれを条件とせずに自民への協力を示す。
ブラック維新による「金権腐敗宣言」に他ならない。

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20- 米財務長官が加藤財務大臣にロシア産エネルギーの輸入を停止するように伝えた

 櫻井ジャーナルに掲題の記事が載りました。
 天然ガスは単に暖房用の燃料になるだけでなく、アンモニア、メタノール、エチレンなどの様々な化学製品の原料でもあります(その点は原油なども同じです)。
 EUおいて経済的に優等生であったドイツは、米英によってロシアからドイツに天然ガスを送る「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」が爆破されたことで、豊富で安価なロシア産の天然ガスの供給がなくなり急速に経済が悪化し、いまは大変な困窮状態に陥っています。
 日本は、ウクライナ侵攻で米国がロシアへの経済封鎖を行った際にも、安定的なエネルギー供給を確保するためにサハリン1の運営権益の30%を維持し、LNG(液化天然ガス)輸入を継続してきました。
 それについて米国のスコット・ベッセント財務長官は10月15日、「日本がロシアからのエネルギー輸入を停止することを期待する」と加藤勝信財務大臣に伝えたということです。日本がロシアからの輸入を続けていることにトランプが苛立っているというわけです。
 彼が今月下旬に日本を訪問したときに、この問題でどんな要求がされるのか注目されます。

 それとは別に、耕助のブログに「トランプは認知機能が低下しているのか?」という記事が載りましたので併せて紹介します。トランプの思考パターンが認知機能の低下によるものなのか、それとも本来の個性に過ぎないのかはまだ釈然としませんが。
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米財務長官が加藤財務大臣にロシア産エネルギーの輸入を停止するように伝えた
                          櫻井ジャーナル 2025.10.17
アメリカのスコット・ベッセント財務長官10月15日、日本がロシアからのエネルギー輸入を停止することを期待すると加藤勝信財務大臣に伝えたという。日本がロシアからLNG(液化天然ガス)を輸入していることにドナルド・トランプ大統領が苛立っているようだ。そのトランプは今月下旬に東京を訪問する。
 この件に関し、加藤大臣は「ウクライナ和平を公正な方法で実現するため、G7諸国と連携するという基本原則に基づき、日本としてできることはすべて行う」と述べた。
 ロシアからドイツへ天然ガスをバルト海経由で輸送するために建設されたパイプライン、「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」が爆破されたのは2022年9月26日から27日にかけてのこと。このテロ工作でドイツの製造業は壊滅的な打撃を受け、社会は崩壊しつつあるが、その影響はヨーロッパ全域に広がっている。この冬の寒波が襲来した場合、壊滅的な状況になりかねない
調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したとする記事を発表しているジョー・バイデン大統領2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、そして2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を進言して実行さというのだ。
 ロシア連邦保安庁(FSB)の元長官で、現在は大統領補佐官を務めているニコライ・パトルシェフ9月7日、NS1とNS2の爆破テロは高度に訓練されたNATO特殊部隊の関与のもとで計画、監督、実行された可能性が高く、実行犯は深海での作戦経験が豊富で、バルト海での活動にも精通していたとしている。こうした条件に合致する情報機関として彼はイギリスの特殊舟艇部隊(SBS)を挙げている
 状況を考えると、アメリカかイギリスの情報機関や特殊部隊が実行した可能性が高いのだが、そもそもバラク・オバマ政権が2013年11月から14年2月にかけてキエフでクーデターを仕掛けた理由のひとつは、ロシア産天然ガスをヨーロッパへ運ぶパイプラインを抑えることにあったと見られている。そのウクライナを迂回するために建設されたのがNS1とNS2だった。
 その2022年、サハリンでの天然ガス開発に参加している日本にもアメリカから圧力がかかっていた。このプロジェクトから手を引くように日本や欧米の企業にアメリカ政府は圧力をかけ、エクソンモービルは2022年3月にロシア事業からの撤退を決めているのだが、日本は継続を決めている。
 プロジェクトのひとつであるサハリン1の場合、エクソンモービルが運営権益30%を保有、日本のサハリン石油ガス開発も同じく30%を保有していた。サハリン石油ガス開発には経済産業省、伊藤忠商事、丸紅、石油資源開発などが共同出資している。エクソンモービルはアメリカ政府の圧力で撤退を決めた。
 もうひとつのプロジェクトであるサハリン2では2022年8月に三井物産と三菱商事が新たな運営会社であるサハリンスカヤ・エネルギヤに出資参画することを明らかにした。出資比率はそれぞれ12.5%と10%。27.5%を保有していたイギリスのシェルは同年2月に撤退、ロシアのガスプロムが50%プラスから77.5%へ増加している。

