ガザのパレスチナ人の犠牲者は24日時点で2万5900人に達しました(他にガレキの下になっていると思われる行方不明者は約6700人)。
南アフリカの告発を受けた国際司法裁判所(ICJ)は26日、
「ガザでのジェノサイド(集団殺害)を防ぐためイスラエルはジェノサイド条約の義務に従い、ガザ地区のパレスチナ人に対し以下の行為
▽集団構成員を殺すこと
▽集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること
▽全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意
に課すこと
▽集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること
を、その権限の及ぶあらゆる手段を行使して防止しなけれぱならない」。
とする暫定措置をイスラエルに命じました。
この命令は審理に長時間を要するため緊急性に基く暫定措置で、法的拘束力を持っています。
今回の命令は、南アが求めた軍事作戦停止を命じなかったものの、命令を履行するには230万人のガザ地区住民全体を標的にした無差別攻撃をやめるしかありません。
南アとパレスチナ自治政府はこの判断を歓迎しました。
当事者のネタニヤフ首相は「自衛」を主張し、「この基本的な権利を否定する卑劣な試み」とI CJの命令を拒否しました。しかしこの期に及んで「自衛」とは呆れる口実です。
イスラエルは事実上の共犯者である米国と共に一層孤立を深めていくことになります。残虐で非常識な国々が幅を利かすことは認められません。
なおI CJの裁判官の定例数は15人ですが今回は特例として2名の裁判官が加わりました。
票決は賛成15人、反対2人でした。
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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集団殺害防止 イスラエルに命令 国際司法裁 南ア「実行に停戦必要」
しんぶん赤旗 2024年1月28日
国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は26日、パレスチナのガザ地区でイスラエルが国際条約違反のジェノサイド(集団殺害)を行っているとして南アフリカが起こした訴訟で、イスラエルにジェノサイド防止のためのあらゆる措置を取ることを命じました。
昨年12月に提訴した南アは、イスラエルのガザでのパレスチナ人に対する攻撃は、特定の人種・民族などの構成員を殺害したり、危害を加えたりすることを禁じたジェノサイド条約に違反すると主張。南アは緊急措置としてイスラエルの軍事作戦の即時停止を命じるよう求めていましたが、ICJは軍事作戦の即時停止までは明言しませんでした。
一方、今回の問題についてICJに管轄権があると判断。南アの訴えを認め、ガザ地区のパレスチナ人が回復不能な損害を被る「現実的なリスクがある」とし、イスラエルに対し
▽ジェノサイドを扇動することの防止と扇動の処罰
▽必要な人道支援等の実施
▽ジェノサイドの証拠の破壊防止と保全
―などを命じました。
南アのパンドール外相はハーグで報道陣に対し、ICJの命令に「完全に同意する」と表明。その上で、命令を実行させるには「停戦が必要だ」と強調しました。
イスラエルのネタニヤフ首相は同日、ICJの命令について「イスラエルが浴びせられた集団殺害という非難は虚偽であるだけでなく、言語道断だ」と拒否する姿勢を示しました。今回の判断は、数年を要するとみられる判決を出すまでの暫定措置。
国際司法裁判所(ICJ) 国家間の紛争を扱う裁判所。1945年、国連の主要な司法機関として設置。本部はオランダ・ハーグ。裁判官は安全保障理事国の地理的配分(西欧5人、アフリカ3人、アジア3人、東欧2人、中南米・カリブ海2人)に対応した15人。特定の事件では「アドホック裁判官」と呼ばれる裁判官を任命することができます。
