2025年12月25日木曜日

停戦順守イスラエルに迫れ 米47議員が大統領に要求/ガザ停戦下411人殺害

 米野党民主党の下院議員47人は22日、トランプ大統領に連名書簡を送り、パレスチナ・ガザ地区での停戦合意(10月10日発効)をイスラエルに順守させるために「最大限の外交的圧力」をかけるよう求めました。書簡は、イスラエル軍が「ほぼ毎日」停戦合意に違反していると批判しています。イスラエルは空爆や砲撃、射撃などで700回以上も合意に違反していると指摘しました。

 パレスチナ・ガザ地区広報局は22日、報道声明を出し、停戦発効後73日間に、イスラエルの攻撃で少なくとも民間人411人が殺害され、1112人が負傷し、停戦合意違反は875回に上ると発表しました。停戦合意で1日600台とされた支援トラックの搬入は、平均244台にとどまっていると指摘しています。食料、水、医薬品、燃料が深刻に不足し、医療機関や水道・衛生施設は、ほぼ機能停止状態に陥っていると訴えています。
 また力イロに本拠を置く人権NGOのアラブ人権機構(AOHR)は同日、ガザ地区が飢きん(壊滅的飢餓)を脱したとする19日の国連・統合食料安全保障フェーズ分類(IPC)報告について、現状を過小評価し、誤った印象を与えるとして批判する声明を発表しました
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
停戦順守イスラエルに迫れ 米47議員が大統領に要求
                       しんぶん赤旗 2025年12月24日
【ワシントン=洞口昇幸】米野党民主党の下院議員47人は22日、トランプ大統領に連名書簡を送り、パレスチナ・ガザ地区での停戦合意(10月10日発効)をイスラエルに順守させるために「最大限の外交的圧力」をかけるよう求めました。書簡は、イスラエル軍が「ほぼ毎日」停戦合意に違反していると批判しています。

 書簡に名を違ねた議員の大半は、民主党主流派のリベラル・穏健派です
 書簡は、イスラム組織ハマスも民間人やイスラエル兵の殺害など停戦合意に違反しているとしながら、「ハマスの違反に対するイスラエルの対応は過度・不均衡であり、結果として甚大な犠牲が生じていることに深い懸念を抱いている」と述べています。
 停戦合意では軍事作戦停止が明確に定められているにもかかわらず、イスラエルは空爆や砲撃、射撃などで700回以上も合意に違反していると指摘。1500棟以上の建物を破壊したとする報道を取り上げ、国際人道法違反の可能性を指摘しています。
 また、イスラエル側がガザヘの人道支援物資の十分な搬入を認めず、検問所で大幅な遅延が発生しているとし、「すでに極めて深刻になっているガザの人道状況をさらに悪化させるだけだ」と強調しました。
 書簡は、「ほぼ毎日みられる停戦合意違反は、地域を全面戦争へと引き戻す危険をはらんでいる」と強調。イスラエルヘの外交的圧力の行使で、合意違反を終わらせることが不可欠だと訴えています。


ガザ停戦下411人殺害 イスラエルが攻撃・支援妨害
                       しんぶん赤旗 2025年12月24日
【カイロ=米沢博史】パレスチナ・ガザ地区広報局は22日、報道声明を出し、停戦発効後73日間に、イスラエルの攻撃で少なくとも民間人411人が殺害され、1112人が負傷し、停戦合意違反は875回に上ると発表しました。停戦合意で1日600台とされた支援トラックの搬入は、平均244台にとどまっていると指摘。食料、水、医薬品、燃料が深刻に不足し、医療機関や水道・衛生施設は、ほぼ機能停止状態に陥っていると訴えています
 検問所を掌握するイスラエルの妨害により、テントや仮設住宅の資材搬入は滞り、悪天候の中で、12万5000以上のテントと、攻撃で損傷した住宅46棟が倒壊し、死傷者が増えています。ガザ当局は、冬の寒さによる死者のさらなる増加を警告し、国際社会と停戦の仲介国に対し、イスラエルに停戦合意を守らせる法的・道義的責任を果たすよう訴えています。
 こうした状況を受け、力イロに本拠を置く人権NGOのアラブ人権機構(AOHR)は同日、ガザ地区が飢きん(壊滅的飢餓)を脱したとする19日の国連・統合食料安全保障フェーズ分類(IPC)報告について、現状を過小評価し、誤った印象を与えるとして批判する声明を発表しました。同報告書が10~11月の調査で「ガザ地区の5人に1人、約50万人が飢きんの危機に直面している」と評価しながら、ガザ全域を飢きん指定から外した点を問題視しています。イスラエルが支援の妨害を続け、住民の生計活動を阻止し、避難民を軍事攻撃し、ジェノサイド(集団殺害)を継続していると強調しています。

 ガザ地区に拠占を置くアルメザン人権センターも同日、停戦合意後も民間人への攻撃が続いているとして、ジェノサイドの停止を国際社会に訴える声明を発表しました。停戦発効以降も避難民が身を寄せる学校やテントが繰り返し攻撃されていると訴えました。 

