2025年3月31日月曜日

斎藤知事の第三者委報告無視 を批判する主な社説

 兵庫県の斎藤知事は県議会が設置した「百条委員会」の報告書を「一つの見解(に過ぎない)」として事実上無視しました。
 その後19日に知事自身が設立した第三者委員会(判事経験者3名を含む6人の弁護士で構成)の報告書が出されました。
 それを受けて斎藤知事はパワハラについては認めましたが自分への処罰はせず、故県民局長による内部告発は公益通報に当たると認定されたにも拘らず、「専門家の間で様々な意見があるから」としては受け入れを拒否し、懲戒処分の撤回や遺族への謝罪等は拒否しました。

 この件に関して、朝日新聞、毎日新聞(2件)、読売新聞、産経新聞、神戸新聞が知事の態度を厳しく批判する社説を出しましたので紹介します。
 いずれも斎藤氏は知事としての資質に欠けるのみでなく人間的にも大いに問題があることを言外に語る内容になっています

 紹介する社説のタイトルは以下の通りです。
 社説 斎藤兵庫知事 組織の長として失格だ       朝日新聞  3/29
 社説 兵庫知事の「違法」認定 もう責任逃れは許されぬ 毎日新聞  3/25
 社説 「違法」認めぬ兵庫知事 トップの任に値するのか 毎日新聞  3/29
 社説 兵庫第三者委 知事の資質欠如は明らかだ     読売新聞  3/20
 主張 兵庫県知事 「違法」の責任を直視せよ      産経新聞  3/29
 社説 知事の見解/責任認めて自らの処分を       神戸新聞  3/28
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(社説)斎藤兵庫知事 組織の長として失格だ
                         朝日新聞 2025年3月29日
 組織に問題が生じた際、独立した中立の立場から調べてもらう。調査結果に基づいて関係者の責任を明確にし、必要な対策を講じて、信頼を回復していく。そのために第三者委員会はある。
 しかし兵庫県の斎藤元彦知事は、第三者委が認定した自身の職員へのパワハラ行為を謝罪しつつ、自らの処分は否定。知事を告発した元県民局長の男性への対応が「違法」とされたことには「見解が違う」と受け入れを拒否した。あまりに恣意(しい)的で、第三者委の意義自体を否定するとも言える、看過できない事態だ。
 兵庫県の第三者委は、斎藤氏のパワハラ行為として10件を認定した。斎藤氏は関係職員に謝罪したが、今後の対応については「襟を正し、研修などを受けながら、風通しのよい職場作りに向けて努力していく。それが私の責任の果たし方だ」と語った。
 職員のパワハラ行為については、懲戒処分指針に基づき減給などの処分がされてきた。自身への処分に触れない斎藤氏に対し、県庁内で不公平だとする声が出ているのも当然だろう。
 斎藤氏は、男性が作成・配布した告発文書を自ら入手し、側近幹部に調査を指示した。それ以降の県の男性への対応に関し、第三者委報告書は事情聴取や懲戒処分の一部について、公益通報者保護法に照らし「違法」と断じた。
 斎藤氏は「各種論点には異なる考え方もある」「第三者委とは見解が違うところがある」と報告書を認めず「処分は手続き、内容とも適正だった」と従来の主張を重ねる。第三者委の提言を受けて公益通報保護の体制整備を進めると説明し、「報告書全体をしっかり受け止めていると考えている」とも語った。
 兵庫県の混迷は1年前、斎藤氏が会見で男性を「うそ八百」「公務員として失格」と非難したことから始まった。第三者委はその発言を「パワハラに該当する」と批判。斎藤氏は「強い発言だったことは反省している」としたが、撤回の意向は示さない。
 この人には、言葉や論理が通じない。そう思わせるようではトップの資格はない
 報告書への姿勢について、斎藤氏は「さまざまな方から意見をうかがい、最終的に知事である私が見解を判断した」と説明するが、「その内容や手続きの詳細についてはコメントを控える」という。
 報告書を「真摯(しんし)に受け止める」と繰り返しながら実質的に拒否する姿勢は、もはや独善と言っても過言ではない。斎藤氏こそが「知事として失格」と言うほかないだろう。
 
