2012年11月5日月曜日

「民主党が護憲に舵を切る」 と朝鮮日報が


 朝鮮日報が「支持率急落の日本民主党、『護憲』を争点に」と題する記事で、自民党の安倍総裁や、なぜか国内のメディアが持ちあげている「日本維新の会」代表の橋下氏国政に転身した石原氏を「極右勢力」と規定し、支持率が急落している日本民主党が、それらとの差別化を図るために中道・リベラル路線に転換しようとしていると報じました。
また野田佳彦首相が就任して以降、集団的自衛権の導入を示唆するなど、極右的な色彩が強まったとも報じました。
 
国内メディアとは違いとても明解で説得力のある報道です。
以下に朝鮮日報の記事を紹介します。
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支持率急落の日本民主党、「護憲」を争点に
朝鮮日報電子版 2012/11/05
中道勢力が前面に出て党の右傾化をけん制
憲法改正や軍の保有を主張する自民党などと差別化 

 日本の与党・民主党が、軍隊の保有を禁止している現行憲法を守ることを、次期衆議院議員総選挙の争点に掲げる意向を示した。現行憲法の改正を通じ、軍隊の保有を可能にすべきと主張する自民党の安倍晋三総裁や「日本維新の会」代表の橋下徹・大阪市長、現行憲法の破棄を主張する石原慎太郎・前東京都知事といった極右勢力との差別化を図るため、中道・リベラル路線への転換を目指すというわけだ。 

 野田佳彦首相が就任して以降、集団的自衛権(同盟国が攻撃を受けた場合、自国に対する攻撃と見なし、相手国を攻撃できる権利)の導入を示唆するなど、極右的な色彩が強まったことから、民主党内部では「民主党は自民党の亜流か」と批判する声が高まっていた。 

 同党の細野豪志政調会長は今月3日に行った講演で「戦後の日本の平和主義、専守防衛が間違っていたわけではない。民主党は中道路線を歩んでいく」と述べた。日本は平和憲法に従い、先制攻撃を否定する専守防衛政策を軸とし、集団的自衛権の行使や軍隊の保有を禁止してきた。細野氏はまた、あるテレビ番組に出演し「軽武装にとどめ、国民生活の安全を守ってきた戦後の歴史を肯定するのか、あるいは安倍自民党総裁のように否定するのかが(次期総選挙での)根本的な違いになるだろう」と語った。 

 一方、岡田克也副総理も記者会見で「民主党の路線は『中道リベラル』と『穏健な保守』だ。(安倍・橋下・石原)3氏は相当右に偏っており、外交も強硬路線だ」と批判した。岡田氏は最近、中国を刺激しないよう、日米合同での実施を検討していた島への上陸訓練を中止させている。 

 野田首相は就任後、極右的な政策を進める中、支持率が18%まで低下した。これを受け、民主党内部では「これまでの路線では総選挙での敗北が火を見るより明らかだ」との危機意識が高まっている。
 そのため、これまで沈黙してきた岡田氏や細野氏などの中道派が前面に出て、路線の修正を主導しているというわけだ。時事通信は「民主党が2009年の総選挙での公約を守れなかったとの批判をかわすため、『中道対保守』を次期総選挙での争点にしようとしている」との見方を示した。
東京= 車学峰(チャ・ハクポン)特派員
 
 
 

日本国憲法公布66年目に当たっての憲法会議 「声明」


3日、憲法会議が「憲法への逆流を阻みましょう」とする声明を出しました。
 憲法会議の正式名称は「憲法改悪阻止各界連絡会議」で、憲法の平和的・民主的条項を完全に実施させ、憲法の改悪を阻止することを目的とする組織です。
安保改定反対闘争の余韻がまだ残る1965年に、鈴木安蔵氏・末川博氏など33人の呼びかけで結成されました。中央の他に、各都道府県他にもセンターがあります。 

声明は、「今日、憲法を守り、生かすたたかいは、新たな正念場を迎えている」と書き出され、「日本国憲法は、いま反動的逆流にさらされている」と分析しています。

その一方、「311以降、広範な共同にもとづく国民的運動の大きな高揚も生まれており、その中で、国民の要求の一つ一つが憲法を生かすことによって実現することが明らかになっている」と述べ、「いまこそ憲法への攻撃を許さないたたかいを、力合わせ進めようではありませんか」と結んでいます。
具体的には書かれていませんが、官邸前抗議運動などの各地での反核運動や沖縄を中心とするオスプレイ反対運動などのことを指すものと思われます。 