暴風雨と寒波18人死亡 ガザ、仮設住宅求めデモ

 ガザの人たちはいまもなお 生き地獄 を味わっています。
 ガザでの停戦が発効しましたが、現在もイスラエルによる空爆やパレスチナ人殺害は止むことはありません。トランプは何故禁止させないのでしょうか。
 ガザの人たちはいまもテント暮らしですが、最近の暴風雨により、避難所の約9割が浸水し、ほとんどすべてのテントが倒壊または損傷しました。テントの倒壊、テント内への浸水と厳しい寒さによって、少なくとも子ども5人を含む18人が死亡しました。
 衣類やマットレス、毛布も浸水で使用不能となり数千世帯が仮の住まいを失いました
 市民数千人の命が現在も直接的な危険にさらされています。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
暴風雨と寒波18人死亡 ガザ、仮設住宅求めデモ
                       しんぶん赤旗 2025年12月22日
【カイロ=米沢博史】パレスチナ・ガザ地区の民間防衛隊(救助隊)のマフムード・バサル報道官は20日、本紙に対し、最近の暴風雨によるテントや住宅の倒壊と厳しい寒さによって、少なくとも子ども5人を含む18人が死亡したと明らかにしました。
 バサル氏によると、ガザ地区の避難所の約9割が浸水し、ほとんどすべてのテントが倒壊または損傷しました。イスラエルの攻撃で弱体化した住宅17棟が完全に倒壊、90棟以上が部分倒壊し、市民数千人の命が現在も直接的な危険にさらされています。衣類やマットレス毛布も使用不能となり、数千世帯が仮の住まいを失いました。住民は、地面や屋根から水が染み込みテントが居住不能となる中、厳しい寒さと暖房の欠如により、睡眠や調理、さらには座ることさえ困難な状況に置かれ、深刻な苦しみを強いられています。
 暴風雨の発生以降、民間防衛隊に5千件を超える救助要請が寄せられています。バサル氏は、機能不全のテントではなく、人間の命と尊厳が守られる住居の緊急支援を訴えています。
 こうした中、ガザ市西部のシャティ難民キャンプでは17日、避難民がテントに代わるプレハブ・キャラバン(移動式仮設住宅)の即時提供を求めるデモを行いました。デモは難民キャンプ住民会が主催し、「キャラバンはぜいたくではなく権利」「テントは集団墓地」と訴えました。

 さらに、住宅資材の搬入を認めないイスラエル占領当局に検問所の全面開放を求めるとともに、国際社会に対し、緊急人道支援策としてキャラバン搬入を認めさせる即時かつ強力な圧力を要請しました。
 また、復興を直ちに開始し、人道問題を複雑な政治的プロセスと結びつけないことや、市民に最低限の生活水準を保障するための物資搬入も求めました。
 デモに参加したアブ・ハッサンさん(45)は現地メディアに対し、「家族で暮らすテントは雨のたびに浸水する。医療体制も崩壊する中、洪水や病気から子どもたちを守る住まいが必要だ」と訴えました。


ガザの和平計画 「第2段階」協議 仲介4ヵ国
                       しんぶん赤旗 2025年12月22日
【ワシントン=時事米国のウィトコフ中東担当特使は20日、パレスチナ自治区ガザの和平計画を巡り、南部フロリダ州マイアミで19日にカタール、エジプト、トルコ各国高官と協議したと発表しました。和平計画の「第2段階」に向けて準備を進めていくことで一致しました。
 ウィトコフ氏がSNSで公表した共同声明は、ガザヘの人道支援や死者を含む人質の返還、部隊の部分的撤収など現在の「第1段階」で「進展が得られた」評価。イスラム組織ハマスの武装解除やガザの治安維持を担う国際安定化部隊(ISF)の派遣を含む「第2段階」に向け、今後数週間でさらに協議することを確認しました。
 一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は19日、トランプ米政権がガザを「未来的な海辺の保養地」に変える構想をまとめたと報じました。ウィトコフ氏やトランプ大統領の娘婿クシュナー氏が主導しているといいます。
 この構想は「プロジェクト・サンライズ」と題され、10年間で1121億/(約17兆6500億円)の総費用を見込んでいます。32ページの草案には、沿岸部に高層ビルが林立し、高速鉄道も建設されるイメージ図が描かれています。ただ、同紙は「米当局者の一部は、実現可能性に深刻な疑念を抱いている」とも伝えています。

首相補佐官の尾上定正が「核保有すべき」とオフレコ観測気球 - マスコミは糾弾せず看過

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
 論旨は明快で、官邸幹部が(12人だったかの)記者たちをまえにオフレコと断って、「日本は核保有すべきだ」と発言したのは、高市氏の指示のもとで上げた「観測気球」であるというものです。
 その結果は、取り分け大問題とはならなかったわけで、それを確認できたことで「観測気球」の役割は十分に果たせました。

 しかしそのことと米国を含めた海外の諸国が日本の核保有を認めるかどうかは別問題です(例の「敵国条項」との関係もあります)。その点を全く考えていなかったのであれば「台湾有事」と同じ轍を踏んだことになります。

 併せてしんぶん赤旗の記事:「軍拡の帰結 『核保有』発言 NHK討論で山添氏 対話の外交こそ」を紹介します。
 自民党、維新の会、参政党の反動性は目を覆うばかりです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
首相補佐官の尾上定正が「核保有すべき」とオフレコ観測気球 - マスコミは糾弾せず看過
                       世に倦む日日 2025年12月23日
師走も押し詰まろうとする時期に、また重大な陰謀事件が起きた。臨時国会が閉幕した 12/18 の夜、官邸幹部の一人が「日本は核保有すべきだ」とオフレコで発言、翌 12/19 に各社から報道されて大問題となった。発言は記者団を前にした 非公式取材”のものと説明されていて、すなわち官邸の番記者を全員集めた上での行動だ。この一事だけでも驚愕して卒倒する出来事であり、全身の神経が麻痺するほど衝撃を受け、X や note に何と書いて憤激や恐怖を表すべきか悩んで戦慄したが、それ以上に驚いたのは、そこから1日経っても2日経っても、発言者が特定されず、非難が爆発的に集中する事態にならなかった問題だ。糾弾の声が燎原の炎の如くに広がらなかった。昭和も遠く..否、平成すら遠くなりにけりで、日本の国の政治の絵とは思えない。上皇ご夫妻は仙洞御所でどう思われているだろう。正直、喪心状態でいる。目の前の現実が信じられない

