2026年9月10日木曜日

【2026焦点・論点】官民ファンド「クールジャパン」の破綻 元経産官僚・古賀茂明さん

 しんぶん赤旗の掲題の記事を紹介します。
 元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明さんは、記者の質問に応じて、概要 以下のように語りました。
 官民ファンドは、リスクが高いプロジェクトでも官がお金を出すなら安心だと民間からも金が集まるというストーリーですが、官には目利き能力が基本的にはないので、官が入ったから何かより優れた能力が発揮できるということはなく、今まで官民ファンドは一部の例外を除いてほとんど失敗しているということです。
 民間にできないが官ができることは何かというと損してもわが身には実害は及ばないという気楽さから、思いきりよく資金(税金を使うことだと言います。実際に破たんした後で官が責任を追及されることありません。
 そもそも官には目利きの能力がないので、プロを連れてくるしかありませんが、集まってくるのは責任を取らずに思いきり金を使える魅力を感じて来る自称プロたちで、ほとんどの場合、税金を使った面白いプロジェクトで自分のネームバリューをあげ、(最後までいくと大体失敗するので、)数年したら辞めてしまい、より給料の高いところに移っていくというのが基本パターンだということです。
 そうした実態の中で、高市政権は日本成長戦略で17分野で370兆円もの官民投資を推進するとしていますが、最後に「成功」するのは軍事関係のみで、それ以外はあまり成功しないと見られます。
 軍事関係において、本来なら失敗のものを「成功」にしてしまえるのは下記の理由からです。ある製品がたとえ性能が悪く値段が高くても、日本製を政府が買うのが安全保障なのだと言って進められるからで、莫大な予算で軍事産業を拡大し成功したという話にされかねません。
 それに近い例として、最先端半導体を開発する官民投資のラピダス(トヨタ自動車、ソニーグループ、NTTなどが出資)も基本的には失敗だと思いますが、政府はラピダスにどんどん税金をつぎ込すでに2500億円出資し、経産省の来年度概算要求が実れば累計で4000億円になります。
 最後はどうするかというと軍事で引き取り成功のような顔をするシナリオで、例えば自衛隊が使うAI(人工知能)は日本製でないと危ないからということで、ラピダスの半導体を使うことも考えられます。こういう形で莫大な金をつぎ込んでいく新しいストーリーができる可能性もあるので、これまでよりさらに危なくなっている気がします。
 官ばかりになれば壮大なる予算の無駄が明瞭になり財政赤字が拡大します。その分を削る対象は社会保障で、「改革」の名で制度を見直して社会保障サービスを下げていくことになります。しかしそれだけでは軍拡財源を確保できないから、インフレ政策が続くことになり、国民は物価高と実質賃金の低下でずっと苦しむことになります。
 その悲劇は絶対に避けるべきです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2026焦点・論点】官民ファンド「クールジャパン」の破綻
              元経産官僚・政治経済評論家 古賀茂明さん
                        しんぶん赤旗 2026年9月7日
   こが・しげあき
    1955年、長崎県生まれ。元通商産業省づ(現・経済産業省)官僚。政治経済
    評論家。著書に『官僚の責任』『官邸の暴走』『分断と凋落(ちょうらく)の
    日本』など多数。

 経済産業省は540億円の累積赤字を抱える官民ファンドの海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)について来年度予算の概算要求を見送り、廃止の方向で検討しています。安倍晋三政権が成長戦略として、アニメ、漫画、食文化などの海外展開支援を目的に2013年に設立したものです。なぜ廃止なのか、高市早苗政権が日本成長戦略でのめり込む官民投資をどう見るか一元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明さんに聞きました
                                   (伊藤紀夫)

 -政府が1400億円も出資したクールジャパンが失敗した原因は何ですか。
 コンテンツにしてもすごく広いわけで、投資すると言っても、本当に当たるかどうかはなかなか分かりません。リスクが高いか民間がお金を出しにくいので、官がお金を出すと、安心して民間からお金がどんどん集まり、うまくいくというストーリーなんです
 しかし、クールジャパンも、フタを開けてみたら、出資のほとんどは官でした。官が出しても、民は出てこなかったわけです。
 発想が根本的に間違っており、官には目利き能力が基本的にはないからです。今は経産省も財務省も最先端のことは民間に聞いて教えてもらっている状況なので、官が入ったから何かより優れた能力が発揮できるということはありません
 漫画やアニメなど日本のコンテンツが成長して世界で特別の地位を築いたのは、むしろ役所が何もやらなかったからです。

 -官民投資はコンテンツだけでなく、数多くありますが、現状はどうですか。
 今まで官民ファンドは、一部の例外を除いて、ほとんど失敗しています。経産省は、官民ファンドや補助金で支援してきた半導体、液晶、電池産業、太陽光・風力発電、航空機、ロケットなどの事業を全部ダメにしてきたんです。
 民間にできないが官がでることは何かというと、損することに何の心配もな、人の金だからと思いきり税金を使うことです。
 それも後で責任追及される恐れがないのが実態です。民間だと失敗したら、クビになったり左遷されたりしますが、失敗を追及されて責任を取った官僚は人もいません。大臣や政治家が責任追及されたこともありません。
 官は目利き能力がないので、プロを連れてくると言いますが、集まってくるのは責任を取らずに思いきり金を使える魅力を感じてくる自称プロたちです。
 ほとんどの場合、税金を使った面白いプロジェクトで自分のネームバリューをあげ、数年したら辞めてしまい、より給料の高いところに移っていくのが基本パターンです。最後までいくと大体失敗しますから、その前に逃げちやうんです。

