2025年10月2日木曜日

ガザの避難民 感染症急拡大 衛生状態 限界/ガザ小児病院 極度の過密/活動ー時停止 国境なき医師団空爆で

 ガザ地区の避難キャンプでは感染症が急速に拡大していて、疥癬やシラミの感染は数千件、呼吸器感染症や下痢は数万人規模に上り、もはや「避難所ではなく感染の温床」と化しています。子どもたちはかゆみで泣きながら眠りますが、湯をかけるなどの民間療法では感染拡大に歯が立ちません。イスラエルのガザ侵攻による死者が少なくとも累計6万6千人、負傷者が16万8千人に達しました

 イスラエルの商都テルアビブの人質広場で27日、ハマスに拘束されたすべての人質の返還と戦争終結を求める恒例の週末集会が開かれ4万人以上が参加しました。
 夫が人質になっているニラ・シャラビさんは集会で、「正しい道は全人質を解放する包括合意だ」と強調しました。兵士の母親であるイリス・シャピラさんも「この戦争は国の安全という目的を失った。『絶対的勝利』の名の下で『絶対的な見殺し』が行われている。人質にも兵士にも時間は残されていない」と訴えました。

 ガザ地区でほぼ唯一の病院のタハリール小児病院は新生児室が極度の過密で生後1カ月未満の子どもたちも床に寝かさざるをえず、未熟児の命が危ない状態です。院長は「戦争を直ちに止め、避難民を元の地域に戻し、北部で病院、とりわけ集中治療室や中間治療室を再稼働させなければならない」、「子どもには生きる権利や医療を受ける権利がある。ガザに生を受けたという理由で罰せられてはならない」と訴えます。

 国境なき医師団は26日、イスラエル軍の攻撃激化により、安全が確保できなくなったためガザ市での医療活動を一時停止したと発表しました。なお、南部や中部で活動を継続し、ナセル病院やアルアクサ病院を支援し、野戦病院を運営します。

 欧州各地や南アフリカで27日、ジェノサイド(集団殺害)を直ちにやめよと市民が抗議行動に取り組みました。ドイツのベルリンでは約5~6万人がデモ行進しました。左翼党のイネス・シュベルトナー共同党首は、ドイツ政府はイスラエルによる犯罪を黙認しているとし、「彼らはジェノサイドの共犯者になってしまっている」と批判しました。
 スイスのジュネーブでは約6000人がデモ行進しました。
 南アフリカの主要都市ケープタウンでは、パレスチナに連帯する市民団体などの呼び掛けで数千人がデモ行進しました。
 しんぶん赤旗の5つの記事を紹介します。
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ガザの避難民 感染症急拡大 石けんもなく…衛生状態「限界」
                       しんぶん赤旗 2025年9月30日
【カイロ=米沢博史】パレスチナ・ガザ地区の避難キャンプでは感染症が急速に拡大しています。北部ガザ市のジャーナリスト、モアイン・カフルート氏は28日、本紙の取材に対し、疥癬(かいせん)やシラミの感染は数千件、呼吸器感染症や下痢は数万人規模に上ると指摘しました。
 キャンプはもはや「避難所ではなく感染の温床」と化していると言います。湿ったテントには石けんも清潔な水もなく、子どもたちはせきや発熱、息苦しさに日々苦しんでおり、抗生物質も不足し、医師らは肺炎への進行を恐れているとのことです。
 避難民のホルドさんは「子どもたちはかゆみで泣きながら眠ります。薬は高額で、湯をかけるなどの民間療法では感染拡大に歯が立ちません。避難民の過密状態で、感染は火のように広がります。目の前で子どもが苦しむのを見ながら、何もできないのが一番つらい」と語りました。
 カフルート氏はさらに、数十世帯がトイレを共用し換気もない実態を挙げ、「石けんはぜいたく品となり、衛生状態は限界にある。緊急の介入が遅れれば、ガザは未曽有の公衆衛生の大惨事に直面する」と強い危機感を示しました。


侵攻死者 6.6万人に
【カイロ=米沢博史】パレスチナ・ガザ地区の保健当局は28日、イスラエルのガザ侵攻による死者が少なとも累計6万6009、負傷者が16万8162人に達したと発表しました。
 過去24時間で79人が死亡、379人が負傷しました。さらに多くの犠牲者ががれきの下や救助隊が到達不能な場所に取り残されています。
 救助隊の犠牲者も累計で2566人が死亡、1万8769人以上が負傷しました。ジャーナリストの死者は252人です。


