2023年5月3日水曜日

03- 同盟諸国を自滅させる米国(田中宇氏)

 国際ニュース解説者田中宇氏が掲題の記事を出しました。

 米国は広島G7サミットで対露経済封鎖と対中貿易制限等の徹底を決めたがっていますが、それで困窮するのはロシアや中国ではなく日本や欧州に他なりません。それは対露輸出を全面停止しても、ロシアは日欧から輸入できなくなった分を中国から買うようになるし、中国を経由した迂回輸入も可能だからで困ることはなく、日欧製品中国製品に置き換えられると特に打撃を受けるのは欧州の輸出産業です

 ロシア日欧に資源類を売らない報復措置をとれば、日本はサハリン天然ガス事業から追い出されエネルギー不足に陥ることになるなど、もはや日欧はこれ以上米国に追随して対露輸出全面停止することはできません。
 対露経済封鎖と対中貿易制限等の徹底はもう限界であり、逆に言えば米国の同盟諸国の自滅を加速するだけのことです
 それだけでなく米国側が持っている唯一の資産であるバブル化した債券金融システム(ドル覇権)は破裂寸前にあり、米国で起きている銀行危機いずれ拡大し巨大な金融破綻が起き、米国の覇権は崩壊し中露主導の非米側の台頭=覇権の多極化を引き起こします
 現時点では米国は辛うじて覇権国の位置に留まっていますが、無理強いはもう限界で先行きでの米国の凋落が見えています。
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同盟諸国を自滅させる米国
               田中宇の国際ニュース解説 2023年5月1日
米国が日欧などG7の同盟諸国に対し、ロシアと中国に対する超愚策で自滅的な経済制裁を強要し、間もなく開かれる広島G7サミットで決めたがっている。対露輸出の全面禁止と、半導体製造技術などハイテク分野での対中貿易制限を、米国はG7にやらせたい。 ウクライナ開戦後、G7諸国からロシアへの輸出は制裁開始で半減したが、まだ残っている。ロシア優勢の戦況を変えるため、輸出を全停止してロシアを困らせねばならないと米政府は言っている。 だが実のところ、対露輸出を全面停止して長期的に困るのはロシアでなく日欧の方だ。ロシアは日欧から輸入できなくなった分を中国から買うようになる。中国を経由した迂回輸入も可能だ。日欧製品は中国製品に置き換えられ、とくに欧州の輸出産業が打撃を受ける。 
Allies resist US plan to ban all G7 exports to Russia)(G7 ban on all exports to Russia ‘not doable’ - FT

日欧が輸出禁止をやると、ロシアは日欧に資源類を売らない報復措置をする。日本はサハリン天然ガス事業から追い出され、ガス供給が急減してエネルギー不足に陥る。 日欧は米国に、対露輸出の全面停止は実現できない、無理だからやめようと言っている。米国は、ロシアをのさばらせて良いのかと反論している。 米国は開戦後、同盟国を巻き込んだ対露制裁をしだいに強めている。だが、ロシアは制裁された分を中国など非米側との取引に置き換えて乗り越え、むしろ経済成長を強めている
 Russia's economy is recovering, even foreign forecasts favorable - Mishustin

米国は、もともとロシアとの取引が少ないので対露制裁で自滅しにくい。日本も、エネルギー以外の対露依存が前から少ない。問題は欧州だ。 欧州は冷戦後、ロシアとの経済関係を緊密化した。ロシアとの経済関係を本気で切ると、欧州の方が破綻する。対露制裁は欧州にとって、まさに自滅的な超愚策だ。 欧州は本気で対露制裁をやれない。そのため、米国側の対露制裁は抜け穴がいくつも残してある。たとえば、欧州はロシアから直接に石油ガスを買えないので、代わりにロシアがインドに売った石油や、ロシアが中国に売った天然ガスを転売してもらってなんとかしのいでいる。
Russian Oil Still Powering Europe’s Cars With Help of India

米国は、対露制裁の抜け穴を一つずつふさいでいこうとしている。今回は対露輸出が標的だ。印中経由の迂回輸入は今のところ制裁違反でないが、いずれこの抜け穴も米国によって違反の範疇に入れられる。 抜け穴をふさぐと、困るのはロシアや非米側でなく欧州など同盟諸国だ。ロシアから欧州への石油ガス輸出の迂回路になっている中国やインドの国営エネルギー産業は、転売で大儲けしている。その分、欧州人は高価な石油ガスを買わされ、インフレ激化と生活水準の悪化に苦しんでいる。 対露制裁は、非米諸国をボロ儲けさせている。インドは喜んで中露との関係を改善し、対露制裁が非米側の結束を強化している。まさに超愚策だ。 China Reselling Europe Russian LNG

ゼレンスキーは、和平を仲裁する中国との関係を緊密化している。和平が早く進めば、米国側の対露制裁も必要なくなり、欧州は自滅せずにすむ。だが米国は、ロシアを絶対に許すべきでないと言ってこの流れに抵抗しており、今後もずっと対露敵視と制裁強化を続けたがっている。 米傀儡だったゼレンスキーが中露の側に転向して和平する可能性もあるが、米傀儡からの足抜けは簡単でない。米国側の武器弾薬が減っても戦争状態は続けられる。和平にならず戦争状態と対露制裁が続くほど、欧州など同盟諸国の自滅と凋落がひどくなる
West no longer hiding who is behind planning of Kiev's counteroffensive

