2015年12月14日月曜日

思いつきの諸々ではなくて 教育投資が必要 

 京都新聞が社説で、子供の貧困と教育に投じる国の支出の少なさを問題にしました。
 教育の充実は国の根幹にかかわる問題です。
 社説は、「わが国が明治維新以降に急速に国力を増した要因は、江戸時代に武士の子弟は藩校や私塾で相当に学問し、庶民の子は寺子屋で読み書き、そろばんという基礎学力を身に付けていたことにあるとされる」、と指摘しています。
 
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 学びが危ない  未来見すえた投資必要 
京都新聞 2015年12月13日
 「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」。教育基本法第4条は、こう述べている。
 父母の経済力にかかわらず、子どもは能力に応じた教育を受ける権利があると読み替えることができる。教育基本法は、能力がありながら経済的理由で修学困難な人に国や地方公共団体が奨学の措置を講ずるよう求めている。
 
 この教育の機会均等を脅かしかねない事態が進んでいる。子どもに広がる貧困であり、教育に投じる国の公的支出の少なさだ。
 子どもの相対的貧困率は16・3%に達している。子どもの6人に1人が平均的所得の半分に満たない世帯で生活している。貧困率は1985年の10・9%から増加を続け、経済協力開発機構(OECD)加盟の34カ国中で9番目に高い。全世帯の1割弱を占める「ひとり親世帯」では、6割近い子どもが貧困に陥っているという数字もある。
 
 最新のOECDの調査によると、加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合で、日本は3・5%でスロバキアと並び最下位だった。5年連続のことで、国公立の中学校の1学級当たりの生徒数は32人と、加盟国平均の24人を大きく上回り2番目に多かった。
 大学など高等教育機関への公的支出が少ないことも指摘される。国立大は独立法人化されて以来、国の運営費交付金の減額が続いている。財務省は今年10月末、さらに運営費交付金を今後も年に1%ずつ削減する案を示している。
 
 「教育・研究力がやせる。大学の危機」という京都大の山極寿一総長の訴えは当然だ。財務省は同時に大学の自己収入を増やすよう促しており、授業料の引き上げを選択肢に入れざるを得ない。「裕福じゃないが才能のある学生が進学を諦める」との山極総長の懸念を現実のものにしてはいけない。
 わが国が明治維新以降に急速に国力を増した要因は、江戸時代に武士の子弟は藩校や私塾で相当に学問し、庶民の子は寺子屋で読み書き、そろばんという基礎学力を身に付けていたことにあるとされる。その後も教育は父母の関心事であり続け、教育に投資を続ける「教育立国」が国の指針となってきた。
 いま、急速に所得格差が広がり、かつてのぶ厚い中間層がやせ細ってきた。格差拡大の弊害は格差が世代を超えて継承されることにある。少子化と人口減が続くなかで、私たちの生活水準を維持するには、教育にもっと投資して次世代の生産性を高めるほかない。
 
 貧しい家庭への教育支援はすぐに手を打つべきだ。高等教育の充実なしに活力ある社会は生まれない。進学資金のない優秀な学生には給付型の奨学金をもっと用意すべきだろう。
 GDPを100兆円増やすような花火を打ち上げる前に、足元で求められる教育再生に向けた取り組みを急いでほしい。