米価問題は庶民にとって最大の関心事であり、5キロ2000円ベースのコメが広く早く庶民に行き渡るようにすることは政府の喫緊の課題です。
その点 小泉農水相が単に目前の対応に留まらずに安いコメが早く庶民に行き渡ることを指向していることは、大いなる安心材料です。
いうまでもなく、コメを100%自国で生産ができるようにすることは「食糧安保」上 最重要事項です。しかしそれは今の時点で即座に解決できる問題ではないし、米作体制の構築も同様です。
「世に倦む日日」氏が掲題の記事を出しました。
表題の「国民の生活が第一ではないのか」は、「まずは安いコメを庶民に行き渡らせることが第一である」ということで、そのことをなおざりにする諸々の意見は間違っているという意味です。
その点で小泉農水相の意図は正当で、以前の記事で古賀茂明氏が優秀な「ブレーン」云々と述べたことを思い起こします。
⇒(6月5日)「小泉進次郎たたき」は百害あって一利なし 「農家はかわいそう」という洗脳は解くべき
(追記)文中に「1俵」が出てきますが、それはコメ「60キロ」に当たります
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国民の生活が第一ではないのか - 小泉備蓄米についての藤井聡の分析の誤り
世に倦む日日 2025年6月7日
毎日ずっと、小泉備蓄米とコメ価格の問題がテレビの話題を埋めている。人々の関心がとても高い。今月中旬にG7サミットの日程で関税交渉があり、そこでの合意内容が一つの新たな政局を作る可能性があるが、このままだと 7/3 公示の参院選の主要な争点はコメ問題となり、農政改革が論争の主題となるだろう。小泉進次郎の備蓄米プロジェクトの快進撃によって落ち目の石破政権の支持率が浮揚し、敗色濃厚と観測されていた自民党が息を吹き返しつつある。このまま選挙戦に突入すれば、20年前の純一郎の小泉劇場が再来し、駅前の演説会場に大群衆が押し寄せ、価格引き下げで英雄となった進次郎に歓呼を送る場面が出現するかもしれない。今、野党支持者は、備蓄米に難癖をつけ、価格引き下げ政策の意義を矮小化する投稿をXで拡散工作しているけれど、なぜそのような後ろ向きな対抗戦術で終始させているのか、私には理解できない。
備蓄米を買うために行列に並んだ人々を上から目線で嘲り、サクラだと罵り、そんな時間と労力を払うなら4200円のコメを買った方がコスパ的に安上がりだと揶揄し愚弄するポストを右翼と左翼が共有している。Xの編集者(E.マスク的リバタリアン右翼)がタイムラインに上げ、自民党の選挙勝利を阻止したい左翼がそれを拾って利用するという政治が目撃される。小泉進次郎の功績に水をかけたい左翼が、歪んだ政治的な思惑と動機で、備蓄米にすがる経済弱者を貶める倒錯の図が展開されている。左翼は何を考えているのだろう。物価高で国民は悲鳴を上げている。低所得者は特にそうだ。備蓄米を求めて並ぶ絵は、1円でも安い生鮮食品を探してスーパーのチラシを比較し、2軒3軒店を回って買い物に歩く庶民の姿と同じではないか。低所得者には富裕層と異なるコスパの基準がある。備蓄米に並ぶ生活苦の庶民を傷つける左翼の態度に憤りを覚える。
6/4 のミヤネ屋を見ていたら、品川の内田米店の社長が登場し、コメのスポット市場で銘柄米の卸売価格が下がった事実を紹介、小泉備蓄米放出の効果が表れ始めた状況を説明していた。これまで1俵4万9000円の値だった千葉県産コシヒカリが、一気に4万1000円まで下がったと言う。また、久しく見なかったあきたこまちが出品しているのを確認して驚いたとも言い、小泉備蓄米が市場を動かし始めた証拠だと専門家の見地からコメントした。庶民には朗報に聞こえる。この情報は暫く夜のテレビのニュースに取り上げられなかったが、ようやく 6/6 に報ステが伝えた。23年産24年産のコメを買い占めて相場をつり上げていた卸が、抱えていた現物を市場に出して換金を始めた気配が窺える。内田幸男は宮根誠司の質問に対して、4万1000円ではまだ買わない、3万5000円まで下がるのを待つと答えた。この言葉に勇気を得た視聴者は多いだろう。
