2025年12月8日月曜日

自・維共同提出の衆院定数削減法案 各紙社説は大批判

 自民党と維新5日国会に衆院議員定数「自動削減」法案提出しまし。その内容は新聞各紙が社説で「乱暴」「脅し」「強行は許されない」「廃案にすべきだ」などの指摘が相次ぐもので、これほど問題満載の法案も珍しいというしかありません。
 法案は、現行の衆院議員定数465から1割を目標に、420以下に削減すると規定し、もし法施行から1年以内に結論が出ない場合は、小選挙区25、比例代表20を自動的に削減する条項を盛り込む(「プログラム法案」)など、「結論ありき」の乱暴極まりない法案です。
 しかも削減数だけは明示しながらその根拠を説明するものは何もないというお粗末さで、民主主義の土俵である選挙制度がこれほど乱暴に扱われたのも前代未聞です。
 維新はこのプログラム法案を、17日までの今国会中に決めるように求めているということですがそれも無理な話です。自民はそうした維新の滅茶苦茶な要求を丸呑みして法案を共同提案したように思われますが、これほど未熟で独善的な法案も珍しく、維新には法案をまとめる能力そのものが備わっているのか大いに疑問です。
 以下にしんぶん赤旗の記事2本と、読売新聞・東京新聞・新潟日報の各社説を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
各紙社説で「横暴許すな」 定数削減法案
                       しんぶん赤旗 2025年12月7日
 自民党と日本維新の会が5日に国会に提出した衆院議員定数「自動削減」法案に対し、新聞各紙が社説で「乱暴」「脅し」などと厳しく批判しています。「強行は許されない」「廃案にすべきだ」との指摘が相次ぎました。

 「読売」は6日付社説でこんな乱暴な法案を、政権を担っている与党が提出するとは。見識を疑いたくなる」と指摘。1年以内に削減方法の結論が出ない場合は小選挙区25、比例代表20を自動的に削減する条項が維新の要求で盛り込まれたとして、「与党入りしたからといって、自分たちの思い通りに物事を進められると思ったら、大きな誤りだ」「定数を削減して国民の代表を減らすことがなぜ、改革と言えるのか」と強調しました。「読売」は1面の政治部長論評で「有無を言わさず定数を減らすというやり方は、脅しに等しい」としています。
 「毎日」は5日付の社説で、「必要性や根拠を示せないまま、一方的に主張を押し付けようとする。でたらめ以外の何物でもない」と厳しく批判。「今回の案には、自民が抵抗する『政治とカネ』の改革から論点をすり替える思惑がある」と指摘し、「与党が『身を切る改革』をうたうのであれば、より痛みを伴う企業・団体献金の規制強化や、政党交付金の減額などに踏み込む方が理にかなっている」と主張しました。
 地方紙も6日付でいっせいに批判しました。西日本新聞は「こんな横暴を許してはならない。国会軽視も甚だしい」と強調。「合理的根拠を欠く与党の法案は廃案にすべきだ」と指摘しました。東京新聞は「期限切り合意迫る横暴」とし、琉球新報は「このような乱暴なやり方で国民の理解が得られると思っているのだろうか。連立与党の妥協の産物とも言える『改革』大義はない」と断じ、山陽新聞は「疑問多く説明できるのか」と指摘しました。
 5日付でも、秋田魁新報が「企業・団体献金などの規制強化こそが急がれ改革だろう」としたほか、「『問答無用』の規定撤回を」(神戸新聞)、「読み取れない熟議の姿勢」(高知新聞)、「熟議の否定にほかならぬ」(新潟日報)などの見出しが躍りました。


衆院定数「自動削減」法案提出を強行 自維 根拠示さず「削減ありき」
                       しんぶん赤旗 2025年12月6日
 自民党と日本維新の会は5日、衆院議員定数「自動削減」法案を衆院に共同提出しました。法案は、現行の衆院議員定数465から1割を目標に、420以下に削減すると規定。削減方法を与野党間で協議し、法施行から1年以内に結論が出ない場合は、小選挙区25、比例代表20を自動的に削減する条項を盛り込むなど、「結論ありき」の乱暴極まりない法案です。 

















