2025年12月31日水曜日

2025年が終わる - 中国との関係を完全に壊して戦争体制に入った戦後80年

 今年日本は「高市早苗」という極右を首相に選びました。
 折角常識人である石破茂首相が生れたのに、応援団を持たなかったために無理やり引きずり降ろされ最悪の首相が誕生しました。
 彼女は11月7日に国会で、「台湾有事で中国が戦艦を出せば、どう考えても存立危機事態である(日本は参戦する)」と発言し、立民党議員から繰り返し撤回を迫られても拒否しました、当然のことながら習近平は激怒し、彼から電話を受けたトランプが高市氏を電話で叱責するという事態を招きました。その時には高市氏はかなり落ち込んでいたそうです。
 驚くべきは高市ファンの発言であり、一応理論家と思われる人々も含め「謝る必要はない。取り消してはいけない」と声援する有様で、それに励まされてか彼女は今や完全に居直っています。そこが何とも浅はかな点なのですが。
 さらに驚くべきことに、1221から自民党議員30人が続々と訪台頼清徳と会談」し、24日の記者会見では長島昭久と並んで鈴木馨祐が「『第1列島線、第2列島線にしっかりとした抑止力を構築していかなければならない』『日台両国でしっかりと連携して抑止力をどう強化し、機能させられるのかを含めて意見交換した」と発言したということです

 ついに行きつくところまで行ってしまいました。
 国会議員であれば当然それなりの見識があるはずなのに…、トップが狂っているとこうなるということなのでしょうか。国会議員は1978年の日中国交再開時に立ち戻って。日本は中国とどんな合意をしたのかを認識すべきです。今更の身勝手な解釈は通用しません。
 現在中国から多少の嫌がらせは受けてはいますが、これほど中国を蔑ろにしてはこのままで済む筈はありません。
 世に倦む日々氏の怒りのブログです。
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2025年が終わる - 中国との関係を完全に壊して戦争体制に入った戦後80年
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2025年が間もなく終わる。12/21 から自民党議員30人が続々と訪台し、頼清徳と会談する様子がテレビで報道されていた。今年最後の記事だが、この問題を素通りすることはできない。長島昭久と並んで 12/24 に会見の場に立った鈴木馨祐が、「第1列島線、第2列島線にしっかりとした抑止力を構築していかなければならない」と言い、「日台両国でしっかりと連携をして」「抑止力をどう強化し、機能させられるのかを含めて意見交換した」と発言した。日本のテレビ報道はこれをそのまま放送した。高市の代弁だ中国の政府と人々はこのニュースに接して、あらためて深刻な衝撃を受けただろう。日本と台湾の間には相互安全保障条約はない。軍事協力する協定もない。国交すらなく、国家間の関係は何もない。日本は72年の日中共同声明で台湾を中国の一部と認めている。その日本の自民党議員が、高市早苗の名代たちが、注視する世界を前に平然とこう言い放った

明らかに、11/7 の高市早苗の「台湾有事=日本有事」答弁から始まった日中の外交紛争と中国側の日本非難の攻勢を受けての、高市政権側からのカウンターメッセージの発信である。強烈な反撃だ。鈴木馨祐は「日台両国」と記者の前で明言していて、台湾を国家として認めている。意図的にその既成事実を作っている。その上で、事実上台湾が日本と軍事同盟関係にある国家と位置づけ、敵国である中国から台湾を防衛する意義を確認し、共同一体で軍事対抗すると表明している。これはきわめてザッハリヒ⇒即物的)極限を超えた中国への挑発だ。高市政権の右翼遊撃隊による、中国に対する断交宣言と開戦予告の弁だと言っていい。ここまで踏み込むのかと仰天したが、日本のマスコミ報道では批判は皆無で、注目して取り上げることさえしなかった。こんな危険な(暴挙の)メッセージを外交の場で発したら、中国側がどんな厳しい報復に出るかという不安や予想さえマスコミ空間では語られなかった

12/26 には河野太郎が訪台して頼清徳と会談、日台EPAの締結について協議した。7年の2月、河野太郎は華春瑩とツーショットの写真を撮り、それを得意げに Twitter に上げて拡散した一件があった。安倍政権時代の余聞で、悪化する日中関係の中で改善の気運が多少高まり、同年10月に安倍晋三が訪中という外交経過があった、その準備途上の出来事である。中国側が河野太郎に油断を見せたのは、河野太郎が河野洋平の息子であり、ポスト安倍を狙える将来の可能性を考えたからだ。河野洋平は日中友好の原理主義者だった。村山内閣の外相時代、外遊の帰路、搭乗した飛行機の急な不具合か何かで台北空港に緊急着陸した際、中国との関係を慮って一歩も機外に出なかったという有名な逸話がある。河野太郎は狡猾に中国側を騙して手玉に取った。日本側の常套の欺瞞の手口であり、何度も繰り返されている。ネットに上がった写真は半永久的に残る。今、華春瑩は立場がないだろう

