ガザのパレスチナ人の犠牲者は24日時点で2万5900人に達しました(他にガレキの下になっていると思われる行方不明者は約6700人)。
南アフリカの告発を受けた国際司法裁判所(ICJ)は26日、
「ガザでのジェノサイド(集団殺害)を防ぐためイスラエルはジェノサイド条約の義務に従い、ガザ地区のパレスチナ人に対し以下の行為
▽集団構成員を殺すこと
▽集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること
▽全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意
に課すこと
▽集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること
を、その権限の及ぶあらゆる手段を行使して防止しなけれぱならない」。
とする暫定措置をイスラエルに命じました。
この命令は審理に長時間を要するため緊急性に基く暫定措置で、法的拘束力を持っています。
今回の命令は、南アが求めた軍事作戦停止を命じなかったものの、命令を履行するには230万人のガザ地区住民全体を標的にした無差別攻撃をやめるしかありません。
南アとパレスチナ自治政府はこの判断を歓迎しました。
当事者のネタニヤフ首相は「自衛」を主張し、「この基本的な権利を否定する卑劣な試み」とI CJの命令を拒否しました。しかしこの期に及んで「自衛」とは呆れる口実です。
イスラエルは事実上の共犯者である米国と共に一層孤立を深めていくことになります。残虐で非常識な国々が幅を利かすことは認められません。
なおI CJの裁判官の定例数は15人ですが今回は特例として2名の裁判官が加わりました。
票決は賛成15人、反対2人でした。
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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集団殺害防止 イスラエルに命令 国際司法裁 南ア「実行に停戦必要」
しんぶん赤旗 2024年1月28日
国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は26日、パレスチナのガザ地区でイスラエルが国際条約違反のジェノサイド(集団殺害)を行っているとして南アフリカが起こした訴訟で、イスラエルにジェノサイド防止のためのあらゆる措置を取ることを命じました。
昨年12月に提訴した南アは、イスラエルのガザでのパレスチナ人に対する攻撃は、特定の人種・民族などの構成員を殺害したり、危害を加えたりすることを禁じたジェノサイド条約に違反すると主張。南アは緊急措置としてイスラエルの軍事作戦の即時停止を命じるよう求めていましたが、ICJは軍事作戦の即時停止までは明言しませんでした。
一方、今回の問題についてICJに管轄権があると判断。南アの訴えを認め、ガザ地区のパレスチナ人が回復不能な損害を被る「現実的なリスクがある」とし、イスラエルに対し
▽ジェノサイドを扇動することの防止と扇動の処罰
▽必要な人道支援等の実施
▽ジェノサイドの証拠の破壊防止と保全
―などを命じました。
南アのパンドール外相はハーグで報道陣に対し、ICJの命令に「完全に同意する」と表明。その上で、命令を実行させるには「停戦が必要だ」と強調しました。
イスラエルのネタニヤフ首相は同日、ICJの命令について「イスラエルが浴びせられた集団殺害という非難は虚偽であるだけでなく、言語道断だ」と拒否する姿勢を示しました。今回の判断は、数年を要するとみられる判決を出すまでの暫定措置。
国際司法裁判所(ICJ) 国家間の紛争を扱う裁判所。1945年、国連の主要な司法機関として設置。本部はオランダ・ハーグ。裁判官は安全保障理事国の地理的配分(西欧5人、アフリカ3人、アジア3人、東欧2人、中南米・カリブ海2人)に対応した15人。特定の事件では「アドホック裁判官」と呼ばれる裁判官を任命することができます。
民間人保護 停戦でこそ 集団殺害防止 I CJ命令で反応 アラブ各国が主張
しんぶん赤旗 2024年1月28日
【カイロ=秋山豊】アラブ各国は26日、国際司法裁判所(I CJ)が命じたガザでのジェノサイドを防ぐ措置を直ちに講じるようイスラエルに求めました。