 法案は議員定数の削減目標を1割と定めています。しかし、法案提出の理由には、法案の趣旨の措置を「定める必要がある」と記されているだけで、なぜ1割なのかという根拠や、その目的がどこにあるのかといった重要な説明は一切示されていません。国会審議を経る前から「削減幅」だけが先に決められています
 削減方法の具体的な検討は衆院議長の下に設置される選挙制度協議会で行うとしていますが、協議期間は1年に限定されています。この間に与野党で結論が得られなければ、自動的に与党案をもとに削減する仕組みです。
 自民・維新両党は連立合意書に議員定数削減を明記し、同法案の臨時国会での成立を目指すとしています。一方、野党は相次いで批判。合理的根拠もなく「削減ありき」の法案を、会期末が17日に迫る今国会で拙速に推し進めることは認められないと声をあげています
 また、自民党の試算で、削減対象とされる25小選挙区が東京、大阪、群馬、長野など計20都道府県に上ると判明。自民党の支持が強い「保守地盤」も含まれることから、党内でも異論が噴出していました。さらに、比例区の定数は全ブロックで1~3議席ずつ減らすことが見込まれており、多様な民意を切り捨て、一部の政党によるファッショ的な国会運営がなされる危険があります
 議員定数削減は民意の反映に逆行するだけでなく、国会の役割である政府監視機能を弱めるものです。数の力で押し切ることは許されません。


社説 衆院定数削減 憲政の常道に反する暴論だ
                           読売新聞 2025/12/06
 一方的に期限を設定して、その間に与野党で改革案をまとめられなければ、問答無用で衆院の定数を削減するという。
 こんな乱暴な法案を、政権を担っている与党が提出するとは。見識を疑いたくなる
 自民党と日本維新の会が、衆院の議員定数削減の段取りを定めたプログラム法案を提出した。
 それによると、現行定数465の「1割を目標」として、最低でも45議席を削減する。与野党各党が参加する協議会で選挙制度の見直しを含めて議論し、1年以内に結論を出せない場合には、自動的に定数を削減するという。
 具体的な削減数として、現行の小選挙区比例代表並立制を前提に、小選挙区は「25議席」、比例選は「20議席」とも明記した。
 選挙制度のあり方は民主主義の土俵である。定数も含め、与野党の幅広い合意を得て決めるべきものだ。そうした手続きを軽んじれば、立法府の権威を 貶 おとし めることになりかねない。
 自動的に定数を削減する条項は、「身を切る改革」を掲げる維新の要求で盛り込まれた。与党入りしたからといって、自分たちの思い通りに物事を進められると思ったら、大きな誤りだ。
 法案について、自民内からは「乱暴すぎる」といった反対意見が出ていた。それでも法案提出に踏み切ったのは、維新の連立離脱を避ける狙いからだろう。
 法案の内容に問題があることを分かっていながら、連立維持を優先するとは自民もふがいない。
 多党化時代を迎え、比較第1党の自民が、小政党の要求をのまなければならない場面は今後も出てくるはずだ。
 だが、多数の民意を反映しているとは言えない小政党が極端な主張を唱え、大政党を振り回し、民主主義の根幹にかかわるような重要課題の行方を左右するのは、憲政の常道に反する
 自民と維新の危うい関係を見ていると、長年続いた自民、公明両党の連立の協力関係が政局や国会の運営にいかに注意を払っていたのかが、改めて分かる。
 そもそも衆院の定数は、人口が7000万人余だった終戦直後の466と同水準だ。人口比で見ると、他の主要国より少ない。定数を削減して国民の代表を減らすことがなぜ、改革と言えるのか
 また国会では、現状でも多くの議員が複数の委員会を掛け持ちしている。これ以上の定数削減は、法律の制定や行政の監視といった機能に支障をきたしかねない。


