世に倦む日々氏の掲題の記事を紹介します。
南丹市で11歳の男児が行方不明となった事件は、16日に大方の予想どおり継父が逮捕されました。このところのイラン戦争をめぐるマスコミの親米プロパガンダの洪水に辟易とし、その「情報戦」への抵抗や反論を続けて疲れた同氏にとって「この事件は語弊があるが気分転換の一助になった」という趣旨のことを述べています。
そして容疑者である37歳の継父の犯行の杜撰さ稚拙さ粗放さ、人格の不全さ、知性と想像力のレベルの低さを指摘し、犯行の手口があまりに杜撰で短慮で軽率であるにもかかわらず「容疑者は自分の中では『完全犯罪』を遂行したという意識」にあり、失踪事件で迷宮入りさせられると想定していたと推測します。
思いもしなかった指摘ですが、そう考えないことには「理解できない事件」でした。
そして容疑者が男児を殺害した動機は、男児の存在が新たな新婚生活にとって邪魔で将来の人生にとって障害だったということで、その身勝手さも犯行そのものの幼稚さにマッチしています。
さらに、容疑者が勤務する企業で工場の品質管理課長に抜擢されていることについて、その職位は会社に貢献するマネジメントの役職であり、資質能力の選考と審査を経て「抜擢」された筈なので、そうであれば「日本の若い世代一般の知性劣化」という問題であり、「マンガやアニメやゲームで育ってしまった大脳の機能不全」ということが懸念され、こうした知性と想像力だから、高市自民や維新や国民民主や参政やみらいに投票し「右翼リバタリの思想に共鳴し支持してしまう」のではないか、と想像を広げます。
そこには、単に知性が弱い・思考が浅いというだけでなく、リバタリアン的な害意と凶悪さが宿り、自己にとって邪魔な弱者は抹殺すればいいという発想の体質がある・・・とも。
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南丹市の男児遺体遺棄事件 - 警察はもっと早く逮捕できていたのではないか
世に倦む日日 2026年4月19日
3/23、南丹市園部町で11歳の男児が行方不明となった事件は、4/13 に遺体発見となり、4/16 に大方の予想どおり継父が逮捕された。この3週間ほど、イラン戦争に替わってこの事件がテレビ報道の主役に座り、SNSでも関心が盛り上がった状態が続いている。この事件に人々の注目が集まるのは、素人目にも犯人が最初から分かっていて、犯人による偽装工作が呆れるほど見え透いており、テレビの刑事ドラマを見る如き単純系の物語が進行したからだ。誰も迷宮入りになるとは思わなかったし、警察は早く犯人を捕まえろという空気感で刻々が過ぎていた。さらに言えば、親族に共犯者がいるのではないかという疑念も自然に惹起される構図になっていて、暫くは警察の捜査に熱い視線が集まるのは間違いない。失踪6日目の 3/29 に男児のランリュックが発見された時点から、誰が犯人かは明確になり、警察がいつ詰めの捜査に踏み込むか、証拠をどう押さえるかが焦点となった。
テレビがこの事件にばかり無暗に報道時間を割き、Xタイムラインがこの問題にばかり熱中する状況に対して、不満や批判の声が上がっている。尤もな反応だ。が、私の意見は異なり、この過熱現象を無意味とは思わない。一つは、事件が継父による児童の殺人で、虐待やDVや性被害を含めて、今の日本で頻繁に目にする不幸な社会問題が典型的に形になった問題である点だ。現代日本の社会的病理が凝縮され反映された深刻な事件で、心が傷まされ、目を背けようとしてもできない。個人の自由を至上視するリベラリズムの猛威のため、そのイデオロギーの氾濫と支配と放縦のため、あまりにも弱者である子どもが犠牲になるケースが増え、人権が蔑ろにされ、不幸を背負わされる仕組みになっている。と、私は認識し、中野信子とは逆の思想的立場でこの事件を凝視している。リベラリズムの奔流と風潮に乗って自由を享受する大人たちの行動が生む矛盾が、弱者の子どもに皺寄せされている。
もう一つは、イラン戦争をめぐるマスコミの親米プロパガンダの洪水に辟易とし、その「情報戦」への抵抗や反論を続けて疲れた自分があり、そこにこの事件が登場し、語弊がある表現かもしれないが、いわば〝箸休め” のような気分で視線を移動させている自分に気づく。この事件への観察を〝止まり木”にして心の一時的休息を得ている。晩春から初夏へ移ろう園部町の里山の風景が、日本のゆかしい四季を感じさせ、心を落ち着かせ和ませてくれる。3月からずっと、乾いた砂漠の大地が海を囲む、荒涼とし茫漠とした地表と海面のホルムズ海峡の絵ばかり見せられ、その地で行われている非道きわまる殺戮と破壊に立ち会わされ、アメリカの狂気を正当化する小谷哲男と報道キャスターの「情報戦」に漬け込まれ、精神はすっかり荒んでいた。園部町の静かな田園地帯がテレビ中継で撮られる度、自分は日本人なんだと思い、観光地でもない普通の郷邑なのに、風格があり価値のある景観に思えてしまう。