そして暮れも押し詰まった 12/29、中国軍が台湾周辺で2日間の軍事演習をすると発表して実行した。年越しのネットは関連する情報で騒然とし、正月も余波が続いて対中憎悪感情がいちだんと増幅するに違いない。高市発言の後、11月中旬、中国側が激越な抗議を開始し、渡航自粛や水産物輸入停止に出たとき、それでも高市が撤回しない場合は軍事的措置にエスカレートするだろうと私は予想した。案の定、空母遼寧の太平洋側北進や戦闘機によるレーダー照射、爆撃機の四国沖上空接近などが続いたが、今度は台湾周辺での軍事演習に出てきた。中国軍報道官は「台湾の独立勢力と外部の干渉勢力に対する重大な警告だ」と主張している。察するに、自民党議員団の訪台とそこでのメッセージへの応酬措置だろう。中国側の立場と論理からすれば、高市政権の対中戦略の連打(核保有継戦能力・訪台)とエスカレーションは、座視も看過もできない暴挙で、国家安全保障上の窮迫の脅威に他ならない

12/3 に上げた記事で、高市発言の狙いは台湾関係法の日本版の制定へ向けての布石だと書いた。鈴木馨祐の発言は、台湾に対して軍事的に支援し、連携体制を固め、中国と対抗する決意を明らかにしたもので、まさに台湾関係法を日本が制定するという企図が露骨に示されている。元自衛隊トップの岩崎茂が今年3月に台湾行政院顧問に就任した動きとも絡み、水面下で実務工作が進んでいる内情が察知される。不思議なのは、マスコミだけでなくネット空間の議論でも、台湾関係法というキーワードが誰からも言挙げされない点だ。左翼リベラルの方面からも音無しで、布施裕仁や半田滋からも、内田樹からも指摘がない。警戒警報が発信されない。本来であれば、TBS報道特集が企画を立て、台湾現地を取材し、この動きを監視し分析している台湾のジャーナリズムやアカデミーの見解と批判が日本の視聴者に届けられて然るべきだろう。日下部正樹が猛烈な反中共派であるため、そうした必要な報道が提供されない

2025年は、戦後80年の記念すべき年であったが、残念ながらそれに相応しい、戦争を反省して平和を誓う年にはならなかった。それとは正反対の方向に進み、戦争以外に道はない体制に固まる年になった感が強い。テレビでニュース番組が流れる度に、ワイドショーの放送が行われる度に、スタジオから戦争プロパガンダが撒かれ、中国との戦争が肯定化され、視聴者の意識が戦争に積極的な方向へ傾けられて行く。中国共産党の独裁国家を打倒し、民主主義台湾を防衛するのが日本国民の使命であるという「正論」が塗り込まれ、その立場が多数なのだぞと説教され、マスコミの「世論調査」で「証明」されて行く。中国との戦争に反対する者は異端であるという環境に包囲されて行く。その潮流に抵抗すべく140字の構文を作って意見すると、忽ち「中国人の工作員」だの「反日クズ左翼」だのの揶揄と侮辱に撃たれ、汚い誹謗中傷の洪水となる。右翼の迎撃に遭い、凶悪で野蛮なリンチ禍の洗礼を受ける。何人かはXのリプ欄を閉じた

暗黒に沈む戦前の風景そのものの2025年だが、愉しく気が緩む出来事もあった。一つは社会主義者でイスラム教徒のマムダニがNY市長選で勝利した快挙である。この殊勲の政治は、中国ではどう紹介され解説されているのだろう。中南米諸国ではどういう反応と評価だったのだろう。キューバやイランはどう受け止めたのか。インドやベトナムやインドネシアではどうなのか。残念ながら、それらの状況が日本の報道で説明されることはなく、明確な一般像を結ぶことはない。だが、まさにブレイクスルー⇒突破)の一撃であり、対抗軸の存在と実力が明らかになった希望の絵だった。保守、保守、保守と、保守主義ばかりが称揚され、社会成員の全てが自己を保守の一員として定義し、保守の外皮で保護された内実たる資本主義を肯定しなければならない思想的牢獄の中で、進歩の光が見えた瞬間だった。人類の進歩はあるのだ、確信を持とうと、丸山真男の霊に語った小田実の言葉を思い出す

NHK連続ドラマ『あんぱん』で蘭子役を演じ、国民を熱中させ絶賛を浴びた河合優実の迫真の演技と、その後に週刊誌で発した反戦の言葉も、記憶に刻み込むべき2025年の重要な一事だと思う。戦後80年らしい印象的な場面は、24歳の若い河合優実によって作ってもらった。「この時代にちゃんと戦争にノーを言う人をいま演じられたのは、すごく意義があると感じたし、大切に演じたいと思いました」「反戦は、いま当たり前の価値観であってほしいですが、軍国主義に傾くのぶや世の中に、また、ドラマを通じて今の世界に、私が強い気持ちで伝えないといけない、と感じていました」と堂々と発言した。さらに「今、一番関心のある社会問題は? と問われると、『強いて選ぶならガザのことです』」とも。再読してありがたくて涙が出る。反戦の意思を最後まで貫き、それを常に公言し、今年逝った仲代達矢の姿と重なる。俳優は無数にいる。だが、仲代達矢や河合優実と同じ姿を見せられる、価値ある役者、勇気と知性のある役者はほとんどいない

熊のことや米のことや、新浪剛史の大麻事件や、名古屋の事件のことや、映画『国宝』の感動や、石井大智と新庄剛志の活躍のことや、いろいろ評論して2025年を振り返りたいが、長くなるのでここで筆を置こう。大きな病気もなく一年過ごすことができ、大濠公園の満開の桜や永観堂の紅葉のライトアップも見ることができた。来年は久しぶりに経済の問題に焦点が当たりそうな予感がする