「終結を」集会4万人 イスラエル
                       しんぶん赤旗 2025年9月30日
【カイロ=米沢博史】イスラエルの商都テルアビブ中心部の人質広場で27日、イスラム組織ハマスに拘束されたすべての人質の返還と戦争終結を求める恒例の週末集会が開かれました。主催する人質・行方不明者家族会によると、4万人以上が参加しました。
 参加者は、29日に予定されるネタニヤフ首相とトランプ米大統領の会談を前に、人質解放を最優先とする包括的な戦争終結合意の実現を訴えました。
 夫が人質になっているニラ・シャラビさんは集会で、「正しい道は全人質を解放する包括合意だ」と強調しました。兵士の母親であるイリス・シャピラさんも「この戦争は国の安全という目的を失った。『絶対的勝利』の名の下で『絶対的な見殺し』が行われている人質にも兵士にも時間は残されていない」と訴えました。


ガザ小児病院 極度の過密 3組の母子でベッド共有 危険にさらされる未熟児
                       しんぶん赤旗 2025年9月29日
【カイロ=米沢博史】パレスチナ・ガザ地区の保健当局は27日、声明を発表し、南部ハンユニスにあるタハリール小児病院の新生児室が極度の過密状態、「窒息状態」となっており、未熟児の命が危ないと警告しました。

院長が本紙に語る
 同病院のアフメド・ファッラ院長は同日、本紙の取材に「当院は今や、妊婦と新生児、特に未熟児に医療を提供できるガザ地区でほぼ唯一の病院だ。(イスラエル軍に)避難を強制された多くの人が押し寄せている。生後1カ月未満の子どもたちも床に寝かさざるをえない。毛布も足りず、毛布をかけてあげられない子もいる。外来の中間治療室では、一つのベッドを3組の母子で共有する場合もある」と過密状態を説明しました。
 院長は「戦争と強制避難によって未熟児が多く生まれ、(肺が未熟で)多くが呼吸困難だ」と症状を説明。「対処に必要な酸素が足りず、重症者を優先せざるをえない」と苦境を語りました。
 院長は「戦争を直ちに止め、避難民を元の地域に戻し、北部で病院、とりわけ集中治療室や中間治療室を再稼働させなければならない」と強調。「子どもには生きる権利や医療を受ける権利がある。ガザに生を受けたという理由で罰せられてはならない」と訴えました。


ガザ市で活動ー時停止 国境なき医師団空爆で安全確保できず
                       しんぶん赤旗 2025年9月29日
【カイロ=米沢博史】国境なき医師団(MSF)は26日、イスラエル軍の攻撃激化により、ガザ市での医療活動を一時停止したと発表しました。空爆や戦車の医療施設への接近などで、安全が確保できなくなったためです。
 MSFのジェイコブ・グレンジャー緊急対応コーディネーターは「苦渋の選択だ。ガザ市では新生児や重傷者など最も弱い立場の人々が移動できず、深刻な危険にさらされている」と訴えました。
 MSFは直近の1週間だけで3600件以上診療し、栄養失調患者や重傷者、妊婦らを治療しました。同団体は「攻撃の即時停止と市民保護のための具体的措置が必要だ」と訴え、イスラエル当局に人道支援団体の安全な活動を保証するよう求めています。
 なお、南部や中部で活動を継続します。ナセル病院やアルアクサ病院を支援し、野戦病院を運営します


ジェノサイドやめよ 市民が行動 欧州各地・南アフリカ イスラエルに抗議
                       しんぶん赤旗 2025年9月29日
 イスラエルがパレスチナ・ガザ地区への軍事侵略を強めるなか、欧州各地や南アフリカで27日、ジェノサイド(集団殺害)を直ちにやめよと市民が抗議行動に取り組みました。
 ドイツの首都ベルリンでは、警察発表で約5~6万人がデモ行進しました。ドイツのメディアによると、約50の団体や政党が共同で呼び掛けました。
 参加者は「パレスチナに自由を」と声を上げ、イスラエルによるガザ封鎖、ジェノサイドに抗議。ドイツ政府に対しイスラエルヘの武器輸出の中止を求めたほか、欧州連合(EU)に対してはイスラエルに制裁を科すよう要請しました。
 デモ出発前の集会で演説した左翼党のイネス・シュベルトナー共同党首は、ドイツ政府はイスラエルによる犯罪を黙認しているとし、「彼らはジェノサイドの共犯者になってしまっている」と批判しました。
 欧州メディア「ユーロニュース」によると、ドイツ西部デュッセルドルフでも「私たちはガザを忘れない」というスローガンで市民が行動。スイスのジュネーブでは約6000人がデモ行進しました。英中部リバプールでは、28日から与党労働党の大会が開かれるのに合わせて市民が行動しました。
 南アフリカの主要都市ケープタウンでは、パレスチナに連帯する市民団体などの呼び掛けで数千人がデモ行進しました。現地からの報道によると、参加者はパレスチナの旗を振りながら「ガザの子どもに罪はない」などと書いたプラカードを掲げました。

 参加者の1人は現地テレビに対し、かつて白人優位のアパルトヘイト(人種隔離政策)を行っていた南アに対して国際社会が制裁を加えて同政策の終結を求めた歴史を強調。イスラエル製品の不買運動や制裁など「緊急かつ決定的な行動」を南ア政府に求めました。