米国は同盟諸国に対し、ロシアだけでなく中国への敵視と経済制裁の加速も強要している。同盟諸国は、中国との経済関係も自滅的に切らされていく。ロシアとの関係断絶は欧州が特に困るが、中国との断絶は日本や豪州が困る。 米国自身も、ロシアよりも中国との経済関係が緊密で、米国も中国との断絶は困難で自滅的だ。米国の財界は対中制裁・米中分離に反対しているが、バイデンの米政府は中国との断絶を強める傾向だ。
 (The dollar falls behind the yuan for the first time in Chinese cross-border transactions

ロシアも中国も、米国側との断絶は長期的にマイナスでなくプラスだ。世界の資源類の大半は、中露が率いる非米側が持っている。 米国側が中露を敵視制裁するほど、好戦的な米国側が世界的に嫌われ、足抜け不能で米国側にとどまらざるを得ない先進諸国(同盟諸国)をのぞく世界の諸国の多くが中露主導の非米側に結束していく。 The US is humiliating Germany, and Russians are deeply disappointed at the spinelessness of Berlin’s elites

米国側が持っている資産は、膨張して破裂寸前のバブル化した債券金融システム(ドル覇権)だけだ。すでに米国で起きている銀行危機がいずれ再発し、巨大な金融破綻・ドル崩壊が起きる。 大金持ちだったはずの米国がしぼんでいく。世界の中心が、米国から非米側とくに中国に移っていく。この転換がこれから何年かけて起きるか不明だが、転換はもう不可避であり、確実に起きる。 米国が欧日を傀儡化して強行している中露との敵対・断絶は、米国覇権や先進国支配の崩壊と、中露主導の非米側の台頭、覇権の多極化を引きおこす(中国は単独覇権体制でなくBRICSが立ち並ぶ多極型の体制を好む)。
De-Dollarization Kicks Into High Gear

覇権を自滅させている米国は大馬鹿に見える。米国の上層部が、本気で中露を潰そうと考えて自滅策をやってきたのなら大馬鹿だ。しかし、米国はこの策を30年前からずっと続けている。 冷戦後、イスラムから中露までのすべての脅威(=非米側全体)を潰す策として最初に提案されたサミュエル・ハンチントンの論文「文明の衝突」が出たのは1993年だ。あれから30年、米国が志向する戦略はおおむね文明の衝突に沿っている。大失敗を繰り返しつつ続けている。 米国は、覇権が自滅するのもかまわずに、中露など非米側を敵視・制裁し続けている。覇権の自滅は、ハンチントン以来の米国の「隠れた基本戦略」なのだ。

最終的に、中露もサウジもイランも潰されない。中露サウジイランは結束し、米国側なしで世界を運営していける多極型の新世界秩序を作っている。 文明の衝突は結局のところ、米国側の自滅と、米国が敵視した諸国による世界支配を生んでいる。しかも、これは「失敗」でない。米中枢にとって当初から予測された戦略遂行の結果である。 文明の衝突やネオコン、政権転覆、民主化強要、ドルを使った経済制裁など、冷戦後の米国の世界戦略の根幹にあるのは、結局のところ、明言せずに米覇権の自滅と多極化を実現する「隠れ多極主義」である。

なぜ米国は隠れ多極主義を採ったのか。自滅を望む国家などありえない。それに、中国やロシアは悪い国だろ。中露主導の多極型世界は極悪な世界だよ。そんなの米国がやりたがるはずがない。米国はふつうに失敗しただけだ。隠れ多極主義という立て方自体がお前の妄想だよ、と言われてきた。 私はそう思わない。多極型の世界は、米国が大戦後に覇権を英国から譲渡された時に国連P5などで具現化しようとした世界体制だ。これは自滅でなく覇権体制の作り替えである。 終戦直後の多極型の世界が長期に実現していたら、中露(中ソ)など非米側の高度成長が1950-60年代から具現化していたはずだ。米覇権の運営を牛耳った軍産英複合体は、それが起きないよう冷戦を起こして多極型を破壊し、非米側の経済成長を妨害して米単独覇権を維持した。

これは世界経済の成長を阻害するので1980年代に冷戦終了が容認されたが、その替わりに米覇権維持策として金融の債券化による米国側の経済(バブル)膨張の体制が作られ、米国側は金融の大膨張で覇権を維持した。 加えて、これから台頭してきそうな非米諸国を妨害するために「民主主義や(でっち上げの地球温暖化など)環境対策をやらない国は経済制裁・政権転覆するぞ」という、ハンチントンやネオコンやIPCCの戦略が用意された。 しかしこれらの策はいずれも過激に稚拙に展開されたので米覇権を自滅させ、非米側が結束して米覇権に替わる多極型の世界を作る流れを生み出した。 米国は「ふつうに失敗」したのでなく、隠れた戦略を進めるために意図的に失敗した。失敗を装うことで、バレずに多極化を進められた。

米国の隠れ多極派は、米国自身より先に欧日の同盟諸国を先に自滅に追い込んでいる。なぜなのか。その理由は、米国が自滅を試みると、対米従属の方が居心地が良い同盟諸国が勝手に米国を助け、米国は自滅させてもらえないからだ。 ニクソンが金ドル交換停止でドル覇権をいったん自滅させたら、そのあと日独の同盟諸国が為替介入してドルを救うG5の体制が作られてしまったのが好例だ。米国は今回、欧日が音を上げて対米自立するか、もしくは潰れるまで自滅策を続けるだろう。