声明では以下の反動的潮流を挙げています。
野田首相は元々が改憲論者で、隙があれば集団的自衛権の行使を容認しようとして来ましたし、「動的防衛力の構築」でアメリカへの協力を誓い、日米共同離島奪還訓練なども進めています。
自民党の新総裁になった安倍氏は、かつて首相任期中に改憲を行うと宣言し、実際に教育基本法改悪し改憲手続法を成立させました。自民党が4月に発表した「日本国憲法改正草案」では、天皇元首化、「国防軍」の保持、緊急事態条項の創設、公益及び公の秩序による基本的人権の制限等をうたっています。また国連の名の下であれば集団的自衛権行使が可能とする法案の成立も企図しています。
そして国政への進出を決めた橋下・維新の会の諸政策は、多く改憲を必要としています。
さらに「憲法無効」「自主憲法制定」を叫ぶ石原氏も国政に再転進しました。
(なぜか、橋元氏と石原氏は「第3極」の核になるとしてマスコミがもてはやしていますが、事実は「最右翼グループ」が生まれるに過ぎないと指摘されています) 

以下に声明を紹介します。
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【声明】 憲法公布66年に当たって 今こそ憲法を学び、広げる時。
「改憲反対、9条守れ、憲法を生かそう」の世論と運動で憲法への逆流を阻みましょう
2012113
憲法改悪阻止各界連絡会議(憲法会議) 

1.日本国憲法公布66年の今日、憲法を守り、生かすたたかいは、新たな正念場を迎えています。
 民主党政権3人目の野田佳彦首相は自らが改憲論者であるだけでなく、名うての改憲論者を引き連れて内閣改造をおこない、集団的自衛権行使容認論議をくりかえすとともにその既成事実づくりを重ねています。自民党新総裁に、かつて「任期中の改憲」をぶち上げ、教育基本法改悪と改憲手続法成立を強行し、国民の猛反発の末、政権投げ出しを余儀なくされた安倍晋三氏が就任しました。加えて、「維新八策」とその中で憲法改正や9条の賛否を問う国民投票をうたうなど反動を丸出しにした橋下・維新の会が、国会に乗り込んでいます。

 憲法は、こうした民主党の自民党化、自民党の一層の反動化、反動的逆流の突撃隊=橋下・維新の会などが相呼応してつくりだしている反動的逆流にさらされています。

2.憲法をめぐる焦点の一つは、集団的自衛権行使容認、9条の解釈改憲の動きです。
 今年76日には政府の諮問機関・国家戦略会議フロンティア分科会が、従来の集団的自衛権行使を禁じた政府見解の変更案を報告、野田首相は報告の尊重を明言しています。しかも、「米軍4年ごとの戦略見直し(2010QDR)」をうけた新防衛計画大綱(101217日決定)は、これまでの「基盤的防衛力構想」を「動的防衛力の構築」に格上げし、今年51日の日米首脳会談で「動的防衛協力」を掲げ、オスプレイの配備・訓練強行や領土問題を口実にした日米共同離島奪還訓練・洋上訓練の企図など集団的自衛権行使の実体づくりが次々強行されています。さらに自民党は、「国家安全基本法案・概要」を決定し(1276日)、国連の名の下に集団的自衛権行使を可能とする方針を示し、今臨時国会の代表質問でも集団的自衛権行使容認を求めています。

3.明文改憲の動きも顕著です。憲法審査会の活動と結び、自民党は12427日、「日本国憲法改正草案」を発表しました。それは天皇元首化や「国防軍」の保持、緊急事態条項の創設、公益及び公の秩序による基本的人権の制限、国民に憲法遵守を求めるなど憲法の原則を覆す内容です。橋下・維新の会は首相公選制や96条・改憲発議要件の緩和などを主張しています。みんなの党や日本青年会議所など改憲を掲げる政党や団体も改憲案を次々発表し、最近では「憲法無効」「自主憲法制定」を叫ぶ石原慎太郎氏らの言動もマスコミにもてはやされています。

4.「311」以降多くの国民は、「黙っていたらいのちも暮らしも平和も守れない」とさまざまな課題・分野で立ち上がり、広範な共同にもとづく国民的運動の大きな高揚を作り出しています。その中では、国民の要求の一つ一つが憲法を生かすことによって実現することが明らかになっています。今こそ、憲法を学び、生かすべきときです。憲法への攻撃を許さないたたかいを、力合わせ進めようではありませんか。