三つ目に思うのは、容疑者である37歳の継父の犯行の杜撰さ稚拙さ粗放さと、その人格の不全であり、知性と想像力のレベルの低さである。この容疑者は自分の中では「完全犯罪」を遂行したという意識にあり、失踪事件で迷宮入りさせられると想定していた。この事件は、決して 3/23 に突発的に起きた凶行ではなく、容疑者が計画的に狙って決行した殺人事件だ。あの大河内の自宅から小学校への登校は、男児は普段はスクールバスを使っていて、祖母が朝の見送りをしていたと報告されている。昨年12月に母親と結婚(再婚)して以降、母親の実家である大きな屋敷に住むようになり、そこから京丹波町の会社工場へ通勤する生活となったが、容疑者が毎日男児を学校に送り届けていたわけではない。そのことは、通勤経路の途中で自動販売機に立ち寄る容疑者を日常目撃していた者の証言からも窺える。黒のカローラに男児が同乗していたという様子はなく、容疑者一人が乱暴な運転をしていたという説明だ。
容疑者には男児を殺害する動機があった。それは男児の存在が新たな新婚生活にとって邪魔で、将来の人生にとって障害だったという点だ。容疑者は、男児が失踪した(誰かに誘拐されて姿を消した)ように見せかけて殺そうと考え、実行するタイミングを狙い、アリバイ工作を練って計画を立てた。最もベストな計画が、朝、車で学校に送り届けたことにして、男児を殺害し人目につかない場所に遺棄することだ。死体が発見されない限り、世間が何と言おうと警察に捕まって有罪になる事態はない。他の時間と空間は実行には使えない。「完全犯罪」が可能な条件がない。だからこのタイミングを選んだのであり、要するに犯行は計画的なものだ。マスコミ論者は容疑者の犯行について、突発的で衝動的という言葉を言いまくり、行為に殺人の動機が無かったように言い上げているが、それは誤りでありミスリードである。犯行が突発的で衝動的な印象になるのは、手口があまりに杜撰で墓穴だらけで、短慮で軽率だからだ、。
客観的には杜撰で粗放で、すぐに犯行が露呈する手口なのだけれど、本人の主観の回路では、「完全犯罪」が complete done(⇒完了)なのである。それがこの事件が世間の注目と興味を惹くポイントに他ならない。私は、今の日本の若い世代の特徴が示されているように悲観され、教育で涵養されるべき知性と想像力の欠如を看取してしまう。知性と想像力の低さが、容疑者をしてこの犯行を「完全犯罪」として楽観させ、安易かつ軽薄に妄想させてしまっている。実際は何もかも破綻していて、「ランリュックの発見」などは逆効果となる自滅行為そのものだろう。けれども、容疑者にはそれが理解できてない。すなわち、計画的殺人なのだけれど、知能犯としての知的水準が不足しすぎて、客観的に疑惑ばかり深める墓穴行動に終始している。偽装工作のアリバイはすぐに瓦解するものだった。きわめて未熟で幼稚な犯行だ。だが、文春の記事によると、容疑者は、勤務する京丹後市の企業で工場の品質管理課長に抜擢されている
この事実をどう考えるべきだろう。勤続年数からして中間管理職に昇進してもおかしくない立場だが、それなりの数の部下を動かして会社に貢献するマネジメントの役職である。この電気機器メーカーは日本の普通の企業に違いない。「抜擢」と言う以上、ある程度の競争もあり、資質能力の選考と審査もあったのだろうと想像する。これらの情報に接して否が応にも逢着するのは、日本の若い世代一般の知性劣化という問題であり、マンガやアニメやゲームで育ってしまった大脳の機能不全という懸念だ。結論を飛躍させて恐縮だし、偏見だと謗られるかもしれないが、敢えて苦言を呈させてもらうと、こうした知性と想像力だから、高市自民や維新や国民民主や参政やみらいに投票し、右翼リバタリの思想に共鳴し支持してしまうのではないか。そういう政治の判断力になるのではないか。単に知性が弱い・思考が浅いというだけでなく、リバタリアン的な害意と凶悪さが宿り、自己にとって邪魔な弱者は抹殺すればいいという発想の体質がある。
