2026年5月30日土曜日

日中関係の深刻な困難の根源/最新版よ党・ゆ党・や党分類(植草一秀氏)

 植草一秀氏の掲題の2つの記事を紹介します。
1番目の記事)
 中国商務省の何亜東報道官は最近の記者会見で、「日本が日中関係悪化の根源を直視し、正常な交流の条件を整えるよう求める」「両国関係の深刻な困難の根源は高市首相による誤った言動にある」と述べました。
 1972年の日中国交正常化に際して出された「日中共同声明」では、「『台湾は中国の一部である』という中国の主張を、『日本は十分理解し、尊重する」でまとめようとしましたが、それでは中国が納得しなかったため「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」を書き加えて決着しました。明文上「台湾は中国の一部」という文言はありませんが、「ポツダム宣言の遵守」を謳うことでそれに替えたのでした。
 それに対して「台湾有事があれば日本は参戦」するとほのめかした高市氏の国会発言は、日中国交正常化での共同声明」を蔑ろにするものなので 非は高市氏の側にあり、「中国が容認できないのは当然である」と植草氏は述べます。
2番目の記事)
 植草氏は「2月8日総選挙で自民が多数議席を獲得したが、比例代表選での自民得票率は37なので、この比率で議席を配分すると自民議席は171。自民が316議席を獲得した主因は小選挙区マジックでしかない」と述べます。
 そして「現状は国会勢力の大半が『よ党』と『ゆ党』に占有され」ていて、「真の野党勢力の結集が必要」であるが、その「たしかな野党勢力結集の最重要の柱は『対米自立』である」と述べます。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日中関係の深刻な困難の根源
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年5月29日
品格ある国家として日本は、是を是とし、非を非とする真摯な姿勢を示すべきだ。
共同通信が、中国商務省の何亜東報道官は5月28日の記者会見で、
(日本が日中関係悪化の)根源を直視し、正常な交流の条件を整えるよう求める
と述べたと伝えた。 https://x.gd/KiHR1

5月22、23日に江蘇省で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に際して赤沢亮正経済産業相が王文濤商務相との正式な会談を求めたが中国側は応じなかった。
会合では赤沢経産相が王商務相に歩み寄って短時間の立ち話をしたが、中国は正式な会談に応じなかった。

中国商務省の何報道官は「両国関係の深刻な困難の根源は高市早苗首相による誤った言動にある」と改めて主張したと報じられた。
問題の根源は昨年11月7日の衆議院予算委員会での高市首相答弁。これまで指摘しているように、誤りを正すべきは高市首相の側である。中国の肩を持っているのではない。中立公正の視点から発言内容を検証して指摘している。この指摘に対する説得力のある反論は示されていない。

日本のメディアも問題の根源を精査して掘り下げる報道をしていない。これでは国が亡びる。
是は是、非は非である。対外関係においては、この原則を揺るがしてはならない。
中国に非があるなら堂々と主張すればよいしかし、日本に非があるなら率直に非を認めて謝罪するこれが品格ある国家の対応だ

高市首相は11月7日の国会答弁で次のように述べた。
「(台湾有事が)戦艦を使ってですね、そして、武力の行使もともなうものであれば、ま、これは、あのー、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。」
ここで高市氏は米軍の関与に触れていない。

しかし、「集団的自衛権の行使」にかかる文脈であるから、高市氏が前段で述べた「例えば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。
まあ、こういった事態も想定されることでございます」
を踏まえて、台湾有事で米軍が来援したとの前提での発言だったと下駄をはかせておく。

高市首相は、「台湾有事で米軍が来援した際に、戦艦を使い、武力の行使をともなうなら、どう考えても存立危機事態になり得るケースと考える」と述べた。
存立危機事態は集団的自衛権行使の要件。存立危機事態を認定すれば集団的自衛権を行使できることになり、この場合は米軍の後方支援をする、あるいは、米軍とともに中国と戦争する、ということになる

