海外記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
トランプの中国に対する高関税が公式に裏目に出て、米国で最も重要な分野である農業を壊滅させました。
米国は昨年は約120億ドル、その前年は140億ドル相当の大豆を輸出しましたが、20年ぶりに今年、中国は米国産大豆と新穀トウモロコシの購入をゼロにしました。それでトランプ政権は米国農家に160億ドル以上の支援を余儀なくされました。
中国は世界最大の大豆需要国であるのに対して、米国は世界でも最も生産性の高い農業国で国内の消費量を40%上回る生産量があるので、これまでは米国の余剰分を中国が買うという双方にメリットのある協力ができていました。
そのことからトランプは対中国の「関税を100%に」などという作戦を立てたのですが、中国が米国以外の購入先を選ぶのは極めて容易なことなので、結局中国にはまったく打撃を与えずに米国のみが多大な損失を蒙ることになったのでした。
それは農作物に限りません。マイクロチップの中国市場でのシェアは150億ドルの価値があるので、Nvidiaは中国に販売する機会を認めるようトランプに働きかけてきました。最終的にそうなったのですが時すでに遅く、中国は逆に国内企業に対しこれらの米国製マイクロチップの購入を禁止しました。
これにより第1四半期だけでNvidiaは未履行販売と収益損失による約70億ドルの損失を出しました。決してNvidiaの独占状態ではなかったのですから当然のことです。
まだ数値化はされていませんが、レアアースの中国独占に基づく米国軍需産業のダメージは農作物の比ではありません。
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トランプの貿易戦争で、米国農家はすべてを失った
耕助のブログNo. 2681 2025年10月11日
US Farmers Just Lost Everything in Trump Trade War
by Cyrus Janssen
世界はドナルド・トランプが国連で1時間にわたる演説を行い、米国経済がいかに強いか、そして自分がノーベル平和賞にふさわしいと自慢する様子を見守っていたが、実際のところトランプは米国で今まさに起こっている最大の災害の1つを隠そうとしていた。
トランプ関税戦争は2025年の主要な政治ニュースである。今我々はトランプの中国に対する関税が公式に裏目に出て、米国で最も重要な分野である農業を壊滅させたという具体的な証拠を手にした。
過去2年間、主流メディアは中国が製造業で過剰生産能力を抱えていると報じてきた。中国が輸出で国際市場を飽和状態にしているが、米国消費者が中国から良質な製品を適正価格で購入することがなぜ悪いことなのか、私には理解できない。しかし主流メディアが決して伝えない事実がある。米国は農業分野で巨大な過剰生産能力を抱えている。国内で生産される作物の40%以上が海外に輸出されなければならないのだ。米国は自国で消費できる量をはるかに超える作物を生産している。この米国人農家が真実を語るのを聞いてほしい。
「米国全土の畑で栽培される大豆の4列に1列は海外に輸出されねばならない。中国は世界最大の大豆輸入国だ。世界の市場の61%を輸入している」
米国には世界有数の優れた農地がある。世界的な穀倉地帯として知られる米国中部地域の大部分は農産物生産に最適な条件を備えている。米国の農家は中国との貿易によって長年にわたり富を得てきた。米国の農業雇用は、米国が中国へ農産物を輸出することで繁栄してきたのだ。
米国の農産物の海外への輸出比率がこれほど高いと、米国は農業のような脆弱で重要な産業の変化には非常に慎重になると思うだろう。しかしトランプ政権が繰り返し示したように、先を見越して二次的影響を考慮することは彼らの得意分野ではない。トランプは中国に対して全面的な貿易戦争を開始したが、自国の産業が抱える大きな弱点を認識できていなかった。トランプは世界中のすべての国が米国を必要としていると信じ込ませたい。しかし、世界秩序における中国の立場を忘れてはならない。中国は今、120か国以上にとって最大の貿易相手国なのだ。選択肢があるのは中国のほうである。だから中国は米国からの大豆購入を、世界中の親しい同盟国数カ国にシフトすることができた。もう一度、この苦しむ米国の農家が真実を語る話を聞いてほしい。