<社説> 衆院定数削減案 期限切り合意迫る横暴
                         東京新聞 2025年12月6日
 自民党と日本維新の会が衆院議員定数の削減法案を国会に提出した。連立政権合意に基づき、定数1割削減の手順を定める「プログラム法案」だが、国民の代表を選ぶルールを強引に変更しようとするもので、到底認められない
 法案は、衆院議員を現在の465人から「420人を超えない範囲」に減らすとし、具体的な削減内容は、選挙制度のあり方と併せて各党・会派による衆院協議会で結論を出すと定める。1年以内に結論が出ない場合、小選挙区は25、比例代表は20を自動的に削減する規定も盛り込まれた。
 自動的に削減する規定は、定数削減を主張する維新の意向によるものだが、1年と期限を区切り、野党に定数削減を迫るのは極めて異例で、野党のみならず、自民党内からも反発の声が出ている
 議会制民主主義の土台となる選挙制度に関する議論は、党派を超えて幅広い合意を得るべきだ。
 結論が得られなければ、政権の方針に従って定数を自動的に削減する「脅し」のような法案に幅広い賛同が集まるとは思えない。自らの横暴さにすら気付けないなら自民党の病根は極めて深い。
 そもそもなぜ定数の1割削減が必要なのか。なぜ合意期限が1年なのか。定数削減に固執する維新からも、追随した自民からも、合理的な説明は聞こえてこない。
 維新は当初、比例代表を50削減する案を主張していたが、中小政党に不利との激しい反発があり、小選挙区も減らすことにした。
 比例代表を減らせば多様な民意が反映されにくくなる一方、小選挙区を減らせば、投票価値の格差である「1票の不平等」を解消しづらくなるとの問題がある。
 本紙の試算では、小選挙区の定数を25削減すれば20都道府県で定数が減ることになる。議員1人当たりの人口が最も多い県と最も少ない県との1票の格差が広がっていくのは確実だ。
 1票の格差に対し、司法が「違憲」「違憲状態」と判断すれば、国会はその都度、都道府県ごとの定数を調整し、格差の縮小に努めてきた。今回の定数削減は、「投票価値の平等」を追求してきたこれまでの取り組みに逆行する。
 選挙制度や議員定数は、民意の反映方法や投票価値の平等など、さまざまな観点から丁寧に議論することが欠かせない。「削減ありき」は最もなじまない


社説 議員定数削減法案 熟議の否定にほかならぬ
                            新潟日報 2025/12/5
 議論を始める前から、あらかじめ結論が出なかった場合の措置を決めておく。これでは、最初から熟議を否定しているに等しい
 拙速で乱暴なやり方によって、民主主義の根幹である選挙制度を変更してはならない。
 自民党と日本維新の会は5日にも、衆院議員定数465の1割を目標に削減するための法案を衆院に提出する。
 法案によると、削減方法は衆院議長の下の与野党協議会で検討し、法施行から1年以内に結論を出す。結論が出ない場合、法案の実効性を担保する措置として小選挙区25、比例代表20の削減を明記し、今国会中の法案成立を期す
 維新は当初、担保措置として比例代表50削減を主張した。だが、公明党など一部野党が比例代表のみの削減に猛反発した。参院では依然として少数与党で、法案成立には野党の協力が欠かせない。
 維新にとって定数削減は連立政権の絶対条件だ。小選挙区と組み合わせる方針転換は反発を和らげるための窮余の一策と言えよう。
 そもそも、「比例代表50削減」についても説明が尽くされたとは言い難かった。まずは「小選挙区25、比例代表20削減」とした根拠を明らかにするべきだ。
 共同通信社は小選挙区25、比例代表20の削減となった場合の定数配分を試算した。それによると、小選挙区は20都道府県で1~3減少し、比例代表も全国11ブロック全てで1~3減る。
 本県は前回衆院選で小選挙区を6から5に1減しており、削減対象にならなかった。しかし、富山など3県は1減の2となり、鳥取県などと並んで全国最少となる。
 定数削減は、地方の声が国政に届きにくくなるとの懸念がある。議員だけではなく、有権者にとっても大きな問題だ。
 法案に関し、自民の鈴木俊一幹事長は党の政治制度改革本部などの合同会議で「国会でも丁寧な審議をしていく」と述べた。
 だが、今国会の会期末は17日で日程は窮屈だ。また、鈴木氏は会期延長に否定的である。今国会中の法案成立にこだわらず、与野党で時間をかけて協議するべきだ。
 削減方法は法施行から1年以内に結論を出すと期限を設けたことも看過できない。根拠について鈴木氏は記者会見で「世論調査で定数削減への高い支持があり、立憲民主党の野田佳彦代表も削減すると言った経緯がある」と述べた。
 一方、野田氏は「与党だけで1割削減、1年以内に決めるといった枠組みを作ること自体、常識では考えられない」と問題視する。
 期限の設定は、協議の加速化を促すのが狙いだろうが、期限よりも各党の幅広い合意を優先するべきだ。まして、議論がまとまらなかった場合を想定し、法案の実効性を担保する措置を講じるなど論外である。

