2020年5月10日日曜日

10- [困窮する学生]を公的責任で学び支えよ(沖縄タイムスほか)

 新型コロナウイルスの影響で圧倒的多数の大学生困窮する中各大学はそれぞれに学生への支援を行っていますが、それだけでは不足でとても解決しません。
 学生の学びを助ける責任は国にあります(安倍政権は大学生の学費を無料にすると公約しなかったでしょうか)。
 教育は国家の根幹です。ここで有為な学生たちを挫折させることが将来の日本に与える被害は計り知れません。
 沖縄タイムス、時事通信ほかの記事を紹介します。
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社説[困窮する学生]公的責任で学び支えよ
沖縄タイムス 2020年5月9日
 「このままでは進学や在学が危ぶまれ、世代ごと未来を奪われる」
 新型コロナウイルスの影響で困窮する大学生が増える中、文部科学省を訪ねた学生団体の代表は、そう訴え、国の予算で学費を半額にするよう求める署名を提出した。「未来を奪われる」との言葉が胸を衝(つ)く。
 今、親の失業やアルバイト先の休業で学費が払えなくなり、学業継続への不安を訴える声があちこちから上がっている。
 学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」の調査によると、親の収入減などで退学を考えていると回答した学生は5人に1人に上る。約半数が自身のアルバイト収入が「減った」または「なくなった」と回答。とりわけ実家を離れて1人暮らしをする学生は家賃や光熱費負担が重く、打撃は深刻だ
 大学生の収入を支える3本柱は親からの仕送りとバイト代、奨学金。春休み中のバイトで前期の学費を捻出しようとしていた学生も多く、仕送りとバイト代が細る中、奨学金を借り続けることへの不安もつきまとう。
 生活が立ちゆかなくなった大学生らによる学費減額運動は全国に拡大している。 
 給付金や授業料納付の猶予といった独自支援に乗り出す大学があるとはいえ、学費減免には踏み込んでいない。少子化で財政事情が厳しい大学も多く、学校側の自助努力にも限界がある。
 求められるのは、学びの継続を支援する国主導の取り組みだ。
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 安倍晋三首相は緊急事態宣言延長を表明した4日の記者会見で、アルバイトが減り困窮する学生の支援に向け、追加経済対策をまとめると明言した。
 政府は当初、給付型奨学金や授業料納付猶予の活用などを呼び掛けていたが、アルバイト学生への支援を強く求める野党に歩み寄りを見せた形だ。
 立憲民主党などの野党会派は、授業料減免と一時金支給を柱とした学生支援法案を国会に提出する準備を進めている。
 貧困問題を深刻化させた2008年のリーマン・ショックを超える急激な景気悪化である。その影響は、困窮世帯に限らず中間所得層まで及び、将来に不安を抱く大学生が多い。
 具体的な制度設計を急ぎ、学費の減免を含む幅広い支援を求めたい
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 大学生同様、追い込まれている高校生がいることも忘れてはならない。
 県が16年に実施した高校生調査で、困窮世帯の生徒の半数近くがアルバイト経験があり、生活費や学校にかかる費用を自ら稼いでいた。
 このまま高校生活を続けられるか、1人悩んでいる生徒がいるのではないか。
 経済協力開発機構(OECD)加盟国で、日本の教育に関する公的支出の低さが指摘されてから何年もたつ。
 学生たちの苦境はこうした問題とも深く関係している。教育における公的責任が問われている


独自の学生支援策、100校超 一律給付、授業料返金
専門家「大学だけでは限界」
時事通信 2020年05月01日
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で困窮する学生のため、独自の経済支援策を講じる大学が4月30日時点で100校超に上ることが1日、時事通信の集計で分かった。オンライン授業の通信環境整備費や生活費補助、学費の一部返金など多岐に及ぶが、専門家は「大学だけの財源では限界がある」と、国の支援を訴えている。

 集計によると、オンライン授業に必要なパソコンやタブレット、通信環境などの整備費として全学生に一律で支援する大学が約70校に上る。金額は1万~5万円が多いが、中には10万円を一律で配る大学もある。
 独協大はオンライン授業の負担軽減策として、全学生約8600人に10万円を給付する。同大では5月から始まるオンライン授業に向けた調査で、4割の学生は通信環境が整っていないことが判明。迅速な対応が必要との判断から一律給付を決めた。
 広島大では、困窮する学生に3万円を給付。4月28日までに60人程度の申請があり、「当面の食べ物を確保してもらいたい」(同大担当者)として振り込みを始めた。原資は大学の基金を活用するが、不足分を補うため寄付を呼び掛けている。
 学費の一部返還を決めた大学もある。京都芸術大は、4~5月分の施設費の約8割を返金。同大担当者は「学内で創作活動に励む学生に影響が出ており、オンライン授業にも限界がある」と芸術大ならではの苦悩を明かす。
 早稲田大では、一律ではないものの生活苦の学生に10万円を給付。慶応大は通信機器を自前で準備できない学生へ1万5000円を補助する。
 一方で学費の減額に応じる大学は少ない。一律6万円給付を決めた芝浦工業大の担当者は「大学ではオンライン講義の環境整備などに注力しており、学費の一部も充当されている」と説明する。
 桜美林大小林雅之教授(高等教育論)は「特に私立大の収入源で授業料は大きなパイを占めている」と指摘。「比較的余裕のある大学とそうではない大学で、支援内容に格差が生じてしまう」として、予算措置などを通して国が大学を支援する必要性を強調した