失敗反省せず推進する高市政権 官民設資廃止し社会保障に回せ

 -経産省は8月20日に発表した「エンタメ・クリ工イティ産業戦略2026」で、33年までにコンテンツの海外売上高20兆円を目指す「ものがたり大国5か年計画」を掲げました。高市政権は日本成長戦略で、コンテンツ(33・7兆円)を含む戦略17分野で370兆円もの官民投資を推進しています。どう見ますか。
 市首相の成長戦略は、安倍元首相の最初の頃と同じやり方です。安倍政権では「3本の矢」の3番目が成長戦略ですが、その戦略を毎年出しました。日本を大きく変える戦略を毎年出すなんて、本来ありえません。今回も基本的にはそんなに大きく変わらないのに、新機軸のキャッチフレーズで、たくさん予算を獲得しようという狙いです。
 ただ、注意しなければいけないと思うのは、高市内閣の成長戦略で結局、最後に「成功」するのは軍事関係で、それ以外はあまり成功しないという点です。本来なら失敗だ
けれども、「成功」にしてしまえるのは、軍事閣係なんです
 なぜかというと、軍事兵器はたとえ性能が悪く値段が高くても、日本製を政府が買うのが安全保障なんだと言って進められるからです。莫大な予算で軍事産業を拡大し成功したという話にされかねません

 最先端半導体を開発する官民投資のラピダス(トヨタ自動車、ソニーグループ、NTTなどが出資)も基本的には失敗だと思います。というのは、成功なら世界中の大企業、特にマイクロソフトやグーグルなどの巨大IT企業から投資が入るはずなのに、入ってこないからです。
 ところが、政府はラピダスにどんどん税金をつぎ込んでいます。すでに2500億円も出資し、経産省の来年度概算要求が実れば累計で4000億円にのぼります。
 最後はどうするか。これを軍事で引き取り、成功のような顔をするシナリオです。例えば、自衛隊が使うAI(人工知能)は日本製でないと危ないからということで、ラピダスの半導体を使うことも考えられます。
 こういう形でめちゃめちゃ金をつぎ込んでいく新しいストーリーができる可能性もあるので、これまでよりさらに危なくなっている気がします。
 高市政権の官民投資も、官が資金を出すと民がついてくるという発想ですが、そんなことはこれまで1回も起きたことはなく、必ず官ばかりになって、壮大なる予算の無駄になる可能性があります。それは財政赤字を拡大するので、その分を他で削らなくちゃいけなくなります。
 削るのは社会保障で「改革」の名で制度を見直して社会保障サービスを下げていくことになります。それでも、軍拡財源を確保できないから、基本的には財政を拡大するしかないので、インフレが続くことになります。国民は物価と実質賃金の低下でずっと苦しむことは明らかです。

 -国民を犠牲にしないためには、何必要ですか。
 官民投資についても反省がないと、何か悪かったか分からないわけです。ところが、反省は高市首相が一番苦手なこと、嫌いなことです。これが高市政権の最大の特徴で、反省しない政権は何の教訓も得られないから、同じ失敗を繰り返すことになります。
 これまでずっと失敗し続けてきたことを、もっと大規模にやらせてくれと高市首相は言っているわけです。これに対する答えはノーに決まっています
 私は以前から主張してきましたが、官民ファンドは全部早く廃止した方がいいと思います。クールジャパンをつぶして免罪符にするなんて、冗談じやありません。他の官民ファンドだって、みんな同じですからね。
 無駄な事業はやめて、その分を庶民のための社会保障や暮らし向きの予算に回すべきです。

植草事件の『知られざる真実』/謀略で沖縄知事選歪めるな(植草一秀氏)

 植草一秀氏の掲題の2つの記事を紹介します。
 小泉純一郎議員は何度も総裁戦に挑戦しましたが果たせず、田中真紀子議員が味方につくと01年4月の総裁選で漸く総理総裁の椅子を手にしました。
「官から民へ」を標榜し、道路関係4公団の民営化なども行いましたが、念願の「郵政民営化」については抵抗勢力が多くて思うように進みませんでした。すると小泉氏は強引に「郵政民営化解散」に打って出ることで反対勢力を駆逐して念願を果たしました。しかし元々郵政民営化には何のメリットもなかったのでした。
 また「労働者派遣法」を改悪して大量の「非正規労働者」を生み出したことで、現在の「深刻な労働者の貧困化」が生まれました。
 小泉氏は政権発足時に経済財政担当相に民間人だった竹中平蔵氏を就けると、以後小泉氏が首相の座を離れるまで彼は閣僚として居続けて、弱肉強食・自己責任制の新自由主義政策を進めました。そして引退後は人材供給会社の会長に平然とおさまりました。
 植草氏がコメンテーターとしてTVに頻繁に登場したのは、竹中氏が小泉氏の重要閣僚として登場した時期で、常に竹中氏の政策に対して手厳しい批判を加えました。
 それは政権/体制側には大いに都合の悪いことだったので、直ぐに植草氏は官憲による「人物破壊工作」の標的となり冤罪で実刑判決を受けました。そのため植草氏は京都大学助教授(1991年)や早稲田大学大学院教授(2003年)等の経歴を持ちながら現在もマスコミなどに登場出来ていません。
 