 日本はロシア産天然ガスの開発を重要だと認識、アメリカの圧力を跳ね除けて出資を継続したのだろうが、その決定が発表される直前、2022年7月8日に安倍晋三は射殺された。
 ウクライナではロシア軍の進撃スピードが速まり、NATO/アメリカは苛立っている。2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」で西側諸国に煮湯を飲まされたロシアは停戦に応じる気配は感じられない
アンゲラ・メルケル元独首相フランソワ・オランド元仏大統領は、ミンスク1やミンスク2はキエフ政権の戦力を増強する時間稼ぎが目的にすぎなかったことを認めている。

 ドナルド・トランプ米大統領は、ロシアの収入源である天然ガスや石油のマーケットを潰し、クレムリンに圧力を加えて停戦に持ち込もうとしているのだろうが、すでにアメリカの「制裁」がロシアや中国より西側諸国に大きなダメージを与えることが明確になっている。
 日本にとって、2023年時点でロシアからのLNG輸入量はオーストラリアとマレーシアに次ぐ第3位。総輸入量の9.3%を占めていた。日本がロシアからのエネルギー輸入を停止した場合、日本も厳しい冬を過ごさなければならない。
 トランプはインドのナレンドラ・モディ首相がロシアから石油を購入しなくなることを確約したと宣伝したが、これまでの流れから考えて疑問だ。これが事実なら、インドのエネルギー戦略が劇的に転換することを意味するのだが、この発言の翌日、エネルギー政策の選択は国民の利益に基づいているとインド政府は改めて表明した。エネルギー価格の安定と安定供給の確保がエネルギー政策の優先事項だとしているインド政府は割安なロシア産原油に依存している。この状況が変化したとは思えない。トランプ大統領はプロレスのマイクパフォーマンスをまた行ったという見方もある。
【追加】
インド外務省のランディール・ジャイスワル報道官は10月16日の記者会見で、10月15日にインドとアメリカの首脳が会談したとは承知していないと語った。BRICSが崩壊するという話も含め、ドナルド・トランプ米大統領の話は何者かの作り話だということであろう。
 
 
 トランプは認知機能が低下しているのか?
                耕助のブログNo. 2686 2025年10月16日
    Is Trump in Cognition Decline?
       内部の見解では大統領は衰えを見せているという。 by Seymour Hersh
「固執」とは、心理学、精神医学、言語病理学の分野で使用される医学用語であり、特定の反応、例えば繰り返されるフレーズや不適切な身振りなどを指す。この症状は、PTSD、自閉症、外傷性脳損傷、認知症の患者に最もよく見られる。この用語は近親者が認知症の進行に苦しんでいた数年にわたって何度も耳にした。9月30日、バージニア州クアンティコにある海兵隊基地で、ドナルド・トランプ大統領が71分間にわたる演説を行った。その演説は、理由は明らかになっていないが、ピート・ヘグセス(陸軍州兵予備役少佐、現在は戦争長官)の指示により800人もの米軍の指導者が集まったものだった。

