2025年6月19日木曜日

トランプ、「ルールを守っている」イランを爆撃すると脅す(賀茂川耕助氏)

 耕助のブログに掲題の記事が載りました
 ここに書かれているのは、トランプがイランに対して際限のない猜疑心を抱いているという事実とそれに対してイランは、IAEA等の国際的なルールを順守しているという事実です。
 こうした猜疑心やイラン憎悪の念が米国民にも、また西側諸国にもある程度共通していることは、カナダで開かれたG7で「イスラエル擁護」の合意がなされ、イランへの先制攻撃に対するイスラエルへの批判も出されなかったことからも分かります。
 イラン憎しは歴代の米大統領の一貫した「感情」で、米国は折あらばイランを殲滅したいとして準備を進めてきました。いずれにしてもイスラエルにとってトランプはまたと望めない米国大統領像であると言えます。
 トランプは第1期では新たな戦争を起こさなかった大統領として声価を高めました。しかしいまそれが「虚名であったことが明らかにされる」方向に向かっているのは残念なことです。
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トランプ、「ルールを守っている」イランを爆撃すると脅す
                耕助のブログNo. 2567 2025年6月18日
 Trump Threatens to Bomb Iran to Smithereens for “Playing By the Rules”
                               by Mike Whitney 
もし彼らが取引に応じなければ爆撃が行われるだろう。これまでに見たこともないような爆撃が。   – ドナルド・トランプ大統領{1}
ドナルド・トランプ大統領はイランが条約上の義務の下で承認されている活動に対して、イランへの空爆を開始すると脅している。これは議論をすべきという問題ではない。核兵器不拡散条約(NPT)は、イランを含むすべての締約国に平和目的のために原子力を開発、研究、生産、利用する「譲ることのできない権利」を明確に認めている。この「譲ることのできない権利」にウラン濃縮が含まれている。
トランプは「条約」とは何かを理解していないのか、またはその条項はイランに適用されるべきではないと考えているかのどちらかだろう。わかりやすくするために言っておくと、条約とは主権国家間の正式な法的拘束力のある合意であり、国際法に準拠するものである。貿易、安全保障、核不拡散、環境保護などの問題について、相互の義務や権利、ルールを定めるものである。条約は任意ではなく、行政府の判断で廃止することはできない。条約を批准した国は、その条項を誠実に遵守する法的義務を負う。政治指導者は国家の代表として、これらの義務を守ることが期待されている

だからこそ、われわれはNPTの下での義務を明確に「遵守」している国をなぜトランプが脅すのか理解しがたいのだ。金曜日にエアフォース・ワンでトランプはこう言った:
 彼らは濃縮はしないだろう。もし彼らが濃縮するのであれば、我々は別の方法を取らなければならない。(空爆)そして私はほんとに別の方法はとりたくないが、選択肢はないだろう。濃縮することはあり得ない
トランプには、イランがウランを濃縮できるかどうかを決定する法的権限はない。彼が決めることではないのだ。明らかに親イスラエルに偏っているGrokでさえ、このことを理解している。調べてみよう:
ドナルド・トランプは、一人の私人としてでも米国大統領としてでも、イランにウラン濃縮の停止を要求する国際法上の法的権限はない。イランは主権国家であり、核兵器不拡散条約(NPT)の加盟国として、第3条の保障措置義務と国際原子力機関(IAEA)との包括的保障措置協定(CSA)を遵守することを条件に、ウラン濃縮を含む平和目的の原子力開発を行う第4条の権利を有する。イランがこの権利を行使することを禁止する一方的な法的権限は、米国を含め、国際法上、個々の国家にはない。トランプのいかなる要求も、国連安全保障理事会の決議がない限り、法的拘束力のある指令ではなく、政治的・外交的な行動であり、他の常任理事国(例えばロシアや中国)の同意が必要となる。Grok