 2番目の記事「謀略で沖縄知事選歪めるな」では、2010年の沖縄県知事選で仲井眞弘多氏が再選を果たし、革新の伊波洋一氏が敗れた背景にキャンベル米国務次官補の暗躍があり、菅直人政権下で国交相であった前原氏によって「尖閣中国漁船衝突事件」が「創作」された概要を記すことで、沖縄知事選は米国にとっても多大な関心事であることを例証し、「戦争が創作されるときに、真っ先に破滅を迎えるのは沖縄である。~ すべての沖縄有権者が投票所に足を運び、日本の運命を誤らぬ投票結果を生み出してもらいたいと痛切に願う」と訴えます。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

植草事件の『知られざる真実』
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年9月 7日
『紙の爆弾』(鹿砦社)202610月号 https://x.gd/22JP9 が刊行される



巻頭特集は「財務省が主導する消費税減税反対論」サブタイトルは「「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走」筆者提供記事である。

併せて「植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編」 -無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ- が掲載されている。
インタビュアーは高橋清隆氏。 https://x.gd/SRD9I
「植草一秀インタビュー「冤罪の真実」」は『紙の爆弾』2026年8月号、9月号、10月号の3回連続掲載記事。前編、中編、後編に分けての掲載になった。

私が巻き込まれた冤罪事件。その全貌の輪郭を記している
私は冤罪は「魂の殺人」だと認識している。「国家にしかできない犯罪、それは戦争と冤罪」という言葉は故人となられた後藤昌次郎弁護士が遺された言葉。
冤罪はこの世に存在する犯罪のなかでもっとも悪質で卑劣な犯罪である。
この冤罪によって筆舌には尽くしがたい体験を得た

しかし、事案は過去の事案ではない。現在進行形の事案である。20年来、冤罪の汚名を雪ぐための闘いを継続している
安田好弘弁護士ならびに支援者の絶大なるご支援を賜って再審請求の活動を続けている。
一連の事案の全貌がほぼ把握できる状況に至っており、改めて事案の全貌を明らかにして訴えを広げてゆきたいと考えている
これまでも述べてきたように、すべては無実潔白である。その「真実」が正確に知られていない
これまでに『知られざる真実』(イプシロン出版)






https://x.gd/MGl5m などの書も刊行してきた。しかし、事案の全体像を表出するものではなかった改めて全体像を明らかにし、恐らくは日本政治の体制転換の後に無実の真実を公式に明らかにしたいと考えている

明治維新の偉人である江藤新平は新政府において初代司法卿に就任した。
江藤新平は日本の司法制度、法制度を制定した中心人物である。江藤新平が腐心したのは「冤罪の防止」であった。江藤は人権尊重の視点から日本の刑事司法制度を定めようとした

維新政府において江藤と対立したのが大久保利通である。大久保は人権を軽視して国権を重視した。大久保は不当に権力を掌握して江藤を抹殺した
日本は「江藤の日本になるか、大久保の日本になるか」の分岐点であったが、結局、「大久保の日本」になってしまった。
この大久保が悪名高い内務省生みの親であり、特高警察の生みの親である。

白井聡氏は私の冤罪事件が「植草の日本になるか、竹中の日本になるか」の分岐点になったと述べられている。
『沈む日本 4つの大罪』(ビジネス社)











https://x.gd/6mNz2
来る、1031日に高橋清隆氏と私のコラボ講演会を高橋氏の古里である新潟県三条市で開催する予定。
1031(土)14時~17 新潟県三条市 三条中央公民館 https://x.gd/7Rlnr
遠方になるがご関心のある方にはお運び賜れればありがたく思う。

















https://x.gd/Yt3Yh








『日本経済の終宴』(ビジネス社) https://x.gd/yNOSpf を上梓しました。
大好評販売中です。
ご高読、ならびにアマゾンレビューをなにとぞよろしくお願いいたします。
高市暴政の真実を明らかにするとともに株価・為替の性格予測に基く投資戦略を提案する新著です。

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4519号
「これが冤罪を生み出す元凶だ」 でご高読下さい。

この機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひぜひお願いします
https://foomii.com/00050
『ザイム真理教』(森永卓郎著)の神髄を深堀り、最重要政策争点財務省・消費税問題を徹底解説する新著を上梓しました。
財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』(ビジネス社)https://x.gd/LM7XKご高読、ならびにアマゾンレビュー、ぜひぜひ、お願いします。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」https://foomii.com/00050
のご購読もよろしくお願いいたします。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。


謀略で沖縄知事選歪めるな
                植草一秀の「知られざる真実」 2026年9月9日
沖縄の県知事選が9月13日に投票日を迎える。
選挙戦の情勢では読売と朝日が古謝玄太氏が先行と報道。共同通信、毎日新聞は「横一線」と報じている。ネットニュースでは読売の記事が大きく紹介されている。
現職の玉城デニー氏支持者に諦めムードを引き起こし、付和雷同で「勝ち組に乗る」行動を誘発するための「意図的報道」である疑いが濃厚。

