2025年11月10日月曜日

米国傀儡の高市超危内閣/国会質疑のガバナンス不全(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
「台湾有事」は、中国が27年にはGDP世界一になるという予測のもとに、そのまえに中国を叩いておきたいという米国の世界戦略上の必要から「生み出された」ものです。それなのに歴代の自民党政権は何の疑いもなく、あたかも既定の事実であるかのように同調して、軍事費を倍増させるという米国の要求を丸呑みしてきました。
「台湾有事」が起きた場合、日本が前面に立って中国と戦火を交えるというのが米国の構想なのですが、それは日本は米国のために「国土を焦土に」してくれという要求に他なりません。
 さらにいうと、日本が前面に立つという構想の背景には、米国が台湾を巡る「米中戦争」について何回机上演習を繰り返しても「米国が敗ける」という結果しが得られなかったという事実があります。

 7日の衆院予算委で高市首相は台湾有事と存立危機事態の関係について、「(中国による)武力行使を伴うものであれば、存立危機事態になり得る」と答弁しました。
 高市氏が対中戦争に前向きであることは容易に予想されますが、そもそも中国には「台湾侵攻」などの発想はありません。もしも高市氏が、日本が勝てる見込みが皆無であることを知らないのであれば日本のリーダーの資格はありません。
 元々「中国対台湾」の問題は中国の「内政問題」であって、他国が武力で介入すべきことではありません。植草氏は、「台湾と中国の間で仮に紛争が生じても、それはあくまでも中国の内政問題。これが日本政府の過去の条約等に基づく立場である。台湾で武力衝突して日本が中国と交戦状態に移行するという選択はあり得ない」と明快に述べています。

 併せて同氏の記事「国会質疑のガバナンス不全」を紹介します。
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米国傀儡の高市超危内閣
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月 9日
高市内閣は「超危内閣(ちょうあぶないかく)」。早くも正体を露わにしつつある。
11月7日の衆院予算委員会で高市首相は台湾有事と存立危機事態の関係について次のように答弁。
「(中国による)武力行使を伴うものであれば、存立危機事態になり得る」
「存立危機事態」とは政府が集団的自衛権の行使が可能となる事態だとしたもの。

集団的自衛権とは、ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が軍隊を出動して共同で防衛を行う国際法上の権利。
上記の例示で「台湾有事」とは台湾を舞台に中国等による武力行使が行われる事態を指すと考えられる。

集団的自衛権が浮上するのは米国が関与する場合。
台湾で武力行使が行われ、米国と中国とが交戦状態に陥る場合が念頭に置かれる。
このとき、日本は武力攻撃を受けていない。しかし、政府が定めた憲法解釈および安保法制では日本の「存立危機事態」であれば日本が集団的自衛権を行使してもよいとされている
そもそも、この憲法解釈および安保法制が憲法違反である疑いが濃厚である。
正式な憲法改正手続きを踏まずに憲法解釈を勝手に変えて、その変更した憲法解釈に沿って法律を定めていること自体が違憲行為であるとの疑いが濃厚なのだ。

根本にこの大論争が存在するしかし、これまでの政権はこの違憲論に耳を傾けずに暴走し続けている。その暴走を一気に加速させる様相を示しているのが新たに発足した高市内閣
超危内閣の所以(ゆえん)がここにある。

日本が集団的自衛権を行使するというのは米中戦争に日本が参戦するということ
日本による中国に対する宣戦布告に他ならない。直ちに日本は中国との交戦状態に陥る。
そのときに日本が受ける打撃は想像を絶する。日本が吹き飛ぶと言って過言でない
その破滅の道に突き進むことを高市首相が述べた。

落ち着いている場合ではない。
安倍元首相は「台湾有事は日本有事」と述べたが、この認識がそもそもの大間違いだ。
正しい指摘をしている元首相がいる。鳩山元総理である。
鳩山友紀夫元首相は11月8日のXで台湾有事について見解を示した。