Xでは、これまでスーパーの商品棚で不足が目立っていた銘柄米が、急に増え始めたという報告が写真付きで投稿されている。コメの市況感に変化が現れ始めたのは間違いない。卸業者が相場のポジションをロングからショートに切り替え始めたとして、その判断に直接的に大きな影響を及ぼしたのは、おそらく、5/31 に鹿屋で森山裕が発したところの「コメの適正価格は5キロで3000円から3200円程度」という示唆だろう。森山裕は農水族のドンで自民党幹事長の要職である。今、表面の舞台で目立っているのは小泉進次郎だが、実質的に日本の農業政策を仕切っているのは森山裕だ。小泉進次郎は参院選の後どうなるか分からない。進次郎の役割と目的は、第一に参院選で自民党を勝たせるための看板であり、第二に本人がポスト石破を襲って総理総裁になることである。眼中にあるのはその二つで、ずっと農水相を続けて日本の農政と心中しようなどという気は毛頭ない。
森山裕は逆で、まさに今が自分の人生の正念場で集大成のときだ。思ってもいなかった自民党の最高権力者の地位に就き、その政権を守るか失うかという重大局面を迎えたとき、はからずもコメと農政が焦点になった。天の意思と使命を感じて興奮しているだろう。「3000円から3200円」という「森山裕の適正価格」の意味は重い。このコミットは自民党の参院選の選挙公約にスライドする。農水族のドンで自民党幹事長の重責だから、単なるアドバルーンとかテストクォート(⇒この場合は指標)の意味では済まない。簡単に撤回したり修正したりできない。いわゆる鼎の軽重が問われる。かくして、農協を始め業界関係者は、森山裕が提示した数字を政権の direction (同上)と受け止めるだろう。また、この価格水準が森山裕から示されたゆえに、小泉進次郎は参院選まで心置きなく一直線に「価格破壊」に邁進できる環境になった。これは、相場を張っている卸の投機筋にはポジションを転ずる圧力となる。
5/31 に、藤井聡が小泉進次郎を批判するネット記事を上げ、2000円の備蓄米を出しても「米価は下がらない」と断言した。藤井聡は理由を三つ上げている。第一に、品質の悪い不味いコメを出しても市場で差別化されて価格の二重化が進むだけで、美味い銘柄米は高値が維持され、25年産新米もその高値が継続されるだろうとする点。第二に、放出する安い備蓄米は30万トンと少なく、この量は日本人の年間消費量の5%に過ぎず、全体総量からすれば僅かでしかないため、市場価格に影響を与えることはできないとする点。第三に、2000円備蓄米政策の施行は政府の持ち出しであり、支出が嵩むため、石破政権の緊縮財政方針と齟齬をきたすという点。以上だが、第三は意味のない余計な難癖の付言なので無視してよかろう。第一と第二の”分析”も容易に反論できるし、説得力に欠ける言い分だ。小泉備蓄米に反対している左翼・右翼と一部論者は、基本的に藤井聡と同じ認識と論法である
第一の、小泉備蓄米が不味いという主張は、テレビの生放送で試食したコメンテーターたちの感想や、備蓄米を実際に買って炊いた消費者家族の食卓を追いかけたテレビ報道のレポートで、ほぼ論破されたと言っていい。左翼はそれを「サクラ」だと言って詰るけれど、伊藤聡子が発した率直な「美味しい」の反応の信憑性は、視聴者が判断するところだろうし、農水省チームと電通は自信があるから伊藤聡子を味見役に起用したのである。そもそも、古古米は、スーパーで普通に売っているブレンド米の中に入っている。同じものだ。古古古米も一部入っている安いブレンド米商品もあるだろう。産年を記銘しなくてはいけないのは、銘柄米100%の商品だけである。加えて、味についてだが、試食会をテレビで仕掛けた電通の自信の根拠を深読みすれば、小泉備蓄米の味が好評を得られる秘訣として、精米したての白米という利点があったのに違いない。コメの味は精米からの時間が大きく影響する。
銘柄米と小泉備蓄米とが市場価格の二重化として固定するという見方は、一見して頷ける議論だが、しかし、味に大きな差異がないことが確認されれば、銘柄米は高すぎるとか、もっと価格が接近してよいのではという消費者の意見になるだろう。2000円のコメを買い続けたいからもっと販売せよという要求になるはずだ。第二の供給量の点だが、これは藤井聡の勘違いが甚だしい。小泉米の30万トンは第一弾であり、22年産米20万トンと21年産米10万トンが内訳である。その後には、21年産米20万トンと20年産米10万トンの30万トンの予備が控えている。21年産米は古古古米だが、コンビニ3社から購入した消費者に好評なら、第二弾で即20万トンをコンビニと中小スーパーに放出するだろう。弾切れはない。さらに小泉進次郎は、江藤米の戻入と再放出を計画していて、農協と卸にブラフをかけている。余って困るだろうから倉庫に格納している江藤米を政府に戻せと呼びかけている