出生数激減の責任は政府にある(植草一秀氏)

 植草一秀氏が年末に当たり掲題の記事を出しました。
 今年の出生数67万人を下回る可能性が高く1899年に関連統計が集計されて以来の最低値になるということです。
 他方、日本の死亡数は2020年には137・2万人でしたが、2021年から激増し2024年には160万人を突破しました。年間23万人超が定常的に増えた理由は21年以降に実施された「コロナワクチン接種」によるものと推定され、この増勢は今後も続きそうです。
 結果的に 今後は人口が年間約100万人ずつ減少することが確定的です。

 植草氏は「出生数の減少が続けば日本の年齢別人口構成で若い人の比率がさらに低下する。これは社会の活力を著しく低下させる原因になり、極めて深刻な事態である」、
「子どもを産み育てるという選択肢が狭められているとすれば重大な問題だ」として、
「出生数が激減している主因として経済的な事情が存在する。子を産み、育てることを決断できる経済力が不足している」
「日本経済は30年間、ほぼゼロ成長を続けてきた。そのなかで、生産の結果生まれた果実の多くを資本側が奪ってきた。労働者の分配所得が減少し続けてきた。これが出生数減少の最大の原因。最大の責任は政府にある」と述べます。
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出生数激減の責任は政府にある
                植草一秀の「知られざる真実」2025年12月30日
2025年の出生数が67万人を下回る可能性が高まっている。
竹内智子氏による記述によると、12月28日のFT(ファイナンシャル・タイムズ)が人口統計専門家による本年10ヵ月間の暫定データを基にした推計で25年の日本人出生数が67万人に達しないと予測したという。https://x.gd/RWUQ9
1899年に関連統計が集計されて以来の最低値。

政府が示した最も悲観的な「下位シナリオ」の出生予測値68万1000人をも下回る水準。
国立社会保障・人口問題研究所2023年予測における中位推定では25年の出生数は77万4000人。
67万人を下回るのは2046年とされる。
政府の中位推定よりも21年も早くに出生数が67万人を下回ることになる。 

他方、日本の死亡数は2021年から激増した。
2020年の死亡数は137.2万人で19年比で0.8万人減った。
コロナパンデミックが広がった2020年の日本の死亡数は前年比減少だった。
ところが、2021年から死亡数が激増。2024年には160万人を突破。
日本の年間死亡数は2020年から25年に23.3万人も激増。












戦時を除くと人口統計開始以来、未曾有(みぞう)の死亡数激増である。

「人口ピラミッド」という言葉がある。
年齢階層別の人口をグラフ化する際に、縦軸に年齢階層を下から上に並べ、各階層の人口を男女別に横に張り出した棒グラフで表示する。
年齢の低い階層の人口が多く、高齢になるほど人口が減る。
この形状を「ピラミッド」と表現する。
ところが、現在の日本の年齢階層別人口構成は「ピラミッド」で表現されない。
「釣鐘」でもなく「提灯」である。
















年齢の低い階層の人口が激減している。人口の棒グラフは時間が経過しても増えない。
死亡者が人口から取り除かれて減るだけだ。
「提灯」のボトムの人口が時間の経過によって増えることはない。

2025年の死亡数も年率160万人ペースで推移している。
24年まで激増した死亡数が減少しない。他方、出生数は急激な減少を続けている。
この結果、日本の人口が1年間に約100万人が減少する状況が生まれている。
2026年は丙午(ひのえうま)。丙午の女性は気が強く、夫を食い殺すという迷信が流布され、丙午の出生を避ける行動が過去に見られた。
前回の丙午の1966年は出生数が前年比25%も減少した。2026年も出生数のさらなる減少が見込まれる

2021年から日本の死亡数が激増した主因はワクチン接種にあると考えられる。
ワクチンと死亡数激増の因果関係を「科学的に立証する」ハードルは高い。ワクチン関係業界は両者の因果関係を懸命に否定しようとする。
しかし、ワクチン接種に連動して日本の死亡数が激増したのは事実である。
また、ワクチンが重大な健康問題を引き起こすと強く警告した科学者が多数存在する。
これらの状況を踏まえると、ワクチン接種により日本の死亡数が激増したと考えるのが素直と言える。

出生数の減少が続けば、日本の年齢別人口構成で若い人の比率がさらに低下する。
これは社会の活力を著しく低下させる原因になる。極めて深刻な事態が進行している
価値観は多様化しているが、子どもを産み、育てるという選択肢が狭められているとすれば重大な問題だ。
出生数が激減している主因として経済的な事情が存在する。子を産み、育てることを決断できる経済力が不足している。

日本経済は30年間、ほぼゼロ成長を続けてきた。そのなかで、生産の結果生まれた果実の多くを資本側が奪ってきた。
労働者の分配所得が減少し続けてきた。これが出生数減少の最大の原因。
最大の責任は政府にある。

