しんぶん赤旗に掲題の2つの記事が載りました。
生活保護基準の大幅な引き下げは憲法25条*の生存権に反するとして、全国の利用者が国と自治体を訴えた「いのちのとりで裁判」の上告審判決で、最高裁第3小法廷は27日、保護基準引き下げを「違法」とする初の統一判断を示しました。
判決は、厚労省が保護基準引き下げで物価下落率を使った「デフレ調整」は社会保障審議会の生活保護基準部会などによる検討を経ておらず、専門的知見の裏付けを認められないとしたうえで、厚労相の判断の過程・手続きには過誤、欠落があり、生活保護法違反だと認定しました。国に対する損害賠償請求は棄却しました。
小池晃・共産党書記局長は記者会見で、12年の総選挙で政権に復帰した自民党が生活保護費10%削減を選挙公約に掲げていたことで、第1次安倍政権が公約実現という結論ありきの保護費削減だったと指摘しました。国は今回の統一判断を受け止めて、現在係争中のものも含め、全ての原告の訴えを受け入れて裁判の終結を図るべきで、生活保護費が減額された全ての受給者に対しても、全面的な救済措置を講じるべきだと述べました。
生活保護費の10%削減は、当時 弱肉強食の新自由主義全盛での中で「生活苦」とは全く無縁の自民党の二世、三世議員たちが決めた憲法違反の施策でした。
*第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び
増進に努めなければならない。
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生活保護費減額は違法 最高裁統一判断
自公政権の施策断罪 原告利用者の勝訴確定
しんぶん赤旗 2025年6月28日
生活保護基準の大幅な引き下げは憲法25条の生存権に反するとして、全国の利用者が国と自治体を訴えた「いのちのとりで裁判」の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は27日、保護基準引き下げを「違法」とする初の統一判断を示しました。2014年から全国29都道府県で1000人超がたたかうなかでの「画期的判決」(原告弁護団)です。
厚労相判断に過誤・欠落
宇賀裁判長が判決を読み上げると、法廷の傍聴席の支援者から安堵(あんど)のため息が聞かれました。最高裁前では、弁護団が「司法は生きていた」「勝訴」と書かれた紙を掲げました。集まった原告、支援者らは大きな歓声を上げました。
判決は、厚生労働省が保護基準引き下げで物価下落率を使った「デフレ調整」には合理性がないと指摘。同調整は社会保障審議会の生活保護基準部会などによる検討を経ておらず、専門的知見の裏付けを認められないとしました。そのうえで厚生労働相の判断の過程・手続きには過誤、欠落があり、生活保護法違反だと認定しました。
判決は、国に対する損害賠償請求を棄却しました。一方、宇賀裁判長は「反対意見」で、利用者が最低限度の生活を満たせない状態を9年以上にわたり強いられてきたとして、「精神的損害を慰謝する」必要性を指摘。少なくとも1万円以上の請求を認めるべきだとしました。
上告審の対象になった二つの訴訟のうち、名古屋訴訟原告の千代盛学さんは「感無量です。政治家には二度とこうした訴訟が起きないよう求めたい」と述べ、大阪訴訟原告の小寺アイ子さんは「勝つと信じていたけど、判決を聞くまでは足はがくがくでした。皆さんのおかげです」と涙ながらに語りました。
名古屋訴訟原告弁護団の内河惠一団長は、保護基準引き下げは12年の総選挙での自民党選挙公約を厚労省が実行したものだと批判し、「判決は、利用者の実態に思いをはせ、人間的な配慮がなされた。国に対し、利用者が生活を回復する努力をしたい」と述べました。大阪訴訟弁護団の小久保哲郎事務局長は「完勝と言える」と語りました。
大阪高裁判決(23年4月)では原告の請求を棄却。一方、名古屋高裁判決(23年11月)では、保護基準引き下げを違法として減額決定を取り消し、国に慰謝料を命じました。
生活保護費減額は違法 最高裁統一判断
国は謝罪と被害回復 政策抜本見直し早く
しんぶん赤旗 2025年6月28日
小池書記局長が会見
日本共産党の小池晃書記局長は27日、党本部で記者会見し、政府による生活保護費の削減を違法とした同日の最高裁判決を受け、次のように述べました。
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画期的な最高裁としての統一判断だと思います。「いのちのとりで裁判」で最高裁が統一判断を下して、原告が勝訴しました。原告、弁護団、そして関係者のみなさんのご努力に心から敬意を表したいと思います。
今回の判決は、2013~15年に自公政権が強行した最大10%の生活保護費削減に対して、司法が国の措置を違法と断じる統一判断を下したもので、極めて大きな意義を持つと考えます。
最高裁の統一判断は、保護費削減に際して、厚生労働省が用いた指標が、統計や専門的知見との整合性を欠く上に、専門家の部会に諮ることもなく、厚労省の独断で実行された。このことが何重にも不当であり、違法な手法によって行われたということを断罪しています。
当時、厚労省がここまで強引な保護費削減、保護基準引き下げを実施した背景にあったのは何か。2012年総選挙で政権に復帰した自民党が、生活保護費10%削減を選挙公約に掲げていたという事情があったということは、多くの識者も指摘しているところです。安倍政権の公約実現という結論ありきの保護費削減だったということは明らかだと思います。
国は今回の統一判断を受け止めて、現在係争中のものも含め、全ての原告の訴えを受け入れて、裁判の終結を図るべきです。原告全員に謝罪して、速やかに減額決定を取り消して、被害の回復を図るべきです。
違法な保護基準削減の被害は、原告以外の全国の受給世帯にも及んでいます。保護費が減額された全ての受給者に対しても、全面的な救済措置を講じるべきだと考えます。
なぜこのような違法行為が国によって行われたのかについても、原告を含めた当事者も参加する検証機関をつくって、徹底検証と再発防止を図ることも重要だと思います。
今回の裁判と判決は自公政権が進めてきた生活保護の減額政策、社会保障費削減政策の問題点を根本から問うものになっています。来たるべき参院選挙でも大きな争点にしていきたいと考えています。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。