もし仮に、政府から農協に出荷した30万トンの江藤米の半分が戻入されれば、15万トンの新たな小泉備蓄米が補充される計算になる。合計すると、第一弾が30万トン、第二弾が30万トン(もしくは20万トン)、江藤米戻入・再放出が15万トンとなり、アバウトな見積りで60万トンから70万トンが小泉備蓄米として市場供給される。これは、年間消費量(660万トン)の1割で、6月7月8月9月の消費量220万トンの3割の量に及ぶ。6月から4か月間、市場全体の3割を小泉備蓄米で埋めた場合、果たして市場価格が下がらないという想定があるだろうか。価格は二重化するだろうか。銘柄米は4000円とか5000円の値をそのまま維持できるだろうか。私はそうはならないと思う。藤井聡の予測は外れると確信するし、前提が間違っていると思う。小泉備蓄米は完売する。味を知った消費者はリピート客となり、次も2000円のコメを求める。胃袋の数は一定であり、高値のコメは必ず市場で余る。
6/6、今度はついに、小泉進次郎は「備蓄米が尽きた場合は外国産米の輸入を検討する」と言い出した。伝家の宝刀を抜く構えに出た。ミニマムアクセス米77万トンのうちの主食米10万トンを備蓄米として活用するという牽制は、すでに 6/3 の国会農水委で表明している。野党議員や批判派論者からは、災害非常時の政府備蓄米が払底したらどうするんだとか、価格安定化のために使うのは目的が違うと指摘がされていた。90万-100万トンの備蓄米を政府が確保し常備することは必要だろう。その観点から考えれば、本来の主旨の備蓄米を緊急輸入する施策は間違ってない。これを実行すれば、備蓄米がなくなるとか、備蓄米の量が僅少だから価格引き下げの効果がないという藤井聡の見込みが破綻することが分かるだろう。小泉備蓄米は次々と動的に補充されるのであり、追加補給の手段があるのである。小泉進次郎が農水相に就任したとき、備蓄米を無制限に出すと明言したので、はて、有限の備蓄米をどう無制限に出すのかと訝った。
この男らしい杜撰さが露呈したかと疑った。が、そうではなくて戦略があったのだ。江藤米を戻入する方法があり、輸入米を活用するという秘策があった。これなら確かに小泉備蓄米は無限補充が可能となる。投入量が少なすぎて市場価格に影響を与えられないという問題を覆せる。この急所と懸念を克服できる。市場価格が下落するまでどこまでも小泉備蓄米を流通させて、高値維持を図ろうとする農協・卸をギブアップさせられる。小泉進次郎の目標は25年産新米価格の引き下げを確定させることであり、農協・卸の目標はそれを回避・抑止して高騰させた値段を永久化させることだ。勝負の焦点はそこであり、両者の死闘と攻防が続いている。小泉進次郎が猛然と攻勢をかけ、農協・卸が反撃しつつ逃げている。マスコミを戦場にして、流通を舞台にして、熾烈な戦いが行われている。小泉進次郎に加勢し応援しているのが、玉川徹と宮根誠司であり内田幸男である。農協・卸を擁護しているのが、松平尚也や常本泰志で、野党も農協の協力者である。
小泉進次郎と農協が戦うとなれば、政治の座標軸論的には、市民として農協の味方につくのが常識だろう。だが、私は2000円米の行列に並ぶ人々と同じ無産の庶民層に属し、コメ投機で暴利を貪った資本家側に立つ選択をしない。今回、農協には裏切られた憤りが煮えたぎっている。コメ価格は絶対に下げなくてはいけないと強く念じる。4200円は市場の適正価格ではない。森山裕の言う3000円が限度だ。と言うことは、消費者は1200円の出費を不等価交換させられているのであり、市場の経済内強制で搾取されている。それが問題の本質だ。その1200円は「需給バランスの崩れ」の名目で合理化され、農協・卸・農家の懐に入っている。その金に庶民が別名を付けるなら「コメ農家補償税 / 農協・卸支援税」という”税金”になる。コメの平均消費量は日本人一人当たり月4.2キロであり、この1200円を換算すると一人当たり1000円の出費増という試算になる。年間1万2000円、その〝税金”を毟り取られるのだ。国会で法制化されたわけでもないのに。
コーヒーやチョコレートの値上がりとはわけが違う。輸入原材料の高騰や為替の影響(円安)は基本的に関係ない。コメは100%国産自給の農産物であり、しかも、価格安定が法律に定められた国民の主食の食糧ではないか。学校給食で子どもが栄養にするものだ。子ども食堂やフードバンクや高齢者施設も深刻な打撃を受けている。あらゆる手段を講じて市場価格を直ちに下げなくてはいけない。市民は野党に対してコメ価格を下げる政策行動に出るよう要請すべきで、小泉進次郎と競争して業界を動かすよう督促すべきだ。国民の生活が第一ではないか。その立脚点は動かせない