2025年12月4日木曜日

高市首相台湾発言 解決には撤回しかない 中国側にも3点で理性的対応を提起 志位議長が主張(しんぶん赤旗) 

 共産党の志位和夫議長は2日、香港フェニックステレビのインタビューに応じ、「台湾有事は存立危機事態」と述べた高市早苗首相の答弁と、日中関係の打開について見解を述べました

 志位氏は、「高市発言は日中共同声明を踏みにじるもので、日中両国関係正常化の土台を壊す発言」で、2008年の日中首脳共同声明で「互いに脅威とならないと合意している点にも反している」と述べました。
 そして、「この対立と緊張を解決するには 発言をきっぱりと撤回するしかなく、それ以外の道はありません」と明言しました。
 限られた時間の中ですが、必要な論点について簡潔に要点をまとめた発言になっています。
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高市首相台湾発言 解決には撤回しかない 中国側にも3点で理性的対応を提起
志位議長が主張 
                       しんぶん赤旗 2025年12月3日
 日本共産党の志位和夫議長は2日、香港フェニックステレビのインタビューに応じ、「台湾有事は存立危機事態」と述べた高市早苗首相の答弁と、日中関係の打開について見解を述べました。

香港フェニックステレビインタビュー

特定の国を名指しして戦争がありうると宣言
 まず、高市首相の「台湾発言」について問われました。志位氏は、「最大の問題は、特定の国を名指しして、戦争を行うことがありうると公言したことであり、こんな発言をした首相は戦後の歴史でも高市氏が初めてです」と指摘。「台湾海峡での米中の武力衝突が、『どう考えても存立危機事態になりうる』という答弁は、日本に対する武力攻撃がなくても、米軍を守るために自衛隊が中国に対する武力行使を行う――戦争を行うことがありうると宣言したことになります。戦争放棄をうたった日本国憲法を蹂躙(じゅうりん)し、日中両国民に甚大な被害をもたらす惨禍につながる危険きわまりない発言で、絶対に許されるものではありません」と述べました。

日中両国関係正常化の土台を壊す発言
 続いて日中国交正常化に伴う1972年の日中共同声明との矛盾について問われました。志位氏は、高市発言は日中両国が国交正常化以降確認してきた一連の重要な合意に背くものだと批判。「72年の日中共同声明では、中国政府が『台湾が中国の領土の不可分の一部』だと表明したことに対して、日本政府は『十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項を堅持する』としたことで国交正常化が実現しました。高市首相が、台湾問題への軍事的介入の可能性を公言したことは、中国側の立場を『十分理解し、尊重する』という共同声明を乱暴に踏みにじるもので、日中両国関係正常化の土台を壊す発言といわなければなりません」と主張しました。

 さらに志位氏は、日中両国は2008年の日中首脳共同声明で、「(日中)双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」と合意している点をあげ、「高市発言は、中国に対する軍事的威嚇の発言であり、08年の共同声明に反する発言であることも明瞭です」と主張。「いま起こっている日中の対立と緊張は、高市首相が、日本と中国の平和と友好を根本から損ない、日中両国の合意に根本から反する誤った発言をしたことをきっかけにして生まれているものです。この対立と緊張を解決するには、発言をきっぱりと撤回するしかありません。それ以外の道はありません」と訴えました。

ごく一部の右翼的潮流と日本国民を区別した対応を
 旅行警告や輸入規制などといった中国側の対抗措置についても問われました。志位氏は、「中国政府が、日中両国の基本的合意に照らして高市発言を批判し、撤回を求めていることは当然のことです」とした上で、「同時に、中国政府が、次の諸点をふまえて対応することが、問題の理性的解決にとって重要だということを、率直に指摘し、求めたい」として中国側に3点を提起しました。

 第1は、「高市発言に現れたようなごく一部の右翼的潮流と、日本国民を区別した対応が重要」だということです。志位氏は、「中国は、これまで歴史問題に対しても、日本軍国主義を進めた勢力と、日本国民を区別した対応をとってきました。今回もそうした対応が必要です。日本国民の多数は、日中の友好関係の発展を願っており、戦争でなく平和を願っています」と指摘し、「そうした日本国民の理解と共感を得る対応を行う」ことを求めました。

人的交流、文化交流、経済関係にリンクさせない
 第2は、「この問題を、両国の人的交流、文化交流、貿易や投資など経済関係にリンクさせない」ということです。
 志位氏は、「政治的な対立は、あくまでも政治問題として解決すべきです。人的交流や経済関係にリンクさせれば両国の国民が苦しみ、両国の経済が打撃を受け、両国国民間の対立と亀裂をいっそう深刻なものとします。こうした対応は避けなければなりません」と述べました。

事実に基づかない言動、対立をことさらあおる言動はつつしむ
 第3は、「事実に基づかない言動、対立をことさらあおるような言動はつつしむべきだ」ということです。志位氏は、「そのような言動によって日中両国の緊張と対立がエスカレートすることは、問題の道理ある解決の妨げになるだけだということを率直に指摘したい」と述べ、冷静で理性的な対応を求めました。

 その上で、志位氏は、「高市発言に対する日本共産党としての基本的批判点と中国側に対する3点の要請は、すでに、しかるべき形で中国の政府・党に伝えた」ことを明らかにしました。