トリタ・パルシは、トランプがジョン・ボルトンのイラン政策をどのように採用したかを説明している:
また、国際法にも国連憲章にも、ある国が『脅威となるかならないか』という主観的な認識に基づいて他国を攻撃できるような規定はない。それは非常識であり、集団行動と多国間主義を通じて平和と安全を確保するという国連の努力に反する。それにイランは規則に違反していないのだから、イランに対する信頼できる法的根拠はない。主要メディアが頑なに国民に伝えようとしないのは、イランには核兵器も核兵器開発計画もないということだ。IAEAによればイランは2003年以来「遵守」しており、核物質を兵器プログラムに転用したことはない。言い換えれば、イランに対する法的根拠はまったくない。ゼロだ。
では、トランプが憤慨するポイントは何なのか?なぜ彼は明らかに「ルールを守っている」平和な国を脅しているのだろうか?
トランプ陣営が裕福なシオニストの献金者から1億ドル以上提供されていたことを私は言っただろうか。彼らの野望はテヘラン政府を転覆させ、領土イランを大イスラエルに吸収することだ。
それが要因だろうか?トランプがイランの交渉官と5回にわたって会談し、一度も「核濃縮」の問題に触れることなく、その後、なんと驚くことに、180度急転直下して「濃縮ゼロ」を基本的な要求とし、揺るぎない支持を表明した理由を説明できるだろうか?
その突然の翻意をどう説明するのか?トランプはイスラエルのアジェンダを追求しているのか、それとも「アメリカ・ファースト」を優先しているのか?
そして、濃縮はイランが決して譲らないNPTの1つの条項であることを知っていながら、なぜトランプはこのような薄っぺらで、どうしようもない立場をとるのだろうか?

明白な答えは、トランプは合意を望んでおらず、問題を平和的に解決することを望んでいないということだ。だからこそ彼は融通の利かない1つの問題に焦点を当て、濃縮が戦争の口実として利用される可能性があると(まったく当然ながら)考えたのだ。そしてそれのゴールが、イランとの戦争なのだ
(イラン情勢を注視してきた読者なら、トランプの当初の要求が「イランは核兵器を持てない」というものだったことを覚えているかもしれない。(イランはその要求に同意している)しかし今、彼はこの2つのことが同じであるかのように、こっそりと「濃縮禁止」という表現に変えた。当然ながら、親イスラエル派のメディアは、大統領の策略が露呈することを恐れて、大統領の手際の良さに注目していない。しかし、トランプが和平を本当に望んでいるように見せかけるために交渉を利用し、「協議」が進むにつれてすぐにゴールポストを動かしたことは事実である。結論は、平和的解決はトランプの目的ではなかったということだ。

これは『タイムズ・オブ・イスラエル』(2025年6月8日付)の記事である:
イランは2003年、核兵器開発の鍵となる爆発実験を「多数」実施し、隠蔽していたことが国際原子力機関(IAEA)が5月31日に発表したイスラム共和国の核開発計画に関する報告書の分析で明らかになった。

ワシントンDCを拠点とするシンクタンク「科学と国際安全保障研究所」は、IAEA報告書の要点を分析し公表した。それによるとイランが行った活動は核爆弾開発における「コールドテスト」の準備であった。コールドテストとは、「兵器級ウランではなく、天然ウランまたは劣化ウランを核心とする、完全に組み立てられた核爆弾」を作ることである。{2}
このように、トランプチーム(とその同盟国イスラエル)はイランの完全に合法的な活動に疑いをかけようと必死なのだ。彼らは実際に、2003年(イランが「核兵器プログラムの側面」を認めた期間)に行われた調査の詳細を掘り起こした。IAEAの報告書は、現在違法なことが行われているとか、イランが活発な核兵器開発計画を持っているとか、核物質を他の場所に横流ししているとか、そういうことを示唆しているわけではない彼らが言及していることは20年以上前のことだ。これはジョークだ
そしてイラン側が過去に何度も認めてきた60%まで濃縮されたウランについても、同じルールが適用されている。彼らは何も隠していない。制裁の緩和を求めているだけだ。彼らは経済的な締め付けが嫌いなのだ。あなたは驚いただろうか?
イランがウラン濃縮を高水準で始めたのは、トランプがオバマがまとめた条約(包括的共同作業計画;JCPOA)を破棄したときだ。この条約は史上最も徹底的で厳格な核合意だった。トランプがこの条約を2018年に破棄したとき、イランは将来の政権との交渉の切り札として使えると考え、60%濃縮を始めた。残念ながら、それはうまくいっていない。主にイスラエルが「最大限の圧力」政策を継続させたいと考えているため、彼らがイランの標的に対して空爆を行う準備が整うまで、制裁は維持されている。
ところで、NPTの条項では、イランはウランを60%まで濃縮することが許されている。条約は非核兵器国に対する最大濃縮レベルを明確に定めていないからだ。これは事実だが、この問題に関する主要メディアの報道では100%省略されている。なぜだろうか

