ガザの攻防が起きてから満2年になるに当たり、しんぶん赤旗(1面及び3面)に掲題の記事が載りました。
2年前の10月7日はイスラエルによる数々の攻撃の繰り返しに耐えかねたハマス側がイスラエルに反撃をした日ですが、イスラエルは事前にこの情報を得ていて誘いの隙を見せたということが言われています。
ハマスとイスラエルでは軍事力において決定的な差があるので、事態は急速にガザに対するジェノサイドに変わりました。それにしてもイスラエルの残虐性はただただ驚くというしかありません。
現代においてイスラエルが公然とジェノサイドを継続できた理由は、米国が物心両面(兵器と資金の供与、国連理事国会議における擁護)において援助をしたことと、西側諸国がジェノサイドを一貫して容認したからでした。
西側諸国はごく最近になってようやくジェノサイドの容認をやめ イスラエルの行為に反対を表明するようになりました。このことはこれまでに比べれば前進ですが、あまりにも遅過ぎて単純に評価することはできません。
とは言え米国はそれによって今や世界の孤児となりました。かつては精神面においても世界のリーダーとして君臨した時期がありました。しかし今は見る影もありません。
人道面におけるこうした凋落こそは人道を踏み外したことの報いです。
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【ガザと世界 2年】 続く攻撃 6・7万人超犠牲 社会・経済・生活の基盤崩壊
しんぶん赤旗 2025年10月7日
【イスタンブール=米沢博史】イスラエル軍がパレスチナ・ガザ地区への大規模侵攻を始めてから7日で2年。攻撃と封鎖を今もやめず、国連調査委員会も認定したジェノサイド(集団殺害)を続け、死傷者を日ごとに増やしています。
ガザ保健当局によると、病院で確認された死者は少なくとも6万7000人以上、行方不明者は9500人以上、負傷者は16万9000人を超えました。
パレスチナ行方不明・強制失踪者センターのガジ・マジダラウィ事務局長は5日、本紙の取材に対し、「救急隊への攻撃や妨害で何百もの現場に到達できず、約1万人ががれきの下や(イスラエル軍の)制圧した地域に取り残されている。救助に必要な機材も尽きた」と訴えました。
イスラエル軍は最近6週間、とくに北部のガザ市で激しい軍事作戦を続けています。同事務局長は「家族まるごと消息が途絶える、がれきの下に家族を残して避難せざるを得ないなどの悲劇が多発している」と話しました。
イスラエル軍はガザ地区の約8割を直接の制圧下におきました。避難先として指定した南部の「人道安全地帯」も136回攻撃し、2605人を殺害。住民に逃げ場はありません。
イスラエルは他方、人道支援トラック12万台以上のガザ入りを拒否してきました。結果、少なくとも460人が餓死しました。うち154人は子どもです。
ガザ地区の住民はおよそ210万人です。子ども65万人、慢性疾患患者35万人、妊産婦10万7000人が命の危機にあります。劣悪な衛生環境のもと、避難生活で発生した感染症は214万件に上ります。ガザ地区の外で治療を必要とする2万2000人以上の傷病者も、イスラエルが地区外移動を禁じています。
イスラエル軍は爆発物20万トン以上を投下し、同地区の約9割を破壊。少なくとも病院・医療センター136施設を破壊し、住宅41万8000棟以上を全壊または居住不能にしました。農地の94%を破壊し、漁業も壊滅させました。攻撃で社会・経済・生活の基盤が崩壊しています。ガザ当局は損失を700億ドル(約10兆5000億円)と試算しています。
【ガザと世界 2年】 イスラエルの集団殺害 国際社会は許さない
しんぶん赤旗 2025年10月7日
イスラエルがパレスチナ・ガザ地区への大規模な軍事侵攻を開始してから7日で2年が経過しました。ガザ住民へのジェノサイド(集団殺害)が続くなか、国連や多くの国がイスラエル非難を強め、同国とその後ろ盾になっている米国の孤立が際立ち始めています。両国を追い込む力になっているのは、世界各地の市民の運動です。(ワシントン=洞口昇幸)
国連のグテレス事務総長は9月23日、国連総会一般討論演説で「ガザでは、恐るべき惨状がまもなく3年目に入ろうとしている。これは基本的な人の道を無視した決定の積み重ねで引き起こされたものだ。死者数と破壊の規模は、私が事務総長として経験したいかなる紛争をも上回っている」と訴えました。
グテレス氏は、「持続可能な中東和平に向けた唯一の現実的な解決策」はパレスチナ国家樹立とイスラエルとの平和共存による「2国家解決」だとし、「われわれは決して諦めてはいけない」と改めて強調。ガザの事態を「今すぐにでも食い止めなければならない」と力を込めました。
増える国家承認
子どもや女性をはじめ民間人を無差別に殺害し、ガザ地区への人道支援物資の搬入阻止で仕民を餓死に追いやるイスラエル。国連の独立国際調査委員会は9月16日、イスラエルがガザでジェノサイドを行ったと認定しました。