民間人保護 停戦でこそ 集団殺害防止 I CJ命令で反応 アラブ各国が主張
しんぶん赤旗 2024年1月28日
【カイロ=秋山豊】アラブ各国は26日、国際司法裁判所(I CJ)が命じたガザでのジェノサイドを防ぐ措置を直ちに講じるようイスラエルに求めました。
パレスチナ自治政府のシュタイエ首相は、I CJの判断はイスラエルが処罰されない時代の終わりを意味すると指摘。同氏は、ガザの人ぴとが直面している壊滅的な人道的状況の全責任はイスラエルにあると批判して、イスラエルに侵略をやめさせ、ガザヘの人道支援の流れを促進するために圧力をかけるよう訴えました。
エジプト外務省はI CJが命じた措置を直ちに実行するようイスラエルに要求する一方で、「停戦がパレスチナの民間人を保護するための最も重要な措置だ」と述べました。、
I CJが命じた措置について、カタール外務省は「ガザのパレスチナ人にジェノサイドの重大な脅威が迫っていることを明確に認めている」と指摘。ヨルダン外務省は措置が実行されればパレスチナ人を殺害し、心身に深刻な危害を加えているイスラエルの犯罪を止めることにつながるとの認識を示しました。
サウジアラビア外務省はI CJの決定を支持し、イスラエルのパレスチナ占領とジェノサイド条約違反を厳しく批判。「ガザでの暴力を止め、パレスチナ人を保護し、イスラエル占領軍に国際法と国際人道法を侵害している責任をとらせるため、国際社会はさらなる措置を講じることが重要だ」と強調しました。
国際法・正義の勝利
『南ア大統領』
【ロンドン=略事】ICJがイスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザでのジェノサイド(集団殺害)を防ぐためあらゆる措置を取るよう命じたことについて、訴訟を起こした南アフリカのラマポーザ大統領は26日のテレビ演説で、「国際法、人権、そして何よりも正義の勝利となる決定を下した」と歓迎しました。
ラマポーザ氏は「この命令はイスラエルを拘束するものだ」とした上で、「法の支配を尊重する国家であるイスラエルが、ICJの言い撹した措置を順守することを期待する」と強調しました。
当事者は命令遵守を
『国連事務総長』
【ワシントン=島田峰隆】グテレス国運事務総長は26日、パレスチナのガザでの集団殺害を防ぐためにあらゆる措置を講じるようイスラエルに命じたICJの判断について「ICJの決定は法的拘束力を持つ。全当事者が命令を適切に順守することを希望する」と表明しました。報道官を通じて声明を出しました。 /
グテレス氏はICJの命令のうち、イスラエルに対してガザ住民への人道支援提供の措置を求めた命令について「特に留意する」としています。
またICJがガザでの紛争のすべての当事者は国際人道法に拘束されると強肩した点にも留意を表明しました。
免責終焉と歓迎
『米民主議員』
【ワシントン=島田峰隆】米民主党進歩派のコリー・ブッシュ、ラシダ・タリーブの両連邦下院議員は26日イスラエルによるパレスチナのガザ地区への軍事侵攻をめぐるICJの判新に関して、「国際司法制度でイスラエル政府が得てきた免責の終焉(しゅうえん)を示すものだ」と歓迎する共同声明を出しました。
共同声明はICJの判断について「イスラエル政府がガザで集団殺害を行っている危険があると圧倒的多数で認識した」と指摘。「裁判所の判断を実行に移す唯一の方法は、恣意(しい)的に拘束された人々や人質の解放を含む永続する停戦を促進することだ」と強調しました。
パイデン米政権に対しては、裁判所の判断の合法性を認めることや即時停戦の促進に加えて、イスラエルヘめ軍事支援の中止を求めました。
ブッシュ氏とタリーブ氏はガザでの戦闘開始直後の昨年10月半ば、バイデン政権に即時停戦に向けた行動を求める決議案を下院に提出しています。