中国やロシアが悪い国だという善悪観自体、英軍産マスコミに延々と洗脳されてきた米国側の人々に植え付けられた妄想である。米国は冷戦後、イラクやアフガンやシリアやイエメンや旧ユーゴなどの無数の戦争で数百万人を殺してきた。 ウクライナ戦争も起こしたのは米国だ。ロシアは被害者だ。この間、中露はほとんど殺していない。ウイグル人やチベット人は差別弾圧されてきたが、大量殺害されていない。 多極型の世界は大国間の勢力を均衡させて維持するので戦争にならない。多極化すると覇権争いで戦争になるという話は軍産マスコミによるウソだ。中露よりも、米国側で洗脳されたまま軽信している人々の方が「悪い」。

金融バブルは必ず崩壊する。米経済は素晴らしい、というのも植え付けられた妄想だ。今後の非米側は実体経済の成長が中心だから、バブル依存の米国側よりも健全だ。 多極化は、世界経済の健全化でもある。金融主導の経済は貧富格差を広げる。米覇権が続く限り最貧国の発展が阻止され続ける。多極化すると、世界中の貧困層の生活が改善する。人類は早く多極化した方が良い
China Is Quickly Becoming One Of The Largest Automobile Exporters In The World

もう一つ気になるのは、日欧の同盟諸国は、どんなに自滅させられても米覇権とかG7という「監獄」から出ていけないのか、という点だ。 フランスのマクロンは中国に行って「欧州は米国の傀儡から脱せねばならない」と表明した。私はマクロンを評価する記事を書いた。 しかし、米覇権を否定してみせたマクロンの一連の発言は、負け組に入っている欧州が、勝ち組である中国など非米側と付き合わせてもらって利益を分けてもらうために、習近平からうながされて行った「演技」だった可能性が高い。発言だけで何の動きもないので、私はそう思うようになった。
 欧州を多極型世界の極の一つにする) (Here’s why Macron’s call to break away from US control is just meaningless posturing

マクロンが訪中した4月初め、BRICSなど非米諸国の首脳が相次いで米覇権を否定する発言を行った。BRICSで申し合わせて発言し、米覇権を崩壊に近づけようとした感じだ。 そこにちょうど訪中してきたマクロンからいろいろ頼まれた習近平が「頼みごとを聞いてあげるから、BRICSみたいに米覇権を否定する発言をいくつか放ってよ」とうながしたのでないか。 日本では人々が「米傀儡からの離脱は(望ましいけど)無理だ」と感じている。そう洗脳されているともいえるが、戦後の先進諸国の中で対米従属をやめた国が一つもないのも事実だ。 米国は、諜報やプロパガンダの力を駆使して対米自立を試みる従属国を妨害する。従わない指導者にスキャンダルをぶつけて失脚させる。田中角栄が一例だ。
Macron’s Push for Ukraine and Taiwan Peace: Genuine Attempt to Escape US Vassalage or PR Stunt?

フランスではマクロンよりもルペンの方が高い支持率になっている。今の自滅傾向が続くと、米傀儡のエリート層が失脚するか、エリート自身が非米化を模索するようになる。 しかし、事態はそんなに甘くない。すでにイタリアでは、マスコミが極右と呼ぶ勢力、つまり米傀儡でない勢力が政権に就いているが、対米自立の動きはまだほとんどない。国内とEU・NATO内の力関係でがんじがらめにされて動けない。 フランスでルペンが首相になったとしても、すぐに転換することはない。しかし、欧州内で政権交代が進むほど、欧州全体として対米自立するための政治力がついていく。ウクライナ戦争の構図が長引くほど、欧州は対露制裁で自滅して人々の生活水準の悪化が加速し、対米自立が模索されていく
 After Being First G-7 Belt & Road Signatory, Italy Under Meloni Mulls Pullout

日本は、そういった市井からの民主的な政治転換が望めない。政権交代もない。左翼系の野党は、コロナや温暖化や中露敵視などに関して超愚策を軽信する大間抜けで、彼らが政権に就くと日本はもっと潰れるが、幸いなことに国民に支持されていない。 日本ではその代わり自民党内で、何とかうまく対米従属から抜けようとする動きが続く。米諜報界に殺された安倍晋三が作った道だ(安倍殺害は、諜報界が大統領の許可なく勝手にやった点でノルド・ストリーム爆破と同じ構図だ)。 とりあえず、G7の決定事項や米国からの要請を、表向き了承しつつ、実際は遵守しないことが重要だ。
Total Ban On G7 Exports To Russia "Simply Not Doable" - Japan, EU Officials Say

加えて興味があるのは、英国と豪州カナダNZ(実はいまだに英国の一部な3カ国)のアングロサクソン・英国系がどうするのかだ。英国系はこれまで米国の覇権自滅策に表立って反対せず、その代わりG7やNATOなど同盟諸国内の議論の中で米国の自滅策や過激策の度合いを減らすよう誘導することで、米覇権を延命しようとしてきた。 だが、英国系による自滅緩和策は、米国の権力中枢にいるネオコンなど過激に稚拙にやりたがる勢力(隠れ多極派)によって上書きや妨害されて失敗し、米覇権の自滅が進んできた。 最近は、中露・非米側の結束と台頭もあって米覇権の延命策が完全に無効になり、米覇権の自滅と多極化が不可避になっている。英国系としても、米国と一緒にいるのをやめて非米側に転向しないと危ない状態になっている。
Bank of England tells Britons to accept they are poorer