沖縄自民は公明票を古謝氏に集めるために高市首相の沖縄入りを止めていると言われる。
公明は高市首相の「政治とカネ」無策を踏まえて連立離脱を決めた経緯がある。
知事選に出馬の意向を示していた下地幹郎氏は告示直前に出馬を取りやめた。裏でカネが流れたとの見方もあるし、副知事ポストと引き換えに出馬を取りやめたとの説もある。

高市内閣は「カネの力」で沖縄県知事ポストを奪還する姿勢。巨大なカネが舞い踊っていると見られる。
「カネ」の経路は二つある。権力寄りの知事が誕生すると国家予算の配分で沖縄に手厚い資金投下が行われる。国家財政の私物化である
もう一つの経路はいわゆる金権選挙。証拠を掴まないと検挙はできないが、巨額のカネがばらまかれていると見られる。内閣の官房機密費が使われているとの見方もある。

地獄の沙汰もカネ次第と言われるが「カネ」の力は大きい。しかし、「カネ」の力で県知事を決めてよいのかと言えばNOだ。
今回の沖縄県知事選は日本の命運を分ける選挙であると言って過言でない。高市首相の暴走を加速させるのか、高市首相の暴走にブレーキをかけるのか。その分岐点になる可能性が高い選挙である。

2010年の沖縄県知事選で仲井眞弘多氏が再選を果たした。対抗馬は革新の伊波洋一氏。
この選挙のために尖閣海域中国漁船衝突事件が「創作」された。
2010年2月に来日したカート・キャンベル米国務次官補。小沢一郎氏と会談してソウルに飛んだ。ソウルから国務省に打電し、日本との交渉窓口を小沢-鳩山ラインから菅-岡田ラインに切り替える方針を伝えた

キャンベル氏は小沢氏と会談する前に前原誠司氏と会談。前原氏は「小沢氏を信用するな」とアドバイス
さらに、辺野古の問題で前原氏は2010年の沖縄県知事選が重要になると指摘。革新の伊波洋一氏が選出されることは大きなリスクだと指摘した。
このことがあり、前原国交相の下で尖閣中国漁船衝突事件が「創作」された。

日本政府は日中漁業協定に基づき、尖閣海域の中国漁船に対して領海外への誘導しかしてこなかった。それを菅直人内閣が発足した2010年6月8日に、尖閣領有権問題は存在しないとの閣議決定を行い、尖閣海域の中国漁船への対応を「国内法基準」に変更した
この変更によって中国漁船を追い回し、海上保安庁巡視船に中国漁船を「衝突させた」上、中国漁船船長らを逮捕、勾留した。

この事件を契機に「中国の脅威」が一気に叫ばれるようになり、その結果、11月の沖縄県知事選で伊波洋一氏が落選して仲井眞弘多氏が再選を果たした。
文字通り、謀略によって米国が求める沖縄県知事選結果がもたらされた。
今回の選挙で古謝氏が勝利すれば、高市内閣は沖縄の軍事要塞化を加速させる。米国は東アジアで戦争を創作してウクライナ戦争に類する「二匹目のどじょう」を狙っている。

戦争が創作されるときに、真っ先に破滅を迎えるのは沖縄である。
したがって、カネで頬を叩かれて悪徳権力側の知事を誕生させてはならないのだ。
すべての沖縄有権者が投票所に足を運び、日本の運命を誤らぬ投票結果を生み出してもらいたいと痛切に願う。

日本経済の終宴』(ビジネス社)https://x.gd/yNOSpf を上梓しました。
大好評販売中です。
ご高読、ならびにアマゾンレビューをなにとぞよろしくお願いいたします。
高市暴政の真実を明らかにするとともに株価・為替の性格予測に基く投資戦略を提案する新著です。
続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4520号
「悪徳の高市積極財政」 でご高読下さい。
                (後 略)