イスラエル支援
『米政府高官』
【ワシントン=島田峰隆】米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は26日の記者会見で、イスラエルによるパレスチナのガザ地区への軍事侵攻をめぐるICJの命令について「ICJの判断だけで米国の取り組み方が変わるわけではない。米国はイスラエルを支援し続ける」と述べました。
カービー氏は「ガザで集団殺害が行われているとい乙う南アフリカの主張には根拠がない」と従来の主張を繰り返し、「ICJはイスラエルが集団殺害の罪を犯しているとは判断しなかった」との認識を示しました。
また「米国は停戦が最良の方法とは考えていない」とも語り、国連加盟国の8割が求める即時の人道的停戦にあくまでも背を向ける姿勢を示しました。
イスラエル・米孤立深まる
【カイロ=秋山豊】国際司法裁判所(I CJ)はイスラエルにガザでのジェノサイド(集団殺害)を防ぐよう命じました。イスラエルによる集団殺害に反対し、即時停戦を求める国際世論がさらに強まり、イスラエルの孤立が深まることになりそうです。
南アフリカは昨年12月、イスラエルガ集団殺害の防止と処罰を義務づけているジェノサイド条約に反しているとして国連の司法機関であるICJに提訴しましだ。
11、12日の弁論では、イスラエルは弁護団を法廷に派遣して南アフリカの主張に反論しましたが、これ自体が異例でした。イスラエルは国連が反イスラエルに偏っているとし、2004年にICJが、イスラエルによるヨルダン川西岸での分離壁健設は国際法違反」とする勧告的意見を出した訴訟には出廷しませんでした。
エジプト首都カイロの元控訴裁判所長で国際法に詳しいハサンアハマド・オマル氏は「イスラエ 心ルは国際社会から虐殺者とみなされることを恐れている。国際的な信頼がさらに失墜し、パレスチナ占領を正当化してユダヤ人の国を建設し続けるという主張も通用しなくなるからだ」と語りました。
パレスチナの地にイスラエルが建国された背景には、ナチス・ドイツによるホロコースト(大虐殺)など欧州で激しく迫害されたユダヤ人の体験があります。イスラエルは1948年の建国の年に国連総会で採択されたジェノサイド条約をすみやかに批准しました
オマル氏は「今、イスルはナチスと同様のことをガザで行っている」と批判します。
イスラエルのネタニヤフ首相は旧約聖書にある「アマレクびとがあなたにしたことを記憶しなければならない」という言葉を引いて軍事行動を扇動してきました。聖書ではアマレク人はユダヤ人の敵とされています。南アフリカはこの点も挙げ、イスラエルには集団殺害の意図があると主張しました。
オマル氏は本紙の取材に「ネタニヤフ氏の発言は、ガザで全ての人ぴとを殺害する義務を自覚するよう、イスラエル兵に与えた命令だ」と述べました。
イスラエルによる集団殺轡に反対し、即時停戦を求める行動が世界各国で取り組まれているなか、国連総会は昨年10月に「人道的休戦」、12月に「人道的停戦」を求める各決議をそれぞれ121,153カ国の賛成で採択しました。
オマル氏はICJの今回の命令を受け、国連総会決議に反対するイスラエルや来国などの孤立はさらに深まると指摘しました。
ジェノサイド条約 1948年、国運総会で採択された「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約」。46年の国連総会が世界大戦中に起きた大量虐殺が再び起きることがないよう宣言したことを受け成立。「国民的、人種的、民族的又は宗教的な集団の全部又は一部を破壊する意図をもって行なわれる」行為を処罰します。152カ国が加入・批准し、米国やイスラエルも締約国です。
ⅠCJ判断(要旨)
しんぶん赤旗 2024年1月28日
国際司法裁判所(ICJ)が26日示したガザ情勢に関する判断の「結論」(要旨)は次の通りです。