容疑者は、男児が邪魔だから暴力で排除した。簡単に殺害した。だが、警察の尋問を受けるや否や、あっさり何もかも白状し、一日で落城する(自己を崩壊させる)顛末となった。権威や権力には弱いのだ。自分の思うようにならない強い相手には歯向かわず、従順にその意向や要求どおりにする。弱い相手には私的な暴力を駆使して排除し、自分が欲望する快適で満足な環境を手に入れる。若い世代に顕著と思われる知性と想像力の無さ、思考力の弱さは、結局そういう性格とパターンの本質なのだろう。例えば、知能犯の要素がある者なら、携帯電話の位置情報の履歴で刻々の車の移動と停車場所が特定されているぞと刑事に証拠を示され、スニーカーと遺体の置き場所と一致するぞと詰められても、次のように釈明したかもしれない。私は深夜に山林に入って子どもを捜索していたのであり、位置情報の履歴は偶然の一致ですと。みえみえの嘘の弁解だが、この反論で否認の論拠を立てることはできる。警察の尋問を想定して、そういう理論武装を構えることもできた。
マスコミ報道によれば、遺体は3週間の間にかなり傷んでいて、死因を特定するための解剖と検証で時間がかかると言う。洛北医大の風丘先生が不眠不休で活躍しているに違いない。現時点で死因は不明で、絞殺だと断定する証拠は明らかになってない。遺体発見時に死因不詳と公表された事実は、当日 4/13 にマスコミ報道で伝えられており、容疑者もテレビで知ったはずだ。遺体を地中に埋めた状態なら、風雨の影響による傷みが少なく、即日に絞殺を特定できていた可能性がある。容疑者が遺体を地中に埋めず、表面に放置し、何度も運搬し移動させたため、遺体は風雨に曝されて傷み、即日の検視では死因を確定できない状態に至った。もし容疑者が否認を貫徹し、無実を主張し続け、そして法医の検案と科捜研の鑑定が不首尾に終わった場合は、警察はこれを殺人事件と断定し立証する根拠を得られない可能性があったのだ。容疑者が素直に自供したのは、府警にとって偶然の幸運だったと言えよう。
こうした状況から考えると、結果論としての総括だが、警察はもっと早い時点で容疑者(重要参考人)の事情聴取に踏み出し、自供を取るべきだったと思われる。4/7 に大規模な捜索が行われ、京都府警はこの日に捜査が大きく動くとマスコミに告知し、現場にカメラを動員して生中継のテレビ報道をさせていた。4/6 までにスマホの位置情報履歴が業者から開示され、取得して解析結果が判明し、自信を持って遺体発見場所のピンポイントを押さえた気になっていたのだろう。が、遺体が移動させられていたため、この日の捜索は空振りに終わった。推測するに、3/24 頃から 4/6 まで2週間、業者からのアカウントの履歴開示に時間がかかったと考えられ、開示と同時に科捜研が精査して場所を割り出したはずだ。令状等の法的手続きがどうだったかは今はよく分からない。警察側は、スマホの履歴情報が決め手になると当初から考え、時間をかけて捜査を計画したのだろう。だが、意外なことに、容疑者は遺体を山中の地面に直置きし、掘って埋めるという(常識的な)隠蔽工作をしなかった。
京都府警は慎重な捜査に徹し、客観的で科学的な証拠を挙げることを第一とし、全てが揃ってから取調室で自供を取る作戦に出たが、時間をかけたことで遺体の傷みという思わぬリスクとハードルを得た。冤罪を防ぐため、自供に頼った捜査で過失を避けるため、客観的証拠を何より優先した捜査手法は評価できる。だが、今回については、犯人の推定があまりに容易で、動機の要件もほぼ十分で、何より犯行手口が杜撰で稚拙で粗放である点を着目し重視して、もっと早く自供を取る捜査工程を組む判断に出てもよかったのではないか。犯行は矛盾だらけであり、プリミティブ(⇒幼稚)に破綻しており、取調べで否認する図はあり得なかったのではないか。つまり、簡単に落ち、遺体遺棄の最終場所もすぐに供述しただろうと思われる。
湯沢平和の輪
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。
2026年4月20日月曜日
南丹市の男児遺体遺棄事件 - 警察はもっと早く逮捕できていたのではないか
米軍海上封鎖で再び暗雲広がる/イラン情勢急転二つの背景/自民党大会責任負うのは党首(植草一秀氏)
植草一秀氏の直近3つのブログを紹介します(順序は発行日の降順になっています。
イラン情勢に関する2つの記事は、イランと米国の停戦に向けての両者の姿勢について簡潔に述べられています。
米国は最早停戦に向かうしかないのですが、そのためにはトランプには立場上 米国が勝利を収めたという「虚偽の宣言」がどうしても必要という事情があります。SNSが発達した現在そんなゴマカシが通用するとは思えませんが、トランプがそう思い込んでいる以上、どうして収束させるのかを注目するしかありません。
3つ目の記事は、12日の自民党大会で自衛隊の女性隊員が登壇して「君が代」斉唱をリードしたことに関して高市首相は当初「違反には当たらない」としたものの、木原稔官房長官は15日になって「法律に違反するということと、政治的誤解を招かないかということは別問題で、しっかり反省すべきだ」と明言して「政治的誤解を招いたこと」について非を認めました。
