水俣市他で大量で重篤の患者・死者を発生させた水俣病は公式確認から70年が経ちました。認定患者の高齢化が進み累計約2200名ほどのうち存命者は1割ほどになりました。
1日、水俣市で行われた犠牲者慰書式には約780人が参列しました。患者・遺族の代表は「次世代に教訓として伝える」と述べ、参列者らは「公害の原点」とされる悲劇の再発防止を誓いました。
新潟水俣病が公式に確認されたのは(熊本)水俣病の9年遅れでした。新潟県からも、鈴木康之副知事、環境と人間のふれあい館・藤田伸一館長ら関係者が参列しました。
石原宏高環境相は4月30日から2日間にわたり被害者団体と懇談しましたが、前年までと同様、被害者団体側が求める患者認定制度の見直しなどに進展はありませんでした。
医療費は認定患者に対しては全額補償されますが、生活上のハンディキャップに対する福祉面でのケアの不備が露呈しています。
補装具や介護費用は社会保障制度に頼るしかないのですが、公害病という事情が考慮されないため患者側は負担感や尊厳の喪失感を募らせています。識者は生涯にわたるケアの実現へ体制強化が急務と指摘します。新潟日報が報じました。
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水俣病「公害原点」70年の祈り 患者「教訓 次世代へ」
新潟日報 2026年5月2日
水俣病が公式確認されてから70年となった1日、熊本県水俣市で犠牲者慰書式が営まれ、患者や遺族らが追悼の祈りをささげた。患者・遺族の代表は「次世代に教訓として伝える」と述べ、参列者らは「公害の原点」とされる悲劇の再発防止を誓った。石原宏高環境相は4月30日から2日間にわたり被害者団体と懇談したが、前年までと同様、団体側が求める患者認定制度の見直しなどに進展はなく、改めて隔たりが浮き彫りになった。
慰霊式は水俣市内の会場で行われ、市によると、約780人が参列した。国などの代表者が「祈りの言葉」を読み上げ、石原氏は「政府を代表して、水俣病の拡大を防げなかったことを改めておわび申し上げる」と陳謝。「70年前、美しく豊かな自然が汚染され甚大な被害が生じたことに、ただただ言果に詰まり、深く思いを致さずにはいられない」と続けた。
水俣病の原因企業チッソの山田敬三社長は「多くの方々が犠牲になり痛恨の極み。過ちを深く反省する」と強調した。
患者・遺族代表の緒方正実さん(68)=水俣市=は「水俣病問題は人間が起こしてしまった出来事ですから、私たちの努力で問題を解決し、次世代の子どもたちに水俣病を教訓として
伝えたい」と述べた。
慰霊式には本県からも鈴木康之副知事ら関係者が参列した。新潟県立環境と人間のふれあい館(新潟市北区)の藤田伸一館長は「水俣で祈りの言葉を聞き、新潟水俣病についても正しく理解してもらう取り組みを懸命に重ねることが大切だと心を新たにした」と話した。
石原氏は30日の6団体に続き、1日午前も水俣病患者連合など2団体と懇談した。団体側は、認定患者が利用する水俣市立の療養介護施設について未認定患者も利用できるよう要請したが、環境省側は「直ちに認定患者以外の入所は難しい」と後ろ向きな考えを示した。
石原氏は、水俣病被害者に給付される「療養手当」の増額を4月分から実施したと強調。団体側か最近の物価高騰などを踏まえ、さらなる増額を要求すると「足りないということであれば、また検討する」と述べた。
2024年の懇談中、持ち時間の3分を超えたとして途中で発言を遮られた水俣病患者連合の松崎重光さん(84)も1日の懇談に出席。石原氏は当時の対応を改めて謝罪した。松崎さんは「丁寧に訴えていたつもり。時間を制限されていたのがよくなかった」と話した。
水俣病公式確認70年 患者側募る喪失感 補装具、介護費用負担重く 生涯ケア体制強化急務
新潟日報 2026年5月2日
水俣病の公式確認から1日で70年となった。認定患者の高齢化が進み、福祉面でのケアの不備が露呈している。医療費は全額補償されるが、補装具や介護費用は社会保障制度に頼る面も。公害病という事情が考慮されず、患者側は負担感や尊厳の喪失感を募らせる。福祉現場では人手不足が課題に。識者は、生涯にわたるケアの実現へ体制強化が急務と訴える。
「病気でこういう体になったのに」。4月、週に数回のリハビリを終えた熊本県水俣市の胎児性患者、松永幸一郎さん(62)は顔をしかめた。下半身の痛みや脱力発作で16年前から車いす生活に。こぐ腕の力が衰え「近所での買い物すらしんどくなった」といい、数年後に電動に改造した。
40万円ほどかかったが、医師には「手こぎ(での操作)は可能」と判断され、市が実施する補装具費の支給制度の対象外と告げられた。限られた年金で暮らしており、毎年約6万円のバッテリー交換代も含め「原因企業のチッソが払わないのはおかしい」と憤る。
チッソは1973年に患者側と補償協定を結び、認定患者の医療費を全額支給する。福祉については協定が「実情に即した具体的方策を誠意をもって早急に講ずる」とするものの、多くの患者が利用する車いすの費用負担は明記されていない。
補償には介護費も含まれるが、チッソの担当者は「協定の基本は医療補償だ」と強調し、給付の額や対象を明らかにしていない。研究者らによる患者への聞き取りでは、一部の重症者に対する月5万円程度の補助にとどまっているとみられる。
申請が却下
同じく胎見性患者の金子雄二さん(70)は30代で平衡機能が低下し、現在は手指が硬直している。ものを飲み込む機能も低下し、たんの吸引など医療的ケアが24時間欠かせない。
利用する訪問入浴介護費の給付を受けようと水俣市の障害者支援事業に申請したが、昨年12月に退けられた。介護保険サービスを利用できる65歳以上であることなどが却下の理由とされた。
ただ国は障害福祉サービスの利用を巡り、申請者の意向を把握し障害の特性を考慮するよう、各自治体に文書で求めている。申請手続きの代理人を務めた中郷潤史弁護士は「水俣病患者として生きてきた事情への考慮がなく違法。自立への意志と誇りを否定するものだ」と市を批判する。
待ったなし
患者は高齢化が進み、チッソによると、今年3月までに認定された2284人のうち存命者は202人と1割に満たない。平均年齢は約82歳で、今も認定を求めて申請中の人も多くいる。東京経済大の尾崎寛直教授(環境政策)によると、水俣病の影響で早期に老化が進む患者は少なくなく、介護支援の拡充は待ったなしの状況だ。
だが水俣市内の訪問介護事業所は、受け取る基本報酬が減額改定された2024年度に8ヵ所から7ヵ所に減少。医療的ケアも担える事業所は限られ、金子さんの介護には車で1時間以上かかる熊本市のヘルパーも加わる。
尾崎氏は、福祉的ケアは「原因者の責任で補償すベきだ」と強調。認定患者の診療には通常より高く算定される診療報酬の仕組みがあり、「福祉事業者にも報酬や人材育成面でインセンティブが必要」としてチッソや国に対応を促した。