国連憲章や国際人道法などを一切無視する行為を前にして、国際社会は、より踏み込んだ対応を取ってイスラエルに圧力を強め始めています。その一例が、パレスチナ国家の承認です。
9月21、22の2日間だけを見ても、英国、オーストラリア、カナダ、ポルトガル、フランス、モナコ、ルクセンブルク、マルタ、アンドラなどがパレスチナを国家承認しました。これにより、国連加盟193カ国のうち、パレスチナを承認する国々は約8割となりました。
オーストラリアのアル八二ージー首相は、国連総会一般討論で、パレスチナを国家承認することは国連憲章の理念に合致していると説明。「戦争の惨禍から将来の世代を救うという国連憲章の誓いが、中東にこそ適用されるべきだ」と強調し、ガザでの即時停戦を改めて要求しました。
英国のラミー副首相兼法相は「われわれが誇りを持って国家として承認したパレスチナの人々も、またイスラエルの人々も、より良い未来を享受する権利がある」と指摘。ガザの惨状に対する答えは「国際社会による協調的な外交以外にあり得ない」と訴えました。
カナダのアナンド外相は、パレスチナを国家承認したことで、2国家解決に向けたカナダの揺るぎない決意を示したと説明。停戦実現や停戦後の政治プロセスの支援のため「可能な限りあらゆる形で取り組んでいく」と表明しました。
トランプ米大統領は,、国家承認について、イスラム組織ハマスヘ「褒賞を与えることになる」などと反発しています。主要7力国(G7)を構成する英国やカナダ、フランスは、米政権の圧力をはねのけて承認に踏み切りました。日本政府は承認を見送り、米国に追随する姿を世界にさらしました。
米国だけが妨害
イスラエルの孤立ぶりが鮮明になっています。同国のネタニヤフ首相が9月26日に国連総会一般討論演説で登壇すると、多くの国の代表団が抗議の意思表示として議場から次々と退席しました。ネタニヤフ氏はパレスチナを国家承認する国が相次いでいることについて、テロを助長する「恥ずべき決定」だなどと反発しました。
この前日にビデオ形式で一般討論演説に臨んだパレスチナ自治政府のアッバス議長は、ガザ侵略について「戦争犯罪であり、人道に対する罪だ」と強調しました。会場は演説に大きな拍手で応じ、ネタニヤフ氏の演説とは対照的な情景が広がりました。
イスラエルの蛮行を止めるうえで一番の障害になっているのが、トランプ米政権です。国内外の批判にもかかわらず、イスラエルヘ巨額の武器支援を継続しています。国連では一貫してイスラエルを擁護しています。
9月18日の国連安保理会合では、ガザでの即時かつ無条件の恒久的な停戦を求める決議案を、他のすべての理事国が賛成するなかで拒否権を行使して葬り去りました。過去2年間に、米政府(バイデン前政権を含む)がガザ停戦関連の安保理決議案を拒否権行使でつぶしたのは、これが6回目です(下表)。英国は24年2月の会合までは、棄権する形で米国に配慮していましたが、ここ1年は賛成に回り、もはや米国―国だけが妨害していることが鮮明になっています。国連総会では圧倒的多数の国の賛成で停戦を求める決議が何度も採択されており、米国の孤立ぶりがうかがえます。
この2年間、世界各地でイスラエルのジェノサイドに怒り、パレスチナの自決権を守れと主張する市民運動が続いてきました。侵略開始から2年になる7日を前にして、米国内に加えて、欧州、中南米、中東、アフリカなどで市民が「ジェノサイドは許さない」「イスラエルヘの支援をやめよ」と行動に改めて立ち上がっています。
米国の同盟国で隣国のカナダがパレスチナ国家承認に踏み切ったことについて、15年以上も国家承認を求めてきたカナダの人権・平和団体「中東における正義と平和を求めるカナダ人」は、「市民社会による継続的な働き掛けの成果だ」と強調しました。同団体は今後も、イスラエルヘの完全な武器禁輸や経済制裁などをカナダ政府に求めていくと表明しました。
国連安保理(15ヵ国)で米国が拒否権を行使したガザ関連の決議案
| 2023年 |
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| 10月18日 | 戦闘の一時停止呼び掛け | 賛成12ヵ国、英と露が棄権 |
| 12月 8日 | 即時の人道的停戦を要求 | 賛成13ヵ国、英が棄権 |
| 2024年 |
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| 2月20日 | 即時の人道的停戦を要求 | 賛成13ヵ国、英が棄権 |
| 11月20日 | 即時かつ無条件の恒久的停戦を要求 | 賛成14ヵ国 |
| 2025年 |
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| 6月 4日 | 即時かつ無条件の恒久的停戦を要求 | 賛成14ヵ国 |
| 9月18日 | 即時かつ無条件の恒久的停戦を要求 | 賛成14ヵ国 |