イスラエルはジェノサイド条約の義務に従い、ガザ地区のパレスチナ人に対し、その権限の及ぶあらゆる手段を行使して、同条約第2条の及ぶ範囲の以下の行為を防止しなけれぱならない。
▽集団構成員を殺すこと
▽集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること ▽全部又は一部に
肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すこと
▽集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること。
イスラエルはその権限の及ぶあらゆる手段を行使して、ガザ地区のパレスチナ人に対し、ジェノサイド(集団殺害)を実施するよう直接かつ公に扇動することを防止し、処罰しなければならない。
イスラエルは速やかに有効な手だてをとり、緊急に必要とされる基本的なサービスや人道支援を施し、ガザ地区のパレスチナ人が直面する生活条件の悪化に対処しなければならない。
イスラエルはさらに有効な手だてをとり、ジェノサイド条約第2条および第3条の及ぶ範囲の行為があったとの主張に関する証拠の破壊を防止し、保全しなければならない。
イスラエルはICJに対し、本命令の実施のためにとったすべての手だてについて1カ月以内に報告しなければならない。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。
2024年1月29日月曜日
集団殺害防止 イスラエルに命令 国際司法裁 南ア「実行に停戦必要」(しんぶん赤旗)
メディアの思考停止と「反ユダヤ主義」
土田 修氏によるフランス発・グローバルニュースの第5号です。
昨年10月以降、イスラエル軍によるガザ地区住民虐殺の犠牲者は女性や子供を中心に2万5900人(1月24日)に達しました。これはイスラエルによるパレスチナ人民族浄化の行為で、ナチスによるユダヤ人に対するホロコーストをはるかに上回る勢いとされています。
これまで西側を主体とする国際社会にはこの残虐行為を止める手立てがありませんでした。しかし昨年末に南アフリカがイスラエルの蛮行をICJに提訴してから、世界の流れは変わりました。それでも西側にはそれに呼応する動きは見られず、アメリカに追随するだけの隷属国日本はひたすら沈黙を守っています。
その一方でウクライナ報道では「地殻変動」が起き、ウクライナの勝利とロシアの敗北を願って、米国ネオコン研究所の情報をひたすらテレビ番組で拡散し続けてきた日本の防衛研究所と東大の御用学者たちは、ようやくウクライナの反転攻勢の失敗と東部戦線での劣勢を苦虫を噛み潰したような表情で認め出したとしています。
メディアのそうした動きを阻止しようとするものが『反ユダヤ主義』というネーミングだとして、土田氏は「現在のフランス・メディアの言説に見られる『悪魔』払いの思想は、ウクライナ戦争の情勢悪化とパレスチナ紛争を受けて『反ユダヤ主義』に移行しつつある」と述べています。
そして次回の記事では、ユダヤ人歴史家シュロモー・サンドの「シオニズムと共産主義運動」を紹介することで、「反ユダヤ主義」の幽霊からの脱却を模索したいと述べています。
〝「反ユダヤ主義」の幽霊″とは、「反ユダヤ主義」という言説自体が間違っているというほどの意味でしょうか。
なお、日本のある学者は「いまやウクライナにネオナチ分子などいない」と公言しましたが、それはどう見ても実態に即していません。
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フランス発・グローバルニュースNO.5
メディアの思考停止と「反ユダヤ主義」
土田 修 レイバーネット日本 2024-01-20