植草氏は、自衛隊法、自衛隊施行令、自衛隊服装令等に照らしてどういう問題があるのかを明らかにして、「自衛隊の正規の演奏服を着用した現職の自衛官を官職を紹介した上で自民党大会において国歌斉唱のリードする行為を行わせたことについての法的解釈を国会において明確にする必要がある」と指摘します。
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米軍海上封鎖で再び暗雲広がる
植草一秀の「知られざる真実」 2026年4月19日
イランのアラグチ外相が4月17日にイスラエルとレバノンの10日間の停戦合意を受けて商業船舶に対しホルムズ海峡を開放するとXに投稿し、ホルムズ海峡開放の期待が高まったが、再び先行きが不透明になった。
イランの中央司令部は4月18日に声明を発表し、アメリカが封鎖という名目で海賊行為を続けていると批判した上で、ホルムズ海峡を以前の状態に戻し厳格な管理統制下に置いたと主張した。この主張を裏付けるかのように、イギリスの海事当局は4月18日にオマーン沖でタンカーが革命防衛隊の艦艇2隻から銃撃を受けたと報告があったと明らかにした。
米国とイランが大筋で合意に達したかのように思われたが交渉は一筋縄では進展していない。
ペルシャ湾に取り残されている多数のタンカー等の商船に大きな動きが生じたが、商船はUターンして元の位置に回帰してしまった。
週末の金融市場で原油価格が急落して株価が急騰したが、週明けは再び波乱含みの展開になる可能性が高まった。
トランプ大統領は2018年5月にイラン核合意(JCPOA)からの離脱を表明し、イランへの経済制裁を再開した。トランプ大統領はオバマ政権下で締結された合意が不十分であると批判。イランの核開発活動を「最大級の圧力」で停止させるとした。このことがベースにある。
トランプ大統領としてはオバマ大統領の「核合意」よりも高い水準でイランとの合意を締結することが必要不可欠。このためにイランに対して強い要求を示している。
トランプは周囲の者からの偏った進言を受け入れて2月28日の軍事侵攻に突き進んだ。AIを駆使した軍事作戦を構築するシステムが構築されトランプ大統領に提案があった。トランプ大統領は提案を信じ込んで軍事攻撃に踏み込んだが、結果は目論見と外れるものになった。
米国の軍事侵攻を米国民でさえ高く評価していない。
イランの抵抗は頑強で米国の思い通りの結果にはつながらない。中間選挙を控えてトランプ大統領はTACO=Trump Always Chickens Out.に逃げ込むしかなくなった。
しかし、撤退には大義名分が必要。トランプ大統領は「大勝利」を喧伝しなければならない。
そこで、イランに対して厳しい条件をつける。
これにイランの強硬派が反発している。交渉に当たっているのはイラン政権幹部だが最終的な意思決定権を革命防衛隊が握っている。革命防衛隊は安易な妥協を許さない。
ホルムズ海峡開放はあくまでもイランの管理下において実施される必要があることを強調している。
他方、米国はオバマ大統領の核合意との兼ね合いでイラン核問題について妥協できない。
イラン核濃縮を禁ずる期間の設定が最低限重要なポイントになる。
オバマ核合意では禁止期間が15年だった。トランプ大統領としてはこれよりも短い期間での合意はできないとする立場。
また、イランは60%濃縮ウランをすでに440キログラム保有している。これを米国が除去するのかどうかもポイントになる。他方、イランの側は核問題について根本的な不満を有している。米国がイスラエルの核保有を放置していること。これが中東情勢の根本問題である。
両者が歩み寄らなければ合意は成立しない。トランプ大統領の勝利を宣言しないではいられない性格が交渉を困難にしているとの評価も成り立つ。
しかし、イランとの停戦を実現しなければならない立場に追い込まれているのはトランプ大統領の側だ。この現実を見据えてトランプが譲歩しなければ交渉がまとまらないリスクがある。
「ゲーム論」の考察が必要だが、まずはトランプ大統領が不毛な戦争を終結する大きな判断を下す必要がある。ボールはトランプの手のなかにあると言ってよい。
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(後 略)
イラン情勢急転二つの背景
植草一秀の「知られざる真実」 2026年4月18日
イランのアラグチ外相が4月17日、イスラエルとレバノンの10日間の停戦合意を受けて商業船舶に対しホルムズ海峡を開放するとXに投稿した。
