2025年11月20日木曜日

中国、レアアース、そして我々が知っている世界の終わり

 海外記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
 レアアース問題は米国の泣き所で、対中トランプ関税はその1点で頓挫しました。レアアース問題は今や世界周知の事柄で、それが潤沢に供給されないと何よりも米国の軍需産業がなり立ちません。それはド素人の我々にとってはまことに意外な話でした。
 では米国はその克服?!に向かっているのかですが、半年毎にそれを検証しているGodfree Robertsによればそうはなっていません。

 レアアースの精製工場には一般に数千億ドル(1千億ドルは約15兆5千億円)を要します。
 その他に、原材料の入手にはそれぞれにそれなりの鉱山/鉱床とそれを採掘する鉱業設備が必要です。
 (例外的に)ガリウムについてはアルミナから抽出されます。中国は年間146トンのガリウムを2000万トンのアルミナから抽出していますが、それにはまず膨大な電力を用いる1500億ドルの電解アルミニウム工場によって電解アルミニウム化する必要があり、これらの工場は24時間365日稼働し5万人の熟練労働者を要するのですが、米国にはその人材が不足しています。
 かつては金満国家だった米国も今ではそんな余力は全くないので、ガリウムについてもいつになったら生産できるのか見当もつかないのが実態のようです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
中国、レアアース、そして我々が知っている世界の終わり。
               耕助のブログNo 2718  2025年11月17日
   China, Rare Earths and the End of the World as We Know It.
    米国軍需産業は中間選挙の前に休止状態になるだろう  by Godfree Roberts
半年に一度のレアアース問題の検証へようこそ。昨年6月の記事「中国、レアアース、そして知的財産」で、私は20年間にわたる揺るぎない政治的支援、多数の科学者、何百万人もの労働者、そして数千億ドルの支出を必要とする工場の建設を正確には誰が保証するのか問うた。そして、日本の15年間にわたる数十億ドルの取り組みのように、もしそれが商業的な利益も実用的な製品も生み出さなかった場合はどうなるのだろうか?今月の質問はより差し迫ったものだ。4月25日に中国が導入したデュアルユース鉱物の輸出禁止措置が、釜山会議後も引き続き有効なので {1}、米国の防衛産業は崩壊するのだろうか?来年11月の米国大統領選挙までに、米国の先進兵器システムの生産が終了した場合、我々はどうすればよいのだろうか?責任の所在は数多くある

信じられないことに、米国国防備蓄局(NDS)が防衛需要のために備蓄しているレアアースはわずか3ヶ月分しかない {2}。ロッキード・マーティン、RTX、ボーイングなどの武器メーカーも同様である。議会やホワイトハウスがこの事態を予見していなかったわけではない。2009年、WTOが、環境保護はレアアースの輸出割当を正当化するものではないという米国の主張を認めた後、中国は輸出割当を部分的にしか解除しなかった。そして 2012年、オバマ大統領は「アメリカの製造業者は中国が供給するレアアースを必要としているが、中国の政策がそれを妨げ、中国が順守することに合意した規則そのものに反している」{3}と不満を述べた。スティーブン・チェンは、中国が消極的な理由は単純で「国内需要はすでに供給を上回っている。輸出規制は積極的な地政学的手段ではなく、合理的な産業政策だ」と説明する。

中国がレアアースの精製を支配する理由
最近のインタビューで、スコット・ベッセント財務長官は、米国が24ヶ月以内にレアアースの代替供給源を確保できると予測したが、これは非現実的だ。アルノー・ベルトランは、希少ではないが禁止されているガリウムの入手は混乱を招くだろうと述べている:
中国は、年間146トンのガリウムを2000万トンのアルミナから抽出している。このために1500億ドルの投資が必要な工場を建設し、2000万トンのアルミナを生産する必要がある。このアルミナ工場はさらに1000億キロワット時の電力を必要とする2000億ドルの電解アルミニウム工場から供給される。この電解アルミニウム工場の建設には、さらに1000億ドルの投資が必要である。
これらの工場は24時間365日稼働し、5万人の熟練労働者を必要とするが、米国にはその人材が不足している。さらに販売市場も必要だが、中国が既に独占している。ガリウムの抽出・精製技術は確立されているとはいえ、ワシントンが146トンのガリウム(重レアアース金属の抽出に比べれば容易な作業)のために、これほど巨額で赤字の投資を行うだろうか?

アメリカは屈服するだろう
もし私の見立てが正しければ、我々は米国が中国の従属国へと転落する過程を目撃している。下記『ニューヨーク・タイムズ』の見出しは、悪い知らせを伝える第一歩に過ぎない:世界は「パックス・シニカ」の瀬戸際にある。
百戦百勝は兵の至高ではない。戦わずして敵を屈服させることこそが兵の至高である。– 孫子
注記:
{1} 先週の釜山でトランプ大統領は、中国が非戦略的レアアースを1年間供給する一方、スカンジウム、サマリウム、ガドリニウム、ルテチウム、イットリウム、ジスプロシウム、テルビウムといったデュアルユース⇒軍需・民需両用)鉱物、ならびにガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、グラファイト、レアアース加工技術・機械設備の供給は引き続き禁止されることを知らされた。
{2} 国防総省の10~20億ドル規模の調達計画(2025~2027年)は備蓄構築を目的とするが、現行水準では「基本ケース」緊急シナリオにおける不足分の約6%しか賄えない。以下に示す推定値は防衛用途限定であり、産業全体の消費量はこれより多い。USGS 2025年、DLA調達公募、コロンビア大学エネルギー政策センター(2025年)による。
{3} 批評家たちは、オバマの発言が米国のウランや暗号化技術に対する輸出規制、あるいは国内採掘禁止(例えばNEPA環境規制に基づくもの)を無視している点で偽善的だと指摘した。これは選択的な自由貿易推進を示唆するものであり、価格高騰は希土類の不足よりもむしろドル安に起因するとみられた。

https://herecomeschina.substack.com/p/peace-just-broke-out-did-nobody-notice