2023年9月からの新連載「フランス発・グローバルニュース」では、パリの月刊国際評論紙「ル・モンド・ディプロマティーク」の記事をもとに、ジャーナリストの土田修さんが執筆します。毎月20日掲載予定です。同誌はヨーロッパ・アフリカ問題など日本で触れることが少ない重要な情報を発信しています。お楽しみに。今回はイスラエルによる虐殺の歴史を振り返ります。(レイバーネット編集部)
●フランス発・グローバルニュースNO.5(2024.1.20)
メディアの思考停止と「反ユダヤ主義」
土田 修
(ル・モンド・ディプロマティーク日本語版前代表、
ジャーナリスト、元東京新聞記者)
国際社会の非難にもかかわらず、イスラエルによるガザ地区住民の虐殺が相変わらず続いているが、南アフリカ政府は昨年末、ジェノサイド条約に違反しているとして、イスラエルをオランダ・ハーグにある国際司法裁判所(CIJ)に提訴した。日刊紙ル・モンド(1月2日付)によると、南アフリカ政府はジェノサイド(集団殺戮)を防止し、ガザのパレスチナ人を破壊から守ることが「南アフリカの権利であり義務である」としてイスラエルに軍事行動の停止を命ずるよう求めている。これに対し、イスラエル政府は「いわれなき中傷であり、CIJの濫用である」と非難しているが、国際社会の多くは南アフリカを礼賛している。
例えば、トルコ政府は「イスラエルによるパレスチナ民間人の殺害は処罰されなければならない」とコメントし、マレーシア政府は「イスラエルの残虐行為への法的責任を追及する第一歩」と支持を表明した。また、ボリビア政府は「南アフリカがパレスチナ人民の防衛に対し歴史的な一歩を踏み出した」と南アフリカの提訴を褒めたたている。
昨年10月以降、イスラエル軍の侵攻でガザ地区の住民の犠牲者は女性や子供を中心に2万4620人(1月19日アルジャジーラ)を数えている。イスラエルによるパレスチナ人に対する民族浄化は、ナチスによるユダヤ人に対するホロコーストをはるかに上回る勢いで意図的・計画的に実行されているが、これまで国連を含めた国際社会にはイスラエルの残虐行為を止める手立てがなかった。
だが、今回の南アフリカの提訴によって、イスラム社会だけでなく、アフリカ、中東、中南米、東南アジアなどいわゆる「グローバルサウス」の国々を中心にパレスチナへの連帯が勢いづいている。その結果、イスラエル、そしてイスラエルに武器を供与し続け、ジェノサイドを容認しているアメリカ、それを無条件で支持しているイギリスのグローバルな孤立も目立ち始めている。ドイツ同様、ユダヤ人のホロコーストに責任のあるフランスは「反ユダヤ主義(Antisémitisme)」という謗りを恐れ、われを忘れてしまったかのように「対テロ戦争」を国内に適用し、パレスチナ支援のデモや集会の開催を禁止した。だが、南アフリカの提訴には反対はしていない。では日本はどうか?
実は、日本はジェノサイド条約に加盟していない世界でも数少ない国だ。当然、国際的にジェノサイドを容認している国とみなされる。アメリカに追随するだけの隷属国・日本は南アフリカの提訴にわれ関せずとばかりに沈黙を守っている。日本メディアも「思考停止」状態にあると言っていい。元々、権力のプロパガンダ・フィルター(ノーム・チョムスキーの言葉)である記者クラブ制度を金科玉条とする日本のマスメディア・ジャーナリズム(反ジャーナリズム)が政府の意向に反した報道をすることはごくまれだ。
余談だが、能登地震で一番心配なのは外部電源の一部が喪失した志賀原発の現状だが、なぜかNHKも民放も原発の状況を一切報道しなくなった。1999年に起きた臨界事故を2007年まで8年間も隠し通した北陸電力と原子力規制委員会の「安全性に問題はない」という説明も信用することはできない(臨界事故隠しのお陰で志賀原発が稼働していなかったのは不幸中の幸いだったが)。だが、ジャーナリズムのかけらも存在しない森喜朗ベッタリの地元紙はもちろん、志賀原発の真実に迫ろうとするメディアは今のところ見当たらない。