問題は、日本が中国との間で、台湾問題についてどのような取り決めをしてきたのかである。
最重要の取り決めは1972年の日中共同声明。
中国が核心的利益の核心としてこだわったのが台湾の中国帰属問題。
「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」とする中国の立場を、日本は「十分理解し、尊重する」で声明文をまとめようとしたが、中国が拒絶。
この表現のあとに、「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」を書き加えて決着した
その意味は、日本政府が台湾の中華人民共和国への返還を認めるということ。
これ以降、日本政府は、台湾と中華人民共和国との間の問題を「中国の国内問題」としてきた。

高市発言は、この取り決めを否定するものになっており、中国が容認できないのは当然である。
 
(お願い)
情報拡散を推進するために「人気ブログランキング」クリックをぜひお願いします。


続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4430号

「残念だが非は高市首相にある」 でご高読下さい。
この機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひぜひぜひお願いします。 https://foomii.com/00050
 
『ザイム真理教』(森永卓郎著)の神髄を深堀り、最重要政策争点財務省・消費税問題を徹底解説する新著を上梓しました。
財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』(ビジネス社)https://x.gd/LM7XK
ご高読、ならびにアマゾンレビュー、ぜひぜひ、お願いします。
 
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。
 
 
最新版よ党・ゆ党・や党分類
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年5月30日
5月16日(土)に開催した『ガーベラの風』イベント
戦争と壊憲の危機にどう立ち向かうか-「対米自立」「平和と共生」の政治実現に向けて-
https://x.gd/DRjcg、  https://x.gd/kuYcm
「ガーベラの風」としては「対米自立」「平和と共生」の政治勢力結集を求めている。

高市自民が2月8日総選挙で多数議席を獲得したことを背景に、横暴な政権運営を強めている。
その結果生み出されているのが「戦争と壊憲の危機」である。
国家情報会議、国家情報局を創設する法律制定を強行した。「令和版特高警察創設法」である。
財政運営では利権補助金バラマキを拡大しているが高額療養費制度大改悪を強行し、
OTC類似薬の本人負担大幅引き上げを強行する。
財政運営での基本は 1.社会保障を切り 2.利権補助金バラマキを拡大する というもの。
戦争と弱肉強食」の政治が推進されている。

2月8日総選挙で自民が多数議席を獲得したが、比例代表選での自民得票率は37%。
この比率で議席を配分すると自民議席は171。
自民が316議席を獲得した主因は「小選挙区マジック」でしかない。
全有権者を分母とすると比例代表で自民に投票したのは全体の20%。5人に1人しか自民に投票していない。その高市自民が独裁政治を行うことは正当でない

ところが、メディアが高市内閣を擁護する。背景は何か。米国である。
高市内閣が対米隷属だからメディアが高市内閣を批判せずに擁護する。
孫崎享氏が強調したのは、高市壊憲推進政策の本質。高市壊憲政策の本質は、米国が自衛隊を意のままに支配することにある。この点を孫崎氏が強調された。

日本政治刷新が求められるが、何よりも重要なことは「対米自立」を中心に据えること
鳩山元総理は1996年に民主党を創設した経緯に触れてこう述べた。
「新しい流れを作るためには政策の柱を立て、その柱のもとに一人一人が政党を抜け出し、「苦しいけれども新しい旗を一緒に立てよう」という「この指とまれ」方式でやらなければ無理だ。」「新しい政治の流れをつくる時には、国民の皆さんにこの政党ならしっかりやるだろうという期待を持たせるような位置づけをしない限り、支持を得るのは難しい。」
その通りだと思う。

イベント後半で立民前衆院議員の平岡秀夫氏、川内博史氏、共産参院議員の小池晃氏が討論した。
真の野党勢力の結集が必要であるとの議論のなかで小池氏が強調したのは次の点だ。
「米国に対する向き合い方をはっきりさせることが必要」これが、今回イベントのメインテーマである。
国会勢力の大半が「よ党」と「ゆ党」に占有されている。
いまこそ、「たしかな野党」が必要である。その野党勢力結集の最重要の柱が「対米自立」である

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4431号
「根幹は米国への向き合い方」 でご高読下さい。
                 (後 略)


30- 「路上のラジオ」資料の紹介(ファンクラブニュース第29号)