「昨年、我々は約120億ドル、前年は140億ドル相当の大豆を輸出した。20年ぶりに今年、中国は米国産大豆をゼロ、新穀トウモロコシも購入はゼロになった。つまり120億ドルからゼロだ。彼らはどこから大豆を買っているのか。ブラジルだ。我々は関税戦争で市場シェアの42%を失った。トランプの関税戦争で中国は大豆の調達先をブラジルに切り替えたのだ。中国はブラジルのインフラに数十億ドルを投資した。彼らはアフリカにも進出し、アフリカで商業農業を始めるつもりだ。米国がUSAIDを止めたので中国はBRIをアフリカでもやるつもりだ。つまり米国は中国市場シェアをほぼ失ったのだ」
中国がブラジルへ軸足を移した経緯、つまり中国が大豆や主要物資の調達先を他の国へ即座に容易に切り替えられたのは驚くべきことだ。ブラジル政府が過去2年で中国に大きく接近したことは周知の事実である。
トランプの貿易戦争の惨状を示す別の例がコーヒー産業に見られる。今年初め、トランプは183社のブラジルコーヒー輸出業者に対し米国市場へのコーヒー豆販売を禁止した。さて中国がどうしたと思う?なんと183社全てを中国市場に迎え入れたのだ。興味深いことに中国市場は世界で最も急成長しているコーヒー市場なのだ。これはまさに米国農家が認めた通りだ。米国が扉を閉ざせば、中国はブラジルやアフリカ大陸といった国々・地域に向けて新たな扉を開く。中国がBRIを通じて数十億ドルを投資してきた二つの地域だ。世界貿易の促進とさらなる拡大を目的としたBRIを通じて中国は数十億ドルの投資を行っている。
しかし農業部門はトランプの失敗した経済の多くの根本的な問題の氷山の一角に過ぎない。私はそのすべてと、中国が究極的な影響力を持つ立場にある理由を説明したい。
農家はこの一連の苦難の中で最悪の部分である。米国政府は決して過ちから学ばないのだ。そして今回が初めてではない。米国農家は中国との激しい貿易戦争の渦中に巻き込まれた。2019年のニューヨーク・タイムズ紙の記事を見れば明らかだ。トランプ政権は米国農家に160億ドル以上の支援を余儀なくされたことを認めている。この支援は中国市場を失った大豆とトウモロコシのシェア減少による短期的な落ち込みを乗り切るためだった。この話をさらに荒唐無稽にしているのは、米国の農家の大半が共和党支持者で、間違いなくトランプの再選運動を支持し「アメリカを再び偉大に」というスローガンを信じていたことだ。今、トランプを支持し投票した同じ農家たちが彼の失敗した貿易戦争の駒として苦しんでいる。そしてこの戦争はただ中国の力を増大させるだけなのだ。
中国は普通の貿易相手国ではない。世界の大半にとって、中国は最も重要な貿易相手国なのだ。中国はほとんどの農産物の世界一の消費国である。大半の農産物において中国が世界一の消費国であるのは14億人の人口を考えれば当然である。しかし大豆に至ってはその格差はさらに極端で、中国の需要が世界の総需要の驚異的な54%を占める。つまり米国農家が中国を除く全世界市場を100%独占したとしても 中国のロスを埋め合わせられないのだ!だからこそ中国は米国の農業産業全体を一夜にして崩壊させ得る。
当然ながら、米国政府は農業の崩壊を決して許さないだろう。だから今後数ヶ月は注目だ。米国政府は間違いなく介入し、これらの農場を存続させるために数十億ドル規模の新たな支援策を講じざるを得ないだろう。これは政府支出がさらに数十億ドル増加し、37兆ドルに達している国家債務に上乗せされることを意味する。トランプ政権はこの状況に、ただただ債務を増やしてきただけなのだ。
世界は、米国と中国が協力するときに勝利する。中国は世界最大の大豆需要国であり、米国は世界でも最も生産性の高い農業国で、国内の消費量を 40% 上回る生産量がある。これは両国間の協力に最適な分野であり過去にもそうであった。しかし、このような双方にメリットのある協力の代わりに、トランプは率直に言って中国にまったく打撃を与えない政策を選択したのだ。
先ほどの、中国の投資がブラジルやアフリカに流れていることを指摘した米国人農家のビデオを覚えているだろうか。現在、中国はブラジル大西洋岸とペルー太平洋岸のチャンセ港を結ぶ大陸横断鉄道の建設に向け、巨額の投資を計画している。米国が世界各国に関税や制裁を課している間、中国は自国が最も得意とする分野、つまり様々な建設プロジェクトを行い、開発途上国に具体的な資産を提供して世界貿易の拡大を支援し、より多くのウィン・ウィンのパートナーシップを構築している。米国についても同じことが言えることを願うが、この貿易戦争は現在、米国を代表する多くの優良企業を痛めつけている。
