しんぶん赤旗日曜版12日号に掲題のスクープ記事が載りました。
OTC類似薬とは町の薬局で買える市販薬のことで、そうした薬を保険の「対象から外す」という案が既に政府から提案されたのですが、反対意見が強いので政府は一旦見合わせることにしたのですが、自・公の与党と維新は6月、OTC類似薬の保険給付見直しを26年度から実行することで合意し、国民民主や参政党も保険給付見直しを公約しているので、来年にも実施される恐れは十分にあります。
政府案に賛成の議員たちによればその効果は1兆円に及ぶということです。要するにそうした新たな負担が患者たちに及ぶということになります。
実際に魚鱗癬という皮膚の難病を抱えている患者は、これまでは薬代が年3万円で済みましたが、もしもそうなれば一挙に82万円に上がるということです。
その患者は体温調整が出来ないため、自宅では季節を問わず各部屋のエアコンを稼働させたり、衣類は肌を刺激しないものとし、薬液を落とすために頻繁に洗濯しなければならないなど、多大な経費と手間を要します。
こういう有様なので、経済的理由から十分に薬を使えないケースの多発が想定されます。
これは憲法25条の「生存権」が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に反するものです。新しく自民総裁になった高市氏は、軍事費は「GDPの3・5%以上(20兆円以上)が負担できる」と簡単に口にしますが、そうした無駄遣いは止めて命を守るための保険制度に回すべきです。
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高市自民新総裁 危険増す OTC類似薬 保険外し
スクープ 財界が黒幕
しんぶん赤旗日曜版 2025年10月12日版
あなたが使っている薬の価格が数十倍に跳ね上がる!? 恐ろしい事態が進行しています。医療費4兆円削減の一環として自民・公明・維新・国民民主・参政の各党が狙う、市販薬と似た効能の「OTC類似薬」の保険外し。自民党総裁に選出された高市早苗氏は公明党以外との連立拡大を急ぐ意向で、社会保障切り捨ての危険が高まっています。「保険外し」には黒幕が…。実は財界団体の長年の要求でした。
あの新浪氏も「11年前から要求」
「OTC類似薬の保険適用を外さないでほしい」と訴えるのは、埼玉県の大藤(だいとう)朋子さん(47)。長男の龍之助(たつのすけ)さん(23)は難病の魚鱗癖(ぎょりんせん)で、全身の皮膚が乾燥して硬くなります。毎日、保服薬など複数の薬が必要です。
今は保険適用で年約3万円の負担ですが、保険から外されたら27倍の約82万円の負担に。朋子さんは「保険から外されたら、薬を買うために生活費を削らざるを得ません」と話します。
経済的理由で薬を使えない-。憲法25条の「生存権」が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に反するものです。
しかし自民・公明の与党と維新は6月、OTC類似薬の保険給付見直しを検討し、2026年度から実行することで合意。国民民主党や参政党も保険給付見直しを公約しています。
負担73倍化も 患者の命脅かす
購入したサプリメントを巡り、財界団体・経済同友会の代表幹事を辞任(9月30日)した新浪(にいなみ)剛史氏。辞任2ヵ月前の記者会見(7月29日)で「風邪薬をもらうのに、なぜ診療所に行かなければならないのか、OTC(医薬品=自費)でやればよい。これは実は(政府の)経済財政諮問会議で11年前から申し上げていること」と不満を表明。政府・自民党に「野党の皆さんと政策をしっかり討論して、(実現)できるようにしていただきたい」と迫りました。
保険外しには、日本医師会や日本薬剤師会、日本小児科医会、患者団体などが反対や慎重な検討を求めています。
日本共産党の田村智子委員長は、党創立103周年記念講演会(9月23日)で呼びかけました。
「立場の違い、党派の違いを超えた国民的な共同で立ち向かおう」
OTC類似薬が保険外になると価格は約70倍にも |
〝OTC類似薬は市販薬を買え″とんでもない保険給付外し
経団連が要求
OTC 「Over The Counter」(オーバー・ザ・カウンター)の略。
「OTC医薬品」は薬局のカウンター越しに買える薬で、医師の処方簾は必要
なく、全額自費負担です。OTC医薬品と似た効能で、医師の処方箇が必要な
薬が「OTC類似薬」。国が決める薬価の1~3割負担(年齢や所得により異
なる)です。
患者の負担増が70倍超の薬品も
「同じ効能があるからドラッグストアに行って買ったらいいという話ではない。生き死にに関わる話だ」。衆院厚生労働委員会(6月18日)で日本共産党の田村貴昭議員が厳しく指摘しました。
田村氏が示した「厚生労働省がリストアップしている(OTC類似薬の)保険外しの候補」。保湿剤のヘパリン類似物質は医療保険の窓口負担の13・7倍、たんを出しやすくするカルボシステインは同73・9倍にもなるという衝撃の数字がありました。
〝現役世代負担減″を口実に
OTC類似薬の保険外しは財界団体がかねて要求してきたものです。日本経済団体連合会(経団連)は2015年の「財政健全化計画の策定に向けた提言」で「公的保険への過度な依存を見直す」として「OTC類似薬(湿布など)を保険収載から除外する」と明記。18年の「持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて-当面の制度改革に関する意見-」では、「長らく市販品として定着している市販類似薬について保険償還率の引き下げや、保険給付の適用外とすべきである」としました。
当時の経団連会長だった十倉雅和氏が会長を務める財務省の財政制度等審議会。今年5月の建議で「OTC類似薬の保険給付範囲のあり方の見直し」を求めました。経済同友会の新浪剛史・前代表幹事は、政府の経済財政諮問会議(7月28日)で「OTC類似薬の保険給付範囲の見直しにより、現役世代の負担を減らしていく」と発言。世代間に分断を持ち込み、自己責任を当然とする主張です。財界が黒幕となり、10年前から狙ってきたのがOTC類似薬の保険外しなのです。
自民・公明・維新が推進 国民・参政も |
「重症化を危惧」広がる反対
OTC類似薬の保険適用見直しに批判の声が広がっています。
日本医師会の定例記者会見(8月6日)で江潭和彦常任理事は、「保険適用を外すことには断固反対」と表明。患者の経済的負担が保険適用の自己負担と比べ「30倍以上にもなる」とし、「経済的な問題で国民の医療アクセスを断たれる」とのべました。
さらに、患者が自己判断と自己責任で薬を服用しなければならず、「悪化や重症化も危惧される」と指摘。どのような市販薬を服用しているのか確認できないため、重複投与や相互作用など「診療に大きな支障を来す懸念がある」としました。
その上で「必要かつ適切な医療は保険診療により確保するという国民皆保険制度の理念を今後とも堅持すべきだ」と強調しました。
日本薬剤師会は、国民の医療・医薬品アクセスを阻害することがないよう「慎重かつ丁寧な議論」が不可欠としました。(6月20日)
認定NPO法人日本アレルギー友の会など7団体は「OTC類似薬を保険適用外とすれば、生活に余裕があるとは言えない子育て世代などに長期にわたり重い負担を強いる」と強調。アレルギー疾患の標準治療で使われる薬剤・保湿剤は保険適用を除外しないよう厚労相に求めました。(6月11日)
NPO法人日本アトピー協会は「莫大(ばくだい)な経済的負担になる」として「到底受け入れることができません」と表明(7月10日)。日本小児科医会は、「保護者の経済的負担増」や「重症化につながる」として、保険適用除外に「強く反対」する見解を出しています。(4月16日)
薬が保険外だと年80万円超に
難病抱える大藤龍之助言さん
埼玉県に住む大藤龍之肋さんは、生まれつき魚鱗癬という難病を抱えています。全身の皮膚が乾燥して硬くなり、ボロボロとはがれます。強い痛みやかゆみを伴います。複数の薬を使用しての皮膚の保湿・保護が欠かせず、現在のところ根本的な治療法はありません。
毎日、起床後に入浴して皮膚をきれいにしてから、薬を全身に塗ります。耳たぶや足の裏、頭も短髪をかき分けて塗るなど、薬が大量に必要です。皮膚が悪化して湿疹(しっしん)が出たときには別の薬を重ねて塗ります。就寝前にも入浴し、薬を塗る必要があります。
母親の大藤朋子さんによると、昨年7月~今年6月の1年間に負担した薬代は約3万円。しかし、OTC類似薬が保険から外されると、市販薬を自費で購入しなけれ以ならなくなる可能性があります。朋子さんの試算では薬代は年約82万円に。約27倍の負担増です。
さらに、龍之助さんは体温調整ができないため、暑い季節は体温が38~40度になってしまいます。そのため、自宅では季節を問わず各部屋のエアコンを稼働させます。衣類は皮膚を剌激しない柔らかい木綿のものを選ぶようにしています。衣類に付着した薬を落とすため、複数回洗濯する必要があります。朋子さんは「水道代や電気代などが必要以上にかかります」と話します。
生活に支障 署名9万人
今年2月下旬、OTC類似薬の保険適用除外が議論されていることを知った龍之助さん。「大切な薬が保険適用から外されれば、薬代を払えないために病気が悪化して、日常生活が送れなくなる」と驚きました。
「具体的な内容はまだ決まっていない。早めに行動すれば、今後の国の動きを少し変えられるのではないか」と3月、保険こ週用の継続を求めるインターネット署名を作成、開始しました。
署名は大きく広がり、9万800人を超えました(10月8日現在)。「政府は影響を受ける人たちの生の声をまず聞くべきです」「保温剤等を市販で買えば相当な経済的負担になり、必要なものを入手できない患者も出てきます」など切実な声が多く届きました。
朋子さんは6月と7月、NPO法人日本アトピー協会や全国保険医団体連合会の代表とともに厚労相あての署名を提出しました。
「息子も私も働いていますが、物価高などで家計は今でもゆとりがありません。OTC類似薬が保険から外されたら、薬を買うために食費など生活費を削らざるを得ません」と朋子さん。
「国は医療費を減らすためといいますが、急増している軍事費とか減らせるところはあると思う。OTC類似薬を使っている人だけの問題ではないと思います。多くの人にこの問題を知ってもらいたいです」
保険あって医療なしの社会にしてはならない
全国保険医団体連合会・副会長橋本政宏さん
現在、国は一部の医療用医薬品を「OTC類似薬」などと位置づけ、保険適用から外すことを検討しています。もしもこれが実際に行われたら、患者さんの自己負担は大幅に上がり、医療の質が大きく下がることは間違いありません。検討されている対象は、解熱鎮痛薬、ステロイド軟こう、湿布、保湿剤など、医師が頻繁に処方している薬です。
例えばアセトアミノフェンは、感染症、整形外科疾患、悪性腫瘍、外傷などによる発熱や痛みに非常によく使われており、小児や妊婦にも使える安全性の高い薬です。つらい症状の緩和は非常に大切です。食欲の改善などから全身状態の改善につながります。
治療に欠かせない薬を保険適用から外してしまえば、市場価格の薬を「買える力」の有無で治療内容が左右されてしまうことになります。医師は、医学的に必要な薬は、患者の懐具合の心配をせずに処方できなければなりません。患者が薬の希望を考える際も同様です。
国が受診抑制で 健康自己責任化
国は、軽い症状なら国民がなるべく受診せずに市販薬で対処する「セルフメディケーション」を推し進めようとしています。実は、薬の保険外しの案は、この政策と一体のものなのです。
受診せず市販薬で様子をみた場合、後遺症を残さず自然軽快する疾患であればいいですが、その保証はありません。もしも重大な疾患が隠れていた場合は確実に悪化します。医師は診察と検査結果から考える訓練をしていますが、診断に迷うことは決して珍しくありません。
さらに恐ろしいのは症状が非典型的な重症疾座です。例えば胸痛が明確に出ず、上腹部痛や嘔倣(おうき=吐き気)が主症状で発症するタイプの急性心筋梗塞があります。セルフメディケーションが致命的な結果をもたらすこともあるのです。
なるべく受診せず自己判断の対症療法を推奨することは、「健康の自己責任化の推進」と言えます。病気を個人の努力不足のためとして、患者の自己負担を増やそうという考え方です。健康管理は大切ですが、専門家の助言が必要不可欠です。心配な症状や健診結果の異常があれば、スムーズに受診でき、お金の心配をせずに必要な治療ができることが非常に重要です。
日本には、世界に誇れる国民皆保険がありますが、公的医療保険がカバーする範囲を狭めていけは「保険あって医療なし」の状態になってしまいます。決してこんな社会にしてはなりません。