ヘグセスによる熱狂的な開会のスピーチの後、大統領はいつものように、個人的な歴史と不満を織り交ぜたスピーチを行った。特に、自分が解決していない国際的な危機を解決したと繰り返し主張したことに、ホワイトハウスの側近たちの中には彼の精神的な混乱がさらに進み、ハイレベルな会議に集中できなくなっていることの兆候だと理解している者もいる。
最も重要なのは、大小問わず群衆を巧みに操ることに長けていたトランプが、もはや「場の空気を読む」ことができなくなった、つまり、聴衆を素早く見極めて、ショーマンとしての本能で聴衆を魅了することができなくなったことだ。トランプが外交政策に関する見解を概説し、集まった将軍や提督たちに大統領に質問する機会を与えることは、新鮮で、おそらく前例のないことだっただろう。ところが実際は、トランプの最大の功績を再演する結果となった。大統領は自らの最も誤った見解の一つ、すなわち「戦争終結者」としての自己像を聞かされたのだ。「大統領になってから私は数多くの戦争を終結させてきた」とトランプは言った。「7つの戦争を終結させ、昨日も史上最大の戦争を終結させかけた」と、イスラエルとハマス間の継続中の協議に言及した。「とはいえ」とトランプは付け加えた。「パキスタンとインドの件は別だ。両国とも核保有国で、非常に重大だった。あれも私が解決した」世界中の新聞がトランプの主張する問題の経緯や、紛争を「解決する」という定義そのものに異議を唱える記事を数多く報じている。
数分後、トランプは軍隊の募集問題解決の成功談から話題を変え、ジョー・バイデンが在任中に書類や手紙にオートペン(自動署名機)を使用していたとする報道について長々と非難を始めた。
この暴露から、バイデン政権下で最善を尽くして勤務したと思われる上級将校たちの前で数分間にわたる前大統領に対する理性を失った軽蔑の言葉を浴びせた。トランプはオートペンの使用に怒りを表した。オートペンは政府関係者や民間人で大量の郵便物を受け取る者には一般的な手法だ。トランプは、軍隊の募集状況は、「オートペンの4年間、私はバイデンをオートペンと呼ぼう」に激減したと述べた。そして集まった将軍や提督たちに問いかけた。「あなたがたの書類をオートペンで署名されたらどう思う?」

議事録によれば、彼はこう続けた:
将軍の書類に署名する時、私たちは美しい紙を使う。豪華な紙だ。もっと金箔を足せと言った。彼らはそれだけの価値がある。A級の紙をくれ、D級じゃない。昔はゴミみたいな紙に署名してた。この男は将軍になるんだろう?
 そうだ。こんな紙は使いたくない。分厚くて美しい高級紙を使いたい。地位にふさわしい本物の金箔文字を使いたい。それらは美しいが――だが、君たちの署名が、裏方の子供がオートペンで代筆するなんてどう思う?私はまず君たち、提督や将軍たちのことを考えた。
 誰かが一生をかけて努力し、士官学校かどこかに進む。どうやってそこにたどり着いたかはともかく、何年も努力を重ねて、ついに提督や将軍になる。そうなると、ご存知の通りアメリカ合衆国大統領が任命状に署名する。その任命状は美しく飾られる。
 そして私がサインする――実は、自分のサインが本当に好きなんだ。皆、私のサインを気に入ってる。だから私は誇りを持って署名した。そしていつも思う、どうしてこれをオートペンで済ませられるのか?まったく失礼極まりない。私にとって完全に無礼だ。そして結局、バイデンがやったことのほとんどはオートペンで処理されていた。息子のハンターに恩赦を与えた時だけは例外で、あれだけは彼が自ら署名した。
 そしてその署名は、私が見た中で最悪だった。ひどいものだ――オートペンの署名の方がずっとマシだ。だが指導者として、我々が軍服を着る全ての愛国者に対して誓うべきは、アメリカ軍が単に数年ではなく、今後何十年、何世代にもわたり、何世紀にもわたって、地球上で最も強力で圧倒的な存在であり続けることを保証することだ。

上記の段落は、トランプ政権内部の一部関係者が「大統領の能力が明らかに衰え、場の空気を読めなくなった」と確信するに至った根拠を補強するものである。
ここで付記しておくが、このコラム読者なら覚えているかもしれない。私はジョー・バイデンが在任最後の数年間に能力が衰えたことについて繰り返し論じてきた。当時と現在には重要な違いがある。バイデン政権では、大統領の認知機能の低下(その兆候は二期目の終わり頃に現れ始めた)について公に真実を語る内部関係者は一人もいなかった。私の情報は間接的なもので、大統領と会談したりエアフォースワンで交流した者たちから得たものだった。ごく少数のケースでは大統領の精神的疲労や文章を完結できない様子を直接目撃したジャーナリストや元上院議員からの情報もあった。