小手先のゴマカシで解決できる生易しい問題ではない
 11月26日の党首討論で、高市早苗首相が「台湾発言」を、「事実上撤回している」との一部評価に対して、志位氏が、「撤回していない」と断言している点について問われました。志位氏は、「党首討論で、高市氏が『従来の見解を繰り返しただけ』だと答弁したことをもって撤回にはなりません。従来の見解をも踏み越えた誤った発言を行ったことを認め、撤回を明言しなければ撤回となりません。この発言は、日中両国関係の土台をゆるがす深刻な発言であり、小手先のゴマカシで解決できるような生易しい問題ではありません」と述べました。

最優先で撤回を、一連の重要な合意を再確認し、友好関係の再構築を
 最後に、現状改善のために日本政府が最優先でとりくむべき課題と、今後の日中関係の見通しを問われました。志位氏は、「まずは高市発言の撤回が最優先です。これなくしては先に進む土台がないということになります」と述べ、発言の撤回を重ねて求めました。
 志位氏は、「そのうえで、今後の日中関係を展望した場合、1972年の国交正常化以来、双方が交わしてきた一連の重要な合意を再確認し、その土台のうえに友好関係を再構築していく努力が必要になります」と強調しました。

「三つの共通の土台」を重視し、両国関係の前向きの打開を
 志位氏は、その大前提の問題として、「1972年の日中共同声明における合意を日本側が厳格に順守することを明確にする」ことをあげた上で、日中両政府間に存在する「三つの共通の土台」を重視して、それを生かして両国関係の前向きの打開をはかり、平和と友好を確かなものにしていく外交的努力を提起しました。

 第1は、2008年の日中共同声明に明記された「互いに脅威とならない」という点です。双方が緊張と対立を悪化させる行動を自制する。日本は敵基地攻撃能力の強化と大軍拡をやめる。中国は、東シナ海などでの力を背景にした現状変更の動きをやめる―などです。
 第2は、尖閣諸島の問題について、14年の日中合意で、「尖閣周辺等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていること」について、日中が「異なる見解を有している」と認識し、「対話と協議」をつうじて問題を解決していくと確認していることです。志位氏は、この合意の具体化として、「危機管理メカニズム」を強化するとともに、「南シナ海行動宣言」(DOC)のような、紛争を激化させる行動を互いに自制するルールを日中間で取り決めることを、日本共産党として提案していることを述べました。

北東アジアでブロック対立でなく、包摂的な平和の枠組みの構築を
 第3は、東南アジア諸国連合(ASEAN)が提唱している「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)を、日中両国政府がいずれも支持しているという事実です。志位氏は、「北東アジアで、日米韓、中ロ朝の二つのブロックが形成され、対立がエスカレートする危険が強まっていることを強く憂慮しています」と述べ、「ブロック対立でなく、包摂的な平和の枠組みを構築する努力をすべきです。日米中もふくめ、地域のすべての国を包摂する東アジアサミットという枠組みが現に存在しています。ASEANと協力してこの枠組みを発展させ、AOIPを成功させるために、日中両国政府が協力していく方向を目指すべきです」と提起しました。

ごまかし 居直り すり替え 高市三原則(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 高市三原則は「ごまかし、居直り、すり替え」で、それが高市氏の常套手段であるとして「台湾有事発言」でもこの原則がいかんなく適用されていると指摘します。
 高市氏は第2次安倍内閣時代に総務相に就きました。退任後 立民の小西洋之議員から過去の経緯に関する総務省内部文書を国会で提示されたとき、高市氏はそれを「ねつ造文書」だとして「ねつ造でなければ議員辞職する」と述べました。しかし当該文書が総務省の正規の内部文書であったことが後に明らかにされましたが 彼女は議員辞職をせずに居直りました。人間性が疑われる話です。
「台湾有事発言」以降、高市氏に対しては 元文科省事務次官の前川喜平氏は「教養がない」と、元経産省官僚の古賀茂明氏は「頭が悪い」と、また京都精華大の白井聡氏は「無能だ」とそれぞれ動画で批判しています。これだけ批判が集中するのは珍しいと言えます。
 それでもメディアがひたすら持ち上げていることから 高市内閣は高支持率を維持していますが、年額11兆円の軍事費を確定し、更には21兆円も辞さないという軍国主義的政権では民生の安定など期しようがありません。
 メディアも高市支持層も 早く正気に戻るべきです。
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ごまかし居直りすり替え 高市三原則
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年12月 3日
高市三原則は ごまかし、居直り、すり替え
台湾有事発言でもこの原則がいかんなく適用されている。
高市首相は台湾有事に関する国会質疑において
前段では「そのときに生じた事態について、いかなる事態が生じたということの情報を総合的に判断しなければならない」と述べた。
しかし、後段で「台湾を中国北京政府の支配下に置くような場合に、それが戦艦を使って、武力の行使をともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と述べた

発言が問題になってから高市首相は「歴代内閣の立場と一致している」「政府としての統一見解とするつもりはない」と述べたが、これは「ごまかし」だ。
前段の発言を貫いていれば「歴代内閣の立場と一致している」の説明で問題はない。
問題発言は後段部分であって前段部分ではない。
後段部分は「歴代内閣の立場と一致して」いない。
一致していないから「政府としての統一見解」にはできない。
「統一見解としない」のではなく「統一見解にできない」というのが実情。
だからごまかしなのである。高市氏の常套手段。