 
社説 兵庫知事の「違法」認定 もう責任逃れは許されぬ
                            毎日新聞 2025/3/25
 独立性の高い第三者委員会が違法と認定した事実は重い。斎藤元彦・兵庫県知事は真摯(しんし)に受け止め、非を認めるべきだ
 斎藤知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、県が設置した第三者委が報告書を公表した。県議会調査特別委員会(百条委)の報告書よりも踏み込んだ判断を示している
 調査対象となった知事の言動16件のうち、職員への激しい叱責など10件をパワハラと認定した。元県西播磨県民局長の告発を「うそ八百」と記者会見で非難したことも該当するとみなした。
 告発者を探し出し、懲戒処分としたことは公益通報者保護法に違反すると指摘した。処分は無効と断じており、知事は直ちに撤回すべきだ。

 第三者委は知事自身が設置を決断し、昨年9月に調査を始めた。日本弁護士連合会のガイドラインに基づいて設置され、県と利害関係のない元裁判官の弁護士3人が委員を務めた。事務局にも県職員は加わっていない。
 報告書について知事は、県議会最終日の26日以降、見解を明らかにするという。告発文は「誹謗(ひぼう)中傷性が高い」との従来の認識を変えていない。
 一方で百条委の報告書に関しては「一つの見解だ」と述べ、軽視するような姿勢を取り続けてきた。「元局長の公用パソコンには倫理的に不適切な文書があった」などと、告発者をおとしめるような発言までしている。
 第三者委は、知事のそうした態度にも疑問を投げかけた。人を傷つける発言は慎み、自分とは違う見方もありうるという「複眼的な思考」をするよう求めている。

 再選を果たした出直し知事選では疑惑を否定する言説がネット上で広がった。知事はこれまで「第三者委の調査結果を踏まえて対応する」と繰り返してきた。多くが事実として認定された以上、けじめをつける必要がある。
 元局長と、百条委の委員を務めて中傷を受けた元県議は死亡した。自殺とみられている。失われた2人の命は戻ってこない。
 自身に不都合な結果を受け入れず、行政のトップとして責任逃れを続けるようなことがあってはならない
 
 
社説 「違法」認めぬ兵庫知事 トップの任に値するのか
                            毎日新聞 2025/3/29
 内部告発者が法律で保護される理由を、斎藤元彦・兵庫県知事は理解していないのではないか。
 知事によるパワーハラスメントなどの疑惑を調査した第三者委員会の報告書を受け、知事は初めてパワハラを認めて謝罪した。
 しかし、告発者を探し出して懲戒処分とした県の対応は「適切だった」と強弁し、公益通報者保護法違反との認定を「考え方が異なる」と突っぱねた告発文についても「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書」と、従来の見解を変えなかった
 行政の長としてのあるべき姿を説いた第三者委の指摘に真摯(しんし)に応えたとは到底言えない。
 第三者委には、外部の視点で組織内部の問題を検証し、必要な対策を提言することが期待されていた。知事自身が決断して設置され、「調査結果を受けて対応する」と繰り返してきた。それを受け入れないかたくなな姿勢では信頼の回復や再発の防止はおぼつかない。
 そもそも内部告発者が保護されるのは組織の健全性維持に欠かせない存在だからだ。不正や違法行為の通報には適切な対応が求められる。
 にもかかわらず知事は公益通報として扱わず、自身や側近幹部の判断で告発者の元県西播磨県民局長の処分を急いだ。そうした行為が容認されるなら、トップに不祥事があっても、部下は報復を恐れて告発を控えるようになる
 パワハラをした一般の公務員は何らかの処分をされるのが通例だが、知事は自身へのペナルティーには言及していない。とても公正とはいえない