「路上のラジオ」(主宰者・西谷文和さん)から送られてきた資料を預かりましたので紹介します。
1.主宰者・西谷文和さんの挨拶状

 路上のラジオに募金していただいたみなさん
             講演会に参加されたみなさんヘ
 ラジオを間いてくださり、そしてご支援をいただきりがとうございます。
この手紙を書いている5月12日の最高気温は27度。週末は30度を超えるとされています。昔は1年で一番爽今かな季節と言われたち月が、今や真夏日になっています。戦争と地球温暖化は「今そこにある危機」です
 地球温暖化の原因第1位は何か?大手メディアはほぼ沈黙しているのですが、それは間違いなく戦争です。一昨年、ようやくロイターがその数字を報道しました。温室効果ガスの55%を戦争が出している。しかしこれは控えめな数字で、軍事機密で隠された分軍事演習でも大量にガスを出しているので、地球全体の10%程度は戦争が出しているのでは?と考えます。ちなみにF15戦闘機が1時間飛ぶと、8千リットルの石油を燃やします。戦車も燃費が悪く、石油1リットルで200しか進みません。
 つまり「温暖化を止めたいとったら、今すぐ戦争を中止せよ」が正解なのです。レジ袋紙ストローでは止まらない。ちょっと考えたらわかることですが、なんとなくレジ袋をやめれば温暖化が止まるかのような、言説が繰り返されています。
 これはなぜ?おそらく温暖化の本質=戦争がバレてしまえば、軍事企業が儲からない、の軍事企業はテレビやネットの巨大スポンサーである、から本質を隠すのです。
 イラン戦争でホルムズ海峡が事実上封鎖されていて、おそらく日本は6月頃から大ピンチになります。しかし私たちは「ピンチをチャンスに変える」力を持っています。エネルギーを中東の石油に頼るのではなく再生可能エネルギーに大転換するチャンスと捉えるのです。
 大陽光風力に加えて、川の流れが早い日本では、小さな水車を並べて「小水力発電」が可能です。火山が多い=地熱に恵まれている日本は地熱発電の潜在能力があります。
 火力発電は天然ガスや石炭が必要ですし、原発はウランを買わないとダメ。それどころか英仏に高い金を出して、MOX燃料を作ってもらっています。再生可能エネルギーは、「原料費が無料」なので、その浮いた分で村おこしができます。東京からやってきたメガソーラ事業に任せると、利潤は全て東京へ。その村町に合った方法、地熱や小水力でエネルギーを地産地消し、余った分を販売すれば、町村が元気になれます。
 ピンチをチャンスに変えるには、政治を変えるしかありません。東電関電から献金=ワイロをもらっている自民党や、巨額の広告で黙らされているメディアではダメ。ミニコミではありますが、引き続き、「闇の部分」にスポットを当てていきたいなと考えています
 引き続きのご愛聴とご支援をよろしくお願いします。
                    2026年5月12日   西谷文和


2.路上のラジオ ファンクラブニュース 26.5.20  29号(全4頁)PDF版
  ファンクラブニュース第29号の主なテーマは
 ・2人のTACOと1人のNECO
 ・引き続きタブーなしで
 ・2025年度家計報告
 ・「編集長より」/「編集後記」
 です。
  下記をクリックするとご覧になれます。2頁以降は画面を下にスクロールするとご覧に
 なれます。
 本文4頁 PDF版
https://drive.google.com/file/d/1wnTWVZjEgs2GPiS7-U4PJ_yzhL0IwcyV/view?usp=sharing 

3.新刊紹介 『なぜ中東で戦争が終わらないのか』
            かもがわ出版  西谷文和 著
 リーフレット1頁 PDF版
https://drive.google.com/file/d/1tU401_wUktfcxstNJstPmQeIWtviezjM/view?usp=sharing 