以前なら、と言うか、普通なら、12/19 のワイドショーに田崎史郎や佐藤千矢子のような政治記者が出てきて、この「官邸幹部」の特定に繋がる輪郭像を示唆し、それを番組コメンテーターが叩き、続いてネットのXが炎上の奔流となり、名指しされた「官邸幹部」に批判のボルテージが昂まっただろう。12/19 夜 にも罷免の決定と会見という展開になり、早期収拾が図られたはずだ。だが、今回はそうならない。糾弾と馘首という流れにならず、高市政権の打撃と挫折という進行にならない。逆に、閣僚や野党や自民党からは「官邸幹部」に内在する声が上がり、核保有論は選択肢の一つだと言い、自由な政策意見を認めろという声が上がり続けた。小泉進次郎や河野太郎や玉木雄一郎が容認論を言っている。さらに、オフレコ発言なのに報道の表面に出したマスコミが悪いという声が一斉に上がり、右翼が中心になってマスコミ叩きの声が多数であるかのような景観が出現している

今回のようなオフレコの政治は、典型的な観測気球の政治に他ならない。過激な、世間から拒否反応の多い政策を、政治家が匿名でマスコミを通じて打ち上げ、世間の反応を窺って反発と支持の度合を測り、同時にその政策が政治空間で市民権を得るべく布石と地均しを図る政治だ。普通は、こうした政策に関わるオフレコ政治は、自民党の幹部や政調の要職者や族議員の重鎮がやるもので、政府の外から打ち上げ、同調するマスコミ記者が広めて世論化するものである。そしてまた、その政策発信の中身が毒性が強すぎ、世間のアレルギー反応が激越で、政権の支持率低下を招くリスクのある場合は、最初から役職辞任とか謝罪謹慎とかの責任対処の始末を決めて覚悟した上で臨む行為だ。けれども、今回は政府の中枢からアドバルーンが打ち上がった。異例中の異例の事態であり、さらに時間が経っても特定されず、責任追及されないまま、むしろ暴言が正当化される空気が作られている

その人物は、首相補佐官で安全保障政策担当の尾上定正だと推定されている。高市早苗と同じ奈良県出身で66歳。防衛大卒で元空将。笹川財団の上席フェロー。高市とは飲み友達の昵懇の関係らしく、今年5月には日本会議の講演会に二人で揃って登壇していた。高市の身内中の身内の人物だ。尾上定正の名前が浮上したのは 12/19 の正午頃だったが、私はこの情報が俄かに信じられなかった。通常、いくら防衛系で霞が関とは別系統だと言っても、官僚はこういう政治家の真似事は絶対に厳禁だからである。12/18 夜にこの問題が騒動になった時点で、私はてっきり、維新の遠藤敬の発言だろうと推測していた。内閣官房の幹部として正式に紹介されているのは、補佐官5名を含む18名で、うち7名が政治家であり、残り11名が官僚だ。7名のうち、官房長官の木原稔と官房副長官の尾崎正直は絶対に切るわけにはいかない。とすると、佐藤啓か補佐官3名のうち誰かという引き算になる

最も切りやすい(責任の軽い)立場にいて、4人の政治家の中で安保政策関係に関わっていたのが遠藤敬だったので、この男が更迭覚悟で手を挙げて敢行したのかなと想像していた。議員削減法案を反故にされ、通常国会でも大阪副首都法案が難航だと囁かれている状況で、維新の吉村洋文が官邸へのコミットを後退させる政局と重なった動きかなと、深読みの邪推をした。他の3人(佐藤、井上、松島)は政策の畑と担当が違う。しかしまさか、防衛官僚の補佐官がこんな重大な謀略の実行役をするとは思わなかった。まさかの底が抜けている。特定され追及されたら引責辞任となる。罷免される。政治家であれば、確信犯として堂々と、役目を果たしたと開き直って辞任すれば終わりだが、官僚はそうはいかない。致命的な不祥事であり、総理の足を引っ張って政権に打撃を与えた罪人になる。官僚にとっては、組織による更迭は処分沙汰であり、エリートのキャリアに傷がつくペナルティに他ならない

なので、勲章も欲しいし上等な天下り先も欲しい官僚は、この種の政治家的な火遊びは絶対にしないのである。禁忌なのだ。今回、官邸中枢で記者団を集めて大胆なオフレコをやり、観測気球の政治をローンチ⇒打上げ)したのだから、誰がその実行役になろうと、明らかに高市早苗の指示と差配の下でやっている。しかもそれが、前代未聞の、官僚の補佐官がやったとなれば、まさに高市の代弁そのものだ。尾上定正は罷免へっちゃらで、事の次第で免職となった後は、報道1930や深層NEWSに出演し、定番の安保評論家(外回りの日米同盟軍参謀)となり、日本の核武装の具体論を吼えまくる魂胆なのだろう。この政治も 11/7 の台湾有事発言と同じで、高市が周到な準備と計算の上で行った計画的なものだ。12/18 に国会は閉じたから暫くは質疑での追及は受けない。罷免と撤回の要求をかわし、時間稼ぎに成功すれば、1か月後に通常国会を開いた頃には世論が冷めて忘れている。その間に賛否両論割れさせる