 県議会調査特別委員会(百条委)がパワハラや公益通報者保護法違反の疑いを指摘した報告書についても「一つの見解」と言って聞き入れなかった。
 不都合な結果に耳を塞ぎ、自己の正当性のみを主張し続けるのであれば、自身だけでなく県政そのものへの信頼も揺らぐだろう。
 一連の問題が発覚して以降、元県民局長と、百条委の委員を務めて中傷を受けた元県議が死亡した。自殺とみられている。2人の命が失われた重大性を認識しなければならない。
 違法性を認め、元県民局長の処分は撤回すべきだ。さもなければ知事の任に値するとは言えない
 
 
社説 兵庫第三者委 知事の資質欠如は明らかだ
                            読売新聞 2025/03/20
 兵庫県が設けた中立公正な調査機関が、内部告発への県の対応は違法だと断じた。斎藤元彦知事の責任は免れない。自ら進退を決断すべきだ。
 斎藤氏のパワハラ疑惑や元県幹部の内部告発への対応について、元裁判官の弁護士らでつくる第三者委員会が報告書を公表した。
 「机をたたいて 叱責」「夜間・休日のチャットによる叱責や指示を長期間、継続」といった知事の行為は「パワハラに当たる」と認定し、「極めて不適切」「知事の威圧的な行為は、職員を 萎縮させる」などと非難した。
 さらに、元県幹部の告発は公益通報に該当すると判断し、知事の指示による告発者の特定や、告発を理由とする懲戒処分は「違法」「無効」などと指摘した。
 この問題では、県議会の百条委員会も斎藤氏のパワハラ行為や、県の対応の違法性を指摘した。
 しかし、斎藤氏は「一つの見解」などとして一顧だにしなかった。告発者への処分も「適切だ」と繰り返し、告発者の元県幹部を 貶めるような発言までしていた。
 今回、調査結果を発表した第三者委は、県の要請で設置された独立性の高い調査機関である。その調査結果は極めて重い
 元県幹部は昨年7月に死亡した。自殺とみられる。斎藤氏は懲戒処分を撤回し、遺族に謝罪すべきだ。これ以上、人ごとのような対応を続けるのは許されない
 公益通報制度の導入後は、兵庫県以外にも告発者に不利益な対応をする企業などが相次いだ。そのため国会では、解雇や懲戒処分にした組織と個人双方に刑事罰を科す法整備の審議が進んでいる。
 斎藤氏は、行政のトップであるばかりか、告発された当事者である。「告発者潰し」が許されないのは当然だ。にもかかわらず、公益通報制度を 蔑ろにするような発言を続ける姿勢は、公職者としての資質を疑わざるを得ない
 斎藤氏は昨年11月の出直し選で再選したことを、知事に 留まる根拠にしているのかもしれない。
 選挙では「斎藤氏は悪くない」という言説がSNSで広まり、終盤の追い風となった。知事側のPR会社が公職選挙法違反容疑で強制捜査も受けている。「斎藤氏は悪くない」という前提が崩れた今、選挙の妥当性も問われよう
 兵庫県では、斎藤氏を陥れた「黒幕」だとSNSなどで中傷された百条委の前県議も死亡した。自殺とみられる。県政の混乱が1年に及び、死者が相次ぐ状況は、異常だとしか言いようがない
 