「かつて台湾有事は日本有事と述べた御仁もいたが、高市首相は集団的自衛権を行使できる存立危機事態になりうると述べた」と指摘し、
「危機を煽り、だから軍事力増強と言いたいのだろうが、日本は台湾は中国の一部であることを尊重しているのだ。あくまで台湾は中国の内政問題であり、日本が関わってはならないのだ」と指摘した。

この指摘は完全に正しい。どういうことか。
詳しくは後段で解説するが、日本政府は1972年の日中共同声明、78年の日中平和友好条約締結の際に「一つの中国」と「台湾の帰属問題」について中国に明確な判断を示している
日本政府は
1.中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府であるこ
2.台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること
を認めた。
このことにより日中国交正常化が実現し、平和友好条約が締結された。
その際、尖閣諸島領有権問題が議論されたが、その解決は将来に先送りすることで合意した。
この合意がいわゆる「棚上げ合意」。

したがって、台湾と中国の間で仮に紛争が生じても、それはあくまでも中国の内政問題。
これが日本政府の過去の条約等に基づく立場である。
台湾で武力衝突して日本が中国と交戦状態に移行するという選択はあり得ない

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国会質疑のガバナンス不全
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月 8日
「働いて働いて働きまくる」と意気込んでいる者がいるが世間の感覚を何も理解していない。
「一生懸命働いているのに正当な処遇を受けていない」これが一般市民の感覚。
焦点は「分配」にある。生産活動の結果として果実が生まれる。その果実が所得。
所得を資本と労働で分け合う。

「改革」と称されてきたものの正体は果実の分配において労働の取り分を減らし資本の取り分を増やすというものだった。これを「改革」と称してきた。具体的には正規労働を非正規労働に変える長時間残業を合法化する。定額残業させ放題労働制度を導入し拡大する。
これらを合わせて「働き方改革」と称した。しかし、実態は「働かせ方改悪」に過ぎなかった。

日本経済は過去30年間、ほとんど成長していない。実質GDP成長率は平均で0.6%。
ほぼゼロ成長だ。
労働者一人当たりの実質賃金は1996年から2024年までの28年間に17%減少した。
アベノミクス以降の2012年から2024年までの12年間でも9%減った。
他方で大企業利益だけは史上空前の水準に拡大した。企業利益が史上空前の水準に拡大したことを受けて株価が上昇した。
国税庁民間給与実態調査によれば1年を通じて勤務した給与所得者5000万人の51%が年収400万円以下。20%が年収200万円以下だ。

これに対して国会議員はどうか。国会議員は歳費が月額129万4000円、年額1552万8000円。期末手当(ボーナス)が年額635万円。両者合計で2187万8000円
さらに、調査研究広報滞在費(従来の文書通信交通滞在費)が月額100万円で年額1200万円。立法事務費が月額65万円、年額780万円。
両者合計の1980万円を「手取り」で受け取るには税前収入で3300万円が必要(限界税率40%で計算)。
歳費との合計は5487万8000円議員の年収は5500万円水準ということになる。

その国会議員が「働いて働いて働きまくる」と述べるのを絶賛することがおかしい。
国会答弁準備のために朝3時に公務員を大量に動員してしわ寄せを受けるのは公務員。
国会審議の質問の事前通告期限は質疑期日の2日前の正午とされている。
これを厳格なルールとして設定すべきだ。事前通告は大きなテーマでもよい。
問われるのは閣僚の答弁能力。前日夕刻までに官庁の準備が完了すれば法外な時間帯に公務員を駆り出す必要もない。

閣僚は各分野に精通する必要がある。総理はあらゆる問題に即位即応で対応すればよいだけのこと。
役所の勤務状況を適正化する。これが本当の改革。午前3時から公務員を駆り出して準備することを美徳であるかのように伝えることがおかしい。霞ヶ関官庁の労働正常化を断行すべきだ。

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                 (後 略)