大政翼賛報道の恐怖/「お米券」の裏側にある利権構造(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の2つの記事を出しました。
『大政翼賛報道の恐怖』:高市首相の「台湾有事発言」が中国政府を大いに憤慨させ、既に大変な経済的制裁(旅行制限だけでも約2兆円)を受けていますが、それらが解消される見込みは皆無という状況にあります。
 なぜ高市氏は発言を取り消すかまたは責任を取って退陣しないのでしょうか。
 現状は、高市氏の発言が間違っていることの明白性は既に論じ尽くされているにも拘らず、TVメディアは逆に高市氏の肩を持つことで高市ファンを勇気づけていて、高市氏もそれに力を得て居座っています。
 この「メディアが体制側になびく特質」を、植草氏は「大政翼賛報道」と称しています。こんな風に国民のごく一部の論調が、メディアの姿勢によって大勢を占めてしまうのは実に恐ろしいことです。

「お米券」の裏側にある利権構造』:鈴木農水相は「米価は市況に任せるべき」を持論にして米価高騰に対する対策は何も打とうとせず、何と「お米券の配布」なるものを出してきました。
 それを全否定したのが大阪交野市(かたのし)の山本景市長で、「お米券方式では中間業者による手数料が20%近く(⇒500円券の実質価値が400円程度に落ちる)掛り無駄が大きいので絶対に配りません」とで発信しました。
 植草氏は、「お米券方式」こそが「利権財政支出」の典型的な一類型で、政府は財政資金を「利権」にするためにできるだけ不透明で複雑な財政支出方法を用いるのだと説明し、真の財政改革とはこのような「利権財政」を排除することであると主張します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大政翼賛報道の恐怖
             植草一秀の「知られざる真実」 2025年12月 6日
日本の集団的自衛権行使について。日本政府は日本国憲法の規定により集団的自衛権の行使は容認されないとしてきた。
1972年10月政府見解「わが憲法の下で武カ行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。
これが50年以上にわたり維持されてきた集団的自衛権行使に関する日本政府の立場。

2014年に安倍内閣が憲法解釈を変更して集団的自衛権行使ができるとした。
憲法解釈は憲法の実体の一部。一内閣が憲法解釈を独断で変更してしまうことは許されない
憲法破壊行為=壊憲である。集団的自衛権行使容認が憲法違反である疑いが強い
2015年には憲法解釈を具体化する法律を制定。「安保法制」=「戦争法制」制定が強行された。

集団的自衛権行使が可能になる要件を定めた。
そのひとつが「存立危機事態」。「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とされた。
「存立危機事態」を認定すれば集団的自衛権を行使できるとされた。
憲法違反を許さない立場に立てば、集団的自衛権行使容認自体が憲法違反である。
違憲の疑いは濃厚に存在する。