 
<主張>兵庫県知事 「違法」の責任を直視せよ
                            産経新聞 2025/3/29
 斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発文書を巡る問題で、弁護士でつくる第三者委員会が報告書を出した。
 告発文書を公益通報として扱わず、作成者を処分した斎藤氏らの対応は「明らかに違法と指摘し、斎藤氏のパワハラ行為についても認めた。
 斎藤氏は会見でパワハラについては初めて謝罪した。一方、「違法」の指摘については専門家の間でも意見が分かれているとして、「対応は適切だった」と従来の主張を繰り返した
 第三者委に先立ち、県議会調査特別委員会(百条委員会)も報告書を出している。百条委の報告書は、県の対応は「違法の可能性が高い」とし、斎藤氏の言動や行動は「パワハラ行為と言っても過言ではない」と指摘していた。
 斎藤氏は、2つの報告書の指摘の重さを真摯(しんし)に受け止めるべきだ。その上で、自身の具体的な責任の取り方を明らかにしてもらいたい
 第三者委の報告書は、知事が告発者を捜し出して懲戒処分に付したことは、公益通報者保護法に違反すると指摘した。斎藤氏らが、告発者への処分を決める過程に関わったのは「裁量権の範囲を逸脱」するもので、処分は無効と結論付けた
 職員への厳しい叱責など10件をパワハラと認定した。
 斎藤氏は、告発者捜しを命じた初動の対応は「当時としてはやむを得なかった」と釈明し、告発文書を作成した元県民局長への処分見直しも否定した。
 これはおかしい
 公益通報制度は組織の不正を防ぐための仕組みである。告発者捜しが禁じられているのは、告発しようとする人が萎縮すれば、不正を改める機会が失われるからである。
 県政トップの知事に、この制度への正しい理解が求められていることは言うまでもない。
 公務員や会社員が違法行為やパワハラ行為を認定されれば懲戒処分を受けるのが普通だ。ところが斎藤氏は自身への処分や辞職の考えもないという。責任感が欠如している
 第三者委の報告書は「パワハラをなくし、公益通報者を保護する体制を築く自浄力」を県に求めた。議会は斎藤氏に責任の取り方を具体的に示すよう強く促すべきだ。うやむやなままでは県政を前に進められない。
 
 
<社説>知事の見解/責任認めて自らの処分を
                             神戸新聞 2025/3/28
 兵庫県の告発文書問題を巡り、県の第三者調査委員会が示した報告書に対し、斎藤元彦知事が会見して見解を公表した。
 机をたたいての叱責(しっせき)など認定された10件のパワハラ行為について、知事は「真摯(しんし)に受け止める」と初めて認め、職員に謝罪した。一方で、第三者委が違法性を認定した告発者に対する県の一連の対応については「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書だとの認識は変わらない。対応は適切だった」と従来の主張を繰り返した
 告発文書を公益通報と取り扱わず、告発者を特定して懲戒処分を科した知事らの対応について、第三者委の報告書は公益通報者保護法に違反すると認定した。告発文書の作成と配布を理由の一つとする処分は「裁量権の乱用で無効だ」と断じた。
 これに対し、知事は「指摘は重く受け止めるが、司法の専門家でもさまざまな意見がある」と反論した。関係者によると、県幹部が処分の撤回を進言したが受け入れなかったという。自身の責任については「反省すべきは反省する。襟を正して仕事を進める」と述べるにとどめた。
 文書問題の表面化から1年がたった。第三者委は中立性を重視した調査を求めて知事が自ら設置したものであり、その結論を受け入れなければ違法状態が続くことになる法令を順守し、独善的な姿勢を改めない限り、県政の混乱は収束できない。
 違法の可能性は県議会調査特別委員会(百条委員会)の報告書も指摘し、知事は「適法の可能性もある」などと反論した。第三者委はこれを「正面から受け止める姿勢を示していない」と批判したが、知事はこれも「一つの意見」とかわした。
 元裁判官ら6人の弁護士で構成し独立性の高い第三者委が出した結論は極めて重い。自身に不都合な結果だからといって認めなければ、第三者委は意味をなさない。知事は責任を回避せず、告発した元西播磨県民局長の懲戒処分を見直すべきだ。
 パワハラについて、これまで知事は「業務上必要な指導」としていたが、会見では「不快、負担に感じた職員に改めて謝罪したい」と述べた。知事が昨年3月の会見で、元県民局長について「公務員失格」「うそ八百」と発言したことも第三者委はパワハラに当たると指摘した。知事はこれを受け入れ、元県民局長に対し「大変申し訳ない」と初めて謝罪したが、発言は撤回しなかった。責任の取り方については「ハラスメント研修を受けながら県政を前に進めていく」と繰り返した。
 パワハラを認めた以上は自らへの処分でけじめをつけなければ、信頼回復は望めない。知事が真摯に向き合うべきはその点に尽きる。