放送法の「政治的公平」の解釈変更を目論みた過去の経緯に関する総務省内部文書を高市氏は「ねつ造文書」だと述べて、「ねつ造でなければ議員辞職する」としたが、当該文書が総務省の正規の内部文書であったことが明らかになったのに納得のゆく説明をしていない。
これも「ごまかし」のひとつ。強く批判を受けると居直る。
今回の高市発言はこれまでの日中政府が積み重ねてきた外交文書の合意事項を踏みにじる部分を含む。
撤回が必要だが「撤回しない」と居直っている。その結果、日本経済に深刻な影響が広がり始めている。

「すり替え」に関する代表事例は「政治とカネ」の「議員定数」へのすり替え。
24年総選挙、25年参院選で自民党は歴史的大敗を喫した。
最大の要因は「政治とカネ」。史上空前の裏金不正事件が発覚した。
不正な裏金を1000万円以上不記載にした国会議員は21名に及ぶ。
少なくともこの21名は刑事責任を問われる必要があったが警察、検察が腐敗しているために巨大事件は矮小化された

それでも主権者である国民は自民党の「政治とカネ」問題への不誠実な対応を断罪した。
それを表出したのが選挙結果。自民党は「解党的出直し」を宣言して党首を差し替えた。
その結果として登場したのが高市内閣。ところが、高市内閣は「政治とカネ」問題への対応を放り投げて、問題を「議員定数」にすり替えた。
「政治とカネ」問題に真摯に取り組む姿勢をまったく示していない。

内閣支持率が高いのは巨大資本に支配されたマスメディアが高市絶賛報道を繰り広げているからだ。
しかし、やり過ぎると裏が透けて見えてくる。流行語大賞などは噴飯もの。
高市内閣がすり替えた「議員定数」。「身を切る改革」というなら「議員定数」ではなく「議員報酬」である
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4269号
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高市発言の狙いは何だったのか - 台湾関係法の日本版(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 ここで米国の「台湾関係法」というのは別に法律のグループを差すものではなく 1979年に制定された1本の法律で、その内容は
台湾を防衛するための軍事行動の選択肢を合衆国大統領に認める。米軍の介入は選択肢の一つで、米国による台湾の防衛を保障するものではない
という「戦略的あいまいさ」を有するものです

 トランプは2日、米国と台湾の公的な交流に関する指針を定期的に見直し、更新することを義務付ける「台湾保証実施法案」に署名しましロイター通信)。これは「台湾関係法」を補強するものです。
 この法案成立を受け中国外務省は「台湾問題は中国の核心的利益の中核であり、米中関係で越えてはならない第1のレッドライン米国と台湾地域の間のいかなる公的な接触にも断固として反対する抗議しました
 先の米中電話会談で米国と中国は世界のG2」であり極めて良好な関係にあると誇り、高市氏に「日中間でゴタゴタを起こすな」と釘を刺したばかりなので この展開は意外ですが、トランプには これによって現在の米中関係が壊れることはないという自信があるのでしょう、

 ところで高市氏の「台湾有事」は別掲の記事で述べられている通り、「取り消す」ことでしか解決できないものですが、その後も内閣支持率が高く推移していることから「自分は正しかった」と思い込んだのか「取り消す」意向はないようです。
 そもそも国民の内閣支持率はメディアに姿勢によって簡単に操作できるので、高市氏の受け止めは間違っているとともに国民の側にもメディアに踊らされているという落ち度があります。

 それは兎も角として これまで世に倦む日々氏は、27年までに「台湾有事」が「発生する」という見方でしたが、トランプと習近平氏の良好な関係を見て、「一気に逆転して 緊張緩和の方向へと進む展望を示している」と述べました。
 それ自体は大いに喜ばしいことですが、世に倦む日々氏は 高市発言の狙いは台湾関係法日本版の制定へ向けての布石だと推測できる」として、「存立危機事態の発生と認定の具体的要件として台湾有事を設定し、国内世論で多数支持を固めて既成事実化し、野党とマスコミの根回しもした上で、米国と同じ台湾関係法を立案上程し可決成立させる肚だ」と推測します。
 トランプは別として、米国のデープステイトが「台湾有事を口実に」というであるなら、いずれ日本にそうさせたいことは容易に頷けることです。
 それが日本滅亡のシナリオであることを理解できない人間がトップに居れば、容易にその方向に向かうことになるわけで実に恐ろしいことです。
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高市発言の狙いは何だったのか - 台湾関係法の日本版
                       世に倦む日日 2025年12月3日
先週(11/24)のトランプによる仲介外交が効いたのか、中国の日本に対する対抗措置が止まっている。短期ビザ免除の停止やレアアースの禁輸にまでエスカレートするかと予想された対日経済制裁が、米中電話会談以降は追加発動されなくなった。この問題に対して、国際社会は慎重な態度で臨んでいるように窺え、日中どちらかの立場に立って意見表明する外交行動を控えているように見える。トランプの対応に準拠している。日本はアメリカの支持を得られず孤立化したが、世界全体が中国の原則論の攻勢を支持表明したわけではなく、関与を忌避して局外中立を保った状態にある。ここでも、あの中国側の横柄で粗暴な外交態度が明らかに悪影響を及ぼしていて、日本の世論だけでなく世界の世論の支持調達戦において中国は自滅を招く結果となった。中国の原則的正義がよく浸透していない。それがため、高市早苗は打撃を受けることなく平然と開き直りを続けられている