 憲法会議は、憲法を学び、広げ、共同の力で「改憲反対、9条守れ、憲法を暮らしの隅々に生かそう」の世論と運動の発展を呼びかけ、その実現に奮闘する決意です。 

(まず憲法会議のホームページを開き、「声明(113日)」をクリックすると開きます)
 
 

2012年11月4日日曜日

反原発 官邸前行動は30回目に


 毎週金曜日に行われてきた「反原発」首相官邸前抗議行動は、2日(金)で30回目を迎えました。運動が始まってからこれまで、実に7ケ月近くも途切れることなく続いている、歴史的な運動になりました。 

 当初は細々と始められたこの行動は、次第に広がって6月・7月には紫陽花革命・向日葵革命と呼ばれる15万~20万人規模の盛り上がりになりました。
30回目のこの日には1万人が参加しましたが、新聞記者が現場で参加者100人に聞いたところ、今回が初参加の人が2割いたということです。
まだまだ広がって行く勢いを持っているわけです。 

 以下にしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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“原発即ゼロこそ現実的” 官邸前行動30回目 声上げ続ける
     しんぶん赤旗2012113 

 首都圏反原発連合(反原連)が呼びかけている首相官邸前抗議行動が2日、官邸前と霞が関一帯で行われました。今回で30回目。1万人の参加者(主催者発表)は「原発いらない」「いますぐなくせ」とコールしました。野田佳彦首相が“即時原発ゼロは無責任”、自民党の安倍晋三総裁が“原発ゼロは実現不可能な夢”と国会で発言したことに、怒りの声が上がりました。 

 東京都葛飾区の女性(50)は「原発は2基しか動いていない。一体どっちが『夢』を見ているんですか。電気は足りている現実を見るべきです」と話します。
 世田谷区の自営業の男性(36)は「首相や総裁の立場にいる人は利権や権力を維持したいから、原発の危険性を認めたくないんでしょうね。僕にとっては原発をすぐになくすことが現実的。この行動は、人間として必要なことだと思っています」と語りました。 

 日本共産党の志位和夫委員長と笠井亮衆院議員も参加しました。本紙が100人の参加者に聞いたところ、2割が初参加でした。 

志位委員長参加 官邸前
 日本共産党の志位和夫委員長は2日、原発再稼働に反対する官邸前行動に足を運び、参加者と一緒になって「今すぐ原発をなくせ!」と声を上げました。肌寒い外気をついて、笠井亮衆院議員と官邸前、国会正門前の2日所で訴えた志位氏。この日で通算17回目の参加となりました。

 志位氏が「前日の衆院本会議で『即時原発ゼロの政治決断を行え』と求めました。首相は何と答えたか。電力需給やコストをあげて、『十分な時間が必要だ』といいました。これはおかしい!」と声を上げると、参加者からも「とんでもない!」の怒りの声が。

 「猛暑の夏、再稼働なしで乗り切れたのは、関西電力が認めたじゃありませんか。一番コストが高いのも原発です。いつまでも先延ばしする政治は許されません。原発をなくすまで頑張ります」と行動への連帯を誓うと、「期待しているぞ!」と声援が上がりました。
 
 

2012年11月2日金曜日

「憲法の精神」は置き去り 原発事故被災地


 明日日本国憲法公布66年を迎えるに当り、朝日新聞は、福島の各地で現在も避難生活を余儀なくされている皆さんには、憲法第21条、22条、25条の権利が及んでいない実態を明らかにしました。
 
 朝日新聞デジタル版は有料化され、殆どの記事は最初の数行程度しか読めなくなっていますが、この記事に関しては全文が読めるようになっていました。

 以下に紹介します。
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憲法の精神、置き去り 公布あす66年
朝日新聞 20121102 

●原発事故被災地から考える
 日本国憲法が公布されてから3日で66年を迎える。東京電力福島第一原発の事故のあと、個人を尊重し、個人の権利を保障する憲法の精神が、置き去りにされてはいないか。福島から憲法を考える。 

◎描いていた将来像崩れ
22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 生まれ育った故郷に戻って暮らしたい。原発事故後、避難生活を送る大浦悦子さん(69)はそう願う。「潮風を受けたい。故郷だからね、大熊に帰りたい」
 大熊町から約100キロ離れた会津若松市の仮設住宅で、独り暮らし。震災から1年7カ月がすぎた。町は警戒区域に指定されたまま、自由に行き来できない状態が続いている。

 大浦さんには、大切な場所がある。第一原発から3.5キロの高台にある30アールの畑だ。津波で自宅が流されたあと、家族6人で再起を図ろうとした土地だ。近くに先祖が眠る墓もある。
 大浦さんは今年8月、新聞報道を見て驚いた。自分の土地が、国の中間貯蔵施設の候補地に挙げられていたからだ。施設の建設が決まれば、長く戻ることはできない。「地権者の私たちには、計画があることさえ知らされていない。説明もない。順番が逆」と憤る。
 本格的な柿の収穫期がやって来るが、伊達市梁川町の林哲也さん(74)の表情は晴れない。「草を刈るのも、肥やしをやるのも、力が入んねえんだ」
 ニット製造をしていたが14年前、「自分のペースでできる」農業を始めた。トマトやエンドウ豆などの野菜を育て、90年以上の歴史を持つ特産の「あんぽ柿」作りに力を入れてきた。

 首都圏の市場に出荷するなど経営が軌道に乗り、震災前年に過去最高の売り上げを記録。これからと思っていた矢先、放射性物質で土地が汚された。
 「後継ぎの長男とケンカしながら楽しくやるつもりだったんだ」。あんぽ柿は先月、2年連続での出荷自粛が決まった。描いていた将来像が崩れた。「産業がこのままなくなるんじゃないかって不安がある。目の前は真っ暗なのね」 

◆「故郷求める権利」 日本でも議論を

 22条は、居住や移転、職業選択の自由を保障している。原発事故で奪われたのは、日常の生活そのものだ。東電の賠償も緊急避難にすぎず、暮らしの復興にはほど遠い。
 早稲田大の水島朝穂教授(憲法)は、22条について「日本では国内外の移動が問題なくでき、移動の自由についてのリアリティーがあまりなかった。権利としては使い切れていない」と指摘する。それが今、原発事故によって問われている。
 水島教授は「人がそこに住み、働き、家族・友人を持てるような場所を求める権利」として、ドイツで主張される「故郷を求める権利」のようなものを「日本でも真剣に考える必要があるのではないか」と話す。 

●故郷追い出された難民
25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 原発事故で浪江町から二本松市の仮設住宅へ避難してから、柴田明範さん(46)は、精神安定剤が手放せない。
 仮設住宅に入った直後の昨年7月。めまいに突然襲われ、救急車で病院に運ばれた。気分が落ち込みやすくなり、夜中に目が覚める。今は心療内科に通う。
 はっきりした原因は分からない。ただ、「こんな根無し草みたいな生活していたら誰だっておかしくなる」。

 原発から約30キロの浪江町津島地区の自宅にはまだ、約500万円のローンが残る。東電から精神的損害の賠償として受け取る月10万円のうち、9万円はローンの支払いに消える。9人の大家族は柴田さんを含む5人が働いていたが、原発事故で全員が職を失った。今は三男がアルバイトに出ているだけ。賠償はあるが、収入は激減した。

 高線量の自宅にいつ戻れるか分からず、将来に向けて蓄えをする余裕もない。「おれらは避難民じゃなくて、故郷を追い出された難民だ」。柴田さんの口調は強くなる。
 東電からの賠償は日々の生活費に消え、体調を崩す人が増えている。仮設住宅では6月、元気だった60代の男性が心臓発作で突然亡くなった。 

 ◆日々損なわれる人間らしい生活
 県によると、原発事故後に避難先で亡くなった人は、1日現在で1152人に上る。多くは持病の悪化が原因とみられる。県内避難者98995人のうち、32550人が仮設住宅で暮らしている。

 25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するが、仮設住宅で暮らす柴田さんには、この当たり前の権利が遠いものに思える。
 人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長の伊藤和子弁護士は「賠償も仮設住宅での生活もいつ打ち切られるか分からず、人間らしい生活が日々損なわれている。国や県は一刻も早く、避難者が尊厳を持って暮らせる環境を整えるべきだ」 

●必要な情報提供されず
21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

 昨年312日夜。浪江町津島地区には、住民約5千人が原発の爆発を知って逃げてきた。浪江町川添地区から避難した女性(47)は、この場所に大量の放射能が降り注いでいることを知るよしもなかった。
 事態の異常さに気づいたのは、翌日に二本松市の県男女共生センターを訪れたときだ。双葉厚生病院からヘリで搬送された父(当時77)に会いに駆けつけた。白い防護服姿の自衛隊員が、普段着姿の住民の外部被曝(ひばく)量を調べていた。

 「私たちは何も教えてもらえないまま、ただ被曝させられていたんだ」。当時のことを思い返すたび、みじめな気持ちになる。政府が繰り返した「ただちに健康に影響はないという言葉がむなしく聞こえた
 国、県、東電は住民が必要とする情報を提供しているのか――。昨秋、県の甲状腺検査を受けた高校2年の長女(17)に、小さな嚢(のう)胞が見つかった。検査結果に「問題はありません」とだけあった。医学的な根拠を県立医大に尋ねたが、同じ言葉が返ってきた

 将来、自分や子どもの体に異変が起きたら、国や県はどう責任を取るつもりなのか。「原発事故との因果関係を認めてもらえないんだろうけど、こっちには反論するための情報もない」 

 ◆民主主義への理解 東電や行政は欠如
 主権者の国民が自分の考えや行動を正しい情報に基づいて決められるよう、21条などを根拠に「知る権利」が保障されている。
 だが、原発事故後、国民や住民に有益な情報が知らされないケースが相次いだ。

 国は放射能の拡散予測を公表せず、県は入手したデータを活用しないまま消去。国の対応について国会事故調は「避難に役立つ情報を知りたいという住民のニーズに応えていない」と指摘した。

 県が18歳以下の県民を対象に行う甲状腺検査では、今も自費で情報公開請求をしない限り、詳細なカルテやエコー検査画像を見ることができない

 県市民オンブズマン代表の広田次男弁護士は、これまでの原子力政策などの情報について「ずっと権力側が管理し、操作してきた」と指摘する。
 原発事故後も状況が変わったとは思えない。「知る権利は民主主義の出発点にもかかわらず、住民の手にはいまだに正しく判断を下せるだけの情報がわたっていない。行政や東電には、民主主義に対する基本的な理解が絶対的に欠けている
 
 

放射能予測地図のミス 「住民の不安忘れたのか」


 東京新聞が1日付の社説で、題記のような手厳しい批判をしています。
原子力規制庁が先日発表して、すぐ後で訂正をした原発の過酷事故時の放射能予測地図は、“原子力ムラ”の主要メンバーである独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)に規制庁が作成させたものでした。
誤りは発表の直後に電力会社から指摘されたもので、規制庁はなぜそんな単純なミスもチェックできなかったのか、相変わらずの丸投げ体質と原子力ムラとの癒着があるのではないかという指摘です。 

新潟県の泉田知事はそれとは別に、柏崎刈羽発電所は原子炉を7基有する世界最大の原発なので、放射能の排出量を福島第1原発と同一と仮定するのはおかしいのではないかと、再計算をするように申し入れを行っています。 

折しも原子力規制庁(総員455人)が9月に入居したビルは、延べ面積は6,000㎡、賃貸料は月額4350万円(年額では予算6億円超)であることが「フライデー」(2012112日号)で暴露されました。
何とも浮世離れした額ですが、部屋代は例の特別会計から出るので心配ないというわけです。 

原発関係の費用の豪華さはまだあります。
廃棄燃料の処分場探しを業務とする「原子力発電環境整備機構(NUMO)」(2000年設立)は、12年間に487億円を消費しながら処分場はまだ見つからず宙に浮いたままになっているといいます。民間企業であれば10億円を掛けても見つからなければ、当然責任を取らされるか方針転換を図りますが、そういう動きは全くありません。 (「原発ごみ処分場探し487億円 12年間で候補地ゼロ 」朝日新聞201292日)

 さらにこれまで1兆800億円を掛けながら、まだ運転に入っていないしその見通しも立っていない「高速増殖炉もんじゅ」は、停止状態のままでも年間に220億円(日額5,500万円)掛るそうですが、先日文科省で会議を開いた結果は「必要な技術なので開発を継続する」方向になったようです。 

 以下に怒りの東京新聞の社説を紹介します。
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【社説】 放射能地図ミス 住民の不安忘れたのか
東京新聞 2012111 

 原子力規制委員会による放射能拡散予測の誤りは重大だ。原子力ムラの体質が抜けきっていないのではないか。住民の側に立ち、不安をくみ取る姿勢が欠けているから、このようなことが起きるのだ。
 いったい何のために、原子力規制委員会ができたのだろう。
 福島第一原発事故への対応で噴き出した旧経済産業省原子力安全・保安院への不信を払拭(ふっしょく)し、国民が信頼できる独立の規制機関が必要だったからではないか。