外相は投稿で停戦の残りの期間中、すべての商業船舶に対してホルムズ海峡が開放されるとした。ただし、「イランが指定したルートで」と条件を付した。
これに対してトランプ米大統領は同日、自身のSNSでホルムズ海峡が開放されたとして謝意を示す一方、「イランとの取引が100%完了するまで、海上封鎖は引き続き完全に実施され、効力を持つ」と投稿。いくつかの問題点は残るが米イランの戦闘終結に向けた協議が前進する可能性が高まった。
米ニュースサイト「アクシオス」は17日、米国とイランによる戦闘終結に向けた次回協議がパキスタンで19日に開催される見通しだと報じた。この協議について、イランがウラン濃縮を放棄する見返りに、米国が200億ドル(約3兆1700億円)規模の資産凍結解除に応じる案も検討されていると伝えた。
イスラエルとレバノンによる一時停戦は、米東部時間16日午後5時(日本時間17日午前6時)に発効。仲介したトランプ米大統領はSNSに「双方が平和を望んでいる」と投稿。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とレバノンのジュゼフ・アウン大統領を「ホワイトハウスに招待する」と明かした。
トランプは両首脳の対面会談が1~2週間以内に実現するとの見通しを示した。
イラン情勢の新たな動きを受けて原油先物価格が急落。代表的な指標である米WTI先物は一時1バレル=80ドルを割り込んだ。
原油価格急落を受けて日経平均先物価格が夜間取引で急騰。一時6万円台に上昇した。
懸念されてきたイラン戦争が終結する見通しが広がり始めている。細部での米・イラン両国の合意形成が成立するか懸念は残されているが、事態が収束に向かう可能性が高まりつつある。
戦争終結が実現する方向に動いた大きな事情が二つある。
第一はトランプ大統領のTACO行動様式。イランの体制転換が瞬時に実現するとの甘い見通しで軍事侵攻に突き進んだが想定通りにいかなかった。中間選挙を控えてトランプが挙げた拳を降ろす指向を強めた。
第二は中国がイランに対して交渉妥結に向けての誘導を行ったと見られること。イランと中国は関係が深い。中国は原油消費量の7割を輸入に頼る。タンカーで輸入する原油の半分がホルムズ海峡を通過する。海峡が完全に封鎖されて原油輸入が滞れば中国経済に重要な影響が発生する。イランは中国籍船舶のホルムズ海峡航行を容認していたが、米国が海峡封鎖行動を取り、中国にも影響が出ることが懸念された。
他方、中国はイラン産原油の9割を輸入する。イランにとって中国が最重要の原油輸出先である。トランプ大統領は訪中日程を延期して5月中旬に定めたが、イラン戦争が長期化すればトランプ訪中が先送りされる可能性も生じる。中国はイランへの武器支援を慎重に抑止し、事態鎮静化を一貫して訴えてきた。
米国とイランの交渉を仲介したのはパキスタンだが中国はイランとパキスタンの両国を通じて戦争を終結させるための条件整備に尽力したと見られる。米国とイスラエルによるイランとレバノンに対する一方的な軍事侵攻が終結を見るとすれば吉報である。
しかし、類似した事態が今後発生しないとも限らない。
事態の本質を衝く総括が行われなければならない。
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(後 略)
自民党大会責任負うのは党首
植草一秀の「知られざる真実」 2026年4月17日
4月12日の自民党大会で、自衛隊の女性隊員が登壇して「君が代」斉唱をリードした。
高市首相は当初、「違反には当たらない」とした。しかし、木原稔官房長官は4月15日になって「法律に違反するということと、政治的誤解を招かないかということは別問題で、しっかり反省すべきだ」と発言して「政治的誤解を招いたこと」についての非を認めた。
しかし、法律には違反していないとの立場が維持されているようにも見える。関連法令に照らすと自民党の行為は法令に抵触するものと考えられる。国会では自民党の行為を厳正に審議する必要がある。
自衛隊法に次の定めがある。
(政治的行為の制限)
第六十一条 隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。
陸幕長は会見で君が代を斉唱した自衛官に報酬は払われてないとした。「払わなかった」のか「払わなかったことにした」のかは不明。しかし、仮に「払われなかった」としても問題は残る。