この問題を措いて、厳しい制約条件の下での集団的自衛権行使を容認するとしても、その要件は厳正なものでなければならない。
しかし、高市首相の答弁にはこの問題に対する精密さがなかった。
「台湾を統一、まあ、中国北京政府の支配下に置くような」場合に、「それが戦艦を使って、武力の行使もともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」と述べた。

「台湾有事は日本の存立危機事態=集団的自衛権行使」と受け取られる発言を示した。
台湾有事とは台湾において台湾と中国政府との間で武力衝突が生じること。
「台湾において台湾と中国政府との間で武力衝突が生じる」場合に「どう考えても日本の存立危機事態になり得る」と述べた。
日本と中国との過去の外交文書等において、日本は台湾の中国帰属を論理的に認めている
その上で、1973年衆議院予算委員会で大平外相は、「中華人民共和国政府と台湾との間の対立の問題は、基本的には中国の国内問題であると考えます」と答弁している。

また、日本と中国は日中共同声明(1972年)、日中平和友好条約(1978年)で
相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認」してきた。
日本が台湾有事で存立危機事態を認定し、集団的自衛権を行使することは、中国に対して宣戦布告する意味を有する。
過去の外交文書等の積み重ねを踏まえれば、高市首相発言はこれらの歴史的積み重ねを破壊するものである。このことから高市首相は発言を撤回すべきである

ところが、日本の情報空間では「高市首相は発言を撤回すべき」との正論に対する攻撃が激しく展開される。さまざまな主張、見解は存在し得る。
そのなかで、「高市首相は発言を撤回すべき」との主張は十分に説得力のあるもの。
高市発言擁護が正しく高市発言撤回要求論が間違っているとの論証はなされていない

それにもかかわらず、高市擁護、高市批判見解への攻撃の主張だけを主要メディアが取り上げるのはおかしい。この空気の広がりこそが日本の危うさを象徴するものである。

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4272号
「高市発言撤回が必要な理由」 でご高読下さい。
月初のこの機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひお願いします。
https://foomii.com/00050

『ザイム真理教』(森永卓郎著)の神髄を深堀り、最重要政策争点財務省・消費税問題を徹底解説する新著を上梓しました。
財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』(ビジネス社) https://x.gd/LM7XK
ご高読、ならびにアマゾンレビュー、ぜひぜひ、お願いします。

メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。


「お米券」の裏側にある利権構造
             植草一秀の「知られざる真実」 2025年12月7日
大阪交野市(かたのし)の山本景市長が「お米券は絶対に配りません」とで発信して話題を呼んだ。最大の問題は経費率が高いこと。

週刊新潮インタビューで山本市長はこう述べた。
「お米券とは、全国米穀販売事業協同組合が発行するおこめ券と、JA全農が発行するおこめギフト券」の2種類があるのですが、どちらも1枚500円で440円分の米が購入できる、というもの。差額60円分は券の印刷代や流通経費、マージンなどに充てられるので、この段階で経費率は12%
さらにこの券を住民に郵送するとなると、名簿を作り、切手を貼るなどの作業が生じ、業者に委託することになる。とすると、経費率は20%程度まで上がってしまい、極めて効率が悪い。プレミアム商品券を配ったこともあるのですが、これも経費は20%程度かかった。
券を配るという方法では、どうしても少なくない経費が発生し、その分の恩恵が住民に行き渡らなくなるわけです。」

高市内閣が編成した18.3兆円の補正予算。
〈生活の安全保障・物価高への対応〉への予算配分8.9兆円のうち、〈足元の物価高への対応〉が2.9兆円。そのうち〈重点地方交付金の拡充〉が2兆円で、そのなかに〈食料品の物価高騰に対する特別加算4000億円〉が計上された。

政府が自治体に示した資料には「食料品の物価高騰に対する特別加算」の具体例として、
「プレミアム商品券」、「電子クーポン」と並列して「いわゆるお米券」が記載されており「お米券推し」が示されている。
こうした「商品券」の類ではなく「現金給付」を行う場合でも、銀行振込等で10%程度の経費率が発生してしまうという。