英国系の対米自立。そんな動きは、理論的にあり得るが、実際には全く起きていない。少なくとも全く見えてこない。むしろ、英諜報界が完全に米諜報界に握られ、英国の対米自立への道が完全にふさがれている観が強い。 米英の諜報界は戦後ずっと一体で、かつては英国が米覇権運営を牛耳ったが、今は逆方向の牛耳りになっている。英国が非米側に入り込んで潰し策をやらぬよう、米の多極派が英国を無力化し、非米諸国を守っているわけだ。

2023年5月1日月曜日

天下の悪法が次々成立 メディアが腐っているから止まらない岸田暴政

 日刊ゲンダイが掲題の記事を出しました。
 岸田政権は統一地方選が終わった途端、問題法案を次々と衆院委員会や本会議に諮り可決させています。例えば
 27衆院マイナンバー法改正案保険証を廃止しマイナンバーカードに一体化
     可決。
 27衆院でGX脱炭素電源法案原発の60年超運転可能他原発回帰)可決。
 28日、衆院法務委で入管難民法改正案(難民認定3回却下で強制送還・監理措置導入)
     可決、
という具合です。いぜれも自公と維新、国民が賛成しています。
 他にも地方選前半の7日には防衛産業強化法案(軍需産業助成基金法)を衆院に上程しました。また25日には防衛装備品の輸出ルールを定めた制限緩和するための自公の実務者協議を開始しました。これは要するに「殺傷力のある兵器」の輸出を解禁しようとするもので、憲法9条の精神を実質的に壊すものに他なりません。
 ここまであからさまに「兵器商売」を目指すのであれば、そもそも「防衛装備(品)」などという珍語を使うのは止めるべきでしょう。
 国会すでに「自公維国」で衆院、参院とも7割を超す議席を占めているので、ひとたび法案を閣議決定すれば何でも通ってしまいます。それにしてもその「絶対多数勢力」が一致して憲法9条を事実上廃棄して「軍事大国化」を求めるのであれば、まさに「戦前への回帰」そのものです。
 安倍・菅政権下ではそれでも多少はためらいながら進めるという面がありましたが、岸田首相になってからは委細構わず「大軍拡」に猛進しています。それが国会で多数の「右翼勢力」を擁した岸田政権が行っていることです。
 勿論こういう勢力図になったのは一朝一夕にではなく 安倍政権以降数回の選挙を通じてでしたが、その背景には安倍政権以降、政権を批判しなくなったメディアの変貌があります。
 日本がかつて歩み、結果的に主要な都市を焼け跡にして310万人の死者を出しただけでなく、アジアにおいては2千万人超もの死者を出した上に米軍に占領されたという悲劇の道を、再び歩もうとするのが本当に民意なのでしょうか。それは本当にメディアが望んだものなのでしょうか。

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あれよあれよで天下の悪法が次々成立 メディアが腐っているから止まらない岸田暴政
                         日刊ゲンダイ 2023/04/ 29
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 毎度のことだが、選挙が終わればやりたい放題ということか。統一地方選が終わった途端、国民生活や日本社会に大きな影響を与える法案が次々と衆院で可決されている。
 28日、衆院法務委員会では、怒号が飛び交う中、外国人の収容や送還ルールを見直す入管難民法改正案の採決が行われ、与党と一部野党の賛成多数で可決した。
 入管法改正案は2年前にも国会に提出されたが、廃案になったシロモノだ。背景には、名古屋の入管施設でスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなったことなどを受けて日本の入管行政への批判が高まったことがある。改正案は長期収容の解消を名目に、内戦や差別から逃れて来た難民申請者の強制送還を進めるようなものだったこともあり、反対デモも頻発。当時の政府は入管法の“改悪”を断念せざるを得なかった。
 ところが、その改正案の大枠が踏襲されたまま、今国会に再提出され、遺族側や支援者の深刻な懸念をよそに成立に向けて着々なのだ。
 もちろん、よほどの世論の後押しがあれば別だが、数の力で圧倒的に劣る今の野党が廃案に追い込むことは難しい。窮余の策で修正協議が進んでいた。
 立憲民主党は難民認定のための「第三者機関の設置」を求め、与党側は設置の「検討」を法案の付則に書き込むと譲歩。修正案でまとまりかけたのだが、土壇場で立憲は法案そのものに反対することを決めた。そのため与党側は立憲に譲歩した部分を削除し、ほぼ原案通りの法案が自公と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決されたのである。大型連休明けには衆院本会議で可決、参院に送られる運びだ。
 「議論が深まらないまま、野党も巻き込んだ数の力で押し切ってしまう。本来は、外国人の技能実習制度を今後どう見直すのか、移民政策はどうするのかといった課題と合わせて総合的に考え、議論する必要があるテーマのはずです。入管法の改正だけを急いでやる必要があるのか。入管法に関しては、2年前と比べて世論の関心が低かったことも法改正を急ぐ与党側にはプラスに働いた。大メディアが法案の問題点をまるで報じようとしないからです」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