トランプ政権下では、内部関係者が外部に懸念を共有する姿が私にも伝わっている。これは新鮮な体験だった。バイデン政権下では決して起こらなかったことだ。大統領と副大統領に仕えた高官たちは懸念を胸に秘めたまま、昨年6月の大統領討論会でジョー・バイデンがトランプと苦戦する姿を国民と世界に見せることになったのだ。
今や我々の大統領は衰えを見せ、分断された国家を統治しつつ、その政策に対する国民の強い不安を招いている。上記の記述は、今後数年にわたる混乱期において、大統領の精神的健康状態が決して楽観できない現実を映している。これを疑う者には、クアンティコで米軍指導部に対し行った演説の記録を注意深く読むことを勧める。
大統領の最も顕著な欠陥のいくつかは当初から存在し、彼の反移民的見解(世論調査での支持率を支えてきた問題)と共に、何百万ものアメリカ人にとって愛すべき、誠実なものと見なされていた。
9年前、アウトサイダーだったトランプが共和党の大統領候補指名を獲得し、プロの政治家を驚かせた後、ワシントン・ポスト紙の保守派コラムニスト、チャールズ・クラウタマー(2018年に死去)は、「ドナルド・トランプと適性基準」という見出しのコラムを書いた。クラウタマーは、ハーバード大学医学部の1年次に水泳中の事故で下半身不随となった医師であり、精神科医として活動し、カーター政権に短期間参加した後、ウォルター・モンデール副大統領のスピーチライターを務めた。彼の広く配信されたコラムは、1987年にピューリッツァー賞を受賞した。晩年には右派に転向し、フォックスニュースのコメンテーターとなった。
クラウマーはトランプのファンではなく、特にトランプが、トランプを批判したゴールドスターファミリー(戦闘で亡くなった軍人の親族)をことあるごとに攻撃したことを特に憤慨した:
「なぜトランプはそんなことをしたのだろう?」とクラウトハマーに尋ねた。「彼は自制できないのだ。彼の人生の鉄則は、攻撃されたり軽視されたり、侮辱されたりしたら、必ず反撃することだ… 彼はあらゆる行動、発言、人物を単一の基準で判断する――それがトランプにとって『好ましい』かどうかだ。」
「かつて私はトランプを11歳の未熟な学校のいじめっ子だと思っていた。実際は10年ほど年上だった。彼の欲求はもっと原始的で、承認と称賛への幼児的な渇望であり、決して満たされない欲望だ。彼は自己中心的な繭の中に生きている。彼にとって外の世界は、自分を支え、膨らませる限りにおいてのみ価値があり、存在する。
「ほとんどの政治家は承認欲求がある。だがトランプは称賛されるために生きている。彼はそれを隠そうともせず、絶え間なく自身の集会の規模、スタンディングオベーション、テレビ視聴率、世論調査の数値、予備選挙での勝利を自慢し続けるのだ。」
そして彼の筆跡(ペンマンシップ)も。
https://seymourhersh.substack.com/p/is-trump-in-cognitive-decline

2025年10月18日土曜日

18- 衆院:比例代表廃止案が浮上(しんぶん赤旗)

