2025年10月6日月曜日

自民新総裁に極右の高市氏 安倍政治継承 改憲・軍事費GDP3・5%超

 自民党総裁選の結果、高市氏が新総裁になりました。
 国民は別に石破政権を否定せずに支持率も増加を続け「石破辞めるな」の声も上がる中で、自民党が自分たちの事情で強引に石破首相を引き下ろし、「フルスケールの・・」と称した長期の総裁選の挙句に決まったのは、日本に取って最悪の事態でした。
 彼女が当選したのは麻生氏の意向が大きく、彼の判断基準は息子への代替わりに当たって「最適な政権を」ということだといわれています。
 高市氏は極右思想の持ち主で、「スパイ防止法」の制定、憲法の改定を謳い、裏金問題は決着済み、企業献金は「企業の権利」と称し、特定の大企業には「戦略的支援」を行い、参院選公約の「食料品の消費税0%」は事後すぐに取り下げ、米国の意向には完全服従で、「台湾有事」は米国の指摘通りであるとし、軍事費はGDPの3・5%を超えても構わないという考えです。
 軍事費が毎年20兆円でOKとは??彼女のいう積極財政というのは「国はいくら借金をしても構わない」ということなのでしょうか。そもそも「国民生活の困窮」の現状をどの様に認識しているのでしょうか。
 石破氏にはそれでも「米国になめられて堪るか」という気概がありましたが、高市氏には、一部からは「似非」呼ばわりされる極右姿勢以外に一体どんな芯があるのか、見当もつきません。
 しんぶん赤旗の4つの記事を紹介します。
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自民新総裁に高市氏
                        しんぶん赤旗 2025年10月5日
 物価高騰で国民が苦しむ中で、国会での議論をせずに“政治空白”をもたらした自民党総裁選で、高市早苗前経済安全保障担当相が新総裁に選出されました。高市氏の政策や政治姿勢には、物価高騰や政治とカネへの国民の怒りや不満に応えないばかりか、平和や民主主義を破壊する大軍拡や「スパイ防止法」などに向かう危険があります。

裏金“決着済み”無反省
「信頼される自民党、強い自民党へ」。高市氏は総裁選公約でこう掲げ、「政治資金の透明化を徹底する」としました。
 しかし、自民党が参院選大敗について「不信の底流」にあると総括した裏金問題についてはほとんど語らず、不問にふす姿勢に終始しました。総裁選中に出演したテレビの討論番組では「裏金問題の決着はついたと思う人は手をあげて」と問われて挙手。無反省ぶりを示しました。
 4日に総裁に選出された直後には「全員参加で頑張んなきゃ立て直せませんよ。全員に働いていただきます」とあいさつしました。総裁選中には、裏金議員について「たくさんの処分も行われ、選挙の審判も受けている。全員活躍、全世代、その力を総結集する党運営だ。適材適所で力を発揮していただきたい」(9月23日)と主張しました。「全員参加」を強調し、裏金議員の要職起用も否定しない立場を示しています。
 自民党派閥の裏金事件は、企業・団体によるパーティー券購入という「抜け穴」をふさぐことなしに再発を防ぐことはできません。企業・団体献金の全面禁止が問われます。
 しかし、高市氏は「企業にも政治参加の権利がある」と主張。企業・団体献金は「禁止より公開」とする自民党の方針と同じ立場を示しただけでした。
 裏金事件の公判が進展し、旧安倍派元会計責任者の新証言が出るなど、国会で関係者を証人喚問する必要性が高まるなか、真相解明にも企業・団体献金禁止にも背を向けています。高市新総裁では、金権腐敗が二度と起きない土壌を整えていくことは不可能です。