こうしたことから山本景市長は市町村が運営する水道と下水道の基本料金を免除することを提案する。水道及び下水道の基本料金を免除するかたちで交付金を使うとシステムを改修するだけで実施できる。そうなると経費はほとんどかからない。山本市長は経費率を1%程度に抑制できるという。素晴らしい提案である

コメの価格高騰が大騒動に発展したが高騰したコメの代わりに他の穀物を摂取する選択肢もある。生活文化の違いによっては米以外の穀物を主食にする場合もある。
「お米券」には全国米穀販売事業協同組合が発行する「おこめ券」とJA全農が発行する「おこめギフト券」の2種類があるが、発行元が2団体に絞られており、山本市長は
「これでは限られた業界への利益誘導だと言われても仕方ない」と指摘する。

貴重な財政資金。可能な限り効率の良い使い方を検討すべきことは当然。
ところが現実は逆行している。その理由を洞察することが重要。
政府は財政資金配分を「できるだけ複雑に実施する」ことを目指す。
なぜか。「経費率が高い」というのは、そこに「中抜き」が発生することを意味する。
山本市長が「差額60円分は券の印刷代や流通経費、マージンなどに充てられるので、この段階で経費率は12%。さらにこの券を住民に郵送するとなると、名簿を作り、切手を貼るなどの作業が生じ、業者に委託することになる。とすると、経費率は20%程度まで上がってしまう」と述べたが、この経費がその委託事業を行う事業者の収入になる
政治権力と関係の深い事業者が事業を受託して財政資金で利潤を得ることになる。
これが「利権財政支出」の典型的な一類型

政府は財政資金を「利権」にするためにできるだけ不透明で複雑な財政支出方法を用いる。
真の財政改革とは、このような「利権財政」を排除することである

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4273号
「財政政策における最重要施策」 でご高読下さい。
                 (後 略)

08- ウクライナで露軍の勝利が決定的になる中、NATOやウクライナの内部で分裂

 櫻井ジャーナルが掲題の記事を出しました。
 ウクライナ戦争でNATOはロシアに事実上敗北していますが、負けるわけにはいかない欧州諸国はロシアから没収資産を使ってウクライナに「総玉砕」戦争を続けるように要求しているということです。
 無様な姿を晒したくないアメリカは停戦のためにロシアの要求を呑もうとしていますが、それは欧州諸国が採ろうとしているイスラエル玉砕戦法に比べれば遥かに人道的であり、正当です。
 この段階ではウクライナの権力システムは崩壊寸前になるのでしょうが、ゼレンスキーはいつまでも英国MI-6のいうがままになるのではなく、いまこそ国民を無駄死にから救うべき責任を負っています。

 この期に及んで自らの保身を図るのは最低の行為であり、逆に自己を犠牲にしてでもトップの責任を果たすべきです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ウクライナで露軍の勝利が決定的になる中、NATOやウクライナの内部で分裂
                         櫻井ジャーナル 2025.12.07
 ウクライナを舞台とした戦争でNATOはロシアに敗北している。アメリカは無様な姿を晒したくないため、ロシアの要求を呑もうとしているようだが、負けるわけにはいかないヨーロッパ諸国はウクライナに「総玉砕」を要求ロシアの資産を使って戦争を続けようとしている。西側ではトランプ政権が「親ロシア的だ」と文句を言っているが、ロシアが勝利した以上、仕方のないことだ。
 戦争を始めたのはアメリカのネオコンだが、ここにきてドナルド・トランプ政権の内部でネオコンの力が弱まってきたように見える。そこでネオコンの支配下にあるヨーロッパの勢力は自力で戦わざるをえないようだ。