 放射能の拡散予測の誤りは、あきれるほどに単純なコンピューターへの入力ミスだ。だが、その単純ミスがあぶり出したのは、福島原発事故以前と代わり映えのしない、規制委員会の体質だった。
 予測計算は、各電力会社がそれぞれの原発で観測した気象データを基に、独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)が実施した。JNESといえば、原発の安全検査を行う際に、検査内容の原案を電力側に作成させ、それを丸写しして指弾を受けた団体だ。経産省や原子力プラントメーカーからの天下りも問題視されている。要は“原子力ムラ”の主要メンバーなのである。

 誤りを指摘したのは、北陸電力だった。このような単純ミスを見抜けないほど、規制委のチェックは利いていないということだ。
 相変わらずの丸投げ体質、そして原子力ムラとの癒着が生んだ重大な単純ミスなのだ。

 ミス発覚の以前から、地形を考慮に入れずに割り出した予測結果の精度は疑問視されていた。一週間で一〇〇ミリシーベルト被ばくするかどうかという避難基準も、国際原子力機関(IAEA)の基準をそのまま取り入れただけの丸投げだ。

 規制委は三十一日、原子力災害対策重点区域を原発の半径三十キロ圏内まで拡大した。自治体はこれに基づいて来年三月までに避難計画を立てなければならない。拡散予測の地図は、最も重要な基礎資料になるものだ。

 原発と隣り合わせに暮らす立地地域や周辺住民にとって、避難情報は生命線だ。安心の地図であり、命の地図なのだ。それを丸投げするということは、住民の安全を軽視しているといわれても、仕方がないではないか。
 ムラから抜け出す証明こそが、規制委の設置ではなかったか。独自のチェック基準と機能を十分に備えるべきだ。さもなくば、独立した規制機関の看板を今すぐ下ろすべきである。
 
 

2012年11月1日木曜日

‘12年10月分 コメント リスト


 10月は8件のコメントをいただきました。
ありがとうございました。コメントをいただけるのは大変に張り合いです。
今後ともよろしくお願いいたします。

  (なおこのリストではプログソフトの編集機能を利用しているため、各文章の段落は削除された状態で表示されています。)
 

追記
① もしもコメントの記入に当たり上手く行かないことがありましたら、2012.9.10付の「コメントリスト 1」をご参照ください。

② コメント欄を利用して記事を投稿いただけます。
その場合は、冒頭に「投稿記事」と書き、次に(タイトル)を「 」付で表示してから、「本文」をお書き下さい。
  お送りいただいた記事は、当ホームページの趣旨に反しない限り掲載させていただきます。
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1210月 コメント リスト 

(記事の発行日順に掲載)

衝撃!! 福島市18歳以下の甲状腺の異常者は44% +  (2012/9/13)
コメント
甲状腺検査結果のどこにもA1が正常でそれ以外は異常とは書いていないはずです。 この検査はもともと正常と異常で分けてはいないと思いますがいかがでしょうか。異常と判明するのは2次検査や精密検査の結果によると思います。 結節やのう胞が無いのが正常、それらがあれば異常と間違った情報を垂れ流しにしないでください。 福島県民の不安や猜疑心を煽ってしまう記述は控えてください。 ・・・匿名(12/10/23  

返信
コメントをありがとうございました。 確かに福島県はA2を異常とは位置づけてはおらず、5.1ミリ以上の結節や20ミリ以上ののう胞を異常と位置づけているようです。しかしその基準は福島医大が決めたものであって、別に公けに認められているものではないと言われています。 現実にA2の児童が他県で診察を受けたところ「健保の対象の症状で今後は数ヶ月毎に診療を受けるように」と言われている事例も沢山あるということです。個々に病名が付くまでは「異常ではない」というのは1つの考え方かも知れませんが、このまま無処置で推移して2年後、3年後にガンに転化したらどうするのでしょうか。 福島県民の皆さんの不安を煽る意図は毛頭ありませんが、本人たちが深く悩まなくて済むような周囲の手厚い診療体制こそが望まれるのに、そんな期待は全く持てません。 ・・・事務局(12/10/23) 