「消費税減税」取り下げ
 今月1日から値上げとなった食料品は3000品目超に上ります。物価高騰が人々の生活をいっそう追い詰めるなか、暮らしを守る対策が急務です。
 高市氏は総裁選で、「給付付き税額控除の制度設計に着手」「年収の壁引き上げ」など野党との連携を意識した対策を主張しました。しかし、参院選で多くの有権者が求めたにもかかわらず、取り下げてしまったのが「消費税減税」の政策です。
 高市氏は参院選前には食料品にかかる消費税0%を主張していました。しかし総裁選では「物価高対策に即効性はない」「党の大勢の意見にはならなかった」などと発言。党内の合意が得られないとして、多くの人が求める消費税減税を取り下げてしまう―自民党の中で総裁が代わっても、暮らしを守る対策は打ち出せないことが浮き彫りになりました。
 「失われた30年」といわれる長期の経済停滞と暮らしの困難をもたらした自民党政治を変えられるのかも問われます。

 しかし高市氏は総裁選で、「大胆な危機管理投資と成長投資」で「強い経済」を実現するなどと主張。「経済安全保障に不可欠な成長分野に、大胆な投資促進税制を適用」「勝ち筋となる産業分野に、戦略的支援を行う」などとし、特定の大企業への支援や投資をさらに拡大しようとしています
 一方、労働時間規制について、「心身の健康維持と従業者の選択を前提に緩和」すると公約。財界・大企業の要求にそって、働く人の命と健康を守るための労働時間規制を破壊しようという主張です。
 財界・大企業の利益最優先の行き詰まった自民党政治を変えるどころか、ますます突き進む―。高市新総裁のもとでのさらなる経済・暮らし破壊の道を食い止めることが必要です。

米言いなり大軍拡推進
 パレスチナ・ガザでのイスラエルの無法を擁護し、イランの核施設を空爆するなど、トランプ米政権が世界の平和秩序を根底から壊す勝手放題を続けているなか、アメリカいいなりの大軍拡を続けていいのかは日本が直面する大問題です。
 しかし、日米同盟を「血の同盟」とした故安倍晋三元首相の遺志継承をうたってきた高市氏は、総裁選で「同盟国・同志国との連携強化」を主張し、日米同盟絶対の姿勢を堅持。「新たな戦争の態様(宇宙・サイバー・電磁波領域、無人機、極超音速兵器等)にも対応できる国防体制を構築する」として、大軍拡を宣言しました。
 トランプ米政権が国内総生産(GDP)比3・5%を要求する軍事費についても「最新鋭の兵器も備え、スタンドオフ能力(敵基地攻撃能力)も持つ。ここにかかる費用をしっかりと積み上げて、3・5%より高くなるかもしれないが対応していく」と強調。GDP比3・5%の軍事費は21兆円という途方もない金額です。高市氏は、これをさらに上回ることを否定していません。
 その先にあるのは、集団的自衛権行使容認と安保法制強行、敵基地攻撃能力保有、長射程ミサイル配備による軍事要塞(ようさい)化など、第2次安倍政権から石破政権に至るまで進められてきた米軍と一体の「戦争国家づくり」のいっそうの強化です。
 日米両政府が中国を念頭に置いた敵基地攻撃態勢づくりを進めるなか、高市氏は「台湾有事は日本有事、これは間違いない」と主張。アメリカの対中戦争へ参戦し、日本全土が戦場となる危険を高めることになりかねません。
 際限の無い大軍拡は、国民生活を脅かします。日米同盟絶対・「戦争国家づくり」の自民党政治を終わらせ、憲法9条をいかした平和外交への転換が求められます。