ただ、今回の政治で判明した一つの成果として、トランプの在任中は米中間で台湾をめぐって軍事衝突が起こる可能性がきわめて低い事実が看取された点がある。トランプは、昨年7月の時点では「中国が台湾に侵攻すれば北京を爆撃する」と物騒な挑発を飛ばしていた。が、今年11/2 には「在任中に中国は台湾に軍事侵攻しない」と言い、台湾有事に対する認識を大きく切り換えていた。少なくとも、4月に訪中して米中ディールの果実を得るまでは、中国に配慮した親和外交を続けるだろうし、台湾問題で中国を刺激する行動は避けるだろう。4月訪中が実現して、習近平訪米という段階に進めば、米中蜜月は明確な国際政治の与件となり、G2時代の表象が説得的に浮上する地平となる。7年前のペンス演説以来、4年前のデービッドソンの議会証言以降、米中関係を支配してきた新冷戦の構図と台湾有事の想定は、一気に逆転して、緊張緩和の方向へと進む展望を示している

高市早苗の 11/7 の国会での発言は、決して失言とか不注意とかの類ではない。岡田克也からの質問の事前届を受けて、この機に「台湾有事=日本有事」を既成事実化するべく策して投擲した意図的な政治だ。日本政府の認識と方針として「台湾有事=日本有事」を固め、自衛隊に「全軍攻撃態勢を整えよ」と指示した軍令の布告である。だからこそ午前3時に外務防衛官僚を呼びつけ、従来の曖昧答弁を転換するぞと言い、それは危険ですと咎めて抵抗する官僚たちをどやしつけて持論を貫徹させたのだった。高市はこの命題を安保3文書に入れ込む思惑なのだ。驚くのは、存立危機事態宣言して自衛隊に出動命令を出す決定要件の中に、米軍が中国軍と交戦開始したという前提さえ入れなかった点で、すなわち、中国が台湾と軍事衝突した場合には、すぐに自衛隊に戦闘参加させると言っている点だ。米軍お構いなしで自衛隊に戦争を始めさせるのである。それが高市の台湾有事の正体なのだ

前回も書いたが、つまりまさに、安倍晋三が2013年頃に吠えていた頃の尖閣有事の戦略に戻っている。自衛隊が先に中国軍と衝突して、そこに米軍を引き込んで、日米vs中国の全面戦争にするという構図に回帰している。高市政権は安倍政権のコピーであり、高市早苗にとって安倍は絶対神だから、この行動に出るのは自然の理で本然の姿だろう。トランプのアメリカが中国に宥和姿勢を見せ始めた今、高市にとって、日本が中国との緊張を煽り、国内の戦争態勢を猛スピードで固めることは焦眉の課題なのだ。米中接近の新展開を妨害し、G2体制が固まる前に、日本が軍事行動を起こし、中国と戦争を始める意思なのに違いない。時間を浪費していたら、中国は技術力でも軍事力でもアメリカと肩を並べてしまう。その段階に至ったら、もはや中国と戦争などできず、中国共産党を打倒するという安倍右翼の夢が潰えてしまう

高市早苗の狙いは何だったのか。問いのヒントとなりそうな情報を発見した。2022年に森本敏がインタビューで答えた記事がネット上に載っている。そこで森本敏は、「日米台の政府担当者が非常事態にどのような協力ができるのか今まで協議したことがないのが一番の問題」だと嘆き、台湾有事を想定したシミュレーションや訓練についても「台湾を入れないと何にもならない」と指摘していた。台湾有事で日米が中国と戦争するなら、台湾を入れて作戦計画を練り、共同で戦略構想を具体化しないと意味はないのだ。現実には、アメリカは台湾に軍事顧問団を派遣していて、桃園の拠点に特殊作戦協力団を常駐させている。ロシア軍侵攻前のウクライナと同様に、米軍が台湾軍を秘密裏に訓練している実態がある。アメリカから台湾への武器売却(軍備拡張)の頻度と規模も、恐ろしい勢いで増えていて、遠藤誉が纏めた統計では、バイデン政権の2年間で70億ドル、第2次トランプ政権で10.3億ドルとなっている

3年間で日本円で1兆2500億円。うち14.8億ドル(2310億円)が無償だが、3年間だけで1兆円分を国防予算で購入している。その前には、2020年に地対艦ミサイル400発を含む23.7億ドル(3700億円)の武器供与の情報もある。人口2341万人で年間予算14兆円の台湾にとって、この武器購入は重い負担だろう。それはともかく、中国との間で「一つの中国」の原則を認め、台湾とは国交断絶しているアメリカが、このように台湾に夥しく武器売却し、軍事顧問団まで投入する措置ができるのは、台湾関係法という国内法を制定しているからである。この法律が台湾への軍事支援を可能にしているからだ。すなわち、今回の高市発言の狙いは、台湾関係法の日本版の制定へ向けての布石だと推測できる。存立危機事態の発生と認定の具体的要件として台湾有事を設定し、国内世論で多数支持を固めて既成事実化し、野党とマスコミの根回しもした上で、アメリカと同じ台湾関係法を立案上程し可決成立させる肚だ