「自公維国」の4党が賛成でどんな法案も通ってしまう
 入管法だけではない。23日に統一地方選の後半戦と衆参5補選を終えてからというもの、この1週間で重要法案が続々と仕上げに入り、怒涛の勢いで成立に向けて突き進んでいる
 25日に衆院の特別委員会で、保険証を廃止してマイナンバーカードに一体化する「マイナンバー法改正案」が可決。26日には衆院経産委で、60年を超える原発の運転延長を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が可決。どちらも、自公と維新、国民が賛成した。入管法改正案と同じ枠組みだ。
 これら2法案は27日の衆院本会議で可決され、衆院を通過。今国会中の成立が確実視されている。
 だが、マイナンバー法案ひとつ取っても問題は山積だ。マイナンバーカードの取得は「任意」と政府は言いながら、保険証を廃止して「マイナ保険証」に一本化するなんて、実質的な強制ではないか。
 だったらいっそ取得を義務化して全国民にマイナカードを配ればいいのに、あくまで「任意」の建前を崩さないのは、個人情報流出などのトラブルが起きた際に国が責任を負いたくないからだろう。申請は任意だから、何か起きても自己責任という理屈だ。
「マイナンバーカードがなければ病院にもかかれない状態に国民を追い込んでおいて、任意を強調するのは詭弁というほかない。原発60年稼働にしても、総論では反対しにくい脱炭素の束ね法案に紛れ込ませるという姑息なやり方です。このような悪法が、まともな審議もないまま続々と可決されていく。ひとたび閣議決定すれば、自公維国の4党が法案に賛成して何でも通ってしまうのだから、統一地方選で維新が躍進したところで、岸田政権には痛くもなんともないということです。むしろ、国会審議から逃げてのらりくらりゴマカしさえすれば、維国の賛成で苦労なく法案成立できるようになったと喜んでいるんじゃないですか」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

強行採決よりタチが悪い令和の大政翼賛を許すメディア
 第2次安倍政権でも、数の力を頼んだ強行採決が繰り返され、民主主義の冒涜だと批判を浴びたものだ。国会の現状は、その当時よりも危うい。与党が通したい法案に維新と国民が乗ってくれるのだから、少なくとも2つの野党が賛成した形になる。強行採決する必要もないのだ。
 大メディアは「法案が成立しました」と伝えるだけで、途中経過も問題点も報じないから、賛成多数で成立した悪法に反対する立憲や共産党がまるでダダをこねているように見えてしまう
 どう考えてもおかしな法案に反対したところで、大メディアは「一部野党が反発」という常套句で報じるようになって久しい。これは政府・与党目線の表現だ。大メディアがこういう呆けた報道をしていると、それを目にする有権者も、反対する野党には理がないかのように感化されていくわけだ。「是々非々」とか言う維新と国民が正しい野党だと思わされる。その結果が、統一地方選での維新の躍進である。

 国会の会派別勢力を見ると、すでに「自公維国」で衆院、参院とも7割を超す議席を擁している。この4党で何でも通せる状況なのだ。次期国政選挙では、維新がさらに議席を増やし、野党第1党に躍り出るという観測もある。令和の大政翼賛体制である。25日から、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の制限緩和を巡る自公の実務者協議が始まった。国会では、防衛産業の生産基盤強化法案も審議入りしている。この調子では軍拡も、そのための国民負担も4党の合意であっさり決まってしまいそうだ。
「立憲は入管法でもGX法でも迷走し、維新に主導権を奪われてしまった。反対なら反対と、最初から覚悟を決めて対決すべきでした。協力体制を築けないかと維新に色目を使っている場合ではなかったのです。野党第1党の立憲がフラフラしているから、岸田自民がやりたいことを維新が煽り、国民がたきつけ、立憲と共産を蚊帳の外に置いて悦に入る国会になっている。数の力で押し切る暴政が加速しています。そのうえメディアが腐敗しきっている状況ですから、国民も真実を見抜く目を培う必要がある。このままでは、国民が事情をよく分からないうちに既成事実がつくり上げられ、戦争国家に一直線ということにもなりかねません」(五十嵐仁氏=前出) 
 国民の玉木代表は「憲法と安全保障、エネルギー政策では、われわれにもっとも近い政党だ」と、維新との連携に意欲マンマンだ。

 自公維国の枠組みが完成すれば、改憲も時間の問題だろう。止まらない岸田暴政を放置している大マスコミの機能停止は度し難い。

改悪入管法が衆院法務委員会で採決!〜あきらめない、闘いは参議院へ

 入管法改悪案が28日の衆院法務委員会で、自民、公明、維新、国民の賛成多数で修正のうえ可決されました。入管法改悪案の概要は
 4月27日)入管法改定案 戦前から続く非人道的な制度を廃案にし国際基準での改正を

等で紹介した通りです。
 共産党と立民は反対しました。
 共産党の本村伸子議員は反対討論で、同改悪案は21年に廃案となった法案とほぼ同じ内容で、「壮絶な不安を抱える方々の悲鳴の声を聴こうとしない政府の姿勢は絶対に許すことはできない」「認定申請中でも本国への送還を可能とするのはあまりにも理不尽だ」と批判し、4党修正案は人権侵害の根本問題を棚上げしており「実効性はまったくない」と強調しました。しんぶん赤旗が報じました。
 併せてレイバーネット日本の記事「改悪入管法が衆院法務委員会で採決!〜あきらめない、闘いは参議院へ」を紹介します。
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自公維国が可決 入管法改悪案強行に抗議
人権尊重の制度に見直せ 衆院委 本村議員が反対討論
                      しんぶん赤旗 2023年4月29日
 日本で暮らす移民や難民の命をさらに危うくする入管法改悪案が28日の衆院法務委員会で、自民、公明、維新、国民の賛成多数で修正のうえ可決されました。日本共産党と立民は反対しました。本村議員の反対討論要旨

