ガザ地区での停戦合意が発効してから10日で1カ月になりますが、イスラエル軍はこの間も断続的に攻撃を繰り返し、停戦発効後のパレスチナ人の死者は240人以上、負傷者は600人以上に上ります。
停戦発効以降にイスラエル占領軍が搬入を許可した医療物資はトラック60台分にすぎず、需要にまったく追いついていません。医療用品の不足率は70%に達し、「危機的な水準」と警告しています。医薬品も必要量のわずか10%しか届きません。
先月10日以降、同地区に入った食料等の支援トラックは1日平均171台で、合意した600台を大きく下回りました。
イスラエルは、特に卵、肉、魚、乳製品、野菜など栄養価の高い基本食品の搬入を阻止し、菓子など栄養価の低い商品は比較的搬入を許しています。しかし、価格が戦争開始前の15倍に高騰し、収入のない多くの人々には手が届きません。住民は冬が迫るもと、最低限必要な食料や医療品、生活用品すら確保できず、飢えと寒さに苦しんでいます。
イスラエルの占頷下にあるヨルダン川西岸地区で10月、イスラエル人入植者によるパレスチナ人への攻撃が、少なくとも264件に達しました。月間の数として2006年以降最多です。
いうまでもなくイスラエル人の西岸地区への入植は国際法違反です。
西岸地区に死傷者と物的損害をもたらした攻撃が1日平均8件に上り、2006年以来の攻撃は9600件を記録。今年だけで約1500件で、パレスチナ人の子ども42人が殺されました。ヨルダン川西岸にはパレスチナ人約270万人が住んでいます。
しんぶん赤旗が報じました。
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カザ医療危機深刻 停戦1カ月攻撃続発で死傷者840人
しんぶん赤旗 2025年11月9日
【カイロ=米沢博史」パレスチナ・ガザ地区でのイスラエルとハマスによる停戦合意が発効してから10日で1カ月となります。イスラエル軍はこの間も断続的に攻撃を繰り返し、ガザ保健当局が7日までに発表した停戦発効後の死者は240人以上、負傷者は600人以上に上ります。負傷者の増加にもかかわらず、イスラエルは医療用品や医薬品のガザ地区への搬入を
極度に制限しています。
イスラエルが医療物資搬入制限
ガザ保健局長を務めるムニール・バルシュ医師が7日、本紙に語ったところによると、停戦発効以降にイスラエル占領軍が搬入を許可した医療物資はトラック60台分にすぎず、需要にまったく追いついていません。医療用品の不足率は70%に達し、「危機的な水準」と警告しています。医薬品も必要量のわずか10%しか届かず、特に鎮痛剤や抗生物質が著しく不足しており、増える負傷者を十分に治療できません。
この2年間の侵攻により薬局860軒が破壊され、残った薬局に届く薬の量も限られ、価格が高騰しています。バルシュ氏は「停戦後も軍事攻撃や封鎖による医療危機で死者は増え続けている。停戦とは攻撃停止ではなく、攻撃の角度を変えているだけではないか」と憤ります。
一方、北部ガザ市にあるシファ病院のムハンマド・サルミヤ院長は6日、本紙に「ガザにはMRIや心臓カテーテル、乳がん検診装置が全くない」と述べ、医療体制の再建には医療物資と機器の大規模な搬入が不可欠だと訴えました。
また、イスラエル軍による病院の破壊と機器の搬入阻止により、がん手術などの大規模な手術が実施できず、医師たちは限られた設備の中で、生存の可能性が高い患者を優先して治療しているといいます。骨の再建手術ができず、やむを得ず切断に踏み切るケースも少なくありません。
院長は先日、29歳の子宮がん患者に摘出手術を行ったものの、放射線治療を受けられず再発の危険があると明かしました。さらに、腫瘍の種類を特定できる数少ない専門医2人が攻撃で殺害され、診断や治療に深刻な支障をきたしていると述べました。
入植者による攻撃最多 ヨルダン川西岸10月264件
しんぶん赤旗 2025年11月9日
イスラエルの占頷下にあるヨルダン川西岸地区で10月、イスラエル人入植者によるパレスチナ人への攻撃が、少なくとも264件に達しました。国連人道問題調整事務所(OCHA)が7日、発表しました。これはOCHAが2006年に記録を取り始めて以来、月間の数として最多です。
OCHAによれば、死傷者と物的損害をもたらした攻撃が1日平均8件に上ります。
2006年以来の攻撃は9600件を記録。今年だけで約1500件です。ヨルダン川西岸にはパレスチナ人約270万人、イスラエル人入植者50万人以上が住んでいます。歴代のイスラエル政府が入植地を広げてきました。国連、パレスチナ、ほとんどの国は、入植地について国際法上、違法であるとみなしています。
なお、OCHAが5日までに確認したデータによると、イスラエル軍は今年、西岸でパレスチナ人の子ども42人を殺しました。これは、イスラエル軍が今年、西岸で殺したパレスチナ人の5人に1人が子どもだったことを意味します。 (ロイター)
1遺体返還
【カイロ=時事】イスラエル首相府は7日、パレスチナ自治区ガザで人質となった1人の遺体を赤十字国際委員会(ICRC)を通じて受け取ったと発表しました。身元が確認されれば、ガザに残された人質の遺体は残り5体となります。