赤旗社会部長の三浦誠氏は「プロの歌い手なので、この場合、自民党に対する利益供与となるでしょう。つまり金銭に相当する寄付をしたことになります。自衛隊法施行令では、自衛隊員が政治目的のために「その他の利益を提供」することは禁じられています。」と指摘する。
自衛隊法施行令はどのような定めを置いているか。一部を抜粋する。
(政治的目的の定義)
第八十六条 法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的目的は、次に掲げるものとする。
三 特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること。
続く第八十七条は(政治的行為の定義)として具体的な制限行為を列挙する。
(政治的行為の定義)
第八十七条 法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的行為は、次の各号に掲げるものとする。
一 政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること。
二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し、又は提供せず、その他政治的目的を持つなんらかの行為をし、又はしないことに対する代償又は報酬として、任用、職務、給与その他隊員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て、又は得させようとし、あるいは不利益を与え、与えようと企て、又は与えようとおびやかすこと。
現職の自衛官が陸上自衛隊中央音楽隊の演奏服を着用して自民党大会に出席して国歌斉唱をリードした。
自衛隊服装規則には次の定めがある。
第13条の2 音楽隊員である自衛官は、国際的儀礼、自衛隊の儀式その他の場合において、陸上自衛官にあつては陸上幕僚長が、(中略)演奏のため特に必要があると認めて指示するとき、通常演奏服装をするものとする。
当該自衛官は自民党大会に出席して肩書きを紹介されて国歌を斉唱した。肩書を紹介されず、私服で出席して国家を斉唱したのではない。明白に自衛官としての行為として自民党大会に出席して国家を斉唱したということになる。国民民主党の榛葉幹事長は国会質疑で「現場の自衛官と防衛省の職員守ろうよ。守ってやろうよ」と発言。まったく的外れな主張。的外れな国民民主党もこの国の政治をダメにしている主犯の一角だ
自衛隊法施行令第八十七条に「国歌斉唱をリードすること」という文言が「具体的な制限行為」として明記されていないことをもって自衛官の自民党大会での国歌斉唱リードが同施行令に違反しないとは言えない。自衛隊の正規の演奏服を着用した現職の自衛官を官職を紹介した上で自民党大会において国歌斉唱のリードする行為を行わせたことについての法的解釈を国会において明確にする必要がある。
行為当事者である自民党ならびに自民党総裁を兼務する高市首相が「違法には当たらない」と述べても意味がない。首相は法的解釈を判定する最終責任者ではない。
あくまでも高市首相個人の見解に過ぎない。国民民主党の榛葉幹事長は国会質疑で「現場の自衛官と防衛省の職員守ろうよ。守ってやろうよ」と発言。まったく的外れな主張。的外れな国民民主党もこの国の政治をダメにしている主犯の一角だ。
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第4395号
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(後 略)
20- 事実に反する発言を続けているトランプ米大統領は何を目指しているのか
櫻井ジャーナルの2つの記事を紹介します。
トランプはイスラエル情報部(モサド)の説明を丸呑みしてイランを叩き潰せる好機とばかりに2月28日、イスラエルと共にイランに奇襲を掛けました。
⇒(4月11日)米国をイスラエルがイランとの戦争に巻き込んだと西側の大手メディア
しかし、イラン国内ですぐにも起きる筈だった体制転換国民運動は起きず、逆に挙国一致の対米抗戦の気運が高揚して現在に至っています。ホルムズ海峡をイランに封鎖されたまま時間が過ぎれば米国内でもガソリン価格が高騰してトランプ政権の支持率は下降するばかりです。
要するに早々に対イラン戦争を収束させる必要に駆られる一方で、対イラン攻撃で何の利益も得られなかったでは終われないので、トランプは盛んに大いに戦果が上がったと演出するしかないのですが、抗戦意欲に燃えているイラン革命防衛隊がそれを許すはずがありません。