「スパイ防止法」急先鋒
 参院選であおり立てられた極右・排外主義の潮流。総裁選ではこれに対抗するのではなく、外国人政策の厳格化など排外主義的な政策が競われる異様な状況になり、高市氏は、最も強硬な姿勢を示しました。
 高市氏は明確な根拠を示さずに「奈良の鹿を足で蹴り上げるとんでもない人がいる」などと外国人への憎悪をあおりました。「経済目的で難民を装って来られる方々にはお帰りをいただく」「文化や何もかもが違う人たちをまとめて入れていく政策は考え直す」「外国人との付き合い方をゼロベースで考える」などと述べ、「必要な課題を洗い出し、解決をするための法整備まで進められる司令塔をつくる」としました。
 危険なのは、他の極右・排外主義勢力との連携により、差別・排外主義が助長されることです。
 日本維新の会は「外国人政策及び『移民問題』に関する政策提言」を出し、外国人人口の抑制や「実効性ある強制送還体制」構築などを主張しています。外国人による土地購入や生活保護利用などの制度の厳格化などを主張している参政党は「外国人問題対策」プロジェクトチームを設置。国民民主党は「外国人に対して適用される諸制度の運用の適正化」「外国人土地取得規制」などを訴えています。
 これらの勢力はそろって「外国勢力」という“敵”をつくり出して国民を監視する「スパイ防止法」の制定を主張。高市氏は、「スパイ防止法」制定などを盛り込んだ提言の政府への提出を主導するなど、自民党内で「スパイ防止法」推進の急先鋒(きゅうせんぽう)です。
 危険な逆流が持ち込まれようとする中、差別や排外主義を許さない国民的な共同で、反動的な動きを打ち破ることが求められます。


自民新総裁に高市氏 安倍政治継承 改憲・タカ派 連立拡大「首相指名までに」
                       しんぶん赤旗 2025年10月5日
 自民党は4日、総裁選の投開票を行い、歴代総裁で女性初となる高市早苗前経済安全保障担当相を新総裁に選出しました。決選投票で小泉進次郎農林水産相を破って当選しました。高市氏は石破茂首相の総裁としての残りの任期(2027年9月まで)を引き継ぎます。
 総裁選では1回目の投票でどの候補も過半数に届かず、1位の高市氏と2位の小泉氏の決選投票で決着。
 高市氏は、故安倍晋三元首相による政治の継承を掲げる改憲・タカ派です。過去の侵略戦争を美化する役割を果たす靖国神社への参拝も毎年の終戦記念日などに欠かさず実施統一協会との関係もあり、協会系の日刊紙「世界日報」に1994年から2001年に少なくとも5回登場しています。
 投開票後の記者会見で高市氏は記者から裏金事件を問われ、「議席を得られた方に何らかの再処分を行うことは考えていない。国民の代表として送り出された方々なので、特に人事に影響はない」と述べました。
 自民党の役員人事について、来週前半の早い時期に固めたいと表明。公明党以外との連立拡大を進める意向を表明し、条件として改憲などを挙げ、臨時国会冒頭に行われる首相指名までに合意を得たいとの考えを示しました。


反動ブロックに立ち向かう新しい共同の発展を 
                       しんぶん赤旗 2025年10月5日
田村委員長が会見
 日本共産党の田村智子委員長は4日、党本部で記者会見を開き、自民党の新総裁に高市早苗前経済安保担当相が選出されたことについて、「1カ月前の第6回中央委員会総会で、反動ブロックの危険に立ち向かう新しい国民的・民主的共同を呼び掛けたが、その共同を広げ発展させていくことがいよいよ求められ、大切になっていると受け止めている」と述べました。
 田村氏は「総裁選で自民党は、末期的、危機的な状況に陥りながらも、補完勢力を取り込み、行き詰まった自民党政治を延命させようとしていることが露呈した」「(今後は)補完勢力を取り込み、社会保障など国民生活の破壊、大軍拡への暴走、憲法と民主主義の蹂躙(じゅうりん)、ジェンダー平等への逆流など、日本の政治に深刻な逆行をもたらす危険がある」と指摘。その上で、「こうした危険な逆行を許さず、暮らし、平和、人権の各分野で、新しい政治へ日本が向かうよう、日本共産党はがんばっていきたい」と抱負を語りました。
 高市新総裁に期待できることを問われた田村氏は、高市氏が総裁選で、裏金議員の復権を唱え、消費税減税という国民が一番求めていることに何も語らず、アベノミクス継承の立場を示し、大軍拡、日米同盟強化を唱えたと指摘。「何ら期待することはない。まさに自民党政治を終わらせていく以外に行き詰まった状況を打開することはできないことが改めて示されている」と語りました。
 田村氏は、初の女性総裁誕生について問われ、「自民党という政党そのものがジェンダー平等について妨害勢力であり、高市氏自身がジェンダー平等や、女性の人権前進について最も強い妨害者の一人だ」と述べました。