アブラハム合意 カザフ参加発表 対イスラエル関係
【ワシントン=時事】トランプ米大統領は6日、イスラエルとイスラム諸国の関係を正常化する「アブラハム合意」に中央アジアのカザフスタンが参加すると発表しました。カザフのトカエフ大統領がトランプ氏とホワイトハウスで会談し、表明しました。
イスラム教徒が多く暮らすカザフは、イスラエルと1992年に外交関係を樹立。その後、イスラエルと安定した関係を維持してきました。両国関係が大きく変わることはなさそうです。
トランプ氏とトカエフ氏は署名に先立ち、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、合意を確認しました。合意にはこれまでにアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンなどが署名しています。
支援物資行き届かず ガザヘのトラック数 合意の3割以下
しんぶん赤旗 2025年11月8日
【カイロ=米沢博史】パレスチナ・ガザ地区当局は6日、ハマスとイスラエルの停戦合意が発効した先月10日以降、同地区に入った支援トラックは1日平均171台で、合意した600台を大きく下回り、3割に満たないと発表しました。
ガザ当局によると、イスラエルは、特に卵、肉、魚、乳製品、野菜など栄養価の高い基本食品の搬入を阻止しています。菓子など栄養価の低い商品は比較的搬入を許しています。しかし、価格が戦争開始前の15倍に高騰し、収入のない多くの人々には手が届きません。住民は冬が迫るもと、最低限必要な食料や医療品、生活用品すら確保できず、飢えと寒さに苦しんでいま
す。
ガザ地区中部ヌセイラト難民キャンプで避難生活を送るアジザ・アラルールさん(32)は6日、2人の幼い子どもと高齢の両親と過ごす厳しい日々を本紙に語りました。
アラルールさんは数学教師でしたが、イスラエルの侵攻で家も職も兄弟も失い、「無力感は言葉にできません」と話します。プログラマーだった夫も、仕事道具のパソコンと兄弟を同時に失いました。
停戦発効後も食料はわずかな寄付に頼るしかありません。アラルールさんは「寄付が無ければ餓死していた」と話します。
生後8ヵ月の次男オマルちやんには粉ミルクがなく、おむつは布やビニ-ルで代用。柔らかな肌が傷つき、かぶれに苦しんでいます。衣服も不足し、生後7ヵ月のめいは寒さで命を落としました。
長男アフマドちゃん(2)も満足に食事をとれず、空腹のまま眠る日々。「笑顔を見せるのは猫と遊ぶときだけ」といいます。慢性疾患を抱える高齢の両親も医療を受けられず、「何もしてあげられない」と苦しみながら介護しています。
アラルールさんは訴えます。「ガザの人々すべてに公平に援助が届き、再び働いて自立できる環境を取り戻したい。戦争を完全に終わりにし、平和の中で新しい人生を始める権利は、子どもたちにも私たちにもあるはずだ」
「戦争終わっていない」 UNRWA局長 支援継続訴え
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長は6日、パレスチナ自治区ガザの現状について、子どもたちの栄養失調が続いているなどとして「戦争は終わっていない」と強調しました。東京都内の日本記者クラブで記者会見しました。
清田氏によれば、ガザでは約100ヵ所の避難所に7万5000人が避難。物資は「価格が高く、一般人には買えない」水準で、清潔な水や燃料、医薬品が「到底足りない」ままだといいます。
イスラエルでは、UNRWAの活動を禁止する法律が成立し、清田氏ら国際職員は今年1月からガザに入ることができなくなりました。物資搬入も提携先に頼らざるを得ず、隣国ヨルダンには多量の支援品が積まれたままになっているとして「悔しい思いをしている」と語りました。
こうした状況に対し、国際司法裁判所(ICJ)が10月、イスラエルはUNRWAなど国際機関の救援活動を妨げてはならないとの勧告的意見を出したことについては「ほっとした」と述べました。日本政府には資金拠出の継続を訴えました。(時事)
人質の遺体返還 ガザに残り6人 イスラエル首相府
【カイロ=時事】イスラエル首相府は6日、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスが5日に赤十字国際委員会(ICRC)を通じて返還した人質の遺体に関し、タンザニア人男性だったと発表しました。報道によると、男性はガザから近いキブツ(集団農場)で、インターンシップに参加し農業を学んでいました。
ガザに残る人質の遺体は6体となり、この中には、タイ人1人と2014年に殺害されたイスラエル兵も含まれています。
一方、現地からの報道によると、イスラエル軍は6日、中心都市ガザ市の東部に空爆を加えました。ガザでは停戦後も散発的なイスラエル軍の攻撃が続き、ガザ保健当局によると240人以上が死亡。遺体収簑進められ、2023年10月のイスラエル軍の軍事作戦開始以降のガザでの死者に6万8800人を超えました。