奥能登の珠洲市も輪島市も過疎に苦しんでいた。馳知事派の県会議員が能登に入って被災者に対し、闇雲に「2次避難」を呼びかけているが、奥能登から住民を一掃し、大規模再開発を狙っているのではないかとの疑問が生じる。輪島の千枚田など「能登の里山里海」が国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」に認定されているが、輪島のキリコ祭りや富来のくじり祭りなど奇祭も多い奥能登に、将来的に一大テーマパークやカジノをつくり、世界から観光客を集めるというネオリベ的構想を抱く政治家が「森王国」の石川県にいたとしても不思議ではない。能登空港はその玄関口になるのだろう。
ナオミ・クラインは『ショック・ドクトリン』(岩波書店)で、衝撃的出来事を巧妙に利用する政策を「惨事便乗型資本主義」と呼んだが、日本の施政者にとって大災害は大きなチャンスとなる。その影で被災地の住民は「棄民」として切り捨てられる。今回の地震で自衛隊の投入が熊本地震に比べて格段に遅く、人数も少なかったのもうなづける。イスラエルがガザ地区で「戦争」を開始し、パレスチナ人を殺すか追い出そうとしているのは、天然ガス海底油田の開発でいまやエネルギー輸出国となったイスラエルが、ガザ沖海底油田の利権を独占し、パイプラインの出入り口としてガザ地区を「更地」にするためではないか。これも「惨事便乗型資本主義」の典型例といえる。
■ウクライナ報道の地殻変動とジャーナリストの〝幻想〟
思考停止状態にあるのは、ウクライナ報道も同じだ。ウクライナの勝利とロシアの敗北を願って、アメリカのネオコン研究所の情報をひたすらテレビ番組で拡散し続けてきた防衛研究所と東大の御用学者たちが、ようやく最近、ウクライナの反転攻勢の失敗と東部戦線での劣勢を苦虫を噛み潰したような表情で口にし始めている。反対意見を許さないメディア報道の劣悪さは日本だけのことではない。ル・モンド・ディプロマティーク紙は昨年10月号で、セルジュ・アリミ記者とピエール・ランべール記者の共著記事「盤石のメディア、ウクライナ報道で生じたひび」(日本語版12月号、クレモン桂翻訳)を掲載し、ようやく訪れたウクライナ報道の変化に言及している。
記事によると、「ロシアによる侵攻開始から1年半以上が経過したにもかかわらず、『ウクライナに勝利を』という横並びの論調が目立ち、大局的な俯瞰には至っていない」とされたフランス・メディアがウクライナ情勢の悪化によって、盤石だったはずの報道体制に地殻変動が起きているという。ル・モンド、フィガロ、リベラシオンの3紙は、実戦から距離をとりながらウクライナ戦争を戦い抜くことを決意し、徹底抗戦を主張していた。「プーチンに屈すれば西側諸国にとって戦略上の壊滅的敗北になる」(フィガロ、2023年8月10日付)、「戦争の長期化を避けるにはウクライナに対する軍事支援を強化することだ」(ル・モンド、同18日付)、「これは欧州にとって核心的な戦争であり、対するのは武力と抑圧に物を言わせる、権威主義的かつ反民主主義的な政権だ」(リベラシオン、同14日付)。
週刊誌やテレビ放送も例外ではなかった。週刊誌レクスプレスは「降伏の誘惑に屈してはならない」(2023年8月24日)と訴え、テレビ局LCIとの合同特集号の表紙で「持ちこたえよ!」と命じていた。ところが、同じ時期に、米紙ウォールストリート・ジャーナルは「西側諸国がロシア経済を打破できないことに加え、ウクライナに対して殺傷能力の高い武器が次々に供与され、経済支援が行われたにもかかわらず戦場で失敗している」(同8月2日付)と認めた。国際通貨基金(IMF)は、米政府がマイナス50%と予測していたロシアの2023年の成長率予測をプラス1.5%に引き上げた。
