2025年6月14日土曜日

学術会議解体法強行 歴史に禍根残す自公維の暴挙

 しんぶん赤旗に掲題の「主張(一般紙の社説に当たるもの)」が載りました。
 日本学術会議を解体し政府に従順な機関に変質させる法律が、11日の参院本会議で可決・成立しました。その狙いが大軍拡に学術界を協力させることにあるのは明白で、それは自民党が数十年間 一貫して指向してきたものです。
 学術会議解体法は、憲法が謳う「学問の自由」を具現化した「日本学術会議の独立性」を奪うものであり、それはそのまま憲法を踏みにじるものです。
 しんぶん赤旗の4つの記事を紹介します。

 3つ目の記事で東大教授(科学史) 隠岐さや香さんは、同法の成立は 自民党が1980年代から段階的に学術会議への介入を試みてきたことの到達点であるとして、今後何を注目すべきかを指摘するとともに、組織がよみがえった例はイタリアやフランスなどさまざまあり、やり直しはいつでもできるとして、「私は生涯、学術会議の問題を考え続けます。ここから終わらない運動が始まります」と宣言しました。
 4つ目は赤旗編集局・中祖寅一・政治部長の署名記事で、同法の成立は 13年の「特定秘密保護法」、15年の「集団的自衛権行使容認の安保法制」、17年の「共謀罪法」などの憲法破壊の「戦後レジームからの脱却」「戦争する国づくり」の流れの中での「学問の軍事動員の圧力」が結果したものであるとした上で、17年6月 500を超える犯罪類型に内心処罰をもたらす共謀罪法を強行したことに怒った市民が、直後の東京都議選で自民党を57議席から23議席へと歴史的大惨敗をさせたことを例示して、「同法強行の日は、新しいたたかいの出発の日」であると述べています。
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主張 学術会議解体法強行 歴史に禍根残す自公維の暴挙
                       しんぶん赤旗 2025年6月12日
 日本学術会議を解体し政府に従順な機関に変質させる法律が、11日の参院本会議で可決・成立しました。学術会議による法案への深刻な懸念や多くの科学者、市民の反対を無視して強行した石破茂政権と自民、公明、維新に満身の怒りを込めて抗議します。
 国会審議を通じて法案のもつ狙いと重大な問題点はいっそう浮き彫りになりました。

■思想選別を合理化
 政府は、審議の前提といえる2020年の会員任命拒否の理由を明らかにせず、首相による任命は形式的とする法解釈を変更した行政文書の黒塗り部分の開示も拒否しました。坂井学内閣府特命担当相が「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は今度の法案では解任できる」と答弁し、思想選別を合理化したことは、法案のもつ危険性を露呈しました。
 政権の意によって恣意(しい)的に学者を排除することは、任命拒否と同様に「学問の自由」「思想信条の自由」を踏みにじる政治介入であり、戦前の滝川事件、天皇機関説事件など、学問への弾圧を現代によみがえらせるものです。絶対に許されません。
 戦前の科学者の戦争協力への反省から、「科学者の総意の下に」「平和的復興、人類社会の福祉に貢献」するとした現行法の前文を、新法は削除しました。政府は「法案の目的に置き換えた」と言い逃れました。しかし、学術会議が軍事研究を拒否した3度の声明を、維新が「学問の自由を奪うもの」とねじ曲げ、軍事研究に貢献する組織にするよう求めたのを政府は否定しませんでした。石破政権の大軍拡に学術界を協力させることに新法の狙いがあることを端的に示すものです。
 新法で、首相任命の監事や評価委員会、外部者による選定助言委員会を設置することで学術会議の人事、運営、財政に政府が幾重にも介入する危険性のあることも具体的に明らかになりました。会員候補者の選定に関し選定助言委員会は「(学術会議の)諮問に応じて意見を述べる」とされていますが、まったく諮問がない場合、「監事による監査の対象にしうる」と政府は答弁しました。学術会議が自律的に行うべき会員選定がゆがめられることは明らかです。