古代史研究者が「男系男子は神武天皇から」に「史実でない」と抗議声明 ~

 LITERAに掲題の記事が載りましたので紹介します。
 何分にも全文が約12700字の長文なので、竹田恒泰氏が学童相手に日本の歴史の中で「天皇が男系男子に限られてきた理由」について説明した部分の約4500字分をカットした形で紹介します。
 日本会議系の自民党議員たちは日本は有史2600年の間、万世一系の天皇に統治されてきたと強調しますが、それは間違いであり、女性天皇だけでなく女系天皇という選択肢も、奈良時代から近世までは排除されていなかったというのが事実でした。
「男系男子は神武以来2600年以上続く日本の伝統」などではなく、明治中期の1889年に井上毅らによって旧皇室典範が制定されて以降 戦後の1947年に廃止されるまでの、わずか58年間だけのものでした。
 戦後に生まれた日本国憲法や、同じ年に施行された新しい皇室典範は、今年で79年になるので、右派が「日本の伝統」だと叫ぶ大日本帝国下の天皇制度より、もはや戦後の象徴天皇制の歴史のほうが長いのです
 史実に反するマヤカシの言説に惑わされることなく、憲法に沿い国民の総意に合致する正しい皇室典範を早急に作り上げるべきです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
古代史研究者が「男系男子は神武天皇から」に「史実でない」と抗議声明 竹田恒泰の主張を子どもに刷り込んだ読売テレビも同罪だ!
                            LITERA 2026.09.07
 先の皇室典範改正で「旧宮家の男系男子養子案」を強行しようとした際、高市政権の政治家や右派論客が繰り返し口にしていた「男系男子は神武天皇以来2600年以上続く伝統」という主張。それが史実を無視した真っ赤な嘘であることは本サイトでも再三指摘してきたが、ここにきて、古代史の専門家からも一斉に批判を受けていたことが判明した。
 7月10日、衆院運営委員会で自民党の小林鷹之政調会長が「皇位の男系継承は2600年守り抜いてきた皇室の伝統だ」と発言したのを受けて、古市晃・神戸大学教授、今津勝紀・岡山大学教授、田中聡・立命館大学教授ら「皇室・皇位をめぐる議論に関する研究成果の尊重を求める古代史研究者の会(以下・古代史研究者の会)」が、「連綿と続けられてきた古代史研究の成果を否定するもので到底容認できない」との抗議声明を出し、1300名を超える賛同を得ているのだ。
 声明はまず、「男系男子は神武天皇以来2600年以上続く伝統」といった類の発言がいかに史実とかけ離れたものであるかということを具体的に指摘している。
〈こうした発言は、奈良時代に作られた史書、『日本書紀』にみえる初代天皇の出現と、その後の皇位継承の記述にもとづいています。『日本書紀』によると、紀元前660年にあたる辛酉(かのととり)年に初代神武天皇が即位し、皇位は男系により継承されたことになっています。
しかし紀元前660年は、考古学の研究成果によれば、縄文時代晩期、または弥生時代早期にあたり、日本列島にはまだ文字を使用する文化は存在しませんでした。そもそも、辛酉年が歴史的事実ではなく、その年に大きな歴史的変革があるという中国の思想にもとづいて後世に造作されたものであることが、19世紀末、すでに明らかにされています。 さらに、第2代以降の天皇にも実在しない人物がいることが指摘されています。その後の天皇につながる倭王の地位が世襲的に継承されるようになるのは、紀元6世紀以降とするのが、現在の通説的な見解です。〉
 さらに、この抗議声明は、政治家がこうした恣意的な創作を使って政策を推し進めることの危険性も指摘している。
1889年に発布された明治憲法では、天皇による統治が「万世一系」の皇統にもとづくものとされ、同時に制定された皇室典範によって、皇位は皇統に属する男系男子が継承すると定められました。1940年、治安維持法をはじめとする一連の政策により、『古事記』や『日本書紀』の記述を疑問視した津田左右吉の学問的な著作が発売禁止とされ、大学教員の地位を追われるといった弾圧が行われました。
1946年に制定された日本国憲法では、こうした過去の反省にもとづいて、学問の自由はもとより、思想・信条の自由が保証されました。以来80年、自由な空気の下で進められた研究は大きく進展し、古代の王族のあり方もさまざまな角度から検討が進められています。
今回の、「皇室2600年の歴史と男系男子による皇位継承」を謳う政治家の一連の発言は、連綿と続けられてきた古代史研究の成果を否定するもので、到底容認できません。またこうした学問的成果の軽視が社会を萎縮させ、思想・信条の自由が再び奪われる世界が訪れることを危惧します。〉
 この危惧はまさに、正鵠を射たものだ。男系男子の皇位継承にこだわる高市首相、小林政調会長、維新の藤田文武代表には、皇室への尊敬などない。彼らの狙いはただひとつ、戦前の軍国主義体制の復活なのである。
実際、連中は改正皇室典範を成立させると、次に「皇族の養子となる旧宮家の男系男子らを誹謗中傷から守るべきだ」との建前で、言論を統制する法整備に動き始めている。
このままこんな「嘘の歴史の喧伝」を放置していたら、天皇の神格化教育が学校教育でも復活し、堂々と思想統制、言論統制が行われるようになる可能性もあるだろう。
しかも、恐ろしいのは、古代史件研究者が揃って「事実でない」と明言する嘘の歴史を、極右政治家だけでなく、大手マスコミまでが堂々と喧伝するようになったことだ。
本サイトでは、先日、読売テレビの『そこまで言って委員会NP』で、男系男子派の急先鋒である右派コメンテーター・竹田恒泰氏が、子ども相手に授業形式で、一方的に皇室の嘘の歴史と女性天皇否定論を刷り込む番組を放映したことを報じ、「子ども相手に嘘の歴史を教えるというのは、明らかにBPO案件だ」と批判した。
 その記事を再録するので、右派が語っている男系男子の皇位継承論や皇室の歴史がいかにインチキに満ちているか、メディアがいかに危険なことに加担しているかを知ってほしい。