2026年5月28日木曜日

台湾への武器売却問題の真相 - アメリカには中国と戦争する継戦能力がない(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 トランプがイスラエルにたぶらかされて簡単にイラクを転覆できると思いこんで始めた対イラン攻撃でした。イランは大変な被害を受けましたが、それでも中東にある16の米軍基地を攻撃して、殆どを機能不全状態に陥れました。そしてイスラエルにも相応の被害を与えました。
 米国はこの攻撃で、攻撃用ミサイルと防御用ミサイルを大量に消費し、「その補充の目途も立たなくなった」ため休戦せざるを得なくなりました。
 しかし数ヶ月程度の休戦では大量のレアアースを必要とするミサイルの補充などはできません。従って今後はトランプとしては、どんな風にして外面的に「勝利」を演出して「名誉ある撤退?」をするかが課題ですが、それはひと口に言えばとても困難なことです。
 一方ネタニヤフとしては、戦争を続けていないと自分が逮捕される可能性があるので、ひたすら戦争を継続するしかないようです。とは言えイスラエルだけで対イラン戦争を続けられるかと言えばそれは無理でしょう。
 ところで高市氏に取っての最重要事項は「台湾有事」がどうなるかでしょう。世に倦む日々氏は、米国にはもはや「台湾有事」を画策する余裕などはなく、もしも「米国が参戦しない」状態で「日中戦争」が始まるならば、米国は大歓迎するだろうということです。もしもそんなことになれば、日本が徹底的に破壊されるのは火を見るよりも明らかなのですが、中国もそれなり打撃を受けるからです。
 高市氏がそこまでは愚かではないことを祈りますが、こればかりは分かりません。世界でただ一人、中国を嫌悪して止まない一国の宰相なのですから。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
台湾への武器売却問題の真相 - アメリカには中国と戦争する継戦能力がない
                       世に倦む日日 2026年5月25日
5/14 の米中首脳会談では、アメリカによる台湾への武器売却問題が最大の焦点となった。中国側はその中止・延期を強く要求し、トランプはそれに対して回答を控え、いわゆる「戦略的曖昧性」(Strategic Ambiguity)を押し通す外交で対応した。今回のアメリカによる台湾への武器売却は、総額140億ドル(約2兆2000億円)規模と報道されている。どのような中身が気になったのでChatGPT(無料版)に訊いてみると、以下の内訳を整理して出力した

① HIMARS / ATACMS    40.5億ドル  82両 / 420発   地上ロケット砲
M109A7          40.3億ドル  60両      自走榴弾砲 
③ ALTIUSドローン       11.0億ドル  非公開
Tactical Mission Network 10.1億ドル
NASAMS          8.0 億ドル   36基      防空システム
⑥ PAC-3 MSE         数十億ドル   非公開      防空システ

中心となるのは①と②、および⑥となる。①はウクライナ戦争で有名になった地上発射の攻撃兵器で、トラックで移動運搬する高機動ロケット砲のプラットフォーム(HIMARS)に射程300キロの地対地ミサイル(ATACMS)をセットにしたパッケージ。高橋杉雄の顔が浮かぶ。台湾本島と中国大陸の距離は130-180kmのため、この武器で台湾侵攻を狙う中国軍部隊を狙って射弾し、海峡に出る前に無力化する想定だ。大陸沿岸部の集結基地や港湾やミサイル基地を狙う。②は155ミリ自走榴弾砲(Paladin)のパッケージで、上陸した中国軍部隊や橋頭保を狙って撃破する地上兵器。⑥は弾道ミサイル迎撃の防空ミサイルで、⑤は巡航ミサイルと戦闘機を迎撃する防空ミサイル。現在、この⑥の部分が未定で、内容が詰まってないらしい。今回、この武器売却について中国側が首脳会談で取り上げることを求め、トランプが議題化を認めた背景には、米軍内での弾薬不足が深刻に影響しているのではないかと推測する

ATACMS については、在庫は3000発以上あるものの、すでに生産を終了し後継のPrSMに移行中となっている。そのPrSMの生産能力が年150発程度と小さく、今後の配備体制に不安の声が上がっている。ATACMSの在庫の多くが旧型(Block1)で、射程距離が短いため、台湾本島から中国沿岸まで届かないという問題があるらしい。台湾へのATACMSの売却は在庫処分なのだ。新型のPrSMはイラン戦争で40-70発消費し、在庫の45%以上を消耗してしまった。無論、生産にはレアアースが要るPAC-3 MSEについては、イラン戦争前の在庫2300発を1000-1400発消費し、在庫が半減となった。生産能力は年600発程度で、現在それを全世界で激しく争奪し合っていて、アメリカは割り振りに苦悩している。当然、レアアース・レアメタルが製品生産の原材料に必要で、サプライチェーンの脱中国化を図っているアメリカは、量産スピードを上げて在庫を補充する必要と調達およびコストの足枷でジレンマに陥る局面となっている