パレスチナ自治政府のシュタイエ首相は、I CJの判断はイスラエルが処罰されない時代の終わりを意味すると指摘。同氏は、ガザの人ぴとが直面している壊滅的な人道的状況の全責任はイスラエルにあると批判して、イスラエルに侵略をやめさせ、ガザヘの人道支援の流れを促進するために圧力をかけるよう訴えました。
エジプト外務省はI CJが命じた措置を直ちに実行するようイスラエルに要求する一方で、「停戦がパレスチナの民間人を保護するための最も重要な措置だ」と述べました。、
I CJが命じた措置について、カタール外務省は「ガザのパレスチナ人にジェノサイドの重大な脅威が迫っていることを明確に認めている」と指摘。ヨルダン外務省は措置が実行されればパレスチナ人を殺害し、心身に深刻な危害を加えているイスラエルの犯罪を止めることにつながるとの認識を示しました。
サウジアラビア外務省はI CJの決定を支持し、イスラエルのパレスチナ占領とジェノサイド条約違反を厳しく批判。「ガザでの暴力を止め、パレスチナ人を保護し、イスラエル占領軍に国際法と国際人道法を侵害している責任をとらせるため、国際社会はさらなる措置を講じることが重要だ」と強調しました。
国際法・正義の勝利
『南ア大統領』
【ロンドン=略事】ICJがイスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザでのジェノサイド(集団殺害)を防ぐためあらゆる措置を取るよう命じたことについて、訴訟を起こした南アフリカのラマポーザ大統領は26日のテレビ演説で、「国際法、人権、そして何よりも正義の勝利となる決定を下した」と歓迎しました。
ラマポーザ氏は「この命令はイスラエルを拘束するものだ」とした上で、「法の支配を尊重する国家であるイスラエルが、ICJの言い撹した措置を順守することを期待する」と強調しました。
当事者は命令遵守を
『国連事務総長』
【ワシントン=島田峰隆】グテレス国運事務総長は26日、パレスチナのガザでの集団殺害を防ぐためにあらゆる措置を講じるようイスラエルに命じたICJの判断について「ICJの決定は法的拘束力を持つ。全当事者が命令を適切に順守することを希望する」と表明しました。報道官を通じて声明を出しました。 /
グテレス氏はICJの命令のうち、イスラエルに対してガザ住民への人道支援提供の措置を求めた命令について「特に留意する」としています。
またICJがガザでの紛争のすべての当事者は国際人道法に拘束されると強肩した点にも留意を表明しました。
免責終焉と歓迎
『米民主議員』
【ワシントン=島田峰隆】米民主党進歩派のコリー・ブッシュ、ラシダ・タリーブの両連邦下院議員は26日イスラエルによるパレスチナのガザ地区への軍事侵攻をめぐるICJの判新に関して、「国際司法制度でイスラエル政府が得てきた免責の終焉(しゅうえん)を示すものだ」と歓迎する共同声明を出しました。
共同声明はICJの判断について「イスラエル政府がガザで集団殺害を行っている危険があると圧倒的多数で認識した」と指摘。「裁判所の判断を実行に移す唯一の方法は、恣意(しい)的に拘束された人々や人質の解放を含む永続する停戦を促進することだ」と強調しました。
パイデン米政権に対しては、裁判所の判断の合法性を認めることや即時停戦の促進に加えて、イスラエルヘめ軍事支援の中止を求めました。
ブッシュ氏とタリーブ氏はガザでの戦闘開始直後の昨年10月半ば、バイデン政権に即時停戦に向けた行動を求める決議案を下院に提出しています。
イスラエル支援
『米政府高官』
【ワシントン=島田峰隆】米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は26日の記者会見で、イスラエルによるパレスチナのガザ地区への軍事侵攻をめぐるICJの命令について「ICJの判断だけで米国の取り組み方が変わるわけではない。米国はイスラエルを支援し続ける」と述べました。
カービー氏は「ガザで集団殺害が行われているとい乙う南アフリカの主張には根拠がない」と従来の主張を繰り返し、「ICJはイスラエルが集団殺害の罪を犯しているとは判断しなかった」との認識を示しました。
また「米国は停戦が最良の方法とは考えていない」とも語り、国連加盟国の8割が求める即時の人道的停戦にあくまでも背を向ける姿勢を示しました。
イスラエル・米孤立深まる
