6月1、2日のしんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
安芸高田市(広島県)元市長の石丸伸二氏は政治団体「再生の道」をつくり、東京都議選、参院選に候補者を擁立しようとしています。しかし同団体は訴えるべき政策を何も持たないことを特質としていてそれには多くの人たちが疑問を持っています。
彼は市長時代には独善的な運営や虚偽の発言で市政を混乱させました。
元全国紙記者の岡本幸信さんによる「石丸市政の実態」連載記事(全2回)です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
石丸・安芸高田市政とは何か 岡本幸信さん 市政実態報告(上)
「改革」でなく暮らし軽視
しんぶん赤旗 2025年6月1日
広島県安芸高田市の石丸伸二元市長は、政治団体「再生の道」をつくり、東京都議選、参院選に候補者を擁立しようとしています。市長時代には独善的な運営や虚偽の発言で市政を混乱させました。同市を取材していた元全国紙記者の岡本幸信さんが、石丸市政の実態を報告します。
(写真)安芸高田市の市有常友住宅
広島市安芸高田市の市有常友住宅に住む大山春香さん(50代)=仮名=は、2022年2月に、「市有住宅の用途廃止について」という市からの通知を受け取った。「紙切れ一枚で(再契約から)2年後に出て行ってくださいという内容でした。移転費用もない。説明会すら行わないままの一方的な通知に驚きました」と話す。
住民らが市へ質問すると、「市職員の対応は、例外なく出て行ってくださいとそっけない態度だった。石丸市長と職員は市民の声をくみ取る姿勢ではなかった」。
住まいを奪う
同市は22年2月、136世帯が入居する市有の常友住宅と甲田住宅について、老朽化を理由に25年度末で廃止することを決定。石丸市長が20年後の財政危機を強調するもとで、公共施設廃止の一環として進めてきた。
大山さんの働きかけで22年4月、常友住宅に住む68世帯のうち54世帯が
退去期間の延長
低所得者、年金受給者などへの救済援助
協議会の設置
を求めた請願書を同市に提出した。入居者らが傍聴席で見守る市議会で、石丸市長は「民間の主に賃貸住宅に対する需要の増加が見込まれる」と答弁。質問をはぐらかす市長の姿に住民らは失望した。
請願に関わった桑原雅子さん(50代)=仮名=は、年金暮らしで、移転するにも月1万円以上の負担増となり、不安が募る住民が多かったという。市議会で石丸市長は市有住宅の廃止について「一言でいえば片付け」と答弁。桑原さんは、「『片付け』の一つが住民の住まいを奪うことだったのか」と憤りを隠さない。
国計画に追随
石丸氏は政治実績として、同市の「財政健全化と行政改革」をあげる。しかし、その内容は市の「公共施設等総合管理計画」を改定し、美術館や老人福祉センターを廃止し、保育所や中学校の統合や支所を含む公共施設の廃止を掲げたことだ。計画を分析した東海自治体問題研究所は、「この計画では魅力ある町にはならないので人口の流出は避けられようがない」と指摘する。
国は各自治体に「公共施設等総合管理計画」の策定を指示している。このなかで十数年先の財政状況や人口減少を推計し、公共施設の縮減を「数値目標化」することを求めている。石丸市政は、「改革」どころか、人口減少で市の消滅を必要以上に叫び、市民に不安を与え、国主導の計画を積極的に追随し、住民の命と暮らしを軽視したのが実態である。
しかも市民への説明不足のまま合意形成を得ずに強引に施策を進めた。このため議会や市民からは不満と批判の声が高まったのが実情だ。
取材したある市民は、石丸市政を振り返り、こう苦言を呈す。「石丸氏は、町が消滅すると恐怖感をあおって支配する人。権力を手にしたとき、人の意見も聞かず、切り捨てられる住民が多く出るのではないか。政治家をめざすなら少なくとも人の意見は聞いてほしい」(つづく)
岡本幸信(おかもと・ゆきのぶ) 1965年広島市生まれ。元全国紙記者、「米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連絡会」事務局次長。22年9月から、愛知県を拠点にし、芸備線魅力創造プロジェクト世話人、愛知地域人権連合事務局次長。
石丸・安芸高田市政とは何か 岡本幸信さん 市政実態報告(下)
市民置き去り、自治破壊
しんぶん赤旗 2025年6月2日
2023年夏以降、広島県安芸高田市の公式動画配信で、石丸伸二市長(当時)が議会や会見で市議や記者をやり玉に挙げた。すると、次々と非公式の切り抜き動画が流された。多くの動画が石丸市長の発言をうのみにし、「公開処刑」、「老害」、「完全論破で公開説教」などの刺激的なタイトルで視聴者をあおった。
誹謗中傷容認
石丸市長は、切り抜き動画を容認。「町や日本のためになるなら燃やせるものは燃やしていい」と議会、マスメディアとの対立を「劇場型エンターテインメント」としてあおり続けた。
石丸市長が「悪役」と描いた市議たちの日常生活は一変した。
山本数博市議は、「『老害』とか『辞めろ』などのはがきや電話が市外から多く送られる」とし、ほかにも、化粧品や4万円のコーヒーメーカーなどが着払いで届けられた。ほかの市議にも同じようないたずらや誹謗(ひぼう)中傷のはがき、電話がいまも続く。
23年夏、石丸市政に反対する複数の市議に殺人をほのめかす投書があり、山本市議は、身の危険を感じ、9月定例会の一般質問を取り下げた。この問題について石丸市長は記者の質問に「被害妄想」と切り捨てた。しかし、翌年2月、SNSに殺人予告を投稿、市議を脅した疑いで県外の男性が広島県警に逮捕=不起訴=された。
石丸市政に反対する市議や市民団体に対し、石丸市長は議会や会見だけでなくSNSの投稿で名指しの批判をしてきた。
名誉毀損認定
山根温子市議から「議会を敵に回すと政策が通らなくなりますよ」と恫喝(どうかつ)を受けたと主張したのも一例。山根市議は、うそのでっち上げの発言による名誉毀損(きそん)だと提訴。今年4月に最高裁が石丸氏による名誉毀損を認定し、市に33万円の賠償を命じた広島高裁の判決が確定した。
20年9月には、石丸市長が議会で「いびきをかいて、ゆうに30分は居眠りをする議員が1名」とSNSに投稿した。居眠りをした武岡隆文市議が、謝罪とともに居眠りの原因が睡眠時無呼吸症候群で軽い脳梗塞を発症したという弁明の診断書のコピーを市長に提出。しかし石丸市長は、診断書を見ずに、シュレッダーにかけ、その後も武岡市議を名指しで指弾した。
武岡市議は嫌がらせや誹謗中傷が増したことで、精神的に追い詰められ、食事が飲み込むことも難しくなるほど憔悴(しょうすい)し、24年1月、68歳で亡くなった。武岡氏の妻が葬儀などで石丸市長へ憤っている姿を見かけたが、今年1月自死した。
石丸氏は、いまだに哀悼の意を表することなく、今年3月に公開された動画でも武岡氏を批判して「これを許してはならない。どう始末してやろうか」と述べ、出演者と一緒に笑い飛ばした。
石丸伸二氏は、地方自治の改革者ではない。身勝手で市民を置き去りにし、民主主義と地方自治を破壊してきた4年間だった。(おわり)