 日本共産党の本村伸子議員は反対討論で、同改悪案は2021年に廃案となった法案とほぼ同じ内容で、「壮絶な不安を抱える方々の悲鳴の声を聴こうとしない政府の姿勢は絶対に許すことはできない「本法案を撤回し、国際人権基準にそった人権尊重の制度に徹底的に見直すことを強く求める」と訴えました。
 本村氏はさらに、何回難民申請しても「難民」と認められないのに、認定申請中でも本国への送還を可能とするのは「あまりにも理不尽だ」と批判。親族や支援者に罰則付きで監視させる「監理措置制度」が適用されない限り、常に収容が優先する原則収容主義も維持され、収容にあたっての司法審査も収容期間の上限もないと指摘しました。
 自民、公明、維新、国民の4党が提案した修正案は、難民認定の申請者の聴取にあたって配慮義務などを加えただけで、難民の命を危険にさらす改悪案の中身は何ら変えるものになっていません。立民は当初、修正協議に加わり「第三者機関の設置を検討すること」を付則に盛り込むなどの修正で調整していましたが、最終的に「検討する」では不十分だとして反対しました。
 本村氏は、4党修正案は人権侵害の根本問題を棚上げしており、「実効性はまったくない」と強調しました。


改悪入管法が衆院法務委員会で採決!〜あきらめない、闘いは参議院へ
                   レイバーネット日本  2023-04-29
松本浩美
 4月28日、11時から議員会館前でのシットイン(移住連などが主催)に参加した。4月13日に審議入りし、26日が法務委員会の採決と言われたが流れ、危ないと言われたのが28日。いよいよ法務委員会での採決と言われたのがこの日だ。到着すると、すでにたくさんの人であふれている。50人は超えていただろう。



*採決の直後に抗議のコールが上がった


 ⇒ 動画(8分)



 11時45分。安田菜津紀さん(フォトジャーナリスト)、鎌田さゆり議員(立憲民主・衆院法務委員)、三木恵美子弁護士、渡邊さゆり牧師(アトゥトゥミャンマー支援)、師岡康子弁護士、高畠修さん(川崎市で反ヘイトスピーチ活動)、金井真紀さん(文筆家・イラストレーター)、高谷幸さん(移民研究者)、児玉晃一弁護士、アフシンさん(当事者。難民認定されず30年近く非正規滞在者として過ごす)などがスピーチを行い、反対を訴えた。

●午後2時過ぎ採決。法務委員長の職権で強行
 午後1時過ぎ、法務委員会で質疑開始。初夏を思わせる陽気の中、さわやかな風が吹き抜ける。隣の参院会館前には、謎のノーマスク集団。耳障りな言葉ががなり立てられる中、スピーカー越しにインターネット中継を聴く。
 寺田学議員(立憲民主・秋田1区)が「入管庁のやり方に反対ばかりしていてはダメ」などと耳を疑うような発言を繰り返す。続く沢田良議員(維新・埼玉15区)の「入管庁の職員は粉骨砕身でがんばっている」(要旨)という発言にたまりかねた移住連の鳥井一平さんがマイクを握り抗議する。
「仮放免者を助けてきたのは地域に住む市民です。寄付を集めたり、子どもたちのために服や学習教材を用意したり、市民が助けてきたんです。入管じゃありません。議員の皆さん、もっと勉強してください! きちんと現実を見てください!」
 最後に反対の立場で共産党の本村伸子議員が質問に立つ。「そもそも法案審議において、参考人質疑で当事者、家族、弁護士、支援者の声が反映されていません。そのこと自体が当事者を置き去りにしています。参考人として弁護士、支援団体の声を聴くべき」と力強く訴える。
 終了予定の1時間が近づいてきた。人々が集まってくる(200~300人程度か?)。「採決反対!」「採決やめろ!」のコールが湧き上がる。スピーカーの近くで耳をそばだてながら中継を聞いていた人も、立ち上がる。中には国会議事堂に向かって「やめろーっ!」と叫ぶ人も。鳥井さんもマイクを握り「入管法改悪反対!」。午後2時過ぎ、採決。意外なほどあっけない瞬間だった。
 本村伸子議員が駆けつけてあいさつ。「そもそも難民認定の狭すぎる問題を解決しないで、第三者審査機関をつくらずに採決を強行するのは絶対に許すわけにはいきません!」。
 鎌田さゆり議員(立憲民主党)は泣きながら、「ごめんなさい」と謝った。「理事会で、絶対に採決すべきでないと訴えました。参考人質疑も足りない。立法事実もそろっていない。しかし、委員長の職権で採決に至りました!」
 鎌田議員の話を聞くうちに、涙が出てきた。悔しい。周囲の人たちも泣いている。なお、今回の蛮行を行った法務委員長は伊藤忠彦議員(自民・愛知8区)である。

