2日、「オリンピックの報道だけでいいのか」と、関西地方の3団体がNHKに対して申し入れを行いました。
8月6日は広島原爆忌、9日は長崎原爆忌、15日は終戦記念日です。
太平洋戦争では日本は世界で最初の原爆の被曝国となり、そのことを含めて300万人の国民と国冨の4分の1を失いました。そして近隣諸国にも極めて多大なる惨禍を与えました。
この時期は、どこにその根源があったのかを振り返り、どうすればそれをくり返さずに済むのかを考える貴重なタイミングなのですが、NHKはここ数十年、この時期になると、連日朝から晩まで美談仕立ての高校野球を報じることに終始して来ました。加えて今年はロンドン・オリンピックです。
3団体の申し入れの要旨は下記のとおりです。
『今、国会内では、消費税増税法案や社会保障の削減、危険なオスプレイの配備問題や、原子力規制委員会の発足に伴う重要な国会同意人事案件などがあり、国会の外では、原発再稼働に対して、安保闘争以来と言われるほどの抗議行動が巻き起こっている。
どれ一つとっても、掘り下げた報道が求められているのに、NHKは、チラっとしか報道せず、ほとんど真剣に取り上げていない。NHKの番組編成はまるでオリンピック専門チャンネルのようである。
オリンピックに特化した番組編成をあらため、国民生活にかかわる重要問題を掘り下げた番組提供にして欲しい』
以下にその申入書を掲載します。
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2012年8月2日
NHK大阪放送局 局長 崎元利樹 様
NHK問題大阪連絡会 代表 河野安士
NHK問題京都連絡会 代表 倉本頼一
NHK問題を考える会(兵庫) 代表 貫名初子
オリンピック放送のあり方についての要望と懇談会開催の申入れ
一、オリンピック放送のあり方について
オリンピックが7月27日から8月12日まで開催され、NHKは初日の28日午前4時20分から24時間体制のオリンピック放送をしています。
しかしこの期間は国会開催中で、今後の国民生活にとって重大な問題が審議されている最中です。
これまでのオリンピックとは違う状況にあります。国会では、オリンピック前まで大きな批判がおきていた消費税増税法案や社会保障の削減など、重要法案が国民の目を避けるかのように8月8日ごろ参議院での強行採決が予定されていると伝えられています。
本来、これほどの大増税の中身と使い方について、NHKが正確に報道したなら、日本列島が騒然とするほどの大きな世論が起きる問題です。NHKはじめマスコミは、増税反対の方が圧倒的に多数なのにそれを反映した番組を作っていません。
また、危険なオスプレイの配備問題や、原子力規制委員会の発足に伴う重要な国会同意人事案件などもあり、国会の外では、原発再稼働に対して、安保闘争以来と言われるほどの抗議行動が巻き起こり、どれ一つとっても、掘り下げた報道が求められているのに、NHKは、チラとしか報道せず、ほとんど真剣に取り上げていません。NHKの番組編成はまるでオリンピック専門チャンネルのようです。
7月28日からこれまでのところ、国会で何が論議され、何が決まろうとしているか、一部国会中継がなされた以外は、国民には知らされていません。7月29日の「日曜討論」「NHKスペシャル」や「クローズアップ現代」など、通常の良心的な番組が削られています。定時のニュースも「ニュース&五輪」ということで、中身はお天気と全国ニュースがわずかで、圧倒的にオリンピックの繰り返し放送になっています。NHK総合に加え、8月1日はEテレでも並行してゴールデンタイムに1時間半もオリンピックにあてるなど、今回の報道は異常です。
このようなNHKの放送のあり方は、オリンピックの応援の熱狂をあおり、その陰で政治や社会問題から国民の関心をそらすという役割を果たしていると言わざるを得ません。
確かに4年に1度のスポーツ祭典は見どころがありますが、特集番組を組めばいいことで、その他の問題を一切、シャットアウトするべきではありません。国民はスポーツ情報だけが関心事ではありません。在宅時間が多い高齢者の中には、関心がなく、繰り返し同じことを見せられるため、ビデオ屋に行ってレンタルビデオを利用している人もいます。受信料を取って国民の公共放送を標榜するNHKが、これでいいのでしょうか。さらに、日本選手がほとんど出番を終えクライマックスが過ぎたオリンピックの後半は8月8日から高校野球の中継が始まります。国民生活の大きな問題が起きているこの時期にNHKはスポーツ番組にだけ力を入れてNHK総合の役割が果たせるのでしょうか。
<要望事項>
オリンピックに特化した番組編成をあらため、国民生活にかかわる重要問題を掘り下げた番組提供にしてください。
二、 視聴者団体への対応について
私たち関西の視聴者3団体は、これまで相当数の視聴者の声を代表して、NHKに大事な問題があるたびにその声を届けてきました。私たちはNHKが必要だと考えており、公正な放送と公共放送の充実を願ってのことでした。
私たち3団体と大阪放送局との懇談は、2008年7月12日の「経営委員と視聴者が語る会」での事件から始まりました。事件の経過は省きますが、そのやり取りの中で、私たちの真剣な思いが受け止められたと考え、その事件以後、NHK大阪放送局への信頼を基礎に、両者の緊張感を保ちながら、NHKへの激励とあわせ批判的な意見や要望を率直に伝えてきました。
しかるに、去る5月21日、数土経営委員長辞任後の経営委員会のあり方について、視聴者の意見を伝えようと、懇談を申し入れたところ、その対応はこれまでと全く違う、ぞんざいなものでした。
30分という時間制限は、緊急な申し入れでもあり、職員の皆様の多忙な職務に迷惑にならないよう遠慮したものでやむを得なかったと考えていますが、それに「乗じ」てか、人数の制限をしたうえで、「皆さんとは特別な関係ではない、他の視聴者と同じ扱いです」、とことさら私たちを忌避するような発言があり、数人しかはいれない入口の待合室で対応されたことは、真に理不尽、失礼千万なことと考えています。
しかも、申し入れについては、「東京のNHKに伝えます」の一点ばりで、硬直した対応でした。今回、大阪放送局が示されたこれらの態度は、これまで丁寧に懇談を重ねてきた私たちとの貴重な実績を水泡に帰すものと言わなければなりません。
今後もこのように視聴者を警戒する姿勢を続けられるのか、どうか、視聴者とNHKの関係についてどう考えておられるのか、きちんとお伺いしたいと考えています。私たちは、制作者側の局として視聴者の意見を胸襟を開いて友好的に聞くという姿勢を期待しています。それがあってこそ、視聴者に応えるより良い放送ができるのではないでしょうか。
つきましては、次回懇談会の日程を申し入れますのでご検討を頂きますようお願いいたします。
<懇談会の要望日程について>
9月4日 (火)午後、 9月7日 (金)午後、 9月14日(金)午後
9月21日(金)午後、 9月19日(水)午前
のいずれかで、1時間半程度
以上、上記番組への要望と懇談会の要望について、8月9日(木)までにご返事いただきますようお願いいたします。