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31- トランプ化で激動した2025年

 田中宇氏が掲題の記事を出しました。
 田中氏が「米国の隠れ多極派」云々を言い出してからあちこち20年かそれ以上になるのではないでしょうか。
 トランプが登場してから世界の多極化は明瞭になりましたが、そのことに何も気づいていないのが日本であり、日本の外務省です。
 ただ不幸なのは、トランプが依拠している情報組織がイスラエル系のリクード派であるという点であり、トランプが今後もイスラエルの「非人道性」を阻止できないことを思うと絶望です。英国系の情報組織を凌駕するためには、そうするしかなかったということなのでしょうが。
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トランプ化で激動した2025年
                田中宇の国際ニュース解説 2025年12月30日
2025年は、トランプ政権になった米国が世界を大転換させていく激動が始まった1年間だった。大転換はこれから何年もかけて進むので、世界は2026年も激動し続ける。
世界は、戦後ずっと続いてきた英国系の米単独覇権体制(冷戦構造も、英米が中ソや反米左翼に「敵」を演じさせていた点で、単独覇権体制の一部だった)が崩れ、いくつもの「極」が立ち並ぶ多極型の覇権構造に転換していく。トランプが進めている大転換の本質は「多極化」であり「英米覇権の崩壊・自滅」である。トランプの多極型世界戦略

2025年にトランプが起こした最大の転換は、ウクライナ戦争の構図を「米英欧が団結してウクライナをテコ入れし、対露戦争を続ける」から「米国がロシアと結託してウクライナ戦争を終わらせようとする(演技をする)が、英欧が露敵視をやめたがらず、米国と英欧が対立する」に変えたことだ。
露敵視によって米英欧が団結して英米覇権を維持する策は、本質的に、戦後の覇権国になったはずの米国の上層部(諜報界)を前覇権国である英国が傀儡化し、英国が米覇権体制(=世界)を牛耳り続けるための策略だった。
バイデン前政権など、トランプ以前の米上層部は本質的に「英傀儡」「英国系」であり、英国系による支配を維持するためにロシア敵視が使われてきた(独仏EUや日豪の上層部も英傀儡)。

ウクライナ戦争も、英国系が露敵視によって米覇権を強化する策として始まった。だが実のところあの戦争は逆に、英国系を自滅させる謀略として最初から用意されていた。
米英欧がウクライナに支援した兵器類が戦場で露軍によって破壊され続け、米英欧が軍事力を浪費して自滅を深め、戦線自体は、ロシアが奪回したかったドンバス地方を取ってロシア領に編入した状態で膠着し続ける。
ロシアが大体勝った状態で、米英欧の軍事力が浪費される構図が早期から定着していた。今後もこの状態が続く。ウクライナ戦争は2026年末になっても続いているだろう。ウクライナ戦争の永続

トランプは表向き停戦しようとし続けるが、実際は停戦せず、停戦仲裁の茶番劇だけが続く。トランプは「反英」であり、ウクライナ戦争は英潰しの策だからだ。
トランプが大統領に返り咲いた後、米上層部の英国系は駆逐され、英傀儡である民主党はもう政権を取れない。トランプは、米国を英傀儡から離脱させた。
日本も高市政権が英傀儡の官僚機構の独裁体制を破壊し始めている。日本も英傀儡でなくなる。豪州などもいずれ変わる。英国系が残っているのは、英欧EUだけだ。
ウクライナ戦争が続くほど、英欧EUの英国系は、敗北が確定した対露戦争の構図の中にはめ込まれ続けて国力を浪費し、自滅していく
トランプもプーチンも、英国系を自滅させたい。米露は裏で連絡を取り続け、表向き停戦に努力しているかのように演じつつ、実際は停戦せず、英国系が完全に自滅するまで、ウクライナ戦争の構図を続けていく

2025年に大騒動だった(そして今後も延々と続きそうな)もう一つの戦争は、イスラエルのガザ戦争=パレスチナ抹消策だ。ガザ戦争も、英国系覇権の崩壊と関連している
イスラエルは、意図的に極悪な人道犯罪をやって世界をわざと怒らせている。なぜそんなことをするのか一見理解に苦しむ
だが、パレスチナ問題が、イスラエルを弱めたい英国系の謀略だったことと、人道主義が英国系の覇権戦略の根幹にあった策略だったこと、トランプ政権下で諜報界を握るイスラエルが大きな国際政治力(覇権)を持っていることを考えると、イスラエルは、強烈な人道犯罪をやっても潰されずむしろ台頭していくことを世界に示すことで、人道主義ごと英国系を無力化しようとしていると考えられる。ずっと続くガザ戦争

イスラエル(ユダヤ人)は、諜報や覇権の元祖だ。人類初の世界帝国だった英覇権(大英帝国)は、ロスチャイルドなどユダヤ人の諜報ネットワークの技能を使って世界を隠然と動かし、覇権をとって維持していた。
第二次大戦後、イスラエルが大英帝国から分離独立したが、その際に、独立したイスラエルが諜報力を使って独自の覇権を拡大したり、台頭して英国系に対抗せぬよう、イスラエルを弱体化させておく英国系の策が、イスラエルの国土を狭くする「パレスチナ分割」(や、ヨルダンやシリアやレバノンの建国)とか、英国系が諜報力でアラブ諸国を誘導してイスラエルと恒久戦争させる「中東戦争」だった

英米の上層部では、第二次大戦での英国から米国への世界覇権の移譲以来、世界覇権を分解して多極型にしたい米国勢(ロックフェラーなど。隠れ多極派)と、英国系の単独覇権を維持したい英国勢が暗闘し、英国系が冷戦を起こして多極派を封じ込めのに対し、多極派はベトナム戦争をわざと稚拙に過激にやって敗北させて覇権の自滅を引き起こし、米中和解や米ソ和解につなげた。