農機具メーカーのジョン・ディアを例に取ろう。同社は米国で最も有名な長期価値株の一つで、過去5年間で株価が112%以上上昇した企業だが、今、同社は需要減退と投資増加が悪のタイミングで重なり岐路に立たされ、関税の影響により6億ドル近くの損失を予測している。もう一つ、米国の大型車両製造大手キャタピラーも関税の結果、15億ドルの損失が見込まれている。最も悲しいのは、トランプは選挙運動で米国に製造業を取り戻すと公約したにもかかわらず、彼の矛盾した貿易戦争はその製造に必要なあらゆる投入コストを高騰させ、目標である製造の雇用を実際に米国に呼び戻すという試みに失敗していることだ。
トランプの貿易戦争は、米国経済のあらゆる側面に影響を与えている。米国が必死に維持しようとしているリーダーシップの分野、半導体産業にも影響を与えている。Nvidia は世界で最も価値のある企業で、その価値は 4 兆ドル以上に達し米国経済と株式市場の輝く星である。同社の株価は今年だけで 43% 上昇している。しかし多くの産業と同様、Nvidia も米国と中国間のこのひどい貿易戦争の真っ只中に巻き込まれている。数か月間、Nvidiaのジェンセン・ファンCEOはトランプ政権に対し、米国で最も価値のある企業がマイクロチップを中国に販売する機会を認めるよう働きかけてきた。中国市場でのシェアはNvidiaにとって驚異的な150億ドルの価値がある。トランプはついに同意したが、その後起こったことは誰もが予想外だった。中国が国内企業に対しこれらの米国製マイクロチップの購入を禁止したのである。これによりジェンセン・ファンとNvidia株主全員に大きな失望がもたらされた。第1四半期だけでNvidiaは未履行販売と収益損失による約70億ドルの費用を報告した。
ではこの貿易戦争の最大の犠牲者は誰か。それは一般の米国人だ。彼らがこの政権の貿易政策の代償を背負わされている。ほとんどの関税が直接米国の消費者に転嫁されるからだ。今後1~2年間の米国家計所得見通しを見ると米消費者コンフィデンス(⇒信頼)は過去最低の41%に低下している。大半の米国人は今や米国経済に対して完全に悲観的な見方をしている。それには十分な理由がある。米国は現在、生活費危機に直面しており、あらゆる日々の支出がわずか 5 年前に比べて大幅に上昇したのだ。住宅価格は51% 上昇、ガソリンは 55% 上昇、1 ポンドのコーヒーは 97% 上昇、そして卵は170% という驚異的な上昇率だ。米国の一般市民は、生活のあらゆる面で圧迫されている。生活費の引き下げはトランプの主要な選挙公約だった。しかし2025年現在、有権者が目にするのは状況の悪化だけだ。当然のことながら、これはトランプ大統領の支持率急落につながっている。最近の Yuggov の世論調査によるとトランプの支持率は史上最低を記録し、17 ポイントも急落して大統領を支持する人はわずか 39% となった。このような支持率の急落は政権発足からわずか 9 ヶ月で前例のないことだ。しかし彼の関税政策が輸出を壊滅させ、雇用市場を崩壊させ、インフレを加速させ、成長を抑制し、消費者価格を上昇させたのだ。こうした壊滅的な数字にもかかわらず、トランプ政権はこの悲惨な道から後退する兆しを見せていない。むしろトランプは気にしていないようだ。
結局のところトランプ関税の真のコストは即時の経済的損失をはるかに超えている。それは、米国と世界の貿易パートナー間の信頼の長期的な低下、米国経済を支える産業の根本的な弱体化、そしてより良い未来を約束された人々の幻滅である。米国はこの問題を解決できるだろうか?この貿易戦争は、中国のような国々がいかに迅速に変化に適応できるかを示しており、一方、米国は自ら招いた危機の中で翻弄されている。真の問題は今後、米国がより大きく、より取り返しのつかない問題になる前に道修正できるかどうかである。日を追うごとに米国の同盟関係は弱まり、経済は悪化し、ドルは下落している。米国経済、そして米国は重大な危機に向かっている。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。