 衆院選挙では小選挙区制と比例代表制による選挙が同時に行われる「小選挙区比例代表並立制」が採用されています。
 昨年10月に行われた衆院選挙では、小選挙区289 候補者の得票のうち議席に結びつかなかった「死票」の数は全国で約2,828万票にのぼり小選挙区得票の52%を占めました。
 得票数に応じて定数内で政党候補者の当選人数が決まる比例代表制と異なり小選挙区制はこのように「多様な民意を切り捨てる弊害を伴っています。
 現行制度では、議員数で176人(38%)を比例区から選出する「小選挙区比例代表並立制」を採用することで この弊害を緩和する措置が採られています。
 維新は、自民との連立を指向する協議のなかで その条件として「議員数の削減」を上げた上で、「小選挙区比例代表並立制」のうち「比例代表」の部分を削減するのがいいのではないかと述べました。
 議員数の削減自体、「国民の民意を切り捨てる」ことなので簡単に2党間で決められる問題ではありません。ましてや小選挙区制という筋の悪い制度を辛うじて緩和してきた「比例代表」の部分を削減することを自民との2党間で取り決めるのは理解の埒外です。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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「比例代表削減」浮上 自維連立協議 立維国は打ち切り
                       しんぶん赤旗 2025年10月18日
 自民党の高市早苗総裁と日本維新の会の藤田文武共同代表は17日、国会内で、連立政権を巡る2回目の政策協議を行いました。維新が連立入りの条件として要求している国会議員定数の1割削減に関して、民意を最も反映する比例代表の削減が浮上する重大事態となりました。
 協議に先立ち、維新の吉村洋文代表は同日の民放番組で、削減規模について「基本衆議院。1割、50人ぐらい削減したい。比例でもいい」「僕は(削減するのは)ここ(比例代表)じゃないかと思う」などと述べました。協議終了後の記者会見で藤田氏は、「私も同じ思いだ。そのつもりで最終調整したい」と強調。記者から、比例代表の削減かと問われ、「そのあたりの最終調整は継続していく」としました。
 自民の小林鷹之政調会長は会見で、議員定数削減について「国会のあり方を決めるにあたって特定の政党だけで決めるということは、これまでもなかったと認識している。幅広い合意形成を目指していく考え方に変わりはない」と語りました。議員定数の削減を巡っては、自民党の逢沢一郎衆院議員がXで、現在与野党で衆院選挙制度に関する協議で議員定数を議論している最中であり、「定数削減は論外だ」と批判。各党からも批判が相次いでいます。
 政策協議後、両党は「大きく前進した」との認識を示し、維新の藤田氏は「最終の調整詰めを行っていく形で前進した」と強調。その上で、立憲民主党と国民民主党との間で行っていた首相指名選挙を巡る連携協議を打ち切ったと明らかにしました。


議員定数削減 断じて許さない 維新の主張 田村委員長が批判 連立入りへ悪質な議論
                       しんぶん赤旗 2025年10月18日
 日本共産党の田村智子委員長は17日、国会内で記者会見し、日本維新の会の吉村洋文代表が、自民党との連立政権に向けた政策協議で国会議員定数削減は連立の絶対条件だと主張していることを「断じて許すわけにはいかない」と厳しく批判しました。
 維新の吉村代表は、定数削減を連立の絶対条件とし臨時国会での実現を要求しています。田村氏は、「定数削減は議会制民主主義の根幹に関わる問題であり、国民の民意を切り捨てるということにほかならない」と断じました。
 田村氏は、維新がとくに比例代表の定数削減を主張しているが、比例代表は多様な民意を反映するもので、それを削ることは、今日の多様化している状況にも逆行するものだと指摘。選挙制度のあり方は民主主義の土台であり、すべての政党で協議すべきものだとして、「そうしたことを踏みにじって定数削減を臨時国会で数の多数で押し通すことは議会制民主主義のイロハをわきまえない暴論だ」と強く批判しました。
 維新の主張は、企業・団体献金、裏金問題を不問にして議員定数の問題にすり替えるもので、カネまみれの自民党と一緒になるための悪質な議論だと指摘しました。
 同日の共産党と社民党との懇談でも議員定数削減に喫緊の課題として立ち向かうことを確認したと説明。16日の懇談で反動ブロックの危険と立ち向かうことをお互いに確認した参院会派「沖縄の風」とも力を合わせ、「大きな共闘を国会で広げ、国民のなかにも選挙制度のあり方について、大いに議論を広げていきたい」と述べました。


定数削減 維新、最悪の党利党略 企業団体献金禁止棚上げ 連立入りへ問題すり替え
                       しんぶん赤旗 2025年10月18日
 日本維新の会が自民党との連立を視野に入れた政策協議の中で、「政治改革」の課題として「国会議員の1割を目標に削減」すると打ち出し、吉村洋文代表は「(議員定数の)大幅削減が受け入れられなければ連立を組むことはできない」などと言い出しています。最悪の党利党略です
 7月の参院選で自公両党が過半数割れに追い込まれた最大の争点の一つが、裏金事件の解明と「企業・団体献金の禁止」でした。自民党は一貫してこれらに背を向けてきましたが、維新は「企業・団体献金の禁止」を言ってきました。いま維新が自民党との「連立」協議を進めるにあたり「企業・団体献金の禁止」を掲げてはいます。そうであるなら、疑惑解明と企業・団体献金禁止での一致は不可欠のはずです。維新の藤田文武共同代表は野党間の連携協議では「基本政策の一致が不可欠」だとさんざん繰り返してきました。
 ところが自民党との連立協議となると、自民が「企業・団体献金の禁止」を受け入れる可能性は現状では全くありません。にもかかわらず、連立協議を進めるために、論点を「企業・団体献金の禁止」から「議員定数の削減」にずらして棚上げし、自民党の責任逃れに手を貸そうとしているのです。しかも21日召集の臨時国会で定数削減を実現するとまで言い出しています。