【カイロ=秋山豊】国際司法裁判所(I CJ)はイスラエルにガザでのジェノサイド(集団殺害)を防ぐよう命じました。イスラエルによる集団殺害に反対し、即時停戦を求める国際世論がさらに強まり、イスラエルの孤立が深まることになりそうです。
南アフリカは昨年12月、イスラエルガ集団殺害の防止と処罰を義務づけているジェノサイド条約に反しているとして国連の司法機関であるICJに提訴しましだ。
11、12日の弁論では、イスラエルは弁護団を法廷に派遣して南アフリカの主張に反論しましたが、これ自体が異例でした。イスラエルは国連が反イスラエルに偏っているとし、2004年にICJが、イスラエルによるヨルダン川西岸での分離壁健設は国際法違反」とする勧告的意見を出した訴訟には出廷しませんでした。
エジプト首都カイロの元控訴裁判所長で国際法に詳しいハサンアハマド・オマル氏は「イスラエ 心ルは国際社会から虐殺者とみなされることを恐れている。国際的な信頼がさらに失墜し、パレスチナ占領を正当化してユダヤ人の国を建設し続けるという主張も通用しなくなるからだ」と語りました。
パレスチナの地にイスラエルが建国された背景には、ナチス・ドイツによるホロコースト(大虐殺)など欧州で激しく迫害されたユダヤ人の体験があります。イスラエルは1948年の建国の年に国連総会で採択されたジェノサイド条約をすみやかに批准しました
オマル氏は「今、イスルはナチスと同様のことをガザで行っている」と批判します。
イスラエルのネタニヤフ首相は旧約聖書にある「アマレクびとがあなたにしたことを記憶しなければならない」という言葉を引いて軍事行動を扇動してきました。聖書ではアマレク人はユダヤ人の敵とされています。南アフリカはこの点も挙げ、イスラエルには集団殺害の意図があると主張しました。
オマル氏は本紙の取材に「ネタニヤフ氏の発言は、ガザで全ての人ぴとを殺害する義務を自覚するよう、イスラエル兵に与えた命令だ」と述べました。
イスラエルによる集団殺轡に反対し、即時停戦を求める行動が世界各国で取り組まれているなか、国連総会は昨年10月に「人道的休戦」、12月に「人道的停戦」を求める各決議をそれぞれ121,153カ国の賛成で採択しました。
オマル氏はICJの今回の命令を受け、国連総会決議に反対するイスラエルや来国などの孤立はさらに深まると指摘しました。
ジェノサイド条約 1948年、国運総会で採択された「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約」。46年の国連総会が世界大戦中に起きた大量虐殺が再び起きることがないよう宣言したことを受け成立。「国民的、人種的、民族的又は宗教的な集団の全部又は一部を破壊する意図をもって行なわれる」行為を処罰します。152カ国が加入・批准し、米国やイスラエルも締約国です。
ⅠCJ判断(要旨)
しんぶん赤旗 2024年1月28日
国際司法裁判所(ICJ)が26日示したガザ情勢に関する判断の「結論」(要旨)は次の通りです。
イスラエルはジェノサイド条約の義務に従い、ガザ地区のパレスチナ人に対し、その権限の及ぶあらゆる手段を行使して、同条約第2条の及ぶ範囲の以下の行為を防止しなけれぱならない。
▽集団構成員を殺すこと
▽集団構成員に対して重大な肉体的又は精神的な危害を加えること ▽全部又は一部に
肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すこと
▽集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること。
イスラエルはその権限の及ぶあらゆる手段を行使して、ガザ地区のパレスチナ人に対し、ジェノサイド(集団殺害)を実施するよう直接かつ公に扇動することを防止し、処罰しなければならない。
イスラエルは速やかに有効な手だてをとり、緊急に必要とされる基本的なサービスや人道支援を施し、ガザ地区のパレスチナ人が直面する生活条件の悪化に対処しなければならない。
イスラエルはさらに有効な手だてをとり、ジェノサイド条約第2条および第3条の及ぶ範囲の行為があったとの主張に関する証拠の破壊を防止し、保全しなければならない。
イスラエルはICJに対し、本命令の実施のためにとったすべての手だてについて1カ月以内に報告しなければならない。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。