2015年12月12日土曜日

12- 自民党の政治には所得再分配の視点がない

 自民、公明両党は、10%への消費税率引き上げ時に、食料品の軽減税率を導入する形で合意するする方向だと盛んに報じられています。
 見逃せないのは自民党が公明党の主張に譲歩する理由が、 来年の参院選に公明党の協力が絶対的に必要だからだと首相自身が明言していることです。
 実際1選挙区1~3万人いるといわれる公明党支持層(創価学会)の票が、もしも自民党に来ないとなると自民党が大敗するのは明らかなので、非常に功利的な考え方というしかありません。
 食料品の税率を8%に据え置いても、それは高額所得者にも適用されるので消費税の逆進性を緩和するものでないことは明らかです。しかし食料品などの生活必需品に8%もの消費税を課す国は世界のどこにもない=多くの国はゼロであり最大でも5%=ので、せめて8%に抑えるのは極めて当然のことです。
 
 自公の協議を見ていて何よりも問題なのは、消費税の減収分を社会保障費の減額に充てるという姿勢です。それでは経済的弱者への還流という「税の再分配」など起こりようがありません。
 日本は「子供の貧困率」が16・3%で先進国中のワースト4位で、その貧困率は改善されるどころか年々悪化する一方です。
 これはアムネスティーが3年ごとに世界各国の子供の実態をまとめているので、まず子供について明らかにされたということで、もちろんこの高い貧困率は成人にもそのまま当てはまります。
 こうしたことは日本の政治が如何に弱者に優しくないかの現れであって政治家は大いに恥ずべきなのですが、なぜか日本にはそうした風土が見られません。
 
 北海道新聞が「税制改正大綱 所得再分配の視点欠く」とする社説を掲げました。
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(社説) 税制改正大綱 所得再分配の視点欠く
北海道新聞 2015年12月⒒日
 自民、公明両党は、10%への消費税率引き上げ時に導入する軽減税率を除く形で、2016年度税制改正大綱を了承した。
 最大の焦点の軽減税率は、自民党が来夏の参院選での協力をにらみ、幅広い適用を求める公明党に譲歩した結果、対象は加工品を含む食料品に拡大される見通しだ。
 最大1兆円と見込まれる財源を中心に、両党が調整を続ける異例の事態となった。
 
 現時点で確保できた財源は、医療、介護などの自己負担軽減策を見送ることによるものだ。軽減税率は本来、所得の低い人ほど負担感が重くなる消費税の逆進性を緩和するのが目的である。
 低所得者の負担軽減策の財源を、同じ趣旨の対策を削って捻出するのでは本末転倒だ。
 
 軽減税率は選挙の駆け引き材料ではない。逆進性の問題は、消費税に限らず、所得税、法人税、資産課税を含む税制全体の所得再分配機能を高めて解決すべきだ。
 自民党は、消費税増税分を社会保障に充てる「社会保障と税の一体改革」の枠内の財源を主張し、軽減税率による減収は、社会保障費の削減で対応するという。
 あまりに近視眼的ではないか。社会保障の財源不足を消費税だけで穴埋めすれば、高齢化社会の進展で、税率引き上げに歯止めがかからなくなる恐れもある。
 
 確かに、軽減税率には高所得者も恩恵を受ける側面がある。
 しかし、所得税の累進性や資産課税を強めることによって、低所得者への再分配が可能だ。特に、一律20%と低い株式売却益などへの課税強化は検討していい。
 
 一方、安倍晋三政権は法人税減税には熱心で、大綱には実効税率の29・97%への引き下げが明記された。国際競争力強化を名目に、政権発足直後の13年度から7%も下げることになる。
 政府は経済界に対し、減税を条件に設備投資の上積みまで約束させた。経営介入に等しい強硬な態度は、政府自身が賃上げや投資が不十分とみている証左だろう。
 企業の内部留保が増えるだけで減税効果が広く還元されるか疑問だ。軽減税率の財源に窮する中、法人税減税に前のめりになるのは国民の理解を得られまい。
 
 安倍首相は「1億総活躍社会」を掲げ、子育てや介護の支援を打ち出した。本気で社会の底上げを図るのであれば、再分配重視の方向へかじを切る必要がある。
 軽減税率導入の議論を、その契機としなければならない。