冷戦を終わりにされた英国系は「英米欧vs敵勢力」の覇権構造を復活するため、イスラム世界を敵に仕立てる第2冷戦的な「文明の衝突」を画策し、台頭してきそうなイスラエルもついでに騙して第2冷戦の分断の構図にはめ込もうとした(この部分は今回の新説)。それで出てきたのが、イスラエルの傀儡になるパレスチナ国家(PA)を作ってパレスチナ問題を終わりにするオスロ合意の構想だった。
オスロ合意でのパレスチナ国家は、ヨルダン川に接しておらず国土が完全にイスラエルに囲まれ、財政もインフラも治安維持もイスラエルの監視下に置かれる傀儡国家だった。イスラエル(労働党政権)は、これなら脅威にならないと判断し、アラファトを迎え入れてオスロ合意を結んだ。

だが、おそらくオスロ合意は、英国系がイスラエルを騙した罠だった(独自の新説。同時期に米国で「文明の衝突」から始まって、クリントン政権によるタリバン敵視策(ユノカルパイプライン案などのアフガン融和策から、「ならず者国家」策など敵視への転換)へとつながり、イスラム世界への敵視が強められた。
イスラエルがあのままパレスチナ国家の建国を進めていたら、2000年ぐらいにパレスチナ国家が完成して軽武装した警察隊が作られたあたりで、イスラム主義を強めたパレスチナ人と、今よりはるかに人道重視だったリベラルなイスラエルとの関係が悪化し、イスラエルは内部内戦的な不安定を恒久的に抱え込まされていた。

実際は、英国系が第2冷戦を起こして単独覇権を蘇生する前に、反英的な米国の隠れ多極派がイスラエルと米国のユダヤ人の右派(リクード系)と結託し、ラビン暗殺や入植地の急拡大に始まるイスラエルのパレスチナ敵視と右傾化、反リベラル化が始まった
リクード系は、もともと英国系が起案した「文明の衝突」の謀略を進める実働部隊のふりをして米諜報界に入り込んで乗っ取り、隠然と拡大していくはずだったイスラム敵視策を、911テロ事件やイラク戦争など超派手で過激で稚拙なテロ戦争に変質させた。
私の新たな仮説は、もともとイスラム世界を敵とする第2冷戦として英国系が起案したテロ戦争を、リクード系が途中で乗っ取り、英国系が企図しない外道的な911事件やイラク戦争を起こし、戦略を過激で稚拙なものにして、米英覇権を自滅させる策に転換したというものだ。
隠れ多極派が、リクード系を誘ってオスロ合意潰しや911事件、米諜報界の乗っ取りをやらせ、ライバルである英国系を潰した。諜報界では、謀略の乗っ取りや諜報員のなりすまし(背乗り)などが珍しくない。英国系潰し策としてのガザ虐殺

911事件以来、米覇権の運営担当だった諜報界はリクード系に乗っ取られ、もともとの黒幕だった英国系が追い出されていった。リクード系による米諜報界乗っ取りの完成が、トランプの登場だった(ウクライナ戦争を起こすために、諜報界が米民主党に不正をやらせてトランプをわざと落選させた後に返り咲かせた)。
ガザ戦争は、トランプの返り咲きが事実上内定した直後の2024年秋に開戦(ハマスを引っ掛けて侵攻させる策)した。開戦直後から、ガザ市街を全破壊する民族浄化の流れが見えていた。それまでイスラエルに脅されてもガザ市街から南部に避難しなかったガザ市民が大量に南部に避難した。

トランプの返り咲きが内定した時点で、世界的に英国系が潰されて米単独覇権がなくなり、多極型に転換することが決まった。イスラエルは、多極型になった世界がイスラエルにパレスチナ国家を作れと加圧できないようにするため、トランプ返り咲きの内定と同時に、パレスチナ抹消のガザ戦争を開始した
ガザ戦争は、今後も停戦しない。停戦したら、ガザ市街(=パレスチナ)を再建しろという話になるからだ。
世界的に、パレスチナ国家を作れと言い続けているのは、リベラル左翼とイスラム主義者たちで、彼らはいずれも英国系の(うっかり)傀儡だ。今後英国系の自滅が進んで力が不可逆的にゼロになったら、パレスチナ国家を作れと言っているリベラル左翼やイスラム主義者たちも頭が切り替わる。人道主義を求める世界的なちからが大幅に低下する。それまでイスラエルはガザを瓦礫の山のままにしつつ、西岸の人道犯罪を拡大する
トランプやイスラエルと親しくする世界各地の極右は、人道主義を軽視し、イスラム教徒にも手厳しい

米諜報界を乗っ取ったイスラエル(リクード系)は、非常に強い国際政治力を手にした。リクード系は、英国系の単独覇権を居抜きで取得した。単独覇権は崩壊しつつあるが、ある程度の力として残っている。
イスラエルはこの残余の覇権を使い、世界各地の諸国と関係強化していく策を展開している。アゼルバイジャンやカザフスタンやソマリランドなどのイスラム諸国が、ガザ戦争の人道犯罪を批判せずイスラエルとの国交を深めている。
トランプは、イスラエルが乗っ取った諜報力に依存しているので、イスラエルを助ける策を連発している。この点もイスラエルを強くしている。
イスラエルが国際政治力(覇権)を発揮するほど、多くの諸国がイスラエルへの非難を控える。