●闘いは参議院へ
 鎌田議員は続ける。「法案が参議院へ行ったら、2年前につくった野党の対案を提出します。今回の政府案との違い、国際的に人の命を大切にしているのかを明らかにします」。
 最後に鳥井さんが行動提起とともにスピーチした。「入管法改悪反対の動きは全国各地で広まっている。すでに始まっている多民族多文化共生社会。国籍も在留資格も投票権も関係なく、誰一人として取り残されることのない社会をつくっていきましょう!」。
 国会前シットインはこれからも続く予定。ぜひともご参加を。入管法改悪NO!
*予定は移住連HPなどで確認してください(https://migrants.jp/index.html
↓法務委員会を傍聴したウィシュマさん遺族と指宿昭一弁護士が囲み取材に応じていた。

↓4/26のレイバーネットTVでは入管問題を特集した。
 放送アーカイブ

停戦を睨んで準備を始めたゼレンスキー 中ウ首脳会談の意味(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が26習近平とゼレンスキーの電話首脳会談があったことについて、「日本の専門家とマスコミは口を揃えて意義を過小評価しているが、この会談はウクライナの方から中国に持ちかけたもので、会談後のゼレンスキーの発言も中国の役割に対して期待感を表明する積極的な内容になっている」と評価しました

 東野篤子氏などの常連のコメンテイター達が従来の見方の延長で軽視しているのとは対照的です。
 中国「出たとこ勝負」のアドリブの首脳外交はやらず、必ず事前に「結果」を詰め会談後に発表する声明入念に調整し合意内容を固めた上で会談本番に臨むので、双方のウインウインが果たされた外交だったとも述べました
 ゼレンスキー内心では中国への期待持っていることは、3月にも垣間見られたことで、客観的に見てロシアとウクライナの間に入って調停役実力と立場を持っている国は中国しかなく、ウクライナとしてもロシアに影響力を持つ中国を頼りにせざるを得ない現実があるとして、3月時点でゼレンスキーは習近平を袖にしたが、その後状況が変わり、中国の役割を積極的に認める方針になったのだろうとしています。そして今回はカービー米報道官が首脳会談を歓迎するコメントを発しているのでアメリカの態度も変わったと見ています
 なぜゼレンスキーわったのかについては、「これからウクライナは反転攻勢の大きな作戦に出るが、それが成功すればそのときロシアを停戦協議の場に連れ出しプーチンに全占領地からの撤退の決断をさせるためには、仲介役として中国の力が必要であるし、逆にこの反転攻勢が失敗しウクライナ軍に継戦続行する余力がなくなったときも、やはり中国に間に入ってもらいたいからだ」と見ています
 いずれにしてもウクライナ軍の反転攻勢のあとは、その結果如何にかかわらず中国と国連を調停者にした一刻も早い停戦実現を希望すると、世に倦む日々氏は述べています。

 因みに、両者の電話会談があった26日は、16~19中国国防相のロシア訪問の1週間後で、米国は中国国防相の訪露中「ウクライナ紛争で中国がロシアに致死的な軍事援助を提供する準備をしていると繰り返し主張していました。もしもそうなればウクライナ戦争の帰趨は明白です。

 記事紹介の前書きは以上で尽きているのですが、敢えて蛇足を加えるとウクライナ戦争について国際ニュース解説者の田中宇氏は26日付の記事「決着ついたウクライナ戦争。今後どうなる?」で、ロシアが既に勝ったと見ていて、その後はウクライナは西部だけが残り、米国と西欧の崩壊が顕在化し、東欧は非米側に転じ、NATOが解体すると見ています。
 また「耕助のブログ」No. 1773 ウクライナの終焉を告げるリーク情報 によれば、例のリークされた秘密文書では、「米国はウクライナが行う反攻が大きな利益をもたらす可能性について疑問を持ってて「主流メディアがウクライナについて戦争に勝っており最終的な勝利につながる攻撃を開始する態勢にある、と報道してきたことは基本的に嘘のかたまりであったことを認めている」となっています。米国は大慌てで「公開された文書には虚偽の内容が含まれている」としているので、その分を差し引いて考えなくてはいけないのかも知れませんが・・・。

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停戦を睨んで準備を始めたゼレンスキー - 中ウ首脳会談の意味
                         世に倦む日日 2023年4月29日
4月26日、習近平とゼレンスキーの電話首脳会談があった。この会談について、日本の専門家とマスコミは口を揃えて意義を過小評価するコメントを並べている。山添博史は「中国がウクライナの呼びかけにしぶしぶ応じた」と言い、東野篤子は「(中国が何を考えているのかウクライナ側が)見極め(ただけ)」だと述べた。27日の報道1930の堤伸輔も右に同じ。が、これらのコメントは会談の真実を捻じ曲げたプロパガンダの言説であり、正確な解説とは言えない。今回の会談はゼレンスキーの側から申し込んでいる。ここに注目する必要がある。ウクライナの方から中国に会談を持ちかけて実現したものだ。ウクライナが会談を要請し、中国が応じて開催に至った。だから、会談後のゼレンスキーの発言も中国の役割に対して期待感を表明する積極的な内容になっている