おそらく、来年には報道1930で反中工作の日米同盟参謀が登場し、台湾関係法の議論が始まるだろう。来年の通常国会、遅くとも臨時国会で法案を提出する予定ではないか。法案を成立させた暁には、すぐさま台湾との間で2+2(外務・防衛担当閣僚会合)を開き、台湾軍と自衛隊・米軍でのハイレベルの軍事会議を定例化し、台湾有事の作戦と態勢について認識と計画を共有して行くだろう。台湾軍・自衛隊・米軍三者での、海上地上含めた実戦を想定した軍事演習の実施へと歩を進め、三軍統合の大本営をいつでも設置できるよう準備を進めるだろう。併せて、邦人の避難計画についても具体的な動きが始まると思われる。これが高市早苗の肚の中にある構想で、この台湾関係法の政策を実行して行く最初の一手が、首相就任後初の国会論戦での岡田克也への答弁だった。いわばローンチ⇒新商品の発売)である。このプロセスを通じて、米軍はヨリ後方の位置に下がり、自衛隊が前面に立つ構えが明確になるはずで、台湾有事は誰の目にも日中戦争の性格が濃くなるだろう

台湾関係法の中身をなす法制整備について、森本敏は2022年の時点で着手を要請していた。自民党の政権が岸田文雄から石破茂という流れにならず、もっと早く高市早苗の右翼政権が誕生していれば、今頃はすでに台湾関係法が施行され、森本敏が絵に描いたとおりに進行していたかもしれない。無論、中国側の激怒は凄まじく、日中政府間はほとんど断交同然の破局になるに違いなく、経済的な打撃の深刻さは想像もできない。ここまで行けば、戦争を始めて決着をつける以外に道筋がなく、後戻りするのはきわめて困難だ。中国側も、対話で問題解決するという選択肢を断念するだろう。それ以上に、日本の中は中国との戦争を早く始めろという怒号一色になり、マスコミだけでなくネットの中も、誰も反戦論など唱えられない空気に染まっているはずだ。反戦の立場だった左派が、次々と転向して中国打倒の気炎を上げる右派になる。日本共産党やれいわ新選組もどう転んでいるか分からない。スパイ防止法の拡大解釈運用で、反戦派は容赦なく摘発され弾圧される

ここで、なぜ私が森本敏の3年前のインタビューを見つけたのか、森本敏に着目したのか、その理由を述べると、今度の対中戦争(台湾有事)の指揮を執る最高指揮官は誰だろうかと想像したからである。戦争するには指揮官が要る。一人がすべてを決める。指示と命令を出す。他はそれに従わなくてはいけない。プロ野球と同じで、戦うチームは監督の采配と統制に従う。例えば、イラク戦争を指導した米軍の指揮官はラムズフェルドだった。第二次大戦では、ドイツはヒトラー、ソ連はスターリン、英国はチャーチル、アメリカはルーズベルトが最高指揮官である。日本は昭和天皇がすべて決めた。開戦の決定も終戦の決定も昭和天皇が行っていて、真珠湾攻撃もそうだし、東條英機を据えて対米戦争を敢行させたのもそうだ。対米敗戦を悟って、近衛文麿を再び起用し、ソ連仲介の講和工作を図ったのも昭和天皇だ。戦争責任を逃れて、近衛と東條におっ被せたのも昭和天皇だ。国家の戦争は単独の指揮官が全権を持って指導する。指揮系統が二つ三つに割れては勝てない

今度の対中戦争(台湾有事)は誰が指揮官を担うのだろう。という素朴な疑問が念頭に上る。在日米軍に統合司令部が新設され、統合司令官が任命されたけれど、何やら官僚的なポストの臭いが強く、どこまで中国との戦争を指導できる資質と胆力を持った者なのか不明だ。とても戦争の意思決定に耐えられそうに見えない。今年79歳で逝ったアーミテージが生きていれば、アーミテージが実質的にその役割を担っただろう。すなわち、日米同盟軍の参謀長だが、アーミテージ亡き後、誰がそれを担うのか。思い浮かぶ人物像がなく、敢えて選べば森本敏に視線が向く。高橋杉雄では軽輩すぎるだろう。とても米軍部隊を動かせるとは思えない。佐藤正久など論外。森本敏は日米同盟の重鎮だが、しかし森本敏の指揮に米軍兵士が従うだろうか。軍の命令に従うことは命を預けるという意味だ。日米同盟軍の参謀長と言う以上、やはり米国人である必要がある。だが、アーミテージに匹敵する将軍がいない。今年、ナイとアーミテージが揃って死んだ事実は日米同盟軍にとって重い

この問題は、日米同盟軍あるいは日米台連合軍による対中戦争の帰趨に関わる問題ではないかと、つまり脆弱性の一つではないかと私は密かに思っている。戦争指導するトップにカリスマ性がなく、全軍を統率する能力に欠き、部下からの信頼が薄ければ、戦争は戦い抜けないし勝てないものだ。関連して、戦争目的と軍事目標を日米台でどこまで一致させられ、利害と意思を分裂させず最後まで団結できるかも課題だろう。緒戦から勝ちっぱなしで講和まで至れば問題ないが、負け戦の局面が出現し、兵士の犠牲が多く出始めると三者間の意思統一が難しくなる。この点は、安倍晋三が尖閣有事を煽っていた頃から、10年以上前から、日米同盟側の不安材料として考察していた問題だった。台湾には台湾の論理と事情と立場がある。「同じ中国人同士で殺し合うのか」という反戦論が根強い。アメリカにも事情と意向がある。「東アジアの戦争で若い米兵が血を流すのか」という拒絶がある。日米台が一致結束して最後まで戦い抜けるかは、誰が指揮官になって采配するかに大いに関係する