生活保護基準引き下げめぐる裁判/画期的! 行政の敗訴ラッシュ

「レイバーネット日本」が掲題の記事を出しました。
 13~15年(第2次安部内閣)に生活保護基準額を減らした物価の下落などを理由に基準額最大10%引き下げたのは憲法25条(=すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないなどに反するとして、減額決定の取り消しなどを求めた訴訟で、東京高裁は27日、決定を取り消した東京地裁判決を支持する判決を言い渡しました。
 高裁判決は一審と同様、国が用いた独自の物価指数について、生活保護の受給者らがあまり買わないテレビなどの価格下落が大きく反映されていると指摘し、引き下げの判断は「専門的知見との整合性がとれていない」と述べました。
 この訴訟は全国29地裁で起こされ、高裁判決は9件目です。この判決を含めて過去5件が減額決定を取り消した一方4件は請求を退けました
 最高裁は今年5月、この生活保護支給額引き下げをめぐる違法性や賠償責任の有無について統一的な見解を示すということで、「レイバーネット日本」は最高裁判所の判断に期待したいと述べました

 以下の2つの記事を併せて紹介します。
 共産党の倉林明子議員は24日の参院厚生労働委で、10月から実施する25年度分の生活保護費への500円の加算では物価高に到底追いつかず、物価高騰に見合う生活保護基準の大幅引き上げこそ必要だと主張しました

 また悪名高い「桐生市の生活保護費不適切支給」問題についての「第三者委が報告書」が28日提出され、市による不正の数々が指摘されました。報告書を受け取った荒木市長は「生活保護制度の理念を勝手な解釈でねじ曲げた数々の問題を、発覚するまで一切気づかなかった責任は重く、心から恥じている」と述べました。改善が期待されます。
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生活保護基準引き下げめぐる裁判/画期的 行政の敗訴ラッシュ
                      レイバーネット日本 2025-03-29













2枚の旗は大阪地裁で掲げられた初代旗出しセットで、各地を転戦して風格にじむ趣になってきた。

報告 知多
 厚生労働省が物価下落を主な理由として生活保護基準を過去に例のないほど引き下げた2013年から、既に12年が過ぎた。
 生活保護支給費の減額についてその違法性を問う「いのちのとりで」裁判は、全国29の地裁で31件が争われている。
 3月27日、東京高裁初の東京1次(はっさく訴訟)判決は、一審判決維持の原告勝訴(写真右)。翌日、同じく東京高裁での埼玉控訴審も原告勝訴(写真左)。
 これで高裁判決は、違法を訴えた原告側の6勝4敗に。初期に続いた地裁での原告敗訴は一転しており、もはや高裁でも行政敗訴ラッシュの様相を呈してきた
 傍聴には、東京1次控訴審105人、埼玉控訴審は133人と、いずれも90席ほどの大法廷に入りきれないほど希望者が集まり、大詰めを迎えた裁判への関心の高さが感じられた。
 長期にわたる裁判中、高齢者の多い原告のなかには亡くなる方も少なくない。法廷では毎回のように、原告死亡による裁判取り下げが、裁判官から告げられる。
 憲法25条に生存権と国の社会的使命をうたうこの国の行政は、この問題をいつまでも放置せず早く解決救済すべきだ。
 生活保護制度は国民のナショナルミニマム(最低生活基準)の基礎。その金額は、最低賃金はじめ住民税非課税や医療・介護保険、就学援助などの基準となり、社会保障を支える岩盤として国民生活への影響が大きい。
 裁判を通して明らかとなったのが、物価偽装や悪質な統計不正。事実をゆがめるような国による弱い者いじめはやめてほしい。
 私たちが裁判官に求めるのは、三権分立、法の番人としての役割をきちんと果たし、国民の命と生活を守る正義の判決である。
 今年5月には、この生活保護支給額引き下げをめぐる違法性や賠償責任の有無について統一的な見解を示すという、最高裁判所の判断に期待をしたい。