イラン戦争の結果、アメリカは攻撃用/防御用ともに、また、空中発射・海上発射・地上発射の全領域にわたって、虎の子のミサイル兵器の在庫を大幅にロスし、その補充と再配備の優先順位の選定に右往左往する事態に直面した。さらに、安価で大量生産されるドローンの飽和攻撃に対して、高価な迎撃ミサイルの配備と対抗では防空システムとして機能しない事実が明らかとなり、戦争の方法や前提そのものを根本から考え直す必要に迫られた。加えて、高性能ミサイルの開発と量産には材料たるレアアース・レアメタルが必須で、中国が支配する供給網体制の軛をいかに打破し克服するかの問題も有効な解決策を見い出せていない。トランプ訪中の与件として、こうしたアメリカが抱えた軍事戦略上の問題があり、そして中間選挙に向けての成果獲得という政治的必達目標があり、その二つが相俟って、台湾への武器売却の保留という外交態度が導かれたのだろう。それは、中国にとっては断固許容できないレッドゾーンの問題でもある

ChatGPTの分析と要論を読むと、現状、アメリカにとって中国と戦争(して勝利)することがいかに難しく、避けなければならない国家の進路であるかが説明の論調から伝わってくる。9年前にG.アリソンが軽口を叩き、新冷戦への突入を扇動し、その遂行を指南していた頃とは情勢と環境が変わった。中国の工業力の圧倒的優位を認めるようになり、中国封じ込めは無理で、中国を潰すために台湾を利用して干渉するのは得策ではない、という冷静な思考にアメリカの安保専門家が変化しつつある空気を感じる。最早、デカップリング”や台湾有事”の策を仕掛けて攻勢をかける段階ではないという、新冷戦見直しの醒めた気運が内部で生じ、トランプをして「6つの保証」からの離脱へと背中を押したのだろう。台湾有事へのアメリカのコミットを消すのであれば、台湾に虎の子のミサイルを大量供給する必要はない。武器提供は中国を刺激して対立を深めるだけなので、それよりも中間選挙のために中国から取引で得る利益の方を選択したのだ

5/5 の報道では、アメリカはドイツへのトマホーク配備見送りを決定している。日本についても、2027年までに400発納入する予定だった納期を遅延する可能性を伝えてきた。アメリカはイラン戦争でトマホークを1000発以上消費したと推定されていて、この数量は戦前在庫の30%に相当し、通常の生産ペース(年120発)だと回復まで数年を要してしまう。ドイツへの配備見送りはこの事情からだろう。ドイツに配備するトマホークは地上発射型で、ロシアがカリーニングラードに設置するイスカンダルに対抗する狙いの中距離ミサイルの位置づけだった。ドイツとしては喫緊の安全保障上の装備品だったに違いないが、冷や水を浴びせられる顛末となった。日本も同様で、海自の400発のトマホークはまさに(陸自のスタンドオフミサイルと並んで)台湾有事を戦う主力兵器であり、これなしに日本の対中戦争は構想できない。そのトマホークも製造にはレアアースが必要で、供給安定化を早期に実現しないと量産ペースを上げることは不可能である

結局、トランプが言う「自分の任期中に台湾有事はない」の発言は、客観的・軍事的・物理的には、アメリカには中国と戦争する継戦能力がないという意味に置き換えていいだろう。アメリカが誇るミサイルやF-35などのハイテク諸兵器は、どれも中国産のレアアースと電子部品を原材料にした工業製品ばかりだ。それが米中の軍事的関係の現時点の真実である。イラン戦争の結果がその急所の真相を浮き彫りにし、アメリカを一気に弱気な立場に追いやった。イラン戦争が残した意義として、第一に指摘し総括できる重要な結論だろう。アメリカはこれまで、最先端技術を駆使し結集したところの、きわめて付加価値の高い高額装備品の開発と実装によって「唯一の超大国」の軍事力を構築し態勢化してきた。それが合理的で最適な国家安全保障の手法だった。そこには、軍産複合体企業群への利益供与の利権の動機と論理もあった。イラン戦争を経て、安価なドローンの飽和攻撃とレアアース問題に直面し、米軍一強を担保してきた前提基盤が崩れ始めている