04- トランプ大統領の和平提案は、代理戦争の敗北を渋々認めたようなもの

 マスコミに載らない海外記事に掲題の記事が載りました。
 記事は、「トランプ大統領の粗雑な和平提案は、永続的合意や安全保障条約の基礎とみなされるべきではない」と書き出されていますが、記事の結びの部分は「この泥沼状態から脱却しなければならないという現実的感覚が少なくともトランプには多少ある。だが欧州エリート連中は嘘とプロパガンダとロシア嫌いに囚われすぎて敗北の現実を直視し始めることさえできない。敵が手強いほど、その敗北もまた大きいのだ」となっていてトランプの関与を肯定しています。
 日本の言論界ではNATOの論調に同調して、ウクライナ戦争に関しては「戦争を仕掛けたロシアが悪い」の一辺倒で、領土に関しては「開戦前に復する」以外の終戦はあり得ないという『正論』でほぼ統一されています。しかしそれではいつまで経っても停戦には至りません。
 記事は「騎士道精神に則り欧米諸国が ロシアの侵略から民主的ウクライナを守っているという見方は現実を大胆に歪曲したものだ。欧米とNATO傭兵の支援があればウクライナは軍事的に勝利できるはずだという考えが何百万人ものウクライナ人の犠牲を伴う無益な戦争を煽ってきた」と指摘します。
 そして開戦に至るNATO側の不正についても簡単に記述されています。そもそもウクライナ戦争はウクライナ(キエフ)クーデター以降、あるいはミンスク2議定書以降、バイデンとNATO側が周到に準備してきたものでした。
 ゼレンスキーを筆頭とするウクライナ政権の恐るべき汚職・腐敗に目を瞑り、彼に継戦の判断を委ねていては この『不正な』戦争は終わりません。いい加減に『公正』ではあるけれども何の効力も有しない主張は止めて、ウクライナ側とロシア側の無辜の人たちの「無駄死に」を止めさせることに尽力すべきです。
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トランプ大統領の和平提案は、代理戦争の敗北を渋々認めたようなもの
                マスコミに載らない海外記事 2025年12月 2日
              Strategic Culture Foundation 2025年11月28日
 トランプ大統領の粗雑な和平提案は、永続的合意や安全保障条約の基礎とみなされるべきではない
 四年近く経過して、アメリカは自ら作り出したウクライナの泥沼から抜け出そうとしている。ロシアの目的は依然合理的かつ正当で、実現可能だ。妥協の余地はない。
 2014年、選挙で選ばれた大統領に対するCIA支援を受けたキーウでのクーデターに遡るこの紛争は、歴代アメリカ・ヨーロッパ政府が主導権を握っている。オバマ前大統領、トランプの第一期政権と、バイデン前大統領が、ヨーロッパのNATO加盟諸国と共に、ウクライナを砲弾の餌食にしてロシアを戦略的に打倒する代理戦争シナリオを推進したのだ。
 2014年から2022年にかけて、ウクライナのロシア語圏の人々に対する大量虐殺的攻撃とともに挑発行為が続いた。アメリカ主導のNATO同盟は、殺人的背信行為にロシアが耐えきれなくなり、2022年2月に特別軍事作戦を開始するまで、汚れ仕事をさせるべくキーウのネオナチ政権を兵器化したのだ。ロシアの目的は正当だった。ロシア国民の保護、政権の非ナチ化と、数十年にわたるNATOの容赦ない攻撃を決定的に停止させることだった。

 ウクライナ兵だけでなく、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、ポーランド、バルト諸国などから何千人もの兵士を秘密裏に派遣し、代理軍を武装すべく何千億ドルとユーロを費やしたにもかかわらず犯罪的戦争策略はロシアにより敗北させられた
 第二期政権で、この汚いゲームが終わりを迎えたのをドナルド・トランプ大統領は悟りつつある。中国を含むアジア太平洋地域や中東やアメリカが「裏庭」とみなす中南米のベネズエラなどの地域、至る所でアメリカ帝国主義は権益を狙っている。
 ヨーロッパ戦線は金がかかる血みどろの混乱だ。ウクライナとNATO支援諸国は完敗したのだ。連中は兵力も武器も資金も尽きたのだ。自らの腐敗の重圧でキーウ政権が崩壊する中、これはロシア侵略から民主主義を守るための崇高な目的だったという欧米諸国の荒唐無稽な言説も崩壊しつつあるCIAが画策したネオナチ・クーデターから生まれた民主主義?

 かつてウクライナ東部および南部の一部だった歴史的ロシア領の大部分、すなわちクリミア、ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポリージャをロシアは確保した。ハリコフ、ニコラエフ、オデーサ、スムイを含む残り領土確保に向けロシアは前進するだろう。
 この紛争の間、(そして、それ以前から)欧米諸国の報道機関は終始嘘をつき続けている。騎士道精神に則り欧米諸国が侵略から民主的ウクライナを守っているという見方は現実を大胆に歪曲したもの。欧米とNATO傭兵の支援があればウクライナは軍事的に勝利できるはずだという考えが何百万人ものウクライナ人の犠牲を伴う無益な戦争を煽ってきた。依然、戦場は「膠着状態」にあるかのように欧米メディアは報じているが実際はロシア軍がNATO軍を包囲している。今後数週間でウクライナ防衛線は急速に崩壊するだろう。
 ロシアは決してウクライナ全土を占領するつもりなどなく、ましてヨーロッパ諸国を征服し続けるつもりなどない。欧米諸国の言説は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をヒトラーの生まれ変わりとして描く滑稽で幼稚な幻想だ。この幻想は、欧米諸国の経済と国民を途方もない規模で欺くために利用されてきた。