物価高騰に見合わぬ 倉林氏「生活保護費大幅増を」 参院厚労委
                       しんぶん赤旗 2025年3月30日
 日本共産党の倉林明子議員は24日の参院厚生労働委員会で、10月から実施する2025年度分の生活保護費への500円の加算では物価高に到底追いつかず、実質的な引き下げになっていると批判し、物価高騰に見合う生活保護基準の大幅引き上げこそ必要だと主張しました。
 倉林氏は、桐生市で生活保護費の過少支給や虚偽の扶養届など不法行為が横行していた問題で、国が2度も監査しながら見逃してきたと指摘。水際作戦や不当な排除はないかとの視点に立ち、漏給・権利侵害防止の観点を強化し、保護率が急減したり、保護率が著しく低い自治体などを国の監査対象とするよう求めました。
 福岡資麿厚労相は、25年度の監査の重点事項として「権利侵害の防止を強化し、監査対象は保護率の急激な変動や長期的な減少を勘案する」と答えました。
 生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)で、13日に大阪高裁(京都訴訟)が、18日に札幌高裁が、いずれも生活保護費の減額処分の取り消しを国に命じる原告側の逆転勝訴判決を出しました。倉林氏は「国は上告を断念し判決を受け入れるべきだ」と主張しました。


桐生市の生活保護費不適切支給 第三者委が報告書提出
                    NHK 群馬NEWS WEB 2025/03/28日
桐生市が生活保護費の不適切な支給を繰り返していた問題で、調査にあたっていた市の第三者委員会は、荒木恵司市長に報告書を提出し、「違法な分割支給を市が組織的に許容していた」などと指摘しました。

桐生市では2018年以降、生活保護の受給世帯の一部に対して、保護費を分割して渡し全額を支給しないなど、不適切な支給を繰り返していたことがわかり、弁護士などで作る市の第三者委員会が調査を進めてきました。
28日は、第三者委員会の吉野晶委員長らが荒木市長に対し報告書を提出しました。
報告書では、保護費を分割で支給していた対応について「『極めて例外的な手法』で『やむを得ない事由が必要』という認識がなかったほか、違法な分割支給を市が組織的に許容していた」と指摘しました。
また、窓口などでの対応について「生活保護を申請する権利を侵害するような行為が行われていたと認めることができる」としています。
そのうえで、再発防止策としてすべての窓口での相談や電話対応について録音や録画することや県庁など外部と人事交流を行い継続的に指導を受けられる体制を整備することなどを提言しました。
報告書を受け取った荒木市長は「生活保護制度の理念を勝手な解釈でねじ曲げた数々の問題を、発覚するまで一切気づかなかった責任は重く、心から恥じている」と述べました。
そのうえで「報告書を真摯に受け止め改善に鋭意、取り組んでいく」としました。


イスラエルに国民の年金が流れていく 厚労省「投資」引き揚げ“断固拒否”~

 日刊ゲンダイが掲題の記事を出しました。
 年金運用基金GPIFは昨年末時点で、約2270億円のイスラエル国債を保有し、同国最大手軍需企業「エルビット・システムズ」の株式も約46億円所有しています。同紙は、年金積立金がガザでのジェノサイドを行っているイスラエルに投入されるのは、人道上の重大問題であると指摘します。
「イスラエルからの投資撤退を求める市民の会」が24日、参院内で開いた集会には約200人の市民と野党の国会議員らが参加し、厚労省の年金局資金運用課に投資撤退を求める署名2万3167筆を手渡しました。
 ノルウェー年金基金24年6月米キャタピラー社のブルドーザーなどイスラエル軍によってガザへ侵攻作戦で使用されていることを理由に、キャタピラー社への約110億円の投資を引き上げると発表しましたし、マレーシアでは昨年来、米国のイスラエルへ支援に反発して市民らが米製商品の不買運動を継続しています。
 米国の学生たちも、大学や企業に対し「イスラエルへの協力」の中止を要求しています。
 しかし日本の政府は相変わらす米国べったりの姿勢を貫いています。