イランは核エネルギーを必要としている
多くの人はイランのような莫大な石油資源を持つ国に核エネルギーは必要ないと考えるがそれは間違いだ。イランの発電の多くは、ブシェール原子力発電所で行われている。ブシェール原子力発電所はイランの主要な原子力発電施設であり、低濃縮ウランを使用して大規模な発電を行い、化石燃料への依存を減らしている。
イランはまた、医療診断や治療のために放射性同位体を生産するために核技術を利用している。これは癌の診断や画像診断に広く使用されている。イランはその核プログラムが年間100万人以上の患者に同位体を提供することで医療を支えていると主張している。
イランはまた、産業利用、農業、水資源管理、科学研究、がん治療、技術、放射性同位元素の生産にも原子力を利用している。事実、原子力の「平和利用」を否定されればどの国もNPTに参加しないだろう。なぜ彼らはそうするのだろう?

最後に
米国人は、西側メディアでイランについて読まれることのすべてが信頼できないことを認識すべきだ。それはすべて、同じように悪質な反イランの憎悪と偏見に汚染されている1979年の革命以来今日に至るまで米国の対イラン政策は、執拗な非難、好戦的態度、悪魔化の連鎖である。ワシントンは、イランにふさわしい敬意をもって接したことは一度もないし、今後も接することはないだろう。というのも、根本的なレベルで、アメリカの政治家階級全体が、イランが自国の莫大な資源に対する主権を主張し、ワシントンの厄介な支配者に屈服しないことを軽蔑しているからだ。イランはアンクル・サムの命令に屈することを拒否しているのだから、経済的な締め付けや「最大限の圧力」、そして必然的に戦争で罰せられなければならない。アメリカは地方の農民を鉄拳制裁するのだ
イランのアッバス・アラグチ外相は、先ごろ行われた故ホメイニ師の追悼式典でイランのアプローチを要約した。彼は言った:
 イランの外交政策の主要な基盤は、外国の支配を放棄するという原則に基づいている。トランプの濃縮禁止は、それ自体が支配であり、これはイラン国民にとって容認できない
イランの名誉のために言っておくと、イランはワシントンの終わりのない苛立ちと妨害行為に決して「一歩も譲らなかった」。彼らは自分たちの原則を貫き、いじめや強制なしに、自分たちの開発モデル、自分たちの政治システム、自分たちの集団的未来を選択する自由な国としての権利を守ってきた
ワシントンの脅しや脅迫をはねのけ、主権独立の原則に揺るぎなくコミットしたイランは称賛されるべきだ。イランは45年間もの間、絶え間ない敵意と反目から自分たちの尊厳を守ってきたのだ。
ブラボー、イラン。
Links:
{1} https://www.politico.com/news/2025/03/30/trump-threatens-bomb-iran-00259786
{2} https://www.timesofisrael.com/liveblog_entry/iaea-found-iran-conducted-covered-up-implosion-tests-key-to-building-nuclear-weapon-in-2003/
{3} https://www.unz.com/mwhitney/the-treaty-trump-called-the-worst-deal-in-history-was-the-most-wide-ranging-and-stringent-nuclear-agreement-of-all-time/

https://www.unz.com/mwhitney/trump-threatens-to-bomb-iran-to-smithereens-for-playing-by-the-rules/