   (竹田恒泰氏の子供向けレクチュア関連個所を削除)
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そうした事態を食い止めるためにも、私たちはいまの男系男子論をはじめとする偽の伝統に何度でもおかしいと言い続ける必要がある。本サイトでは、改正皇室典範改正が可決成立した直後に、〈“男系男子の皇位継承”は明治期の創作! 旧皇室典範策定時に「男を尊び女を卑むの慣習、人民の脳髄」とトンデモ論で女性天皇を否定〉と題し、自民や維新、右派の主張する「男系男子は2600年続く伝統」がいかにデタラメかを記事にした。
以下に再録するので、あらためてご一読いただきたい。

            ***************

 皇室典範の改定が7月17日参院本会議で可決され、成立した。世論調査で圧倒的に支持されている女性天皇・女系天皇については議論すら一切されることなく、専門家・識者からも様々な問題点が指摘され、国民の理解もまったく得られていない「旧宮家の男系男子養子案」を、高市政権が数の力で押し切ったのだ。
 改定を受け、同日、国連のグテーレス事務総長が「全ての国に対し、あらゆる地位や職業において女性の権利向上につながる包摂的な政策を奨励する」との見解を示したが、当然だろう。
 女性天皇を阻止し、男系男子を維持するためだけに、天皇から36親等から38親等も離れた民法上の「親族」ですらない赤の他人を養子として皇族に迎えるというのは、時代錯誤のトンデモ改定でしかない。
 しかも、今回の皇室典範改正は、国際社会の常識からみて異常なだけではない。右派が大好きな“日本の歴史・伝統”からみてもインチキ極まりないのだ。
 実際、自民のコバホークこと小林鷹之政調会長が「皇位の男系継承は2600年以上にわたって先人たちが守り抜いてきた皇室の伝統」と言ったり、維新の藤田文武共同代表が「2000年以上の歴史を持つ皇室と、たかだか60年あまりの歴史しか持たない憲法や移ろいやすい世論を同時に論じることはナンセンスでしかない」という安倍元首相の言葉を引いて発言したように、右派は男系男子にこだわるほとんど唯一の根拠として「男系男子は神武天皇以来2600年以上続く伝統」と主張してきた
 そもそも2600年前は縄文時代であり、神武天皇は実在しない神話上のキャラクターにすぎないというツッコミはおくとしても、この「男系男子=日本の長い伝統」という論自体が大嘘なのだ。
 天皇が「男系男子」と規定されたのは、明治時代、1889年に制定された旧皇室典範(1889〜1947)でのことだ。せいぜい明治からの伝統にすぎない。
 これは単に明文化されたのが明治というレベルの話ではない。男系男子による継承が暗黙の不文律だったわけでも日本古来の伝統だったわけでもないことを多くの学者・専門家が指摘している。
 高市政権による皇室典範改定がいかにとんでもないものだったかを理解してもらうためにも、改めて歴史的に検証しておこう。

「男系男子は2600年以上続く皇統」の嘘 6世紀までは力による継承も、初期は「双系」
 まず、指摘しておかなければならないのは、日本の天皇がそもそも6世紀くらいまで、男系男子どころか血縁による継承ですらなかったということだ。
 たとえば、国立歴史民俗博物館の仁藤敦史名誉教授は毎日新聞(7月1日)のインタビューで、こう語っている。
〈「天皇」という称号の前の「大王(おおきみ)」の時代は、血縁ではなく実力によって即位してきた。たとえば中国大陸や朝鮮半島の勢力と緊張関係にあった5世紀には外交や軍事の能力が最優先された。武烈天皇の没後、出自が明らかでなく、都から遠く離れた近江・越前に拠点があった継体天皇が即位したのもこうした経緯からだ。その後は内政の能力が重視された。〉
 継体天皇というのは歴史学で実在が確実視されている26代の天皇で、先代の応神天皇と関係が薄いことから、王朝交代が起きたとする見方と遠縁の子孫が迎えられたとする見方があるが、いずれにしても「皇統」が確立されたのは継体天皇の子・欽明天皇かという説が有力だ。継体天皇は天皇の娘と結婚することでその正当生を担保し権力基盤を固めたと考えられており、その意味で皇統はごく初期の時点で女系だったとみることもできる。
 しかも仁藤教授によると、男系主義が強まるのはそのさらに後の7世紀後半から。〈中国的な戸籍制度や儒教の影響などのためだ〉という。
 古代女性史を専門とする義江明子・帝京大名誉教授も、やはり男系主義が導入されたのは7世紀末で、やはり中国の影響を指摘する。デジタルメディア「nippon.com(ニッポンドットコム)」(2022年5月26日)のインタビューでこう語っている。
7世紀末、中国にならった律令国家樹立の際に初めて公式に父系原則が打ち立てられました。8世紀あたりまでは、支配層も含め、実質的にはまだ双系性の原理で動いていたと私は考えます」
 双系というのは、父系(男系)か母系(女系)どちらか片方の血筋のみを重視するのでなく、男系・女系の血統両方を重視する考え方や制度のことで、古代日本は「双系的社会」であったという認識が、現在は歴史学者の間では広く共有されている。
 