改憲・排外主義“右共鳴”の恐れ 「反動ブロック」増す危険
                       しんぶん赤旗 2025年10月5日
 4日の自民党総裁選で、高市早苗前経済安全保障担当相が新総裁に選ばれました。高市氏は選出後のあいさつで「自民党を気合の入った明るい党にしていく。多くの方の不安を希望に変える党にしていく」などと表明。しかし、今回の総裁選では、いずれの候補からも行き詰まった自民党政治を打開する方策は示されず、むしろ、これまでの政治路線を踏襲する横並びの発言が続きました。高市氏をはじめ、自民党に政治を変える展望はありません。
「これからの自民党、男性も女性も全世代の総力を結集して立て直す」―。高市氏がこう主張したように、衆参両院で自公政権が少数与党に転落する中で行われた総裁選は「解党的出直し」「#変われ自民党」をキャッチフレーズに掲げ、自民党政治をどう転換するかが焦点となりました。
 一方で、立候補したのは昨年と同じ顔ぶれです。政策論争も内政から外交にいたるまで、各候補の主張に大きな違いはなく、新味や刷新感はありません。国民からも「総裁選は自民党というだけで期待できない」「総裁選の報道をしすぎだ。1年前にやったばかりなのに」と冷ややかな声が相次ぎました。
 自民党は綱領で、多様な意見を包摂する「国民政党」であることを掲げています。そのため総裁選は「党内における疑似的な政権交代」とされ、候補者同士の論争を通じて国民に“政策の選択肢”を示す場とされてきました。
 ところが、今回は各候補が持論を「封印」し、「党内融和」を優先する内向きの論戦に終始。高市氏は食料品の消費税率ゼロを主張していましたが、「党の大勢の意見にはならなかった」と早々に主張を翻しました。意見をたたかわせる姿勢さえ示せない各候補の態度には、自民党の末期的状況が映し出されています。
 また、物価高騰対策など喫緊の課題が山積する中で、党内抗争にすぎない総裁選を延々と引き延ばし、結果として政治空白をつくった責任も重いといわざるを得ません。
 行き詰まった自民党が今後、延命のために打つ手は、他党の取り込みです。高市氏は連立拡大について「首相指名までにできるよう精いっぱいの努力をしたい」と明言。早期に安定基盤を築く狙いです。
 他方で高市氏は、安倍晋三元首相の遺志継承を掲げてきた改憲タカ派の中心人物です。総裁選でも「自衛隊の存在を憲法にきちんと書き込む」などと引き続き改憲に強い執念を示すとともに、公約には「スパイ防止法」の制定を明記。高市氏が新総裁となるもとで、改憲や排外主義を掲げる野党との危険な“右共鳴”の連携が生まれるおそれがあります。
 また、選択的夫婦別姓反対の急先鋒(きゅうせんぽう)でもあり、総裁選でも「旧姓の通称使用拡大」を主張。“女性初の首相誕生の見通し”と取り沙汰されていますが、かえってジェンダー平等が後退する危険もあります。
 選挙で国民が下した審判は自民党政治の抜本的転換です。自民党政治を延命し、日本の政治をより深刻な逆行へと導く「反動ブロック」の形成を許すわけにはいきません。いまこそ、これに対抗する新しい国民的・民主的共同を広げることが求められます。(中野侃)