 併せてしんぶん赤旗の下記の記事を紹介します。
年金運用 イスラエル軍需に出資 大門議員「政治判断で引き揚げを」
・年金積立金 イスラエルに投資 政府は虐殺許さぬ姿勢を 参院予算委 大門氏迫る
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イスラエルにあなたの年金が流れていく…厚労省「ジェノサイド加担投資」引き揚げ“断固拒否”の不可解
                          日刊ゲンダイ 2025/03/27
 会社員が加入する厚生年金を活用して基礎年金を底上げする「年金改革法案」の提出を巡り、政府・与党内でスッタモンダしているが、年金積立金の運用が人道上の重大問題をはらんでいることをご存じか。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザでのジェノサイドに加担している可能性があるのだ。

 イスラエルは今月18日、1月に発効した停戦合意を破ってガザへの大規模な軍事作戦を再開。ガザ保健当局によると攻撃再開から23日までに計673人が犠牲になったという。イスラエルが軍事作戦を開始した2023年10月以降、ガザでの死者は5万人を超えた。
 25日の参院特別委員会で、岩屋外相は攻撃再開について「非常に遺憾」と表明しただけ。問題は、民族浄化に等しい攻撃を非難すらしない日本政府の姿勢だけではない。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による投資を通じ、年金が国際法違反を指摘されているイスラエルに流れているのだ。
 GPIFは昨年末時点で、約2270億円ものイスラエル国債を保有。同国の最大手軍需企業「エルビット・システムズ」の株式も持っており、その額は約46億円に上る
 虐殺行為を行う国や企業への投資を止めない政府の不作為に「ノー」と突き付けてきたのが、「イスラエルからの投資撤退を求める市民の会」だ。24日に参院内で開いた集会には、約200人の市民と野党の国会議員らが参加GPIFの監督官庁である厚労省の年金局資金運用課に、投資撤退を求める署名2万3167筆を手渡した
 しかし、厚労省は塩対応。GPIFが環境や社会に配慮した事業を行う企業に積極的に投資する「ESG投資」を掲げていることとの整合性を問われても、運用において被保険者の利益を最優先する「他事考慮の禁止」を盾に、「外交や安全保障等の理由により特定の国や企業を投資対象から除外することは、ESG投資の文脈からは認められない」(資金運用課課長補佐)と譲らなかった。
 
GPIFに判断丸投げ
 パレスチナ侵攻については「ESGの文脈から見ても適切なものではない」(課長補佐)と断言したが、「それをもって投資撤退まで行うかどうかは、GPIFの判断かと思います」(同)と丸投げ。これが監督官庁とは呆れてしまう。
 ノルウェーの政府年金基金はイスラエル通信企業から投資を引き揚げた。日本政府も見習ったらどうか
 
 
年金 イスラエル軍需に出資 大門議員「政治判断で引き揚げを」参院予算委
                       しんぶん赤旗 2025年3月29日
 日本共産党の大門実紀史議員は28日の参院予算委員会で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、公的年金の積立金をパレスチナ自治区ガザで虐殺を行うイスラエルなどの軍事企業に出資している実態を告発し、政府の決断で投資を引き揚げるよう求めました。(関連下掲
 イスラエルは18日、停戦合意を破りガザ全域への空爆を再開。26日までに殺害された830人のうち4割が子どもとされています。
 大門氏は、イスラエル軍に兵器を供給してもうけているイスラエルのエルビット・システムズ社や米国のキャタピラー社などに年金積立金を出資しており、24日には「私たちの年金をガザへの虐殺に使うな」と国会内で市民集会が開催されたことも突きつけ、「(出資を)引き揚げられないのか」とただしました。