 ロシアとの戦争を主張しているヨーロッパの国々の中で中心的な存在はイギリス、フランス、ドイツ11月25日にはイギリスのキール・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が共同議長を務めた会議が開かれ、38カ国、NATO、EUが参加しただけでなく、ジョージ・ソロスの代理としてラドミラ・シェケリンスカが出席した。この中でイギリスはロシアとの対立を望まないとされているが、ミサイルを使った攻撃や工作員を使ったテロ活動を繰り広げている。
 イギリスは2014年に開かれたNATOの首脳会議において、イギリスはNATOの内部に合同遠征軍(JEF)を創設した。この遠征軍はイギリスの指揮下、デンマーク、エストニア、フィンランド、アイスランド、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、オランダ、スウェーデンが参加している。今年11月5日、イギリスはNATO非加盟国であるウクライナをこの合同遠征軍(JEF)に含めた。

 イギリスの首相を務めていたウィンストン・チャーチルの側近、ヘイスティング・イスメイはNATOの初代事務総長を務めている。そのイスメイはNATO創設の目的について、ソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけることにあるとしていた。ソ連からの攻撃に備えるためではないということを認めている。実態はヨーロッパを支配する仕組みだった。そのNATOを指揮してきたのはイギリスとアメリカだ。そのイギリスとアメリカがここにきて分裂しているように見える

アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターのドキュメンタリーによると、ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関MI6のエージェントの可能性が高く、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はMI6長官だったリチャード・ムーアだと推測されていた。そのムーアが今年10月1日に退任し、ブレーズ・メトレベリへ引き継がれている。

 ウクライナではアメリカを後ろ盾とするNABU(ウクライナ国家汚職対策局)とSAPO(特別反腐敗検察)が汚職捜査「ミダス作戦」を進めている。この捜査で法務大臣を名乗っていたヘルマン・ハルシチェンコとエネルギー大臣を名乗っていたスビトラーナ・グリンチュークはすでに辞任、国防大臣を務めていたルステム・ウメロウは7月に辞任を表明し、11月に入って国外へ脱出、カタールにいると言われ、コメディアン時代からゼレンスキーと親しいテレビ制作会社共同オーナーのティムール・ミンディッチはイスラエルへ逃亡したという。

 2014年2月のクーデター後、ウクライナのGUR(国防省情報総局)とSBU(ウクライナ安全保障庁)はアメリカの情報機関CIAの配下に入ったと考えられているが、GURの工作員が12月3日、療養所の敷地内に侵入、門と柵を破壊し、空中と地上に向けて発砲、A4005部隊の軍人10人を捕虜にし、重傷を負わせたとする話が伝えられている。この話が事実ならば、ウクライナの権力システムは崩壊寸前だ。

2025年12月6日土曜日

金利上昇主因はインフレ懸念(植草一秀氏)

 経済学者の植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 植草氏は「財政悪化懸念⇒長期金利上昇」は財務省が流布している「フェイクニュース」であり、それは社会保障支出を切り消費税率を引き上げる「悪だくみ」のためであると指摘します。
 そして日本の財政政策運営は直近5年間で平均約10兆円の赤字削減財政が執行されるという、超緊縮(文中で定義)で推移してきたことをまず表で示します。
 今回、高市内閣が11月28日に総額18・3兆円の補正予算案を閣議決定したことで、「超緊縮財政政策」が「小幅積極財政」に転換することになりこの政策修正は妥当であるが、問題は中身であり、1回限りの措置では大きな支えにも大きな安心感にもつながらないとします。
 そして18兆円の施策を打つなら消費税率を10%から5%に引き下げることができるので、このような透明、公正、大胆な施策を打つことが必要であり、「マクロで緊縮財政の修正は正しいがミクロの対応はまったくの旧態依然である」と批判します。
 記事では細かい説明を省略しているので編集子のような素人には殆ど理解できませんが。