BRICSでも、中共や南アやブラジルはパレスチナ支持だったが、中共は最近パレスチナ支持を言わなくなった。南アはイスラエルをICJに提訴したが、トランプから制裁されるなど報復されている。
イスラエルは、ブラジルの左翼政権をへこますために、隣のアルゼンチンの右派ミレイ政権をテコ入れしている。ブラジル左翼政権は、右翼の前任者ボルソナロを投獄したが、イスラエルやトランプが諜報力を発揮し、いずれボルソナロは免罪され、本人もしくは息子が大統領に返り咲く

ウクライナ戦争もガザ戦争も、英国系潰しや多極化に関係しているのでまだ続く。2026年末までに終わらない
イスラエルの覇権拡大についても、まだ分析していない話がある。たとえば、日本で高市政権ができたことが、イスラエルの覇権拡大としての中国牽制策の一つだろうという話とか。いつも、肝心な話を書く前の基本的(マンネリ)な解説をするのに延々とかかり、肝心な話を書けずに終わる

2025年12月30日火曜日

30- 「自己責任」論と極右・排外主義の台頭 ① ~ ④ 石川康宏さんに聞く

 しんぶん赤旗に掲題の記事(連載26日~29日)が載りました。神戸女学院大学名誉教授 石川康宏さんのインタビュー記事で、興味深い内容です。
 7月の参院選では、当時の自公政権が過半数割れに陥った一方、極右・排外主義勢力が伸長しました。これは直前の6月頃に参政党が「日本人ファースト」を掲げ、並行してSNSで大量の「外国人優遇」のデマ宣伝を行ったのに、国民党や維新等が迎合したことから生み出されました。
 ところで戦前社会で支配的な地位にいた政治家、財界人、メディア関係者のかなりの部分が「米国従属」を条件に戦後も支配的な地位に留まったため、日本では極めて珍しい形態の「親米右翼」が形成されました。排外主義をあおる中心勢力は「外に侵略、内に弾圧の戦前社会を礼賛する復古主義者」であり、彼らによって戦後社会の禁じ手だった「極右・排外主義」の活用が生れました。
 その背景にはSNSに流される情報の真偽を自分で確認する習慣がまだ国民の身についていないことと、もう一つは貧困による生活上のストレスの蓄積、そして新自由主義社会で「自己責任」論を強制され、他者を理解する心のゆとりが奪われているという問題がありました。

 石川康宏さんは排外主義を語る極右勢力に一時的な期待をかけた特に若い人たちを そこから引き剥がすことはそう難しいことではないとして、「貧困は外国人のせいではない」のであり、「消費税減税、賃上げ、非正規を正規に、社会保障の充実」など切実な生活支援策に実際に取り組む政治を作ってくことへの合意を得ることが取り組みのキモであると述べます。
 現実に参院選直後の8月に7・1%の支持率だった国民民主党は12月には2・9%に、参政党も6・8%から同じく3・1%まで下がっていて、両党への支持は固いものではありません。
 そして極右とのたたかいに成功している欧米の取り組みを見ると、市民と政治について話し合う場合はまず相手の話をよく聞き、「どうして極右政党を支持するのですか」「何を期待しているのですか」を聞き取ることではじめてかみあった「対話」ができるようになるのであって、「対話」というと「説得」と誤解する人もいますが、肝心なのは「聞く」ことであり、その点では「黙る力」が大切であると指摘します。
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「自己責任」論と極右・排外主義の台頭 
       神戸女学院大学名誉教授 石川康宏さんに聞く
                       しんぶん赤旗 2025年12月26日
 7月の参院選では、当時の自公政権が過半数割れに陥った一方、極右・排外主義勢力が伸長しました。この背景に何かあるのか、市民の中に排外主義の主張が強まっているのか。国民生活の実態や「自己責任」論の影響を検討してきた神戸女学院大学名誉教授の石川康宏さんに聞きました。                      (行沢寛史

新自由主義ヘの怒
 -参院選で、極右・排外主義勢力が伸長しました。この傾向をどう見ますか
「外国人問題」が選挙の「焦点」として急浮上させられました。直前の6月頃に参政党が「日本人ファースト」を掲げ、同時にSNSで大量に「外国人優遇」というデマが流され、その動きに国民民主や自民、維新等が迎合しました。これを無批判に垂れ流したメディアの責任も大きかったと思います。

意図的にあおる
 ただしこの動きは多くの市民に排外主義の意識が先にあり、それを政治が拾い上げた結果ではありません。一部の人が意図的にそれをあおった結果です。排外主義のもともとの語源は 「見慣れぬものへの恐れ」だそうですが、一部の外国人による問題行動を誇大に宣伝し、「これでは日本がダメになる」と外国人一般への恐怖をあおるものでした。
 この問題を考える時に重要なポイントとなるのは、それがなぜいま日本に登場したのかということです。欧米でも排外主義とのたたかいは大きな社会問題となっています。レーガン・サ
ッチャ・中曽根イズムの時代から40年以上も資本の利益を優先する新自由主義の政策が展開され、その結果、貧富の格差が広まり、公共の破壊が進んで市民の中には強い不安や怒りがたまってきました。