前後して恐縮だが、台湾への今回の武器売却の中心物件であるHIMARS/ATACMSについて、欧州からどれほどロッキード・マーティン社に発注が届き、受注残になっているかをChatGPTで調べてみた。全体像として、欧州NATO諸国の兵器輸入額は2021年から2025年にかけて3倍超に急膨張している。うち58%が米国製輸入であり、F-35戦闘機、Patriot防空システム、HIMARS、JASSM等諸ミサイル、戦闘ヘリが中身を占めている。金額的にはF-35が巨大だが、地上戦で必要なHIMARSにも注文が殺到し、特にポーランドは486基という桁外れの数量を発注していた。ロ社のHIMARS生産能力は現在年96基で、ポーランドからの受注残を捌くのに5年かかってしまう。ポーランドの対ロ防衛意欲は強烈で、ロビイストの工作や米上下院議員の圧力がロ社の供給遅れを許さないだろうから、HIMARS/ATACMSの調達にも割り込みをかけている可能性がある。もしこの憶測が当たっていれば、トランプの台湾武器売却延期の理由の一つはそれかもしれない

以上、台湾への武器売却をトランプが曖昧化した問題について、それが単に政治的な理由による決定ではなく、物理的な事情(在庫逼迫)によってもたらされた判断だという点を明らかにした。アメリカには中国と軍事衝突して全面戦争する継戦能力がない。それを遂行して成功(勝利)させられる物質的な基盤がない。だが、この事実の認識が、ただちにアメリカの中国に対する新冷戦戦略見直しに繋がるとか、アメリカが中国との戦争を断念し放棄するという方向性に直結するかというと、必ずしもそうではない。アメリカにはカードがある。それは日本である。日本が、ロシアと戦うウクライナやイランと戦うイスラエルの位置になり構図になれば、アメリカは目的が達成されるのである。狙いは戦争によって中国の国力を殺ぎ、アメリカの地位を奪う超大国になることを阻止することだから、日本が中国と戦争を始め、日中が国力を消耗し、中国がロシアのように疲弊してくれれば、アメリカはそれでよく、願ったり叶ったりで、自らが戦場で血を流す必要はないのだ

高市と日本の右翼は、日本が中国と戦争を始めれば、それは日米同盟による対中戦争であって、アメリカと一緒に戦争するのだから必ず勝てるという単純な想定がある。サタンである中国(共産主義)が正義である日米(自由民主主義)に勝てるはずがないというイデオロギー上の信念と教条もある。アメリカの「戦略的曖昧性」の方針は、先に日本が突っ込んで開戦することで強引に「曖昧性」を終端させることができると、そういう計算がある。高市は戦争に前のめりであり、頭の中はそれ(サタン退治)しか考えてないのだ。それには理由があり、14年前の安倍晋三の尖閣有事”がまさにその発想だった。日本が先に中国と軍事衝突を起こす。そしてアメリカを引っ張り込む。当時のオバマ政権はそれを警戒し、安倍の極右路線を牽制していた。軍事に無知な高市だが、高市にとって安倍は師匠であり神であり、安倍をコピーするのが最善だと盲目的に確信していて、安倍の政策を情熱的に踏襲しようとする。なので、日本がイスラエルになりウクライナになる可能性は十分あるのだ

検察の抗告認める高市内閣法改悪案/令和の特高警察設置法制定(植草一秀氏)