 植草氏は東大経済学部卒後、野村総合研究所に入社し、旧大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学助教授、スタンフォード大学フーバー研究所客員フェローなどを歴任後、小泉・竹中政権の経済政策を批判し、その過程で竹中平蔵を徹底的に論駁したために、最終的に「官憲に陥れられ」ましたが、それまでは早稲田大学や大阪経済大学で教授を務めた人で、経済学者としても定評のある人です。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
金利上昇主因はインフレ懸念
             植草一秀の「知られざる真実」 2025年12月 5日
つい先日まで日本の長期金利上昇は財政政策が原因だとしてきたメディアが一転して説明を変えた。
12月5日付日本経済新聞は「物価高予想、金利押し上げ」 https://x.gd/9HOc0
の見出しを付して報じた。

私はかねて「インフレ心理悪化が長期金利を上昇させている」と指摘してきた。
日経新聞はこれまで、日本の長期金利上昇主因を高市内閣の積極財政政策による「財政危機不安」だとしてきた
11月17日には「長期金利が1.73%に上昇、財政悪化懸念で17年半ぶり高水準https://x.gd/vAWZH  の見出しで日本の長期金利上昇を報じていた。
記事は「17日の国内債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時前週末比0.025%高い1.73%に上昇(債券価格は下落)した。高市早苗政権が掲げる経済政策が財政悪化につながるとの警戒感から、債券に売りが強まった。」と伝えていた。

「財政悪化懸念=長期金利上昇」は財務省が流布している「フェイクニュース」である。
財務省は社会保障支出を切り、消費税率を引き上げる「悪だくみ」を有する。
この「悪だくみ」を実現するために「財政政策発動=日本長期金利上昇・日本円下落」という「フェイクニュース」を流布している。

日本の財政政策運営は直近5年間、超緊縮で推移してきた。
財政政策が「積極」か「抑制」かを判定する基準は「財政赤字の増減」である。
財政赤字増加=積極財政  財政赤字減少=緊縮財政
厳密に言えば財政赤字増減には「事前」と「事後」があり、不況は財政赤字を増やし、好況は財政赤字を減らす効果を持つ。
この部分を考慮する必要があるが議論が複雑になるのでここでは捨象する

一般会計の「歳出-税収」を「財政赤字」と定義し、その「財政赤字」の前年差の数値を見ると、2021年度から25年度まで「超緊縮」の財政運営が続いてきたことがわかる(単位:兆円)。

財政赤字減少は年平均9.9兆円。平均約10兆円の赤字削減財政が執行されてきた。
財政政策運営が「超緊縮」であり続けたことを意味する。
この政策運営が25年度に修正される。
高市内閣は11月28日に総額18.3兆円の補正予算案を閣議決定。
一般会計歳出が18.3兆円増額され、税収見積もりが2.9兆円上方修正された。
これを加味すると2025年度の財政赤字増減は5.2兆円の財政赤字増加になる。

「超緊縮財政政策」が「小幅積極財政」に転換する。
この政策修正は妥当。問題は中身である。
歳出追加18.3兆円の内訳は
生活の安全保障・物価高への対応 8.9兆円
危機管理投資・成長投資による強い経済の実現 6.4兆円
防衛力と外交力の強化 1.7兆円    である。

だが、「生活の安全保障・物価高への対応」のなかの「足元の物価高への対応」は2.9兆円でしかなく、このなかに、「子育て応援手当」3677億円、「食料品の物価高騰に対する特別加算」4000億円などが含まれるが、いずれも1回限りの措置だ。
恒久措置で政策を実施しなければ大きな支えにも大きな安心感にもつながらない

18兆円の施策を打つなら消費税率を10%から5%に引き下げることができる。
このような透明、公正、大胆な施策を打つことが必要。
マクロで緊縮財政の修正は正しいがミクロの対応はまったくの旧態依然である。

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4271号
「高市18兆円補正の根本的欠陥」 でご高読下さい。
月初のこの機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひお願いします。https://foomii.com/00050

『ザイム真理教』(森永卓郎著)の神髄を深堀り、最重要政策争点財務省・消費税問題を徹底解説する新著を上梓しました。
財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』(ビジネス社)https://x.gd/LM7XK
ご高読、ならびにアマゾンレビュー、ぜひぜひ、お願いします。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます