植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
高市首相は国会で「〝台湾有事″で中国が戦艦*を出動させれば〝存立危機事態″(日本が参戦)になり得る」と答弁しました。「台湾有事」は対中戦争を意図している米国が恰好の口実にしようとして生まれた発想です(*今どき戦艦の出る幕はありません)。
それを確実に起きる事態と見るかのようにして、日本の軍事費を27年までにGDPの2%にアップさせると米国に約束したのが自民党政府であり、その最右翼が高市首相です。百歩ゆずって台湾の独立運動を機に台湾有事が勃発したとしても、それは中国の内政問題であり日本が手出しできる問題ではありません。
集団的自衛権の行使が可能という憲法違反の政府見解を出した安倍政権が、その一つの口実になるとしたのが「存立危機事態」でした。そして安倍政権こそが「際限がない」ことが明らかな軍拡競争のスタートを切ったのでした。
そして国民の安寧や福祉を顧みずに、その路線を加速させようとしているのが高市政権に他なりません。
いずれにせよ「台湾有事」を信じそれを恰好の口実にしようとしているのは余りにも無知であり、国民を不幸に陥れ米軍需産業の利益のために邁進するのは余りにも不誠実です。
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国を誤る大政翼賛の扇動
植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月12日
歴史を振り返ると正論は少数派であったことが多い。
日本が無謀な戦争に突き進んだときに異を唱えた人は存在した。
しかし正しい主張は「反日・非国民」として弾圧された。
日本が欧米に対抗して大陸進出を推進したときに真逆の「小日本主義」を唱えた石橋湛山は完全なる少数勢力だった。数の論理で真実を見極めるのは正しくない。
真実は少数の主張、少数の指摘のなかに宿っていることが少なくない。
日本は中国に隣接している。そもそも日本の文化・文明の多くは中国大陸から伝来したものが多い。日本の淵源、日本の心のふるさとは中国にあると言って過言でない。
本来、日本が中国と近隣友好関係を構築するべきことは論を俟たない。しかし、近年、反中国の空気が蔓延している。
また、外国人に対する差別的感情が扇動されている。
しかし、一口に外国人と言っても千差万別。
外国人差別、外国人排斥の主張が示されるとき、アングロサクソンの白人が含まれていることは少ない。肯定しないが排外主義を主張するならアングロサクソンの白人を含めなければダブルスタンダードだ。
私たちが取るべき対応は歴史の真実に基づくこと。真実に基づかない主張は弱い。
真実に基づく主張に太刀打ちできない。真実に基づかない暴論をかざしても最終的には負ける。
だから、真実に即した考察、議論を行うことが重要だ。
国会質疑で台湾有事で存立危機事態になるのかの質問に対して高市首相が存立危機事態になり得ると答弁して議論が沸騰している
多くは高市首相の主張は正しいと主張する。しかし、その精緻な論理構成の上に組み立てられている言説を見ない。観念的、情緒的な主張が大半だ。
インターネットのニュース・ポータルサイトに掲載される言説の圧倒的多数は高市氏を擁護して高市氏批判を批判するものになっている。
商業メディアが提供する論説記事の背後に資本投下がある。「金の力」で言論空間が特定方向に誘導されている。
「存立危機事態」とは日本が集団的自衛権を行使する事由として設定されたもの。
本来、日本国憲法は集団的自衛権行使を認めないものとして解釈されてきた。
政府が公式見解として「集団的自衛権の行使は認められない」としてきた。1972年10月に政府見解が明文化されて示された。
50年以上にわたり、この政府見解が憲法の一部を成してきた。
その憲法解釈を2014年に安倍内閣が勝手に変えた。その上で、「安保法制」なるものが制定された。
そのなかで、集団的自衛権を行使できる条件として提示されたのが「存立危機事態」である。
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合に集団的自衛権行使が必要最小限度認められるとした。
解釈改憲は許されるものでなく、その許されない解釈改憲に基づく立法も許されない。
これが正当な見解であろう。