ようやく、フランス・メディアも米メディアの連日の報道に歩調を合わせ、ウクライナの反転攻勢の失敗、ウクライナ側の損失の規模、西側支援の縮小、軍事的展望の後退を認めざるを得なくなった。徹底抗戦派のジャーナリストたちは「われわれの価値観のために戦うウクライナ人」という幻想を振りまいてきた。都市郊外に住む移民2世、3世の若者たちを「ロシアの侵略者」、すなわち「悪魔」になぞらえる言説も目についた。「この二つの実存に関わる課題は、密接に絡み合っている。どちらの場合も欧州が対峙しているのは、われわれの文明を憎み、優位に立つためならあらゆる原則を踏みにじることも辞さない新たな野蛮人だからだ」(フィガロ、2023年7月7日付)。
現在のフランス・メディアの言説に見られる「悪魔」払いの思想は、ウクライナ戦争の情勢悪化とパレスチナ紛争を受けて「反ユダヤ主義」に移行しつつある。2023年10月、フランス北部アラスで起きたイスラム教徒による教師殺害事件を契機に、内務大臣ダルマナンは「対テロ戦争」を国内に適用し、パレスチナを支援し、イスラエルを非難するデモや集会を禁止した。その理由は「反ユダヤ主義」を煽る行為だからだという。
急進左派政党「不服従のフランス(LFI)」のジャン=リュック・メランションはイスラエルによる戦争犯罪を「現代のゲルニカ(⇒1937年、ドイツ空軍の爆撃により市民多数が死亡したスペインの小都市)」にたとえたが、イスラム組織ハマスを「テロリスト」と呼ばないという理由で、保守派や現政権、さらにはフランス共産党など左翼陣営からも「テロリスト擁護」「反ユダヤ主義」と非難されるに至っている。1月6日付ル・モンド紙は「Antisémitisme: la lente dérive de Mélenchon (反ユダヤ主義:メランションの緩やかな逸脱)」という見出しで、メランションを口汚く批判する長大な記事を掲載した。
いわく、メランションは、ユダヤ人を「金貸し」という月並みな反ユダヤ主義のイメージで見ている。いわく、ホロコーストを生き延びた父親を持つ前首相エリザベット・ボルヌを「よそ者」扱いして批判した、などなどだ。
「ヨーロッパに幽霊が出る——反ユダヤ主義という幽霊である」。政治やメディアを含めた欧州市民が「反ユダヤ主義」の幽霊に憑依され続ける限り、パレスチナ問題が解決の道筋に至る可能性は極めて低いのではないか。次回の記事では、『ユダヤ人の起源——歴史はどのように創作されたのか』(筑摩書房)を書き、ユダヤ人社会に大きな波紋を投げかけたユダヤ人歴史家シュロモー・サンドの「シオニズムと共産主義運動」(2024年1月付ル・モンド・ディプロマティーク日本語版)を紹介することで、「反ユダヤ主義」の幽霊からの脱却を模索したい。
*「ル・モンド・ディプロマティーク」は1954年にパリで創刊された月刊国際評論紙。欧米だけでなく、アフリカ、アラビア、中南米など世界各地の問題に関して地政学的・歴史的分析に基づく論説記事やルポルタージュを掲載。現在、23言語に翻訳され、34カ国で国際版が出版されている。日本語版(jp.mondediplo.com)は月500円から購読可能。
29- イエメンが行えばテロ、アメリカが行えば「ルールに基づく秩序」
イエメンのフーシ派がガザ地区のパレスチナ人への連帯行動として、紅海を航行するイスラエル寄りの船舶への攻撃を行っていることに対して、米国は英国その他と有志連合を組んで公然とイエメンの爆撃を続けています。
これはいつも見る風景で、ケイトリンは掲題の記事を出しました。米国の「唯我独尊」路線を痛烈に皮肉ったものです。
米国はイスラエル発足以降絶えず同国を支持し続け、安保理での拒否権発動数ナンバーワンを維持して来ましたが、この度の「ガザ地区のパレスチナ人大虐殺」支持は余りにも説得力に欠けているため、米国の威信はすっかり地に堕ちました。当然の成り行きです。
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イエメンが行えばテロ、アメリカが行えば「ルールに基づく秩序」
マスコミに載らない海外記事 2024年1月27日
我々は残忍な暴君に支配されている。核武装凶悪犯は、平和が多少とも進むのを