そもそもイランは10項目の要求を取り下げていません。その要求は、ホルムズ海峡の通行をイランが管理、イランの同盟勢力に対する軍事行動の停止、西アジア地域からのアメリカ軍撤退、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定の策定、イランが被った損害に対する全額補償、すべての制裁および国際決議の撤廃、凍結されたイラン資産の返還、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認することです。
トランプ政権がそれを呑むとは到底思えないし、逆にそれこそは「米国大勝利」の演出を根本的に否定するものです。
身から出た錆とは言えトランプは一体どうするのでしょうか。
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事実に反する発言を続けているトランプ米大統領は何を目指しているのか
櫻井ジャーナル 2026.04.19
アメリカとイスラエルが2月28日にイランを奇襲攻撃して始まった戦争は治っているように見える。停戦期間中、ホルムズ海峡は「完全に開放されるとイランのアッバス・アラグチ外相は投稿、ドナルド・トランプ米大統領はイランとの戦争がほぼ終結した、あるいは迅速な解決に近づいているとするメッセージを投稿したり発言したりしている。
ところが、停戦が発表された後、アメリカ政府はイランに関連するすべての船舶の海上封鎖を発表した。イランとの交渉が100%完了するまで、イランに関する限り、海上封鎖は引き続き有効だというのだ。
それに対し、イランはアメリカによるイラン港湾封鎖が解除されるまで、ホルムズ海峡を閉鎖しつづけ、アメリカによる封鎖が続く場合、紅海への入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡を閉鎖する可能性を示唆した。
また、イラン議会の国家安全保障委員会で委員長を務めるイブラヒム・アジジによると、イランへ通行料を納め、軍参謀本部の許可を得た商船のみが指定された航路を通過することが認められるだけ。イラン側はトランプ大統領のメッセージを否定している。イラン側交渉団のメンバーであるマフムード・ナバビアン議員もトランプ大統領による海峡の完全開放宣言を拒否、イランのタスニム通信はアラグチ外相の投稿を非難した。
トランプ大統領はイランの濃縮ウランに関する合意は事実上成立したと主張、イランの濃縮ウランを回収し、それをアメリカへ持ち帰れるとしているが、イラン外務省のイスマイル・バガイ報道官はこの主張を否定、イランは濃縮ウランを移転しないと語った。
トランプ大統領の事実に反する発言は、株式相場や石油相場を操縦することが目的だと考える人が少なくない。実際、株式相場は急騰し、石油相場は暴落したのだが、船舶はイラン革命防衛隊(IRGC)と連携する必要があり、IRGCはイラン政府が敵対国とみなす国の船舶を阻止する権限を有しているとされている。4月17日の時点でペルシャ湾にアメリカの軍艦は見当たらない。アメリカが「完全開放」を実現したと言える状態にはなく、その原因のひとつはアメリカによる合意違反にあるとイランは主張している。
イランは一貫してホルムズ海峡の通行をイランが管理し、イランの同盟勢力に対する軍事行動の停止し、西アジア地域からアメリカ軍は撤退し、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定を策定し、イランが被った損害に対する全額補償をし、すべての制裁および国際決議を撤廃し、凍結されたイラン資産の返還することなどを要求、さらにこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認することを求めている。
少なくとも現時点でこの要求をドナルド・トランプ政権が呑むとも思えず、イランとの間で交渉が成立するはずがない。トランプ大統領は何とかして「勝利」を演出しようとしているのか、「イランが約束を守らなかった」と主張して4月末までにイランに対する新たな攻撃を始めるだろうと推測されている。現在、多数のアメリカ軍輸送機が中東に向かっている。
イスラエルもレバノンへの侵略やイランの体制転覆を諦めていない。自力で実現できないため、アメリカ軍に実行させようとしているが、それだけでなくバブ・エル・マンデブ海峡を挟んでイエメンの対岸にあるソマリランドに部隊を派遣した。
袋小路へ入り込んだ米国は敗北を認めるしかないが、イスラエルはイラン殲滅を命令
櫻井ジャーナル 2026.04.17