放射能汚染地域にニ重の悲劇が生まれています  (2012/10/14)
コメント
自分が感じている不安を口に出せないとは恐ろしい事です。そうした雰囲気・空気が、為政者と御用学者とそれに迎合した一部の人たちによって築かれたという事なのでしょう。 それは「自らを蝕む=ガンに向かうスパイラル」というべきものです。 戦前に、意図的に特攻隊員に志願せざるを得ない雰囲気が醸成されて、若者たちが次々に自願して命を散らして行った、あのときの状況が思い出されます。 あれからもう70年も経っているというのに、何の改善も進歩もなかったということなのでしょうか。 何とかしたいという思いが駆け巡りますが ・・・匿名(12/10/20 

返信
コメントをありがとうございます。 本当に慄然とする事態です。そして突き詰めて行くと、我々がそういう政権を選んだのだから・・というやり切れない結論に落ち着きます。 せめて願いたいのはマスコミが襟を正してくれることです。政権に迎合することなく、まずはそうした実態を的確に報道して欲しいものです。・・・事務局(12/10/20 

許されない ウソ!  デタラメ! + (2012/10/18)
コメント
この記事は面白い。 短時日のうちにこれだけデタラメが集中しているということは、要するに国中にデタラメがあふれているということになるのでしょうね。 東電・国会・司法・官憲・学界(官学)そしてマスコミと、これだけ重層的に且つ日常的にデタラメが横行しているのは恐ろしい事です。 一つひとつできればもう少し詳細に知りたいです。・・・匿名(12/10/26 

返信
コメントをありがとうございます。 まさにデタラメの集積で、怒りを禁じ得ません。 しかしそれぞれをより詳細に論じるには知識も筆力も不足です。詳細はそれぞれインターネット記事などを参照していただきたいと思います。 ・・・事務局(12/10/26  

沖縄の米兵の犯罪を糾弾する各紙社説・主張  (2012/10/19)
コメント
平和的生存権を保障した日本国憲法と日本国民の平和な生活を脅かす日米安保条約との根本的な矛盾がいよいよ誰の目にも見える状況になってきたと言えるのではないでしょうか。憲法を守り安保を廃棄することこそ平和への道であるとの確信を深めました。・・・匿名(12/10/24 

返信
コメントをありがとうございます。 沖縄を中心に沸き起こっている国民の燃えたぎる怒りがどうして政府に伝わらないのか、不思議なことです。もはや「綱紀粛正」の段階ではないと言われています。・・・事務局 (12/10/25 

国と専門家の大転換を求める・・・武田邦彦氏の緊急提言 + (2012/10/20)
コメント1
リオデジャネイロ宣言は実に妥当性のあるもので、今の日本にぴったり当てはまっています。武田教授の提言は時宜に適ったものです。 政府や福島県の役人そして調査を委託された医師たちは、早く「原則15」の精神に立ち返って欲しい。彼らに、何とか子供たちのガンの発症を防ごうという意志が見られない事に対して、本当に怒りを覚えます。 ところで放射線を浴びない通常の子供たちの甲状腺ガンの発生率は100万人に1人程度だそうですが、「通常の小児の甲状腺異常(結節など)は100人に1人程度で、その2030%がガンになる」とすると、通常時でも甲状腺ガンを起こす児童の数は極めて高率となって、とても100万人に1人では収まりません。どこか数値が違っていないでしょうか。・・・匿名 (12/10/21 

返信
コメントをありがとうございます。 ご指摘のとおり「100万人に1人」よりもケタ違いの多さになるので、武田氏にメールで質問を出してみます。お忙しい人なので返事が来るかどうか分かりませんが、もし返信がありましたら、タイトルに「+」をつけた『訂正版』でお知らせします。 (音声ブログで確認しましたが、同じことを言っておられるのでミスタイプではなさそうです) ・・・事務局(12/10/21  

コメント2
事務局からの問い合わせに対して、今朝早速武田教授から下記のような回答をいただきました。今日は一日外出していたので先程帰宅して拝見しました。ご返事をいただくこと自体大変に恐縮なことです。
「ベラルーシのデータと日本のデータが少しちがうようです。論文を二つほど読みましたが、まだ「科学的確実性」はいろいろな面で不足しているようですが、それを攻撃されることがあります。 武田 2012.10.22 AM09:18」・・・事務局 (12/10/22  