政府中枢が核保有必要論を打ち出し、従来の日本政府の態度を一転させたという、重大な政治の一撃を既成事実化して固める。2月の国会で揉み、テレビの報道番組で揉み、マスコミの 世論調査”で賛成多数か賛否半々の 結果”にして、安保3文書の改定内容を提言する4月に、非核三原則の撤廃と核保有を新規の基本要項として盛り込む思惑だろう。日本として正式に核武装の国家意思を内外に示し、中国と敵対する諸外国の同意と了承を調達する戦略を示すのではないか。①日本の自前の核開発、②保有弾頭数の目標と時期、③トマホークと12式への核実装、④戦略ミサイル作戦群の新設、が具体項目として並ぶと思われる。私は前々から、(1) スパイ防止法、(2) 徴兵制、(3) 核武装、(4) 靖国国営化 が来るぞ来るぞと執拗に警告を言い続け、長年ネットでオオカミ少年の役割を演じ、左翼から「陰謀論者」と侮辱され罵倒されてきた。が、いざその瞬間に立ち会うとなると、スピードの速さに呆然とさせられる

その後、週末と週明けのテレビ報道を見たが、依然として「官邸幹部」の名前は出ない。マスコミは高市に忖度し、多数世論を押さえている右翼を恐れ、この「官邸幹部」を庇う行動に出ている。と言うより、高市と一緒になって、日本の核武装を推進する政治に協力し、非核から核保有へと国是・国策を転換する環境へと日本を改造している。私は、12/19 夜に報ステに千々岩森生が出てきて、「官邸幹部」の特定を臭わせるものと思っていた。通常はそのパターンだ。普通なら当該「官邸幹部」は罷免覚悟の政治家で、観測気球の政治工作の任務を遂げて引責辞任となるもので、その筋道を千々岩森生のような政権と癒着した政治記者が敷く。お決まりのコースの政治芝居を配役たちが粛々と演ずる。だが、12/19 夜に千々岩森生は登場せず、大越健介も「官邸幹部」が誰かを言おうとしなかった。オフレコとして隠蔽したまま報道した。ところが、そうしたら、なぜか右翼が「ルール破り」だと吼えて大越健介に襲いかかったのだ

オフレコなのに報道の表に出すとは何事かと、12/20 に大越健介が右翼から袋叩きに遭っていた。普通なら、名前を隠すとは何事かと叩かれるはずなのに、オフレコの政治に協力した大越健介を右翼が「ルール破り」だと叩いているのだ。そうやって、核保有発言の官邸謀略を二重三重にカバーし、極限までプロテクトし、不当化の要素を排除し、正当化の世論工作を強烈に固めているのである。こんな異常な政治光景は初めて見た。右翼化の極みと言うしかなく、民主主義政治制度の下での右翼独裁と言うしかない。予算編成の報告とか、年始の会見とか、これから高市が政治記者の前に姿を現す機会があるが、記者は高市に対してこの件をどう質問するのだろう。無論、打ち合わせはできているだろうし、この核保有発言の謀略を一緒に遂行した官邸記者たちは、高市や木原や尾上と忘年会のクリスマスパーティを開き、この2か月を互いに慰労し、高級シャンパンで豪勢に乾杯して呵々大笑しているに違いない。その政治記者たちの上司に千々岩森生のような男がいる

マスコミは、この核保有発言の謀略の共謀共同正犯なのだ。記者が躊躇した形跡は一切ない。尾上定正は無傷で役職に留まったままでいる。官邸に通勤しているはずなのに、マスコミはカメラさえ向けない。中谷元が更迭に動いたのに動じなかった。年明け以降、尾上定正のオフレコスピーカーで、徴兵制導入が、憲兵隊設置が、靖国神社国営化が、次々とアナウンスされ、色とりどりの観測気球が空に舞うのだろうか


軍拡の帰結 「核保有」発言 NHK討論で山添氏 対話の外交こそ
                      しんぶん赤旗 2025年12月22日
 日本共産党の山添拓政策委員長は21日、NHK「日曜討論」に出演し、各党の安全保障政策責任者と議論を交わしました。各党から「抑止力強化」だとして軍拡ありきの主張が相次ぐなか、山添氏は「際限のない軍拡競争になる。その行き着く先が政府高官の『核保有』発言だ」と厳しく批判し、軍事一辺倒の転換を求めました
 高市早苗首相が17日の会見で安保3文書の来年中の改定に向け議論を加速させる考えを示したことについて、自民党の小野寺五典安全保障調査会長は、安全保障環境が変化しているとし「戦略を見直すのは大事だ」と強調日本維新の会の前原誠司安全保障調査会長は、最新技術導入で戦い方が変化したほか、中国が空母3隻体制になり「脅威が高まっている」と述べ、安保3文書改定が必要だと主張しました。
 山添氏は、政府が主体的判断で軍事力を強化するというが、軍事費増額や敵基地攻撃能力保有、日米司令部機能の統合などは「米側の要求に基づき日米一体の戦争体制づくりとして進められてきた。米軍は先制攻撃まで戦略としており、大変危険だ」と強調。米国が新たな安全保障戦略で日本を名指しし軍事費増額の圧力をかけ、中国抑止戦略を日本に肩代わりさせようとしていると指摘しました。
 「新しい戦い方が言われ、抑止力強化が言われるが、これは際限のない軍拡競争になる」と述べ、行き着く先が首相官邸の高官による「核保有発言」だと強調しました。「非核三原則を公然と否定することは唯一の戦争被爆国として絶対に許されない」とし、撤回させ罷免するべきだと主張。小泉進次郎防衛相が非核三原則の見直しについて「あらゆる選択肢を排除せず検討を進めるのは当然だ」と述べたことを挙げ、「たがが外れている。軍事一辺倒を改めるべきだ」と厳しく批判しました。
 自民の小野寺氏は「核の議論から何も考えずにいることは政治として無責任だ」などと強弁しました。

「台湾有事」が存立危機事態になり得る、との高市首相答弁をめぐる日中関係について各党が意見を表明しました。「謝罪する必要はない」(前原氏)「問題ない」(日本保守党の有本香事務総長)などと擁護する発言が出る中、山添氏は、「台湾有事」で米中の交戦になった際、日本が攻撃されていなくても米軍を守るために自衛隊が武力行使するということであり、「中国と戦争するという宣言にほかならない」と指摘「戦争放棄をうたう憲法に反し、日中双方の国民に大変な被害をもたらしうる極めて危険な発言だ」とし撤回を要求。「互いに脅威とならない」など日中双方の合意を再確認し、関係を再構築する必要があると主張しました。
 日本の安全保障に何が必要か問われ、参政党の松田学両院議員総会長は「防衛費は当然増大しなければならない」と述べました。
 山添氏は、与党が決めた「軍拡増税」は軍事費GDP(国内総生産)比2%の財源だとし、トランプ米政権が要求するGDP比3・5%になれば「いっそうの負担増、社会保障削減、暮らしへの圧迫となることは間違いない」と指摘。「軍事費を削って暮らしに回し、戦争準備ではなく対話の外交を」と訴えました

25- ウ戦争を終わらせない圧力(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 植草氏が国際問題の記事を出すのは珍しいですが、これまでウクライナ問題に関しては、「ネオ・ナチ政権」の根拠を示す文献や「マイダン・クーデター」の実写動画などの、重要な資料を紹介しています。

 ウクライナ軍は23日、激戦が続く東部ドネツク州の北部にある防衛拠点の1つ、シベルシクから部隊を撤退させました。激戦とされた戦線からの撤退は大いに劣勢であることを示すものです。

 なお記事はメルマガ版の前半の公開部分のため「マイダン・クーデター」勃発のところで終っていますが、その後の概略の経過は下記の通りです。

 米国のバラク・オバマ政権は2014年2月、NATOの訓練を受けたネオ・ナチを利用したクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのですが、ネオ・ナチ体制を拒否するウクライナ人は少なくく、東部や南部の住民はクーデター政権に対する反発強く、南部のクリミアでは住民はロシアとの一体化を選び、東部のドンバス(ドネツク、ルガンスクでは武装闘争が開始されました。
 軍や治安機関のメンバーの約7割がクーデター政権を拒否して離脱、その一部はドンバスの反クーデター軍に合流したため戦況は反クーデター軍が優勢でした。そこでドイツやフランスが仲介する形で停戦合意が成立したのが、2014年の「ミンスク1停戦合意」と15年の「ミンスク2停戦合意でした。
 それにはドンバス地方に自治権を与えるということが含まれていましたが、実現せず 逆にロシア語を公用語から外すなどの迫害を行いました。
 もともとこの停戦はクーデター政権の戦力を増強する時間稼ぎが目的であったことを、のちにメルケル元独首相オランド元仏大統領が告白しており、2021年にその増強が完了すると年末~年初に掛けて米国バイデンが、米軍は動かないからと盛んにプーチンに侵攻を煽るとともに、クーデター軍をドンバス地方の近くまで進めました。
 西側はドンバス地方の制圧を機会に、ロシア軍を侵攻させて一挙に叩こうという作戦だったのですが、現実はウクライナが決定的に劣勢であるのに利権を失いたくない一心で停戦はさせないという姿勢で臨んでいます。

 併せて櫻井ジャーナルの記事:「ウクライナは露国に対するテロ攻撃を激化させようとしているが、大勢に変化なし」を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ウ戦争を終わらせない圧力
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年12月24日
トランプ大統領はウクライナ戦争のクリスマス終戦を目指していたと見られる。
しかし、その実現は困難と見られる。
戦況は明確。ドネツク、ルガンスクの東部2州、ヘルソン、ザポリージャの南部2州の大部分をロシアが占有している。戦況が逆転する可能性は極めて低い。これ以上犠牲者を出さないためには戦争を終結するしかない

しかし、ウクライナが頑強に抵抗している。
ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年5月にすでに任期を満了している。
本来は大統領選を実施しなければならないが戦時を口実に大統領選を実施せず、ゼレンスキーがそのまま大統領の座に居座っている。
ウクライナ戦争の遂行にあたり、ウクライナに法外な額の援助が行われた。
その援助資金の取り扱いにおいて巨大な不正が行われている。ゼレンスキー政権自体が巨大な汚職、腐敗の温床になっている。この状況下にあるウクライナに追加の資金支援が計画されている。

ウクライナに対する資金支援を中止すれば直ちに戦争は終結する。ところがEUを中心に巨大な資金提供が続いているために戦争が終結せず、停戦、終戦の見通しが立たない。
戦争の継続はウクライナ市民の犠牲を拡大させるだけで害悪が大きい。

第二次大戦では日本の敗戦が確実な状況であったにもかかわらず日本政府が戦争を継続したために国民の犠牲が飛躍的に拡大した。
沖縄、国内での大規模空襲、広島・長崎の原爆被害は日本政府が早期に敗戦を受け入れていたなら回避されたものである。

そもそもウクライナ戦争においてウクライナの正義は存在しない。ウクライナ戦争は、ウクライナとウクライナ東部2州が独仏ロの関与の下で締結した「ミンスク合意」という内戦停戦合意をウクライナ政府が誠実に履行しなかったために勃発したものである。
西側メディアはロシアによる一方的な「侵略」と表現するが事実は違う。

ウクライナ政府は東部2州に対する軍事攻撃を強め、これに対応して東部2州が共和国として独立を宣言。ロシアは2共和国を国家承認したうえで、集団的自衛権を行使するかたちでウクライナに軍事介入した。
ウクライナ戦争が発生するまでの経緯を検証することなく、ウクライナ戦争の原因を短絡的に捉えるべきでない。

ウクライナは独立して40年にも満たぬ歴史の浅い国である。元はソ連邦の一共和国だった。
冷戦終焉に連動して独立したが、当初は親ロシア共和国であった。
この状況下で米国が地下工作を行い、2004年に親米政権が創設された。
大統領選で親ロのヤヌコビッチが勝利したが、米国が工作した市民運動が「不正選挙」を唱えて選挙がやり直しになった。この過程で親米候補のユシチェンコが何者かによる毒薬攻撃を受けて顔がただれるという事態が発生した。

ユシチェンコ陣営は反ユシチェンコ陣営による謀略だと主張。この主張で同情票が集まり大統領選再選挙でユシチェンコが当選。親米政権が樹立された。
毒薬攻撃はユシチェンコ陣営による自作自演であった疑いが強い。米国の地下工作による政権転覆であったと考えられる。

しかし、ユシチェンコ政権の金権腐敗は深刻で政権は早期に崩壊した。正規の大統領選が実施されてヤヌコビッチがウクライナ大統領に選出され、親ロ政権が樹立された
このヤヌコビッチ政権が2014年に破壊された
2013年11月、ヤヌコビッチ大統領はEUとの連携協定署名を先送りすることを決定。
ロシアが提示したウクライナ支援策を受けた方がウクライナ国民にとって利益が大きいと判断したためだ。
しかし、ヤヌコビッチ大統領の署名先送り決定に合わせてウクライナの首都キエフで大規模市民デモが組織された。

これと合わせて民間テレビ局が3局も同時に創設された。
そのうちのひとつはジョージ・ソロスによる資金投下によるものである。
キエフにあるマイダン広場に市民が集結した大規模デモを水面下で工作・指揮したのは米国であると見られる。

続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」4288号
「ウクライナ戦争の真実」 でご高読下さい。
この機会にメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」ご購読をぜひお願いします。
https://foomii.com/00050
                   (後 略)


ウクライナは露国に対するテロ攻撃を激化させようとしているが、大勢に変化なし
                         櫻井ジャーナル 2025.12.25
 ロシア軍は12月23日、変電所、物流施設、軍事企業、軍事施設などを600機以上の異なるタイプのミサイルやドローンで攻撃したが、ウクライナ西部にあるジトーミルでは軍事物資を輸送していた列車をドローンが攻撃、脱線させている。破壊された車両には約70名の傭兵、そして軍事顧問としてスムイへ派遣されていたイギリス軍将校8名が乗っていたという。
 その前日、モスクワではロシア軍参謀本部のファニル・サルバロフ作戦訓練部長を乗せて走行中の自動車に仕掛けられていた爆弾によって暗殺されている。ロシア軍はウクライナでNATO将校をターゲットにするようになっているが、そうした作戦を指揮していたのはサルバロフだったという。
 ロシア側の発表によると、暗殺を実行したのはウクライナとイギリスの情報機関員。SBU(安全保障庁)やGUR(国防省情報総局)だけでなく、SIS(秘密情報部、通称MI6)やSAS(特殊空挺部隊)が実行したということになる。ロシア下院の国防委員会に所属するアンドレイ・コレスニク委員は「この攻撃を実行した者全員を特定し、排除する必要がある」と発言していた。

 23日にもモスクワで爆弾事件が起こされている。サルバロフ中将が暗殺された場所の近くで不審者を発見した交通警察官2名、マクシム・ゴルブノフとイリヤ・クリマノフが近づいたところ爆発、警察官ふたりを含む3名が死亡した。ウクライナ側が行ってきた爆弾テロの手口から考えると、爆破は遠隔操作せ行われる。爆弾を設置していた人物の口を封じるために爆破したのかもしれない。
 今のところ、キエフはMI6を後ろ盾とするウォロディミル・ゼレンスキーを中心とするグループが支配しているが、アメリカを後ろ盾とするNABU(ウクライナ国家汚職対策局)とSAPO(特別反腐敗検察)が汚職捜査「ミダス作戦」を進め、ゼレンスキー周辺を締め上げている。ロシアとの戦争を継続したいイギリスをはじめとするEUのエリートに対し、戦況が変化する可能性は小さいと考え、早く戦争を終結させようとしているドナルド・トランプ米大統領が対立しているようだ。

 NABUやSAPOに追い詰められ、法務大臣を名乗っていたヘルマン・ハルシチェンコとエネルギー大臣を名乗っていたスビトラーナ・グリンチュークはすでに辞任、国防大臣を務めていたルステム・ウメロウは7月に辞任を表明し、11月に入って国外へ脱出、カタールにいると言われている。コメディアン時代からゼレンスキーと親しいテレビ制作会社共同オーナーのティムール・ミンディッチはイスラエルへ逃亡したという。ゼレンスキーを排除し、ウクライナ軍の元軍最高司令官で駐英大使のバレリ・ザルジニーを後釜に据えようとする動きもある

 ヨーロッパにはアメリカをロシアとの戦争へ引き摺り込もうとしている勢力、アメリカにはネオコンのようにロシアを破滅させることに熱中している勢力も存在しているが、彼らの思惑通りには進んでいない。そこで必死にテロでロシアを攻撃、おそらく一発逆転を狙ってウラジミル・プーチン露大統領の暗殺も狙っているだろう。プーチンを暗殺すればロシアとアメリカの全面戦争になると考えているかもしれないが、可能性は小さい。

2025年12月22日月曜日

テレビ局はすでに軍事機関と化している - "情報戦・認知戦"の作戦遂行の戦場に

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました、
 同氏は、現下の「民主主義体制の下のマスコミ」は「高市政権肯定者」以外の識者は登場させないという姿勢を貫いているとして、次のように述べています。
例えば、外務官僚の中でも、田中均や孫崎享や東郷和彦は活発に高市批判の論陣を張っているし、いわゆる安保の専門家でも布施祐仁や半田滋や前泊博盛がスタジオに出演すれば、議論のバランスが確保された番組が編成されるに違いない。
 また、宮崎礼壹や長谷部恭男が出演して存立危機事態の解釈論を解説していれば、視聴者の高市発言への支持は低くなる影響に繋がっただろう。面妖きわまることに、こうした高市発言に批判的な立場の有識者はテレビに出る機会を全く与えられないのである

 そして、「既に戦争の前哨戦が始まっている。だけど、その認識がない」と述べます。
 深刻な事態にあるということです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
テレビ局はすでに軍事機関と化している - "情報戦・認知戦"の作戦遂行の戦場に
                       世に倦む日日 2025年12月18日
残念なことに、高市発言を撤回せよという声は日本国内では日に日に小さくなり、少数派の政治的立場になった。状況は高市早苗と右翼側の優勢に進み、高市発言は正しいと評価し認定する意見が多数だ。撤回する必要はない、撤回することは中国への屈服を意味するから絶対にだめだという主張が基調になっている。テレビは完全に制圧された。モーニングショーで玉川徹が細々と抵抗していたが、その絵も消えた。12/6 に起きた中国機のレーダー照射も、それが 11/7 の高市発言に端を発する事件であり、原因は高市と日本側にあるという本質論に遡及されず、一方的に中国側の危険な軍事的威嚇として報道され、日本側を被害者として捉える認識が固まっている。阿古智子や柳澤秀夫などテレビに登場する面々が「日本の中が分断されてはいけない」という戦争プロパガンダを執拗に発信していて、日本国民は全員が高市を正当化して日本政府の立場につけと吠えている

中国側の発信はすべて「情報戦」であり、「認知戦」の材料であり、すなわちナラティブでプロパガンダだから、信用するな、操作されるなと言い、高市擁護で日本国内は纏まれと発破をかけている。テレビ報道はそれ一色で、それに反対する言論がなく、中和する議論が一切ない。3年前のウクライナ戦争のときと同じファッショ環境そのものだ。12/15 と12/16 の国会中継を見ていたが、日本共産党と立憲民主党の議員だけが弱々しい声で高市発言の撤回を求めていた。公明党の議員は質疑の議題に取り上げようともしない。世論が高市支持に染まっていて、マスコミが中国叩き一色だから、その空気に合わせて同調している。本来なら、国会で高市発言の撤回を求めなければいけない野党議員が、世論に阿って高市早苗に忖度し、発言撤回を強く求めないため、撤回を求める立場は日本国内で完全に異端になってしまった。中国悪玉論と暴支膺懲論ばかりが猖獗を極め、歯止めなく増長している

そして相変わらず、日中間で新しい事件が起きない日が4日5日続けば、「時間をかけて沈静化するしかない」とか「冷静に対応すれば折れてくる」とか「国際世論を味方につければいい」をマスコミは繰り返している。高市発言の立場(台湾有事=日本有事)を正式な日本の国策と認め、全員がその位置に並んで高市を応援するようマスコミが扇動している。高市への反論を許さず、中国への敵視と憎悪のみへ誘導している。まさに戦争が始まっている状態と同じだ放送法BPOの原則的立場に立てば、テレビ報道は公平と中立が義務づけられているのだから、番組の中で両論併記の報道がされなければならない。マスコミが中国叩きと高市擁護ばかりに血道を上げる現在でも、世論調査の数字で撤回論は25%(毎日)を占めている。国会とネットの中には撤回論が依然として根強く存在する。その少数意見が報道の表面に反映されなければならず、それが民主主義体制の下のマスコミの姿だろう

例えば、外務官僚の中でも、田中均孫崎享東郷和彦は活発に高市批判の論陣を張っているし、いわゆる安保の専門家でも布施祐仁半田滋前泊博盛がスタジオに出演すれば、議論のバランスが確保された番組が編成されるに違いない。また、宮崎礼壹長谷部恭男が出演して「存立危機事態」の解釈論を解説していれば、視聴者の高市発言への支持は低くなる影響に繋がっただろう。面妖きわまることに、こうした高市発言に批判的な立場の有識者はテレビに出る機会を全く与えられないのである。TBSの報道1930について言えば、12/2 の石井正文と小原凡司と加藤青延が登場した放送回が典型的で象徴的だと言えるが、中国叩きと高市擁護で斉一化して押し固める内容だった。一瞥して、高市発言問題についての当該番組の報道は、小原凡司が仕切っている印象が強く、小原凡司と松原耕二の二人が相談して企画しているのではないかと私は内情を疑っている。情報戦・認知戦”の参謀として自ら出演して

端的に言えば、小原凡司らのテレビ出演は、嘗てのわれわれの表象であるところの、単なる政治的な世論工作という範疇を超えて、軍事的な作戦任務の遂行の意味を帯びたものになっているのだろう。ウクライナ・オールスターズのテレビ出演も同様であり、日米同盟軍の参謀本部による作戦司令に基づいた動きとして看取できると思われる。日米同盟軍の参謀本部”などという概念を無前提に立論すると、いかにも陰謀論的なイメージが惹起され、読者は不興を覚えるに違いない。けれども、真実が何かは歴史が一回転した後で明らかになるはずだ。終戦となり東京裁判が開廷されるまで、日本国民は満州事変の真相を知らず、桜会などの陰謀を知らなかった。それを知ったときの衝撃は大きく、一夜にして日本軍(旧軍)は悪の化身となり、国民全体があの戦争を否定するようになるのである。現時点で、日本のテレビ局は戦争の作戦遂行機関(装備システム)の一つになっていて、報道番組の放送は作戦任務を実践する戦場空間と化している

テレビで自由な議論が行われているのではない。争の前哨戦が始まっている。テレビはすでに国家による戦争の道具と化しており、専門家の皮を被った軍人(と半軍人)たちが全力で情報戦・認知戦”を行っている。軍事行動の現場だから、テレビの中に言論の自由はない。私はそう確信する。最早、松原耕二や大越健介が高市政権に忖度しているとか、CMを仕切る電通に頭が上がらないからとか、そういう段階と次元の問題ではないだろう。言論の牢獄と化した現状の説明と理解においては、例えば、今の中国やベトナムのテレビ局の報道を想像すればいい。当然ながら、その内容は党委員会によって裏で規律され統制されている。発信の中身はすべてプロパガンダの性格を帯びる。視聴者は、テレビに登場するキャスターや専門家たちの誰が党員なのか、その者たちの党内序列がどうで指揮命令系統がどうなっているか、正確に具体的には知らない。だが、薄々と内実は察知できる。今の日本のテレビはそれと同じで、”を日米同盟”に置き換えればよいのだ

テレ朝の報ステについて言えば、11/7 直後の一週間ほどは、大越健介にもこの件の報道で公平中立を意識した部分があった。この時点では、高市発言を批判する世論が半分程度あり、失言であり失態であると懸念する声が強かったので、大越健介も不偏不党に配慮していた。だが、11/18 に中国外交部の局長がポケットに手を突っ込んだ映像が出て以降は、態度を変え、中国叩きを貫徹する言論にシフトする。特に旋回の画期となったのは、11/25 に前駐中国大使の垂秀夫を出演させ、「絶対に(発言を)撤回してはいけない」と言わせた放送だ。それまでは、政治部デスクの千々岩森生に中国叩きと高市擁護を言わせ(右)、それを受けたコメントで大越健介が中和剤を撒き(左)、二人で論調の均衡を図っていた。が、垂秀夫の主張を”標準”として据えたところから、テレ朝はすべての報道番組(大下容子、上山千穂、有働由美子、、)で中国叩き・高市擁護の言論に収斂させるところとなる。日米同盟の制服軍人”を感じさせるのは千々岩森生だが、柳澤秀夫の猛毒も凄まじい

ネットも基本的に同じであり、ヤフーニュースとXタイムラインは日米同盟の軍事的な論理と目的で編集されている。中国との情報戦”と認知戦”の武器として活用され、高市発言を擁護する記事と投稿ばかりがヤフーニュースとXタイムラインに並び、高市発言を支持する意識づけが読者に督促されている。マスコミが高市擁護と中国叩きで一色となり、ネットも同じく翼賛状態だから、世論調査で高市発言への支持が高く出るのは当然なのだ。逆に言えば、これだけ右翼論者を総動員して高市擁護と中国叩きの報道ばかり溢れさせているのに、その結果、高市発言を撤回せよという世論が多数になるのはおかしいのである。今のマスコミの世論調査は、自然で不可測な世論を調査で掬い取るのではなく、最初から数字ありきであり、この数字を出すというマスコミの意思が前提にあり、数字が自然になるように報道の論調を構成するのである。佐藤千矢子がヒステリックに石破おろしを扇動しまくった後で、石破政権の支持率が下がりましたという結果を作るのだ。因果を敷き導くのだ

戦争の前哨戦が始まっている。だけど、その認識がない。高市発言の撤回を求める者は少なくないが、それを単に政局としてしか捉えてない者が多く、戦争が始まるという危機感がない。中国との戦争の恐怖をリアルに訴えている者がいない。実感が湧いておらず、批判の言葉が軽薄だ。一方、高市擁護のプロパガンダを上から佞悪に吐いている者(参謀)たちは、本当に中国と戦争を始めようと狂奔している。東アジアから手を引いて西半球に引き籠ろうとするアメリカを引き戻し、再び自由と民主主義の戦い”に関与させるため、台湾有事に至るプロセスを動かしステップを進めている。反共右翼のエリートとして信念的に、親米反中のオフィサーとして職業的に。他方、高市を支持する多数派の少なからずが、凡庸であるがゆえにマスコミの説明を信じて鵜呑みにし、ヤフーニュースに洗脳され、保守”というシンボルに帰依して、この問題についての自己の態度を決めている。日本の立場につき、日本を守ろうとし、悪である独裁国家の中国と戦おうとしている。普通の市井たちが

まさに、戦争へのベルトコンベアに搭載されて移動している。大塚久雄が『社会科学の方法』の序盤で比喩して示唆していたような、満員の駅の通路で群衆に押され、自己の意思に反して否応なく不可抗力的に前へ進まざるを得ない状況になっている。戦争を止めるのは難しい。奇跡が起きるのを祈るしかない