 いま衆院では各会派の代表で構成する「衆議院選挙制度に関する協議会」で、「議員定数や地域の実情を反映した選挙区割りの在り方等」について協議を続けています。同協議会の逢沢一郎座長(自民党選挙制度調査会長)は16日夜、自身のXで「いま与野党で議員定数を含めて、あるべき選挙制度を議論中の状況で、自民・維新でいきなり定数削減は論外だ」と批判しました。選挙制度は、民主政治の基本的土台であり、少数会派を含め全ての党派が議論に参加し論点を詰めるべきものです。自民と維新の党略的な合意を一方的に優先させることなど絶対に許されません
 そもそも「議員定数削減」には議会制民主主義にとって重大な問題が含まれます。

 国会議員は、憲法でも「全国民を代表する」(43条)と定められるとおり、その地位は、民意を国政に反映するという国民主権に直結する重要な役割を負っています。議員定数の削減は「民意の切り捨て」につながる民主主義の重大問題なのです。
 「身を切る改革」などと喧伝(けんでん)し、定数削減で個々の議員が不利益を甘受するかのような議論は、議員の地位を個人の所有物のように扱い、問題の本質を完全にすり替えるものです。自民党の逢沢氏もXで「身を切る改革イコール、議員定数削減ではない。現行制度で定数削減となると、大阪、東京ではなく(人口の少ない)地方の定数がさらに少なくなる」と指摘しています。

 議員定数を1割削っても国家財政に与える影響は微少なうえ、「国民が苦しんでいるから政治家も苦しむべきだ」という議論は、国会議員が負っている責務に照らせば意味を持たないものです。もし維新や自民が本当に「身を切る」というなら、赤ちゃんも含め国民1人あたり250円ずつ徴収し、思想信条の自由を侵害している憲法違反の政党助成金こそ廃止すべきです。ところが、両党は決してそこには踏み込みません。

 しかも吉村氏は、比例代表には復活当選の仕組みがあることを理由に、定数削減するなら「ここ(比例代表)じゃないか」(17日のフジテレビ番組)などと述べています。小選挙区制と比例代表制が並立する現在の衆院の選挙制度は、小選挙区が「民意を集約」し、比例代表区が「民意を反映」するというもの比例定数の削減は、まさに民意を切り捨てるもので、大政党を一層有利にし、少数政党を議会から締め出すもの。多様な民意の反映をさらに困難にします。「議員定数削減で連立合意」という維新と自民の動きに厳しい批判が必要です。(中祖寅一)


反動的動きに抗する共同を 田村委員長、社民・福島党首と会談
                       しんぶん赤旗 2025年10月18日
議員定数削減反対でも一致
 日本共産党の田村智子委員長は17日、国会内で、社民党の福島瑞穂党首と会談し、大軍拡や改憲など反動的な動きに立ち向かい、憲法や暮らし、平和を守る共同をつくるために力を合わせていくことを確認しました。また、喫緊の課題として自民党と日本維新の会の連立協議で維新が主張する議員定数削減や「スパイ防止法」制定に反対してたたかっていくことでも一致しました。日本共産党の小池晃書記局長と山添拓政策委員長、社民党の服部良一幹事長とラサール石井副党首が同席しました。
 田村氏は会談で、自民党とその補完勢力や極右・排外主義の勢力による危険な「反動ブロック」形成が進行しているとし、「反動的な危険な動きに対し、国会の中でも外でもしっかりとした共同をつくり発展させることがいよいよ求められている」と呼びかけました。
 福島氏は、維新が自民に突きつけた12項目の政策要望の危険性を指摘し、「平和や民主主義、人権を大事にする勢力が本当に力をあわせ、本気で政治を変えていかなくてはいけない。ファシズム政権がばっこしないよう、がんばり合いたい」と応じました。