「これ以上借金できない」コロナで困窮…学生たちを救え
西日本新聞  2020/5/9
 バイト先休業、親の収入減…就活も中断
 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、アルバイト先の休業や、親の収入減により大学生の生活が困窮している。やむなく退学を検討する学生が2割に及ぶという調査もあり、大学側に支援を求める署名運動が広がりをみせている。

 福岡大商学部4年の太田克成さん(22)=福岡市城南区=は8日、大学側に学費の減免や、パソコン室などの設備利用費の返還を求める約700人分の電子署名をメールで提出した。会員制交流サイト(SNS)を通じた署名呼び掛けに応じた学生らからは「お金がなくて勉強を諦める。考えただけで悲しくなる」との声も寄せられたという。

 「学生の声に耳を傾け、せめて話し合う機会をつくってほしい」と訴える太田さん自身、アルバイトができなくなり、生活のめどが立たなくなった。
 1人暮らしのアパートの家賃や生活費のため、親からの仕送り月2万円と、インターネットカフェでのバイト代月8万円を充ててきた。ところが緊急事態宣言でネットカフェも休業要請の対象となり、バイト先からは「しばらく休業する」と連絡が入った。急きょ別の仕事を探したものの、居酒屋や飲食店はどこも厳しく、新たなバイト先は見つからなかった
 福岡大は家計が急変した学生向けに複数の貸与型奨学金を紹介したが、太田さんは学費のため既に毎月6万円の奨学金を借りており「これ以上、借金を増やせない」。中高生のきょうだいが3人いるので家族に新たな経済負担はかけられない。4月中旬、岡山県の実家に戻らざるを得なくなり、就職活動も中断している。志望はITや広告関連の福岡市の企業。しかし企業説明会は次々と中止になり、採用そのものを取りやめる企業もある。内定は獲得できないまま。「予想もしなかった事態で将来は不安ばかり」とつぶやいた。

 西南学院大2年の米村大吾さん(19)=福岡県那珂川市=も学費減免を求め、オンラインの署名活動を始めた。4月28日の開始から、既に530人以上の署名が集まった。
 西南学院大は、家計に打撃を受けた学生、大学院生らを対象に上限6万円を給付する「緊急支援給付奨学金」を発表した。それでも、視界は晴れない。米村さんは「新型コロナの影響が長引けば6万円ではとても足りない。支援は1度だけなのか」と漏らした。

 学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」(東京)が実施したアンケートの中間集計(4月9~27日)では、回答した319校の大学生ら1200人のうち「バイト収入が減った」「ゼロになった」が合わせて約7割に上り、5人に1人が退学を検討していた。事務局を務める一橋大2年の木村和貴さんは「大学単独の支援では財源に限りがある。国が積極的に支援するべきだ」と話した。(山下真)


学生支援法案 週明けにも提出 田村政策委員長表明
しんぶん赤旗 2020年5月9日
 日本共産党の田村智子政策委員長は8日、国会内で記者会見し、学生が新型コロナウイルスにより学業でも生活でも深刻な影響を受けるもとで、週明けにも野党として学生支援法案を提出したいと表明しました。
 田村氏は、野党共同でオンラインなどで学生から意見を聞き、これらを反映した法案だと報告。すべての大学生、短大生、大学院生、専門学校生を対象に授業料を一律半額にして国が肩代わりするとともに、アルバイトの収入減がある場合、20万円を上限に給付金を出すことでまとめていると語りました。
 その上で、学生の実態アンケートで5人に1人が大学退学を検討していることを指摘し「“辞めなくていいよ”とするには、緊急に負担が大きい授業料を半額にするのは当然だというのが日本共産党の見解だ」と語りました。

 学費減額を求めて、207大学(5月1日時点)で学生の自主的な署名行動が取り組まれていることに言及。一方で、学生が大学キャンパスに立ち入ることができないとして、「本来の学びができていないときに、授業料を全額、学生に負担させるのか。オンラインなどで大学が頑張っていることも分かるが、本来の学びではない。大学の中に入って議論ができる、図書館が使えるなど、本来の学びができないときに国がどうするのかが問われる」と述べました。
 田村氏は、共産党として高学費問題の解決を提案してきたとして「非常に重すぎる学費負担、アルバイトをしなければ学生生活が成り立たないという事態も、これを契機に見直すことが必要だ」と強調しました。


学費半減、20万支給 野党の学生支援法案
時事通信 2020年05月07日
 立憲民主、国民民主両党などの野党共同会派は7日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済的に困窮する学生を支援する法案の概要をまとめた。学費の半額免除や一時金20万円の支給が柱。8日にも国会へ共同提出したい考えだ。

 同法案は、学費軽減に同意する国内の大学、大学院、専門学校などに通う全学生の授業料を、最大55万円程度を上限に半額免除。免除分は国が負担する。また、アルバイトができなくなった学生には、20万円を上限に減収分を支給する。
 対象期間は1年間で、財源規模は約1兆3000億円を見込む。社会人が支払う奨学金の返還を1年猶予することも盛り込んだ。