復古主義が特徴
 その怒りが政治路線そのものの転換に向かうことがないように「貧乏は移民のせいだ」とする主張が、ヨーロッパでもトランプのアメリカでも広められています。根底には新自由主義を継続したい大企業や一握りの富裕層の強欲があります。参院選後にできた日本の高市早苗政権も、大企業奉仕の姿勢をまるで変更しようとしません。
 他方で排外主義の現れには、国ごとで違いもあります。日本では、国内に居住する外国人の比率は3%程度でしかなく、一部のインバウンドの問題をのぞけば、日々の生活で日常的に「外国人問題」に直面している人はほとんどいません。その分デマやあおりが大きな役割をはたしています。また日本で排外主義をあおる中心勢力が、外に侵略、内に弾圧の戦前社会を礼賛するとんでもない復古主義者だというのも特徴です。ヨーロッパではネオナチは取り締まりの対象ですが、日本では復古主義が社会に容認されています。そのため日本での排外主義の台頭は、日本による侵略を経験したアジア諸国の警戒心を強め、選択的夫婦別娃や外国人労働力の確保などをめぐ財界とのあいだにも一定の摩擦を生んでいます。 (つづく)


「自己責任」論と極右・排外主義の台頭 
       神戸女学院大学名誉教授 石川康宏さんに聞く
                       しんぶん赤旗 2025年12月27日
 -排外主義をあおる政党にあれほど票が集まったのは驚きでした
 国民の中で排外主義の意識が先にあったわけではありませんが、あおりにつけこまれやすい状況はあったと思います。一つはSNSに流される情報の真偽を自分で確認する習慣が身についていないという問題です。若い世代だけでなく中高年まで広く見られる問題です。もう一つは貧困による生活上のストレスの蓄積、また「自己責任」論を強制され、他者を理解する心のゆとりが奪われているという問題もあります。
 日本の賃金や世帯所得のピークは1997年で、そこから市民の暮らしは悪化して、くわえて2022年以降の急激な物価高です。若者からは「明るい未来があるとは思えない」、子育て中の親からは「こんな社会に産んでよかったのか」、高齢者からは「死ぬまで働かないといけないのか」と、街頭アンケートでも悲痛な声が寄せられます。
 これまではそうした不安や怒りを抑え込む方法として「自己責任」が強要されました。政党では自民党、公明党、日本維新の会が特にこの先頭に立ってきました。しかし、もはやそれだけでは通用しなくなってきた。自民、公明、維新は選挙で負け続け、自公政権は衆参ともに過半数割れに追い込まれました。

「生賛(いけにえ)」づくりで補足

新しい呪いで
 そこで「自己責任」論を新しい「生賛(いけにえ)」づくりで補足する試みが登場します。24年衆院選で国民民主党が「現役世代の貧困は高齢者のせい」「高齢者に尊厳死を」と訴えたのが典型です。社会の混乱や貧困は「生意気な女」のせいだ、「外国人」のせいだといった新たな生費がつくりだされ、たまったストレスをそこに向けて発散せよという呪いをかけられてしまったのです。
 これまでも公務員バッシングや生活保護バッシングなどの世論操作があり、最近の「財務省解体デモ」も市民の怒りを自民党政治の本体に向かわせない役割を果たしてきましたが、今回はそれがいよいよ戦後社会の禁じ手だった極右・排外主義の活用に進んだという感じです

 -それには相当に大がかりな仕掛けが必要ですね
 すべてが一つの司令部からコントロールされているわけではありません。自民党と参政党などのあいだにも主張の違いがあります。大企業・財界と復古主義のあいだにも摩擦があります。たとえば参院選で「外国人問題」がクローズアップされたことに、経団連の筒井義信会長は「事実にもとづかない」「感情的な論」では海外からの評価が下がる、海外から労働力で必要なものとして「地域への定着」もはかるべきだと述べています。

復古主義の歴史
 排外主義の主張の中心に立つ復古主義者については根深い歴史があります。戦前社会で支配的な地位にいた政治家、財界人、メディア関係者のかなりの部分が、アメリカヘの従属を条件に戦後も支配的な地位に生き永らえました。アメリカの占領政策によって巣鴨の拘置所から出され、後に自民党結党の中心に立った岸信介が、戦時中に中国人強制連行を命じた商工大臣で「満州国」の重要官僚だったことは象徴的です。戦前社会を礼賛するが、アメリカの横暴には決して抵抗しない戦後日本の「親米右翼はこうして形成されたのでした。  (つづく)


「自己責任」論と極右・排外主義の台頭 
       神戸女学院大学名誉教授 石川康宏さんに聞く
                       しんぶん赤旗 2025年12月28日
 -その後、復古主義者らは どのように行動したのでしうか
 新憲法と戦後の民主化の努力のなかで、靖国神社の「国家護持」を求める他に、これら勢力が政治の世界の前面に大きく立ち現れることはありませんでした。そこヘ1990年代に変化が起こります。女性の権利向上を求める世界的な取り組みのなかで「慰安婦」問題がクローズアップされ、93年に日本政府は「お詫(わ)びと反省」を含む河野談話を発表します。95年には村山内閣が侵略と植民地支配への「反省」を語る戦後50年談話を出しました。

