しんぶん赤旗が掲題の記事を出しました。
大阪維新が、カジノ誘致を「大阪・関西の成長の起爆剤」として、万博を名目にしてカジノのためのインフラ整備などを進めてきたことは良く知られていますが、、また新たなカジノ業者の優遇が発覚しました。
大阪市は18年末にカジノ用地のレベルを外周道路のレベルまで盛土をして欲しいというカジノ業者の希望に沿って、19年9月から盛土工事を行っていたのですが、その後カジノ事業者が検討を進めるなかで施設建設に伴い大量の残土が発生することが判明したため、今度は逆に地面を掘り下げて欲しいと要求されたため、20年5月に盛土工事を中止し21年3月から掘削工事に転じました。
問題はそれに要した費用ですが、一旦「盛土」した地面を逆に「掘削」することにしたのですから、盛土した分が丸々無駄になったばかりか逆に盛土の分掘削量を増大させたわけで、そのムダは莫大です(添付説明図参照)。
工事費の内訳書によると、掘削土を使った万博用地の盛り土は約10・6億円(消費税抜き)でした。掘削中の鳥類保全対策など本来は不要だった追加費用を含めると約12億円(同、うち約10億円を万博経費として支出)でした。盛り土の費用は大阪市が負担しました。
掘削した土の量は約80・2万立方メートル(100万トン超)で、掘削・運搬などの費用はしんぶん赤旗が把握しただけで約10億円です。一方カジノ業者が負担するはずだった残土処分費はこの掘削によって少なくとも15・8億円減り、処分先への運搬なども含めると20億円超の便宜供与になるということです。そしてこれらを議会にも報告せず万博用地の造成工事に含め、万博経費として府・市が折半しました。
まことに不明朗な話です。
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2025とくほう・特報
万博経費でカジノ用地掘削 事業者20億円超の利益 維新府・市政内部でも“違法”の指摘
しんぶん赤旗 2025年7月10日
大阪府・市が万博経費を使って、隣接するカジノ用地を掘削工事していたことが本紙の調べで明らかになりました。この工事によって、今年4月に着工したカジノリゾート(IR)本体工事の残土処分費や運搬費などカジノ業者の負担が20億円超も軽減されることになります。府・市が法律相談した弁護士は、公費でカジノ業者に利益を与える工事を行えば「住民訴訟で敗訴する可能性がある」と指摘していました。(本田祐典)
万博用地とカジノ用地は、市が造成した大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま=大阪市此花区)内で隣接しています。大阪維新はカジノ誘致を「大阪・関西の成長の起爆剤」とし、万博を名目にしてカジノのためのインフラ整備などを進めてきました。
新たに発覚したカジノ業者優遇は、2019年2月に市が発注した万博用地造成工事(夢洲2区土地造成工事)のなかに隠されていました。発注後の21年3月に契約変更してカジノ用地の掘削工事を追加し、その土を万博用地へと運んでいたのです。
掘削した土の量は約80・2万立方メートル(重さ100万トン超)と膨大でした。掘削・運搬などの費用は本紙が把握しただけで約10億円です。これらを議会にも報告せず万博用地の造成工事に含め、府・市でほぼ半分ずつ負担しました。
掘削の目的は、その後にカジノ業者が行うIR本体工事の残土量を減らすことです。「IR事業者が検討を進めるなかで施設建設に伴い大量の残土が発生することが判明した」(20年9月の府・市作成文書)といいます。カジノ用地を周辺よりも低く掘り下げておくことで、カジノ業者が本体工事の残土を用地内で処分できるようにしたのです。
カジノ業者が負担するはずだった残土処分費はこの掘削によって少なくとも15・8億円(夢洲内に残土を埋める場合の市の引き取り単価1800円/立方メートルと消費税)も減る計算です。処分先への運搬なども含めると20億円超の便宜供与です。
工事を担当した大阪港湾局は、営利企業への便宜供与で違法行為となる可能性を事前に認識。同局が相談した法律事務所は「住民訴訟のリスクは高い」「合理的な説明ができなければ敗訴する可能性がある」(同文書)と指摘していました。
府・市は最終的に、違法性を否定して掘削を強行。カジノ用地の土を使うと最も安く万博用地を造成できると理由付けし、カジノ業者が利益を得ても違法ではないとしました。
しかし、本紙が府・市の主張や実際の工事費を検証したところ、カジノ用地掘削でむしろ万博経費が増加したことがわかりました。違法性を否定した根拠が揺らいでいます。
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「最安」のはずが万博経費増大
「疑問がようやく解けた。掘削工事はカジノ業者の要望だったのか」。大阪維新の夢洲開発を監視してきた中山直和さん(カジノに反対する大阪連絡会事務局次長)は、万博経費を使ったカジノ用地掘削を目撃していました。