核兵器非合法化への努力声明を日本は拒否  (2012/10/25)
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何ということでしょうか!本当に情けないことです。あきれてものが言えません。しかし、だからこそ気を取り直して、“しっかりとものを言わねばならない”ということなのでしょうね。非核平和の世界をめざして草の根から声をあげ、政府の姿勢を変えさせていかないといけませんね。 ・・・匿名 (12/10/27 

返信
コメントをありがとうございます。 本当に情けなく恥ずかしいことです。かつて日本が国連の常任理事国に立候補したとき、周囲からは「アメリカの票が1票増えるだけ」と酷評された挙句に、そのアメリカからも確か賛成を得られなかったということなどが思い出されます。 日米の関係を見直すいいチャンスだった筈ですが・・・ ・・・事務局(12/10/27 

石原氏の改憲論は形式的、そして危険 + (21/10/26
コメント
石原都知事の言う「憲法破棄」の論拠は、「南出説」と言われています。

大日本帝国憲法現存論・占領憲法無効宣言実施手順/南出喜久治
・・・匿名 (12/10/21 

返信
情報をありがとうございます。 「憲法無効論」という説があること自体を初めて知りました。 紹介いただいたユーチューブの最初の方だけ聞いて見ましたが、難解でしかも2時間余りに渡るものなので、今日のところは通しで聴いて見る意欲が出ませんでした。 どなたか簡単に解説していただければ幸いですが・・・事務局(12/10/28
 
 

国歌斉唱不起立で教職員の停職や減給は不当 +


国歌斉唱時に起立しなかったことなどを理由に懲戒処分された東京都立高校などの教職員たちが、処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、31日、東京高裁は地裁の判決を変更し、21人の停職や減給の処分を取り消しました。
これは国家斉唱時の不起立等を理由に、東京都教育委員会が行った懲戒処分に対して、最高裁が今年1月に示した「減給以上の処分の選択には慎重な考慮が必要」との判断を踏襲したものです。 

大阪府では最高裁判決があった後の3月に、『国家斉唱時不起立3回で分限免職』とする職員基本条例を成立させましたが、それが最高裁の判断に反していることは明らかです。 

産経新聞及びしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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国歌斉唱不起立で教職員21人の停職、減給取り消し 東京高裁
産経新聞 2012.10.31 

 入学式や卒業式で国歌斉唱時に起立しなかったことなどを理由に懲戒処分としたのは違法として、東京都立高校などの教職員ら64人が取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が31日、東京高裁で開かれ、井上繁規裁判長は、請求を棄却した1審東京地裁判決を変更、21人の停職や減給の処分を取り消した。 

 同種訴訟の判決で最高裁が1月に示した「減給以上の処分の選択には慎重な考慮が必要」との判断を高裁の井上裁判長も踏襲。減給や停職は「懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を超え、違法」とした。戒告処分は適法とした。 

 判決によると、64人は平成17年と18年、校長の職務命令に従わず、起立しなかったなどとして処分を受けた。

以下を追加
君が代控訴審 「全処分取り消しを」 判決受け原告団会見
     しんぶん赤旗 2012111 

 都立学校教員への「日の丸・君が代」強制をめぐる高裁判決を受けて原告団は31日、都内で記者会見を行いました。減給以上の処分が取り消されたことに「石原知事のもとでの教育破壊に歯止めをかけた」と喜びを見せつつ、「日の丸・君が代」強制が憲法違反であることが認められなかったことを批判。最高裁で違憲判決をかちとりたいとの決意を語りました。 

 停職処分が取り消された原告の福嶋常光さん(63)は「卒業式は3年間頑張ってきた生徒の努力をたたえるとともに、生徒たちを育ててきた先生をねぎらう一番喜ばしい日だった。それが一番重苦しい日になってしまった。これからもこの重苦しい日が続くのかと思うと心を痛めます」と、「日の丸・君が代」強制によってもたらされた現場の苦労を明らかにしました。 

 「学校現場は非常に息苦しいものになってしまった。生徒を育てていくことが中心ではなくなってしまった」と語った原告の現職教員の今田和歌子さん(56)は、減給は取り消されたものの、戒告処分は残されました。「うれしさ半分。全ての処分が取り消される日が来てほしい」 

 澤藤統一郎弁護士は、「判決は憲法判断に弱点を持っている」と指摘。平松真二郎弁護士は「都が違法な処分を重ねてきたことに対する判決」と一部勝訴を評価しつつも、「われわれは懲戒処分そのものが、思想・良心の自由を保障する憲法19条を侵害するものだと主張してきた」と戒告処分が取り消されていないことを批判しました。