■広がった反対運動
 国会審議が始まって以降、法案反対の声が急速に広がりました。200を超える学協会や日弁連、多くの市民団体が反対声明を出し、オンライン署名は約7万筆となりました。学者や市民が共同し、院内集会や「人間の鎖」、学者の座り込みが波状的に取り組まれました。平和と自由への願い、良識の発露として歴史に刻まれるものです。
 学術会議の独立性は、憲法が保障する「学問の自由」に基づいています。新法によって政府が学術会議に対していかなる介入を行おうとも、「学問の自由」の侵害であり、科学者コミュニティーとの深刻な矛盾は避けられません。
 学術会議の独立性を守り、政府の介入と軍事研究の暴走を許さない世論と運動をいっそうひろげましょう。歴史に禍根を残す暴挙を行った自民、公明、維新に断固とした審判をくだしましょう。


世論無視し悪法成立 参院選で審判を 学術会議解体法 平和の理念投げ捨てる
                       しんぶん赤旗 2025年6月12日
井上議員が反対討論
 日本学術会議の独立性と自律性を脅かし、「学問の自由」を侵害する日本学術会議解体法が11日の参院本会議で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決、成立しました。日本共産党と立憲民主、国民民主、れいわ新選組の各党は反対しました。国会前で、研究者・市民らが怒りの抗議行動を行いました。反対討論要旨

 反対討論に立った日本共産党の井上哲士議員は、政府は学術会議の独立性と、国の機関であることは「矛盾している」と主張しているが、「科学を軍事に従属させ、目先の経済的利益の追求に貢献させようという政府の立場」と「科学者の総意のもとに、科学を平和と人類社会の福祉に貢献させるという、日本学術会議の憲法に基づく理念」こそが矛盾しているのだと主張。同法は「平和理念を投げ捨てるものだ」と批判しました。
 井上氏は、同法に反対し、学問の自由を守れという多くの学協会や科学者、市民の声は広がり続けていると指摘し、「何をもってしても抑え込むことはできない」と強調。国会前で市民が述べた、政府の介入を監視し、学問の自由を守り、発展させる新しい運動の始まりとの声を紹介。「日本共産党も多くの科学者、市民と力を合わせて全力でたたかい抜く」と決意を表明しました。

 抗議行動で発言した山根徹也横浜市立大教授は「民主主義と人権と自由が壊されていかないように防いでいくこと」を呼びかけました。前川喜平元文部科学事務次官は「学者だけに任せず、市民の立場で連帯し、国民全体の声として学術会議のあり方を問い直して、正しい形に戻していく運動を続けていかなければならない」と語りました。駒込武京都大教授は、参院選に向け各党の同法への対応を市民に広め、「(参院選の)判断材料の一つとして示していくことが大事だ」と述べました。井上議員が法案採決後いち早く駆けつけて連帯あいさつしました。


科学者の良心は消せない 学術会議解体法強行 やり直せる期待と希望
   東京大学教授(科学史) 隠岐さや香
                       しんぶん赤旗 2025年6月12日
やり直せる 期待と希望
 政府は本来通してはならない法案をごまかしながら無理に通しました。
 戦後の理想から出発した学術会議の会員選考や運営に不満をもつ自民党は、980年代から段階的に学術会議への介入を試みてきました。今回の法律はその到達点です安全保障体制の整備に合わせ、学術会議のあり方を変えたのです。
 法人化されるだけで学術会議は存続すると政権側は主張しますが、科学史の立場から見れば、学術会議はいったん廃止され歴史を終えるとの感覚があります。
 法人化された学術会議の人事を厳しく見ていくことが必要です。首相任命の監事は誰になるのか、会員の専門分野のバランスは取れているか、軍事研究に従事する研究者がどれだけ会員に選ばれるのか。ナショナルアカデミーの国際基準に適合しているのかという点も、常に指摘し発信していかなければなりません
 菅義偉首相(2020年当時)による会員任命拒否を巡る裁判を注視していくことはとても大事です。このまま拒否理由が明らかにならなければ、特に公務員の職場で、思想・信条に基づく解雇が非常にやりやすくなるでしょう。

