東京新聞が1日付の社説で、題記のような手厳しい批判をしています。
原子力規制庁が先日発表して、すぐ後で訂正をした原発の過酷事故時の放射能予測地図は、“原子力ムラ”の主要メンバーである独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)に規制庁が作成させたものでした。
誤りは発表の直後に電力会社から指摘されたもので、規制庁はなぜそんな単純なミスもチェックできなかったのか、相変わらずの丸投げ体質と原子力ムラとの癒着があるのではないかという指摘です。
新潟県の泉田知事はそれとは別に、柏崎刈羽発電所は原子炉を7基有する世界最大の原発なので、放射能の排出量を福島第1原発と同一と仮定するのはおかしいのではないかと、再計算をするように申し入れを行っています。
折しも原子力規制庁(総員455人)が9月に入居したビルは、延べ面積は6,000㎡、賃貸料は月額4350万円(年額では予算6億円超)であることが「フライデー」(2012年11月2日号)で暴露されました。
何とも浮世離れした額ですが、部屋代は例の特別会計から出るので心配ないというわけです。
原発関係の費用の豪華さはまだあります。
廃棄燃料の処分場探しを業務とする「原子力発電環境整備機構(NUMO)」(2000年設立)は、12年間に487億円を消費しながら処分場はまだ見つからず宙に浮いたままになっているといいます。民間企業であれば10億円を掛けても見つからなければ、当然責任を取らされるか方針転換を図りますが、そういう動きは全くありません。 (「原発ごみ処分場探し487億円
12年間で候補地ゼロ 」朝日新聞2012年9月2日)
さらにこれまで1兆800億円を掛けながら、まだ運転に入っていないしその見通しも立っていない「高速増殖炉もんじゅ」は、停止状態のままでも年間に220億円(日額5,500万円)掛るそうですが、先日文科省で会議を開いた結果は「必要な技術なので開発を継続する」方向になったようです。
以下に怒りの東京新聞の社説を紹介します。
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【社説】 放射能地図ミス 住民の不安忘れたのか
東京新聞 2012年11月1日
原子力規制委員会による放射能拡散予測の誤りは重大だ。原子力ムラの体質が抜けきっていないのではないか。住民の側に立ち、不安をくみ取る姿勢が欠けているから、このようなことが起きるのだ。
いったい何のために、原子力規制委員会ができたのだろう。
福島第一原発事故への対応で噴き出した旧経済産業省原子力安全・保安院への不信を払拭(ふっしょく)し、国民が信頼できる独立の規制機関が必要だったからではないか。
放射能の拡散予測の誤りは、あきれるほどに単純なコンピューターへの入力ミスだ。だが、その単純ミスがあぶり出したのは、福島原発事故以前と代わり映えのしない、規制委員会の体質だった。
予測計算は、各電力会社がそれぞれの原発で観測した気象データを基に、独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)が実施した。JNESといえば、原発の安全検査を行う際に、検査内容の原案を電力側に作成させ、それを丸写しして指弾を受けた団体だ。経産省や原子力プラントメーカーからの天下りも問題視されている。要は“原子力ムラ”の主要メンバーなのである。
誤りを指摘したのは、北陸電力だった。このような単純ミスを見抜けないほど、規制委のチェックは利いていないということだ。
相変わらずの丸投げ体質、そして原子力ムラとの癒着が生んだ重大な単純ミスなのだ。
ミス発覚の以前から、地形を考慮に入れずに割り出した予測結果の精度は疑問視されていた。一週間で一〇〇ミリシーベルト被ばくするかどうかという避難基準も、国際原子力機関(IAEA)の基準をそのまま取り入れただけの丸投げだ。
規制委は三十一日、原子力災害対策重点区域を原発の半径三十キロ圏内まで拡大した。自治体はこれに基づいて来年三月までに避難計画を立てなければならない。拡散予測の地図は、最も重要な基礎資料になるものだ。
原発と隣り合わせに暮らす立地地域や周辺住民にとって、避難情報は生命線だ。安心の地図であり、命の地図なのだ。それを丸投げするということは、住民の安全を軽視しているといわれても、仕方がないではないか。
ムラから抜け出す証明こそが、規制委の設置ではなかったか。独自のチェック基準と機能を十分に備えるべきだ。さもなくば、独立した規制機関の看板を今すぐ下ろすべきである。