 植草一秀氏の掲題の2つの記事を紹介します。
1番目の記事)
 これは再審制度を見直す刑事訴訟法改正で自民党の法務部会で大いに揉めた挙句に、検察による抗告を「原則禁止」にし、その旨を「本則に謳う」ことに修正されました。
 同部会は、それで大いに抗告抑止の効果が上がるかのように述べますが、検察はこれまで「再審開始決定は誤りで、それには十分な根拠があるとして抗告を続けてきたのであるから、今後もその姿勢を貫徹して常に抗告し続ける」ので、重大な人権侵害は今後とも続けられると述べます。
 これまで検察庁には「人権」の感覚がないかのような態度が見られました。殆ど改善につながらない改正案で残念なことです。
2番目の記事)
「国家情報会議」創設法が27日の参院本会議で賛成多数により可決され、成立しました。政府はインテリジェンス(情報活動)の司令塔機能強化を目指すとしていますが、その実態は首相が議長を務める閣僚級の国家情報会議を新設し、事務局を担う「国家情報局」として現在の内閣情報調査室(内調)を格上げすることが新制度の柱です。内調は基本的に警察組織。これを拡大して創設するのが国家情報局。
 植草氏は、国家情報局は国内の反政府勢力の取り締まりに主眼が置かれる可能性が高く、戦前の悪名高い「特高警察」に近い存在になると考えられると述べます。
 高市氏は、11月の総裁選や2月の衆院選において第一秘書が相手候補や野党候補を批判する膨大な動画を流す選挙戦法を採りまんまと成功させた疑いを、証拠を挙げて問われてもシラを切り続けています。そんな人間が議長に就く組織とは、悪い冗談としか思えません。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
検察の抗告認める高市内閣法改悪案
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年5月27日
高市内閣は検察の不正、検察の犯罪にどう立ち向かうのか。
その試金石になるのが再審制度を見直す刑事訴訟法改正。高市内閣は刑事訴訟法改正案を閣議決定して国会に提出。国会審議が始まった。

しかし、結論はすでに示されている。検察改革などまったくやる気がない。稲田朋美議員が猿芝居を打った。一部に騙された者がいたが、そうは問屋が卸さない。
稲田氏が騒いでたどり着いた結論は、裁判所の再審開始決定に対する検察抗告の「原則禁止」
「禁止」ではなく「原則禁止」。「原則禁止」は「十分な根拠がある場合に限り」抗告を認めるというもの。これまで検察は、裁判所の再審開始決定に対して抗告し続けてきた
そのために再審開始が大幅に遅れた。冤罪被害者の救済が致命的に遅れてきた。
検察が抗告を繰り返した理由は何であったか。

それは、再審開始が誤りであるとする検察の主張に「十分な根拠がある」ことだった。
検察は再審開始決定が誤りである「十分な根拠がある」として抗告を続けてきた
したがって、改正法が「十分な根拠がある場合に限り」検察の抗告を認めるものになるなら、検察はこれまでとまったく同様に「十分な根拠がある」として、抗告し続ける。
稲田議員のアピールによって「原則禁止」が付則ではなく「本則」に盛り込まれたと報じられているが、付則であろうと本則であろうと、「十分な根拠がある場合に抗告を認める」ことに変わりはない。

「原則禁止という名の容認」か、「例外なき禁止」かが争点だ。
高市内閣は検察の意向に沿って「原則禁止」という「実質容認」を決めた。台本通りの展開だ。
衆議院で与党が3分の2を上回る議席を確保しているから、高市内閣が傍若無人の振る舞いを演じている。
しかし、これでは重大な人権侵害を繰り返してきた検察重大犯罪を根絶する方向への事態改善は一切見込めない

私は日本の警察・検察・裁判所制度が前近代の状況からまったく抜け出せていないことを指摘し続けている
私も重大な冤罪被害者である。重大な人権侵害はいまなお救済されていない。

袴田巌さんの再審無罪が確定した。姉の秀子さんの血のにじむような取り組みが冤罪無罪を勝ち取る原動力になった。しかし、これは奇跡の勝利でしかない。多くの偶然が重なり、冤罪の汚名が雪(そそ)がれた稀有なケースだ。

2009年に発生した村木厚子さん冤罪事件。検察がフロッピーディスクの捜査資料をねつ造したことが発覚して、大阪地検特捜部幹部が刑事罰を受ける重大事件に発展した。
この検察大不祥事を背景に制度改革が検討された。しかし、このときも実質的な制度刷新は実現しなかった。検察の台本通りの着地になった

最大の焦点は取り調べ過程の可視化。かたちばかりの部分的可視化だけが決定された。
高市内閣が検察改革に背を向けるなら、主権者国民はこの内閣をASAP=”as soon as possible”で退陣に追い込まなければならない。