中国は国際舞台で巨大な影響力を発揮している」「中国が平和の回復のために外交的な手段を通じて危機の解決に重要な役割を発揮することを歓迎する」と言っている。中国の場合、日本と同じで「出たとこ勝負」のアドリブの首脳外交はやらない。必ず事前に「結果」を詰めた上で行う。つまり、会談後に発表するステイトメントを入念に調整し、合意内容を固めた上で会談本番に臨む。これらのゼレンスキーの発言内容は、事前に中ウ間で詰められたもので、ウクライナが発表を合意したものだ。こうしたゼレンスキーの言葉が並ぶ「結果」でなければ、すなわち中国にとって「成功」の会談でなければ、中国は首脳会談に応じなかっただろう。したがって、事実は山添博史が言う「中国がしぶしぶ応じた」ものではなく、双方の WinWin が果たされた外交だった。

東野篤子の言うように、ウクライナは中国の調停の中身を探っただけという見方も当を得てない。中国側にはそれほど新規で具体的な停戦案はなく、その準備もなかった。抽象的な和平案である点は前回の3月の訪露のときと同じだ。ステイタスは変わっていない。今回の電話会談はウクライナの方が頼み込んだものであり、中国側からの呼びかけではない。中身は変わってないのに、今回はウクライナの方から会談を求めている。前回は、会談を呼びかけたのは中国の方だった。ウクライナの方が態度が変わったのであり、この点を看過すべきではない。前回、中国側が会談を持ちかけたとき、ゼレンスキーは、中国がロシアの侵略戦争を非難することが先決だとか、まず完全撤退せよと言えとか、会談したいのなら習近平がキエフに来いと高飛車に出て、事実上、持ちかけられた首脳会談を蹴っていた。アメリカからの指示に従ったのだろう。

ゼレンスキーとウクライナ政府そのものは、内心では中国に期待する意向を持っていて、2月3月のときもその気配が見え隠れしていた。客観的に見て、戦争するロシアとウクライナの間に入って調停役ができるのは、その実力と立場を持っている国は中国しかない。ウクライナにとっても中国は頼りになる国であり、ロシアに影響力を持つ中国を頼りにせざるを得ない現実がある。実際にロシアと停戦協議を始めて、合意を実効あらしめるものにするには、中国を仲介者にするのが最も合理的で妥当な選択だ。3月時点でゼレンスキーは習近平を袖にしたが、おそらく事情と状況が変わり、中国の役割を積極的に認める方針になったのだろう。前回は、ゼレンスキーもアメリカも中国の仲裁にネガティブな反応を返していたが、今回はカービーが首脳会談を歓迎するコメントを発している。アメリカの態度も変わった

変化を分析解読しよう。ゼレンスキーの意図はこうだ。これから反転攻勢の大きな作戦に出る。それが成功すればロシア軍は決定的な打撃を蒙り、南部2州の占領地を追われ、ドンバスとクリミアを繫ぐ補給回廊を失う敗北となる。クリミア奪還作戦の段階に進む。そのとき、ロシアを停戦協議の場に引っ張り出し、プーチンに全占領地からの撤退の決断をさせるためには、仲介役として中国の力が必要なのだ。反転攻勢の戦略を外交サイドからも万全にするために、中国を調停役として指名し、役割を担わせる思惑なのだろう。逆にまた、万が一反転攻勢が失敗し、ロシア軍に巻き返され、ウクライナ軍に継戦続行する余力がなくなったとき、最悪のケースの想定だが、そのときも中国に割って入ってもらう腹なのに違いない。どちらに転んでも、ウクライナには中国の出番が必要となる。同じ動機と論理はロシアのプーチンも共有している。

西側の報道では、ウクライナ軍の戦況有利と士気旺盛の情報ばかりが宣伝散布されているが、ウクライナの実情は決してそうではない。反転攻勢も地上戦であり、陣地を固めて守備するロシア兵との熾烈な攻防となる。確実に大量の兵員を消耗する。4月13日の報道1930では、ウクライナで徴兵逃れが横行していて、1年前のようなスムーズな兵員補充が難しくなった現状が報告されていた。武器と資金はアメリカとNATOから青天井で入って来るけれど、兵員補充はそうはいかない。ウクライナもどこかで停戦を考えないといけないのであり、その外交準備が必要なのである。仮に反転攻勢が大成功してクリミア奪還作戦の段になっても、ウクライナ軍はまた新たな流血を覚悟し、成年男子を徴兵して前線に送り出さないといけなくなる。ロシアとロシア系住民が諦めずに抵抗と反撃を続ければ、戦争はさらに続く。死傷者は増え続ける

膠着している戦況は、ウクライナ軍の反転攻勢のあと、その結果如何にかかわらず、中国と国連を調停者にした停戦協議の幕となるだろう。ロシアも疲弊している。ウクライナも疲弊している。来年4月のウクライナの大統領選で、停戦和平を求める候補が出馬する可能性も十分ある。首脳会談の結果、中国の特別代表がキエフに派遣され、常駐して和平交渉の作業に当たる進行となった。この特別代表がキエフとモスクワを繫ぐパイプ役となり、北京をブリッジにした意思疎通のチャンネルとなる。ゼレンスキーにとっては重大な価値のある外交リソース(⇒資産)の獲得で、プーチンの意向をダイレクトに探ったり、騙し合いや駆け引きも含めての意思を伝達することができる装置だ。プーチンの側も同じ。キエフの中国特別代表の存在と動向は、国連(グテレス)にとってもきわめて重要なものとなるだろう。

一刻も早い停戦実現を希望する。戦いは外交の場で存分にやればいい。武器による攻撃と殺傷ではなく、言葉による応酬と妥協で決着させることだ。

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