戦前日本を賛美
 こうした経過に強い危機意識をもった極右勢力は、93年、自民党内に「歴史・検討委員会」をつくり、95年にはかつての侵略は正義だったとする『大東亜戦争の総括』を出版します。97年には今日の極右勢力の最大の拠点である「日本会議」が発足し、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」や「新しい歴史教科書をつくる会」もつくります。安倍晋三氏は「歴史・検討委員会」に1年生議員としてくわわり、「若手議員の会」「岩盤保守」の危機感では早くも事務局長をつとめました。
 岸信介の孫という政治的な「血筋」も背景に、安倍氏は2006年に極右勢力の期待を背に戦後最年少の首相となります。戦前日本は「美しい国」だったとの主張を前面に立ててのことでした。そして安倍内閣は教育基本法に「愛国心」をねじ込み、憲法改定にむけて国民投票法を制定しました。しかし「慰安婦」問題での中国などとの対立をきっかけにブッシュ米政権からも批判を受け、さらに参院選で大敗して07年に短命で退陣に追い込まれます。しかし2度目の12年からの政権では、極右色と財界やアメリカの要望のバランスをとって20年までの憲政史上最長の政権を実現しました。この時、自らの政権を支える固い右翼的な支持者のことを安倍氏は「岩盤保守」と呼びました。

自民支持を離れ
 その「岩盤保守」が、安倍氏亡き後、自民党支持から流れだし、国民民主党へ、参政党へと支持の先をかえることで、自民党を後退させながらそれらの政党に排外主義を語らせる原動力となっています。

 -こういう状況をどのように乗り越えていくべきでしうか。
 問題を考える前提として確認しておきたいのは、「岩盤保守」の自民党離れをつくったのが「アベ政治を許さない」という市民の批判の声だったということです。安倍氏から菅義偉氏へ、岸田文雄氏へ、石破茂氏へと総裁がかわる中で、自民党の極右色は薄まって、特に石破氏は「選択的夫婦別姓容認」「女系天皇の検討」とまで語るようになりました。こうした変化に追い込まれたことが「岩盤保守」の最近の動きのきっかけです。再び「岩盤保守」にすり寄った高市早苗内閣が一時的に内閣支持率を高めていますが、自民党への支持回復は微々たるもので、市民による自民党政治への批判はいまも続いています。  (つづく


「自己責任」論と極右・排外主義の台頭 
       神戸女学院大学名誉教授 石川康宏さんに聞く
                       しんぶん赤旗 2025年12月29日
し支援求める声

 -自民党が後退する一方、「補完勢力」や排外主義の勢力が伸びています

経済問題で選択
 確認しておきたいのは参政党や国民民主党への特に若い世代の支持の集まりが、排外主義への同調ではなくむしろ「手取りのふえる夏」などの物価高対策、生活支援策への期待に基づくものだったということです。「日本人ファースト」への共感も、外国人排除より「私たちのくらしをまずなんとかしてほしい」という切実な思いに基づくものでした。安倍氏退陣直後の2021年衆院選から25年の参院選までに自民党は710万票を減らしましたが、その間に国民民主党、参政党、保守党の得票は1540万の増となっています。SNSの活用など極右の「ネトウヨ」力が特に多くの若い支持者を集めたわけです。しかし、参院選の出口調査によると「外国人政策」を基準に投票先を選んだ人は全体の7%程度しかおらず、80%近くが物価高、年金、子育て対策などを基準としています。「外国人政策」が大きな話題となったのは事実ですが、それにもかかわらず投票先を選ぶ基準は圧倒的に経済問題だったということです。それほどに生活が大変な状況になっているわけです。
 ですから、排外主義を語る極右勢力に、結果的に一時的な期待をかけた特に若い人たちをそこから引き剥がすことはそう難しいことではありません。排外主義に陥ってはならないという訴えは当然ですが、同時に「貧困は外国人のせいではない」「消費税減税、賃上げ、非正規を正規に、社会保障の充実」など切実な生活支援策に実際に取り組む政治をつくっていこうと、そういう合意をつくっていくことが取り組みのキモです。
 実際、参院選直後の8月に7・%の支持率だった国民民主党は12月には2・9%に参政党も6・8%から同じく3・まで下がっています。彼らへの支持は固いものではないのです。ちなみに高市早苗内閣の高い支持率にもかかわらず、自民党も29・4%から30・6%にしか上がっていません。(NHK調査)

願いよく聞いて
 極右とのたたかいに成功している欧米の取り組みは、SNSとリアルな対話の双方で新しい努力をしています。「ネトウヨ」や無責任なインフルエンサーに負けないSNSの力を養いながら、シール投票やアンケートなどを入り口に街頭で多くの市民と政治について話し合う。その時に、まず相手の話をよく聞いているんですね。「どうして極右政党を支持するのですか」「何を期待しているのですか」と。それを聞いてはじめてかみあった「対話」ができるようになる。「対話」というと「説得」と誤解する人もいますが、肝心なのは「聞く」ことで、その点では「黙る力」が大切です。
 極右勢力本体とのだたかいでは、アメリカにものが言えない「親米右翼」に日本が守れるかということが議論の核心になるかと思いますが、まずはじっくり政治に対する多くの人の切実な願いを聞くことが今とても大切だと思います。       (おわり)