 周知のように6~7世紀の王族は双系的親族関係の中での近親婚が盛んで、男系・女系のいずれを遡ってもすぐ天皇にたどり着く。王族や豪族のなかでの序列やポジションの決定には、男系だけでなく女系の血統も重視された。たとえば、同じ天皇を父親とする子でも、母親が天皇の娘か地方豪族の娘かによって、その子の身分や序列が変わっていた。
 義江教授は聖徳太子や天智天皇、天武天皇を挙げ、当時の「双系性」について解説している。
「例えば『書紀』によれば、聖徳太子は用命天皇の息子ですが、母も欽明天皇の娘です。『天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)』に記された太子の系譜を見れば、双方の系統を重視していることは明らかです」
7世紀後半の天智天皇・天武天皇の父である舒明天皇は、2人が少年の頃に亡くなっています。母が跡を継いで皇極天皇として即位。いったんは退位しますが実力で再度、斉明天皇として皇位に就きました。後に天皇となる兄弟が成長する過程で、国家統治者としての手本を見せたはずです。とすれば、天智・天武はむしろ女系の天皇だとも言えるでしょう。また、両親(舒明・皇極)はそれぞれ、父方・母方双方で欽明天皇につながります」

大宝律令では女性天皇も女系天皇も排除されていなかった 男系男子のルーツは中国の文化
 男系が絶対的なものでなかったのは、日本の「家」制度の歴史を見ても明らかだ。
 家族社会学を専門とする落合恵美子京都産業大学教授は、毎日新聞(6月27日)のインタビューで、やはり〈日本の家族観は厳密な父系(男系)制ではなく、女系も重んじられる双系的なものとして続いてきた〉としたうえで、中世から近世にかけて成立した日本の「家」制度においては、「直系相続」が特徴だったと指摘している。
〈『家』の論理では、直系の娘の方が、別の『家』の子であるおいよりも、はるかに正統な跡取りです。おまけに直系の子どもの数は限られているので、娘による相続を認めなければ『家』は簡単に滅びてしまいます〉
 たしかに、これは感覚としてしっくりくる人も多いのではないか。当の自民党議員だってそうだろう。自民党には世襲政治家が大勢いて、もちろん息子が世襲しているケースが圧倒的に多いが、小渕優子、加藤鮎子など娘のケースも少なくないし、加藤勝信のように娘婿が後を継いでいるケースもある。しかし、30親等まではいかなくても6親等離れた親戚の男子をわざわざ養子にして後継候補にした例など聞いたことがない
 落合教授は〈琉球士族と、武家のなかでも最上層に位置する大名家〉は例外的に父系傾向が強かったと言い、その理由について〈中国文化の影響を強く受けたから〉〈中国の親族制度には「家の継承者は基本的に同じ姓の男子であるべきだ(異姓不養)」という考え方があった〉と解説する。
 中国文化の影響については、前出の仁藤教授や義江教授も「中国的な戸籍制度や儒教の影響」(仁藤教授)「中国にならった律令国家樹立の際に初めて公式に父系原則が打ち立てられました」(義江名誉教授)と指摘していた。
 ようするに、右派が声高に主張する男系男子は日本古来の伝統文化ではなく、むしろ彼らが毛嫌いしている中国文化にルーツがあったというわけだ。
 しかも、日本では、中国文化の影響で男系化・父系化が強まりつつも、女性天皇が認められていた。
 周知のように、日本の歴史では、推古天皇、斉明天皇、持統天皇など古代に6人、江戸時代に2人、計8人の女性天皇が存在した。
 明治以降「女性天皇は男性から男性への継承が難しかった際の、臨時の中継ぎ役」という見方が支配的だったが、近年、歴史学ではこの「中継ぎ」「お飾り」説も再検証が進み、否定されつつある。とくに古代の女性天皇は、中央主権体制や律令国家の確立に大きな役割を果たしているし、右派の大好きな「戸籍」の作成や「古事記」「日本書紀」編纂で天皇支配を強化したのも持統天皇だ。
 さらにもうひとつ指摘しておかなければならないのは、女性天皇だけでなく女系天皇という選択肢も、奈良時代から近世までは、排除されていなかったという事実だ。
 そのことを示しているのが、701年に成立・制定され、明治初期まで存続した大宝律令の「継嗣令(けいしりょう)」だ。
 皇族の身分や皇位継承について定めたこの法令には〈女帝子亦同〉という記述があり、「女帝の子もまた同じ(=女帝の子も、男性の天皇の子と同じく親王の身分となる)」と規定されている。つまり、男系による継承を前提としながらも、女性天皇も女系天皇も否定していないのである。律令制度は平安時代後半には衰退するが、継嗣令の規定は江戸時代、そして明治に入って旧皇室典範が制定されるまで、廃止されることなく続いていたという。
 前出・仁藤教授は「継嗣令」についてこう解説する。
〈奈良時代から近世まで存続した「継嗣令(けいしりょう)」では、女帝の子も皇位継承権が認められていた。確固とした皇位継承原則はなく、女系天皇が制度的に排除されていたわけでもなかった〉(前出・毎日新聞)