 ロシアの目標は、常に国民と歴史的領土を守り、NATOとその代理組織ネオナチの脅威を根絶することだ。これはウクライナ全土を征服することなしに達成されつつある。
 トランプの和平提案は、代理戦争計画が失敗したことを欧米諸国の一部がようやく認識したことを反映している。他の歴史的ロシア敵国が敗走したのと同様、残忍な策略でNATOは敗北したのだ。僅か80年前に、ナチス・ドイツの戦争機構がロシア国民に破壊された。だが、ファシズムは完全には破壊されなかった。民主主義国家を装う西欧諸国という形で地下に潜っただけだった。
 トランプ大統領の提案に、将来の平和的解決の基盤となり得るとプーチン大統領は外交的に対応した。実に寛大だ。トランプ大統領の漠然とした提案の中には、ロシアの正当な要求を満たすものがほとんどないためだ。実際、ロシア人評論家スタニスラフ・クラピヴニクが痛烈なまでに明確に指摘している通り、アメリカ「計画」はロシアが求める厳しい条件を満たしていない。
 アメリカを仲介役として提示するトランプの傲慢な思い上がりも軽蔑すべきものだ。アメリカはロシアとの戦争の主要立て役者だ。ヨーロッパの共犯者連中同様、アメリカの手は何百万人もの血で濡れている。

 2014年-2015年のミンスク合意や、2022年3月のイスタンブール和平提案で、アメリカとNATO属国諸国は名誉ある合意に誓約する能力がないことを歴史が示している。更に、アメリカが一方的に破棄した軍備管理条約もいくつかある。
 従って、ウクライナにおける敵の決定的軍事的敗北を通じて、ロシアは自らの条件でこの紛争を終わらせる権利と義務を有している。
 トランプ大統領の粗雑な和平提案は、永続的合意や安全保障条約の基礎とみなされるべきではない。
 アメリカとヨーロッパの手先連中が見せている混乱の中、唯一明るい兆しは、彼らの戦争計画が挫折したのを暗黙のうちに認めていることだ。少なくとも今のところ。この勝利は欧米諸国の帝国主義者連中が二度と同じことを繰り返さないことを保証すべきだ。
 たとえ無秩序な急ぎ足であれ、この泥沼状態から脱却しなければならないという現実的感覚が少なくともトランプには多少ある。だが欧州エリート連中は嘘とプロパガンダとロシア嫌いに囚われすぎて敗北の現実を直視し始めることさえできない。敵が手強いほど、その敗北もまた大きいのだ

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/11/28/trump-peace-overtures-reluctant-admission-of-proxy-war-defeat/

2025年12月1日月曜日

トランプ氏 日中対立懸念 首相に安定的関係要請

 新潟日報に掲題の記事が載りました。
 トランプは24日、中国の習近平主席と約1時間電話会談を行い、会談後、米中関係は「極めて強固」とし、来年4月に中国を訪問する招待を受け入れたと明らかにしました。
 習主席は会談で「中国と米国はかつて肩を並べファシズムや軍国主義と戦った。今、第2次世界大戦の成果を守るために連携すべきだ」と伝え、台湾の「中国への復帰」が戦後国際秩序の重要な構成部分という中国の立場を明確に示しました
 トランプは「米中はG2」(世界最強の2国)という言い方をして、両国の良好な関係に満足の意をあらわしました。
 そして自身のSNSへの投稿で、ウクライナ紛争や合成麻薬フェンタニル、大豆やその他の農産品など、多くのテーマについて協議したと明らかにした上で、「われわれは偉大な農家のために良好かつ非常に重要な合意を結んだ。そしてこれはさらに良くなっていく。われわれと中国との関係は極めて強固だ!」と述べ、米国の大豆やその他の農産品を中国が大量に且つ恒常的に輸入する約束をしたことに大いに満足し、「中国との関係は極めて強固だ!今回の電話会談は3週間前に韓国で行った会談のフォローアップだ」と述べました。
 日本側の発表に拠れば、トランプは同日高市首相に電話をよこし、日米の良好な関係を確認したということで、台湾問題についての特別な言及はなかったとしましたが、普通に考えれば「台湾問題で中国ともめごとを起こして、米中関係を損なうようなことはしないように」と、「釘を刺した」であろうことは容易に想像されます。

 10月31日、高市首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席した際に中国の習主席と会談しました。ところが高市氏同日、台湾林信義代表と会談しその旨をXに「日台の実務協力が深まることを期待する」などの言葉を添えて投稿しました。
 それに対して中国外務省は11月1日、高市首相がAPECに合わせて台湾当局者と会談し、その様子をSNSに投稿したことを巡り、「こうした行為は悪質で悪影響を及ぼす」、「中国は断固反対を表明し、日本側に厳正な申し入れと強烈な抗議を行った」と発表しました。
 中国側は習主席と就任後初めての首脳会談を行ったあと、台湾代表と会談を行い そのことをXで公表したことについて、「習主席の顔にドロを塗った」と受け止めたということです。中国は元々 面子を重視する国でした。