許すより積極的大量虐殺継続を守るため民間人を飢えさせるのを望んでい。
ケイトリン・ジョンストン 2024年1月18日
バイデン政権は、イエメンの支配勢力であるフーシ派としても知られるアンサール・アッラー、いわゆるフーシ派を、特別指定国際テロ組織に正式に再指定した。
紅海とアデン湾の米軍艦艇や商船に対する攻撃に対する適切な対応だとして、この指定は「典型的なテロリズムの定義に合致する」とホワイトハウスは主張している。イスラエルによるガザ破壊を止めるための封鎖を強行しているだけで、その行動は「ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約第1条の規定を遵守している」とアンサール・アッラーは主張している。
トランプ政権が犯した最も凶悪な行為の一つは、アンサール・アッラーを外国テロ組織(FTO)と特別指定国際テロリスト(SDGT)に指定し、どちらでも制裁を課したが、制裁は、援助に依存するイエメン国民を、許される援助を制限することで、彼らが既に経験しているより更に大きなレベルの飢餓に陥れると批判者たちは警告した。バイデン政権の唯一まともな外交政策決定の一つは、その加虐的な動きの逆転で、現在、その逆転は一部後退しているが、ありがたいことにSDGTリストのみで、より致命的で深刻なFTO指定ではない。
制裁が既に苦しんでいるイエメン国民に害を及ぼさないよう免除を発令するつもりだとバイデン・ホワイトハウスは主張しているが、「過去、制裁は国際企業や銀行を怖がらせ、標的にされた国や団体との事業を遠ざけ、医薬品、食料品、その他の生活必需品不足を引き起こしていることを、この最新の進展に関するAntiwar新記事でデイブ・デキャンプは書いている。アメリカとイギリスのイエメン空爆により、既に一部援助団体がイエメンに対する活動停止を余儀なくされているともデキャンプは指摘している。
2015年から2022年の間、そこで何十万人もの死者をもたらした、アメリカが支援したサウジアラビア封鎖により引き起こされた荒廃から、今も立ち直ろうとしている国にアメリカ帝国は経済制裁を課すつもりだ。この全てが、まさにその国の事実上の政府が、大量虐殺を防ぐ目的で独自封鎖を課したことに対する対応なのだ。
そうなのだ。積極的な大量虐殺を阻止しようとしてイエメンが封鎖を仕掛けるとテロだが、アメリカ帝国が、中東における地政学的権益を確保するため封鎖を課す際は、なぜ「ルールに基づく国際秩序」が機能しているのに過ぎないのだろう。
イエメン、ベネズエラ、キューバ、イラン、シリアや北朝鮮など、自分の命令に屈するのを拒否する国々に、意のままにアメリカ帝国が封鎖や飢餓制裁を課せることが、アメリカ帝国がどう考えているかについて多くを物語っているが、限りなく価値ある崇高な理由でイエメンが封鎖を課すと、テロ行為と烙印を押される。ワシントンを中心に緩やかに中央集権化された世界を股にかける帝国の支配者連中は、文字通り世界は自分たちのもので、自分たちの思うまま支配し、支配に反対する者は誰であれ無法者だと信じている。
このことからわかるのは、アメリカと同盟諸国が支持すると主張する「ルールに基づく国際秩序」は、全くルールに基づいていないことだ。それは、自分の意志をコントロールし、他人に押し付ける能力である「権力」に基づいている。「ルール」は、帝国の敵にのみ適用されるが、それは、全くルールではないからだ。ルールとは、自分の意のままに世界の人々を屈服させる取り組みを正当化するために使われる物語だ。
残忍な暴君に我々は支配されている。核武装した凶悪犯は、平和がエッジワイズに一言も入るのを許すより、積極的な大量虐殺の継続を守るため民間人を飢えさせることを望んだ。これらの怪物が支配している限り、私たちの世界は健康を知ることはできない。
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