明治の旧皇室典範の策定時にあった女性天皇を認める案 井上毅が「男尊女卑」思想で排除
 では、なぜ「日本の伝統」でもなんでもない「男系男子による皇位継承」が絶対的なものになってしまったのか。
 さまざまな分野の学者が共通して指摘しているのが、明治時代、旧皇室典範が制定される際にそれが恣意的に行われたという事実である。
 明治時代の旧皇室典範は大日本帝国憲法と同じ1889年に制定・施行されるが、実は当初の案では女性による皇位継承を認める内容だった。
 民法を専門とする橋本有生・早稲田大学准教授は、2021年12月の有識者会議でヒアリングをされた際、以下のように意見を述べている。
〈女性天皇をめぐる議論は目新しいものではなく、旧皇室典範制定時の諸資料にも検討の跡が残されている。たとえば、「国憲按第一次案」(明治9年)の第二章「帝位継承」における第2条及び第4条は、女性による皇位継承を認める内容である〉
 しかし、この案は議論の過程で修正・削除される。それは、旧皇室典範策定にかかわった女帝否定論者の強硬な反対によるものだった。
 その中心にいたのが、のちに文部大臣も務めた熊本出身の法制官僚・井上毅(こわし)だ。井上は大日本帝国憲法や教育勅語の起草にも関わった人物だが、皇室典範制定でも主導的な役割を担い、いま右派が声高に叫んでいる「男系の皇統」という概念を広めた張本人だ。その井上が、当時、女性による皇位継承を認める第一次案についてこんな意見書を提出していたという。
「我国の現状、男を以て尊しとなし、之を女子の上に位せり」
「男を尊び、女を卑むの慣習、人民の脳髄を支配する我国に至ては、女帝を立て皇婿を置くの不可なるは、多弁を費すを要せざるべし」
 ようするに「日本は男尊女卑の国で、国民の脳髄まで男尊女卑の思想が浸透しているから、女性天皇が不可なのは言うまでもない」と言っているのだ。
 今回の皇室典範改定をめぐっては多くの国民が、「女性天皇を認めないのって、ただの女性差別なんじゃないのか」と素朴な疑問を口にしていたが、まさにその疑問通り、露骨すぎる女性差別がベースになっていた。
 しかも、この旧皇室典範の思想は大日本帝国の軍国主義とも深く結びついている。
 井上は前述したように、旧皇室典範を作っただけでなく、大日本国憲法や教育勅語などにも深く関わっていた。井上の「神武以来の男系男子による継承=万世一系」「万邦無比の国体」というフィクションは、様々な法制度に落とし込まれ、祭政一致の国家主義、軍国主義の基盤となった。
 そして、そのグロテスクな思想に基づいて、「現人神の天皇陛下のために命を捧げる」ことを強制する教育が行われ、それが数々の侵略戦争を引き起こしたのだ。

右派の言う「皇室の伝統」は”2600年“どころか、日本国憲法より短いわずか58年間の制度にすぎない
 ここまでの解説で「男系男子は神武以来2600年以上続く日本の伝統」などではないことが十分おわかりいただけたはずだ。明治から昭和初期にかけての大日本帝国の時代の伝統にすぎない。明治初期1889年に旧皇室典範が制定され、戦後1947年に廃止されるまでの、わずか58年間だけのものなのだ。
 戦後に生まれた日本国憲法や、同じ年に施行された新しい皇室典範は、今年で79年。そういう意味では、右派が「日本の伝統」だと叫ぶ、大日本帝国下の天皇制度より、もはや戦後の象徴天皇制の歴史のほうが長いのだ。
 この事実を踏まえれば、改めて右派の論理がいかにインチキであるかがよくわかる。
 たとえば、冒頭で、維新の藤田代表も引用していた安倍晋三元首相の「二千年以上の歴史を持つ皇室と、たかだか六十年あまりの歴史しかもたない憲法や、移ろいやすい世論を、同断に論じることはナンセンスでしかない」(「文藝春秋」12年2月)という言葉を紹介したが、歴史的事実に照らせば、こう言い換えるべきだろう。
79年の歴史しかもたない日本国憲法より、さらに短いたかだか60年足らずの歴史しかもたず、その短い期間で日本と皇室を滅亡の危機に追い込んだ“男系の皇統”というフィクションを、その滅亡の危機から80年かけて積み上げてきた象徴天皇制や戦後民主主義より、優先するとはとても正気の沙汰じゃない
 正気の沙汰じゃないのは、もちろん安倍元首相だけでなく、今回、36親等以上も離れた民法上の「親族」ですらない赤の他人を養子として皇族に迎えるという時代錯誤のトンデモ皇室典範改定を強行した、高市首相や麻生太郎副総裁、維新・藤田代表らも同様だ。
 彼らに共通しているのは、日本の伝統や天皇に対する敬愛など、微塵もないということだ。
 参院特別委員会で「なぜ女性ではダメなのか?」「なぜ男系男子にこだわるのか?」を問われた木原稔官房長官が1分近く何も答えられなかったが、木原官房長官以外でも、高市政権でこの問いにきちんと答えた人間は一人もいない。
 それは彼らの本音が、とても口に出せるようなシロモノでないからだ。もっといえば、皇室を軍国主義、独裁体制構築に利用しようと女性差別丸出しの論理で男系男子の皇位継承を制度化した井上毅と同じだからだ。
 そういう意味では、今回のトンデモ改正は皇室の在り方にとどまる話ではなく、安倍政権から引き継がれてきた戦前体制の復活と、戦争で国民に血を流させる国づくりの号砲と言ってもいいだろう。国連に言われるまでもなく、白紙撤回を求めて徹底的に批判していく必要がある
                        (編集部)