 その1週間後の11月7日に衆院の予算委で例の高市氏の「台湾有事」発言があり、そのマイナスの影響を解消すべく 10日に大串博志(立民)議員が敢えて長時間をかけて「発言取消」を要求しましたが高市氏は応じませんでした。それでついに中国の「堪忍袋の緒が切れてしまった」のでした。
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トランプ氏 日中対立懸念 首相に安定的関係要請
                        新潟日報 2025年11月28日
 トランプ米大統領が高市早苗首相との25日の電話会談で、日中両国の対立に懸念を示していたことが分かった。トランプ氏は対立のエスカレートを避けるよう要請。安定した日中関係を維持する重要性に言及した。日本政府関係者が27日明らかにした。台湾有事は存立危機事態になり得るとした首相の国会答弁をきっかけとした日中関係悪化に米国が注文を付けた形だ。
 日中対立が、2国間にとどまらず米国を巻き込む外交問題に発展した格好。トランプ氏は対中貿易交渉を重視し、日中の緊張が米中関係に波及する展開を警戒しているとみられる。首相は、中国側が求める答弁撤回に応じない姿勢を示しており、沈静化の道筋は見えていない。
 日米電話首脳会談は米側が呼びかけ、約20分間行われた。関係者によると、トランプ氏は日中関係に触れ「マネージ(管理)する必要性」に言及した。首相に対し国会答弁の撤回は求めなかった。
 電話会談後、首相は自らの国会答弁が話題に上ったかどうかについて記者団に明らかにしていなかった
 トランプ氏は日米電話首脳会談の前に、中国の習近平国家主席と約1時間にわたり電話会談し、半分を台湾問題に費やして協議した。中国側の発表によると習氏は、台湾は不可分の領土だとする中国の原則的立場を説明。トランプ氏は「中国にとっての重要性を理解している」と応じていた。
 トランプ氏は首相との電話会談について「大変素晴らしい会話だった」と記者団に話った。根拠は示さないまま、東アジア地域は「うまくいっている」と主張していた。


日中対立危機 トランプ氏介入 首相苦境 期待の後ろ盾、対中接近
                        新潟日報 2025年11月28日
 高市早苗首相がトランプ米大統領との電話会談で、台湾有事を巡る日中対立への懸念を伝えられていたことが判明した。対中国の「後ろ盾」と見込んでいたトランプ氏の介入により、首相は一層苦しい立場に置かれる形となった。実利を重視するトランプ氏のさらなる対中接近に危機感は募る。日中関係改善の妙手はなく、事態打開の見通しは立だない。
「中国を挑発しないよう助言との記述があるが、そのような事実はない点は明確にしておく」。木原稔官房長官は27の記者会見で、トランプ氏と首相の電話会談を伝えた米紙ウールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道内容の一を否定した。会談内容の詳細は「外交上のやりとりであり、答えは差し控える」と明かさなかった。
 台湾有事は「存立危機事態」になり得るとの首相答弁をきっかけに日中関係が悪化する中、25日に行われた電話会談。官邸幹部は「首相は自制を促されたわけではない。事態の沈静化に向けて協力していこうとのニュアンスだった」ご説明。トランプ氏の立ち位置はあくまで中立的だったと修正に躍起となった。
 沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入を繰り返すなど、覇権主義的な行動を強める中国に対峙するには「日米同盟の結束が欠かせない」(外務省幹部)。ましてや首相答弁後、中国は国際社会で日本への批判をエスカレートさせており、米国からの支援は重要度を増す一方だ。政府関係者は「トランプ氏が中国側に付いたとの見方が広がれば、日本の立場はますます悪くなる」と指摘。ダメージコントロールの必要性を訴えた。

■立ち位置
米中関係は非常に良好で、それは親密な同盟国である日本にとっても良いことだ。平和な状態を維持しよう」。トランプ氏はWSJの取材に対する声明で強調した。強固な関係を築きたい中国の習近平国家主席との間に「余計なもめ事を持ち込むな」とのメッセージとも受け取れる。
 米中間の緊張緩和が図られた10月下旬の習氏との対面会談直前にはG2(グループ・オブ・ツー)」と両国関係を表現した。「米中2極体制」とも訳され、両国が世界を仕切り、けん引するとの意味合いを持つ。
 トランプ氏が対中関係を重視するのは、習氏との会談で合意したとする米国産大豆の輸出再開が喫緊の課題であるからだ。主要生産地は自身の支持者が多い中西部。輸出が滞れば、来年
11月の中間選挙に影響を与えかねない。
 最悪のケースは、日中対立激化の板挟みになることだ。日中首脳との電話会談後、トランプ氏は記者団の質問に応じた際、東アジア地域は「うまくいっている」と一方的に主張。白中対立への見解を問われるのを避けるように取材を打ち切った。

■かじ取り
 日本にとって、トランプ氏が対中関係を重視するど、国際社会で孤立するスクが高まる。
 首相は日中関係を好転せる手だてを欠く。26日党首討論では台湾有事と存立危機事態の関係につい具体的に踏み込むことを避け、従来の政府見解を踏襲した。ただ中国は答弁の撤回を求めており、軌道修で攻勢が止まる保証はない。

 首相周辺は、日本の厳い立ち位置を不安視した。「米国が中国と話し合い、日本の将来を決めていくかのような事態だけは避けければいけない」 (東京、ワシントン共同)