(お願い)
情報拡散を推進するために「人気ブログランキング」クリックをぜひお願いします。

続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
4428号
ASAPでの高市首相退場求める訳」 でご高読下さい。
この機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひぜひぜひお願いします。https://foomii.com/00050
『ザイム真理教』(森永卓郎著)の神髄を深堀り、最重要政策争点財務省・消費税問題を徹底解説する新著を上梓しました。
『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』(ビジネス社)https://x.gd/LM7XK
ご高読、ならびにアマゾンレビュー、ぜひぜひ、お願いします。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、support@foomii.co.jpまでお願い申し上げます。


令和の特高警察設置法制定
               植草一秀の「知られざる真実」 2026年5月27日
インテリジェンス(情報活動)の司令塔機能強化を目指すと政府がしている
「国家情報会議」創設法が5月27日の参院本会議で賛成多数により可決、成立した。
賛成したのは与党の自民、日本維新の会、ゆ党の国民民主、公明、参政、みらい、保守の各党。
衆院では中道改革連合が賛成。参院では立民、共産、社民、れいわが反対。
首相が議長を務める閣僚級の国家情報会議を新設し、事務局を担う「国家情報局」として現在の内閣情報調査室を格上げすることが新制度の柱

野党は国民監視の強化やプライバシー侵害を防ぐ歯止めを法律に明記するよう求めたが、政府側は必要性を否定した。政府の情報活動をチェックする具体的な仕組みはない。
日本の暗黒化が加速している。暗黒化を推進している本尊は高市早苗氏だ。
法案採決の賛否で、よ党、ゆ党、や党、の線引きが明確になった。
よ党 は 自民、維新。
ゆ党 は 国民、公明、参政、中道、みらい、保守。
や党 は 共産、れいわ、社民。
中道が衆院採決で賛成したことを主権者国民は銘記する必要がある。

内閣情報調査室は基本的に警察組織。これを拡大して創設するのが国家情報局。
日本版CIAとでも呼ぶべき組織だが、CIAとは核心が異なる。CIAは対外的な諜報活動、工作活動を軸にするが、国家情報局は国内の反政府勢力の取り締まりに主眼が置かれる可能性が高い。CIAよりも特別高等警察に近い存在になると考えられる

日本の戦前化が加速している。自民党が提案する憲法改正は、日本の憲法を大日本帝国憲法に近づけようとするもの。日本国憲法の基本原理が消し去られる可能性が大きい。
日本国憲法の基本原理は平和主義、基本的人権の尊重、国民主権。この基本原理が改変される可能性が高い。

日本を「戦争をする国」に改変 人権は制限付きで付与 緊急事態条項によって内閣に独裁権限が付与され、国民主権は否定される。
憲法を破壊し、国民を監視する体制を強化し、戦争遂行体制を整える。
この方向に日本全体を改変する動きが加速している。

ゆ党は与党補完勢力。対米隷属も共通する。警察・検察・裁判所の前近代性も変わらない。
メディアは権力と癒着して報道機関としての責任を果たさない。
私たちはいま、文字通りの「戦争と壊憲の危機」に直面している。このなかで、検察不正に立ち向かっている元検事がいる。
大阪地検検事正だった北川健太郎被告に性暴力犯罪を受けた元検事が怒りの声をあげている。
empathy ひかり というサイトを広く拡散する必要がある。
https://note.com/unmetempathy0111
 5月19日には「検察よ、逃げるな、言葉と行動に責任を持て」
https://note.com/unmetempathy0111/n/n7a64f0c68446 と題する記事を投稿されている。

国会では立憲民主党の杉尾秀哉参院議員が高市首相事務所による誹謗中傷動画発信疑惑について厳しい追及を行った。杉尾議員の追及は正当で必要不可欠のもの。これまで国会が追及してこなかったことがおかしい
ところが、ネット上には杉尾議員を非難する記事が掲載される。
記事タイトルは「参院内閣委員会で杉尾秀哉氏が週刊誌報道を基に高市早苗首相を激しく追及! 限られた国会審議のあり方や批判をめぐる問題」https://x.gd/2d3fB
 記事掲載はtend”。日本の情報空間の歪みを是正することが必要不可欠だ。

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4429号
「国家中枢から腐敗進む日本」 でご高読下さい。
                 (後 略)