この論議を横に置いて「存立危機事態」を考察するときに、台湾で武力衝突が生じた場合、とりわけ、米国と中国が交戦状態に陥る場合に、日本の「存立危機事態」と言えるのかどうか。
台湾海峡が封鎖されても船舶は台湾海峡を避けて航行できる。したがって、台湾有事が日本の「存立危機事態」になるとは考えられない。
それにもかかわらず、高市氏は台湾での武力衝突の事態は日本の存立危機事態に十分なり得るとの見解を述べた。この発言は極めて重大である。
集団的自衛権の行使とは中国に対する宣戦布告そのものであるからだ。中国が猛烈な反応を示すのは順当。
中国に肩入れする、日本に肩入れする、といった偏向した視点から考察するのではなく、客観的、中立、公平な立場から考察することが何よりも大切だ。
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鳩山元総理台湾有事指摘は適正
植草一秀の「知られざる真実」 2025年11月11日
民主主義が機能するために必須の条件は良質な情報空間の存在。
正確な情報が広く行き渡ることが必要。
情報を流布する上で大きな役割を果たすのがメディア。
さまざまなメディがある。従来のメディアに対して新しいメディアの比重が上昇している。
人心を誘導しようとする者にとってはメディアを活用することがカギになる。
メディアをコントロールするのに最大の武器は資本力。
資本力があるとメディアを支配することが可能になり、その結果として人心を誘導できる。
このトラップに嵌っているのが日本。人々が時事問題に関する情報をどのように入手するのかがポイントになる。
新聞、テレビ、雑誌のオールドメディア。その大半が大資本の支配下にある。
NHKは実態として国営放送であり、国家権力の報道機関=大本営と化している。
ネット上のメディアが情報伝達の一翼を担うがネットのポータルサイトは大資本支配下にある。
SNSがもう一つの柱で一部で棲み分けが行われるが、全体としての情報拡散力は投下資本量に比例する面が強い。メディア情報を支配する者が人心誘導を制する。この状況が強まっている。
高市早苗首相が台湾有事は日本の存立危機事態になり得ると発言して物議を醸している。
このことについて鳩山友紀夫元総理が
「(高市首相は)危機を煽り、だから軍事力増強と言いたいのだろうが、日本は台湾は中国の一部であることを尊重しているのだ。あくまで台湾は中国の内政問題であり、日本が関わってはならない」と指摘した。鳩山元総理の指摘は完全に正しい。
しかし、ネットメディアは鳩山元総理の指摘を攻撃する記事を拡散している。間違った指摘でも拡散されれば影響が生じる。これがメディアコントロールの弊害だ。
ネットメディアが取り上げる発言者に著しい偏りがある。特殊な人物の特殊な発言しか取り上げない。そうなると人心は特殊な方向に引き寄せられる。
かねてより提案しているのは時事問題についての反対側(私たちの側)のポータルサイトを構築すること。
ヤフー、グーグル、MSNだけでは情報が著しく偏る。人心は完全に洗脳されてしまう。
そこで時事問題にアクセスする、こちら側の入口サイトがどうしても必要。
一つ紹介しておきたいのが
NPJ=News for the People in Japan http://www.news-pj.net/
時事問題を網羅することはできていないが大手ポータルサイトとは異なる視点から情報が提供されている。
月刊誌では『紙の爆弾』(鹿砦社)の購読が必須だ。https://x.gd/XaZnv
偏向メディアからは得ることのできない真実の情報が満載だ。
出版業界が厳しい状況に置かれるなか、同誌も例外ではないという。
読者が購読で支えなければ媒体そのものが消滅してしまう。
年間12冊送料無料で7700円での定期購読を同誌が求めているのでぜひご検討賜りたい。
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最新号では巻頭論文「自民・維新金権腐敗政権」をインタビュー寄稿させていただいた。
ご高読賜れればありがたく思う。
鳩山元総理の指摘がなぜ正しいのか。正確な理由を知らない人も多いと思う。
私たちに必要なことは正確で良質な情報=インテリジェンスを確保することである。
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「台湾有事が中国内政問題の理由」 でご高読下さい。
(後 略)