中山さんは当時、奇妙な工事だと感じたといいます。カジノ用地では2019年9月から、地盤をかさ上げする盛り土工事をしていたからです。「せっかく盛った土を掘り返した。なぜ、無駄な工事をするのか理解できなかった」
“無駄”が生じたのは、カジノ業者が要求を途中で変えたからです。盛り土を希望したはずが、途中で土を減らすよう求めました。カジノ業者に振り回されて工事した経緯は公文書にも記録されています。
(1)盛り土を開始(19年9月)=「(カジノ業者が)盛土した上での引渡しを希望」「購入土による盛土が必要」(18年12月、当時の吉村洋文市長に対する説明資料)。
(2)盛り土を中止(20年5月)=「IR事業者(カジノ業者)が検討を進めるなかで施設建設に伴い大量の残土が発生することが判明したため、工事期間を1年に短縮し、盛土高を変更」(20年9月、副知事・副市長に対する説明資料)
(3)掘削を開始(21年3月)=「万博区域の盛土時期(令和3年度)にあわせてIR区域を掘削し盛土材として活用」「残土発生量の抑制にも寄与」(同資料)
盛り土の費用は市が負担し、掘削はごく一部を除いて万博経費として府・市が折半しました。カジノ業者の負担はゼロです。
工事担当の大阪港湾局は、カジノ業者が掘削費用を負担すべきだという法律事務所の見解を府・市内部で報告していました。
「結果として、IR事業者が利益を得ることになるのであれば、住民訴訟のリスクは高い。(合理的な説明ができなければ敗訴する可能性がある)」「本来、IR事業者が負担すべきものについては、負担を求めることが望ましい」(20年9月2日、副市長・副知事への説明資料)
“敗訴する可能性”という強い表現で違法性を指摘していたのです。
ところが、府・市は万博経費で掘削を強行。その最大の根拠は、カジノ用地から土を運べば万博用地の盛り土が最も安くなるという「経済合理性」でした。
「最も安価な方法となるIR区域の掘削土の使用を選択するのが基本的な考え方」「IR事業者にとって負担軽減という事実上のメリットがあったとしても…特定の営利企業への便宜供与であることを理由として、違法・不当になるとまではいえない」(同資料)
カジノ業者が受ける利益を否定できず、万博経費削減という理由を“あと付け”したのです。
揺らぐ根拠
本当にカジノ用地の掘削が「最も安価」だったのか―。府・市がまとめた事業費比較では、カジノ用地掘削土を使った万博用地盛り土の事業費は7億円。もともと予定した関東地方の残土を使った場合の10億円を下回るとしました。
問題は、この事業費比較で示した「7億円」が著しく安い見積もりだったことです。実際の工事費は関東の残土の事業費より1・2倍も高額だったと本紙の調べでわかりました。
工事費の内訳書によると、掘削土を使った万博用地の盛り土は7億円ではなく約10・6億円(消費税抜き)でした。掘削中の鳥類保全対策など本来は不要だった追加費用を含めると約12億円(同、うち約10億円を万博経費として支出)でした。
違法性を否定した根拠が揺らぐ重大問題です。
大阪港湾局は本紙の取材に、カジノ用地の掘削が当初の見込みより高額だったと認めたうえで「事業費比較のあとで関東残土を選択肢から外したので、どちらが本当に安いか最終的な比較はしていない。関東残土のサンプルを見たら土の性状がよくなかったと当時の担当者から聞いている」(開発調整課)と説明します。
しかし、関東残土を確認した際の記録を求めたところ「記録は何も残していない」としています。
優遇連発
カジノ用地では今回明らかになった万博経費による掘削のほかにも、維新府政・市政が“カジノ優遇”工事を連発しています。
掘削工事後の23年12月から始まった土地改良工事は、市が公費で負担(上限788億円)します。公費負担は当時の市長で日本維新の会代表だった松井一郎氏が方針を決め、22年3月の市議会で維新、公明が賛成しました。
この土地改良工事をめぐっては▽施工業者の選定をカジノ業者・MGM大阪(旧大阪IR)が行い、自身に出資するゼネコン3社に発注▽競争入札なしで通常の公共工事より高額にする府・市とカジノ業者の「密約」―など、さらなる優遇が明らかになっています。(「しんぶん赤旗」24年12月14日付)
カジノ用地以外の夢洲内の土地は、埋め立て終了(竣工=しゅんこう)時の状態で市が追加工事せず売却してきました。カジノ用地で竣工後に行った盛り土、掘削、土地改良などの公費負担はすべてカジノ業者の意向に沿った特別対応です。
カジノ止める共産党
清水ただし・日本共産党参院大阪選挙区候補の話
維新府政・市政は、カジノのために税金を使わないと宣伝・約束していたにもかかわらず、これまで土地改良工事に788億円(上限)の公金投入を決めるなどしてきました。今回、訴訟リスクを認識しながらもカジノ業者に20億円超の便宜をはかる万博経費での「闇支援」が発覚したことは重大です。カジノのための万博だと、私たちが批判してきた通りの実態です。カジノストップの議席がいよいよ必要です。私も全力でがんばります。