 福岡資磨厚労相は、GPIFが委託した会社が投資先を決める仕組みだとして「被保険者の利益のためという(積立金運用の)目的と離れた投資の判断をさせることは適切ではない」などと述べました。
 大門氏は、米国が軍事企業と認定し、取引を制限した中国の企業への投資からはGPIFが出資を引き揚げた実績に言及。政府が人道的問題があると判断し、虐殺に加担する企業との取引をしないと決定すれば出資の引き揚げも可能になるとして、「大事なのは政府の姿勢だ」と迫りました。
 さらに、かつて年金積立金からロシアに2300億円出資していたが、ウクライナ侵略発生で資産価値がゼロになったと指摘。現在、年金積立金から大量虐殺を行うイスラエルの国債に約2270億円も出資しており、今後資産価値がゼロになる可能性をもあると強調し「GPIFはリスクの観点から引き揚げの決断も可能だ」とただしました。石破首相は「リスクが小さくなるように適切にウオッチしていかねばならない」などと述べながら、引き揚げの決断への言及を避け、事実上拒否しました。
 
 
年金積立金 イスラエルに投資 政府は虐殺許さぬ姿勢を 参院予算委 大門氏迫る
                       しんぶん赤旗 2025年3月29日
 日本共産党の大門実紀史議員は28日の参院予算委員会で、日米の軍事企業だけがもうけ、国民の暮らしも経済も破壊される事態を招く際限なき軍事費拡大を追及し、パレスチナ・ガザ地区で虐殺を行うイスラエルや同国軍事企業に、日本の公的年金の積立金が投資されている実態を告発し、虐殺を許さない姿勢で投資をやめるよう迫りました
 大門氏は、5年間で43兆円の軍事費は歳出ベースの金額で、契約ベースでは、この3年間ですでに35兆円になり、このペースだと5年間で50兆円以上にもなると指摘。米トランプ政権の「国内総生産(GDP)比3%以上」との要求通りにすれば軍事費は年間18兆円にもなり、暮らしの予算は削られ、社会保障の負担増と給付削減、増税などで国民の可処分所得は減少し、家計消費が抑え込まれ「日本経済は停滞する」と追及しました。
 
経済の足かせに
 「指摘は当たらない」と強弁した赤沢亮正経済再生担当相に対し大門氏は、GDP比で軍事費が決まるなら、仮に経済が回復して税収が上がったとしても軍事費に取られてしまい、経済の足かせになると反論。物価高などで国民の暮らしが脅かされる一方、米国の武器輸出制度「有償軍事援助(FMS)」が23年度に前年度比1兆円以上増と急増したあと高止まりし、国内軍事企業が政府からの中央調達(武器や燃料の購入)額を増やしていると述べ、大軍拡中止を迫りました。
 
 イスラエルが停戦を破って大規模な攻撃を再開したガザ地区では、延べ5万人超(子どもは1万5613人)が犠牲になる虐殺が行われていると指摘。イスラエル国債や同国軍事企業に、国民が納めた年金保険料を金融市場で運用する公的機関GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が投資していると告発しました。

 「私たちの年金をガザの虐殺に使うな」と市民らが24日に国会内で集会を開き、イスラエル最大手軍需企業のエルビット・システムズ社と同国に装甲ブルドーザーを納入する米国のキャタピラー社や、イスラエル国債への出資の引き揚げを要求したことを紹介しました。
 GPIFでは運用を委託した会社が出資先を決めています。
 
引き揚げできる
 大門氏は、GPIFが、米国が取引を制限した中国の「軍事企業」への出資を全部引き揚げた実例を示し、引き揚げができたのは、米国が取引を制限した企業を金融商品に組み込めば、その商品が売れなくなることを委託会社が避けたからだと指摘。「大事なのは政府の姿勢だ。日本政府が虐殺を許さない、加担企業とは取引しないと言明すればGPIFは資金を引き揚げることができる」と迫りました
 石破茂首相は「イスラエルがやっていることを黙認していない」と答弁しましたが、取引しないとは明言しませんでした。

 大門氏は、かつてGPIFがロシアの株式、社債・国債に計2300億円出資したものの、ロシアのウクライナ侵略による経済制裁・凍結で資産価値がなくなり、国民の年金積立金が失われたと告発。虐殺を行っているイスラエル国債へのGPIFの投資額計2270億円も経済制裁などでゼロになる危険があり、「リスクの観点からも引き揚げる決断を」と迫りました。