2月28日にイランを奇襲攻撃したアメリカ軍とイスラエル軍は簡単に相手が屈服すると考えていたようだが、イラン軍の反撃で軍事的には劣勢だ。すでにイスラエルの主要都市は瓦礫の山が築かれ、西アジアのアメリカ軍基地も大きな損害を受け、両国の敗北は明白だが、アメリカ軍は「停戦」を利用して再攻撃の準備をしたようだ。再攻撃して勝利を宣言して撤退するつもりだと見られている。
そうした中、イランはパキスタンのイスラマバードでアメリカとイランの代表団と交渉している。イランに軍事情報を提供していると言われている中国も戦争の早期終結の望んでいると言われているが、イランは10項目の要求を取り下げていない。
その要求とは、ホルムズ海峡の通行をイランが管理、イランの同盟勢力に対する軍事行動の停止、西アジア地域からのアメリカ軍撤退、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定の策定、イランが被った損害に対する全額補償、すべての制裁および国際決議の撤廃、凍結されたイラン資産の返還、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認すること。少なくとも現時点でこの要求をドナルド・トランプ政権が呑むとも思えない。何とかして「勝利」を演出しようとするだろう。
現在、イランに負けているアメリカやイスラエルだが、「停戦」を実現して戦力を回復、再びイランを攻撃しようと目論んでいるはずだ。ベンヤミン・ネタニヤフ首相も言っていることからもわかるように、彼らの最終目標はイランをガザやリビアと同様、「石器時代」にし、西アジア全域を「イスラエル」にすることだろう。
すでにイランはホルムズ海峡を通過する船舶を制限、敵国と見なされた国のタンカーは通れなくなっている。そこでアメリカはイランの友好国の船舶も通さないと宣言した。それなりの影響はあるだろうが、アメリカの空母や駆逐艦が海峡に近づくことはできない。さらにイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はアデン湾から紅海へ入るために通過しなければならないバブ・エル・マンデブ海峡の通過を規制する動きを見せている。
ホルムズ封鎖の影響を最も大きく受けるのは日本を含む東アジア諸国だが、ヨーロッパ諸国がトランプ政権の海峡封鎖を批判している。東アジアの経済が麻痺すれば製品が生産されず、世界の経済が麻痺する。アメリカにはエネルギー資源があるというものの、エネルギー相場は上昇し、アメリカ国内の経済も麻痺させる。
バラク・オバマ政権がキエフでクーデターを成功させた後、ジョー・バイデン政権は誕生直後からロシアに対する軍事的な挑発を開始、2022年になると反クーデター派が支配するドンバスに対する砲撃を激化させた。ロシアがウクライナに対するミサイル攻撃を始めたのはその直後のことだ。
オバマ政権がウクライナ支配を目論んだのは、ロシアとヨーロッパの結びつきを強めていた天然ガスの流れを止めることにあった。ロシア産天然ガスをバルト海経由でドイツへ運ぶ「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」が2022年9月に爆破される。西側ではウクライナが行ったと宣伝されているが、能力的に見ても状況を見てもアメリカやイギリスが中心になって実行された可能性が高い。
アメリカやイギリスの強大な私的権力はヨーロッパ諸国がロシア産の安価な天然ガスを入手できないようにしたのだが、ヨーロッパ諸国は唯々諾々として従った。今回、日本がアメリカの命令におとなしく従っているのと同じだ。
イランはミサイルなどの兵器を地下に隠しているだけでなく、生産工場も地下に建設、長期戦に備えているが、簡単に勝てると考えていたアメリカやイスラエルはミサイルやドローンが枯渇し、レーダーは破壊されて防空システムは機能しなくなっている。レバノンからイスラエルを攻撃しているヒズボラのミサイルも防げていないようだ。戦争が長引けば長引くほどアメリカやイスラエルは苦しくなる。
アメリカ政府は4月5日、同国空軍に所属するF-15E戦闘機のパイロットと兵器担当士官を救出する作戦を成功させたと発表したが、それにしては投入された航空機が多すぎる。数十人の特殊部隊員を乗せたC-130輸送機がイスファハン近くに着陸した数分後に2機目のC-130輸送機が接近してきたが、それをイラン軍が攻撃、積まれていた特殊車両や数機のMH-6ヘリコプターも破壊された。さらにブラックホーク・ヘリコプター2機も到着したが、これも格好の攻撃目標になり、A-10攻撃機も破壊された。その現場が核施設に近いイスファハンだったことから、アメリカの特殊部隊は核物質を盗み出そうとしていて失敗したと見られている。