 ここで終わりではないし、このままでは収まりません。アカデミーヘの政府介入が強まった後に揺り戻しが起き、組織がよみがえった例はイタリアやフランスなどさまざまあり、やり直しはいつでもできます
 国会審議では、法案を準備した側が懸命に隠そうとしていた問題点が明らかにされました。「理路整然と考えて決める日本(反対派)」と、「仲間内の論理で決める日本(賛成派)」の、二つの日本の姿が現れたとも思っています。今後の揺り戻しを担うのは、前者であり、ここに期待と希望を持っています
 学術会議が人権の課題で先進的提言を出してきたという認識が、廃案を求める運動の中で一気に広がったと感じています。強い危機感を持った人たちと緊急に動画もつくり発信しました。私は生涯、学術会議の問題を考え続けます。ここから終わらない運動が始まります


新たなたたかい 学問の軍事動員許さない
                       しんぶん赤旗 2025年6月12日
「学術会議は設立以来、かたくなに軍事目的の研究に反対し、科学技術の進歩の妨げになってきた」「今後は大いに防衛技術の研究に貢献し安全保障のために科学の力を発揮してほしい」
 11日の参院本会議で、日本維新の会の柴田巧議員は改めてこう言い放ちました。喝采の拍手で沸き立つ自民党席。学問の軍事動員の推進-学術会議解体法の本質を示す光景です。
 法は、「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」とした日本学術会議法の前文を全面削除しました
 第2次安倍政権のもと、防衛装備庁による大学などへの資金提供を伴う軍事研究の委託=「安全保障技術研究推進制度」(2015年)が始まると、学術会議は17年、声明で慎重姿勢を呼びかけました。1950年の「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」との声明も引用しました。
 安倍政権は集団的自衛権行使容認の安保制(2015年)、特定秘密保護法(13年)共謀罪法(17年)など矢継ぎ早に憲法秩序を破壊する「戦後レジームからの脱却」「戦争する国」づくりを進めていました。学術会議がぶつかったのは、この流れの中での学問の軍事動員の圧力でした。
 同法は、学術会議を変質させるため、その独立性を否定し、首相や外部者による二重三重の介入の仕組みを設け、現行学術会議と「新組織」との人的連続性を遮断するなど、学術会議を乱暴に解体に追い込みます。前文削除は、歴史の教訓を踏みにじり、いばその魂を破壊する
ものです。衆院過半数割れの自公に維新が手を貸しました。
 同法が成立したことは重大です。しかし、いくら権力が押しつぷそうとしても、その理念と魂が消え去ったわけではありません。人類の自由と平和、豊かな生活への貢献という学術の根本理念と権力からの独立の意識は、たたかいを通じていっそう強く多くの研究者に共有されたはずです。各地の草の根で市民と研究者の共同も進みました。「学問の自由」が市民にとって
人ごとではなく、「真理の勇気」が人々を支えるという確信も共有されました。
「戦争する国」づくりに反対し、自由と立憲主義を回復し政治を変えるたたかいの中には、真の学術会議の再建もあります。科学の軍事化を許さないたたかいは続きます。同法強行の日は、新しいたたかいの出発の日です。

 17年6月、安倍自公政権は、500を超える犯罪類型に内心処罰をもたらす共謀罪法を強行しました。怒った市民は、直後に行われた東京都議選で自民党を57議席から23議席へと歴史的大惨敗に追い込みました。くしくも、東京都議選が13日に告示され、7月には参院選が続きます。新たなたたかいのはじまりに際し、自民、公明、維新に厳しい審判を下すチャンスが訪れます   (中祖寅一)