2015年12月7日月曜日

NHK日曜討論の不正を糾す 植草一秀氏のブログ

 植草一秀氏が、6日のNHK日曜討論を徹底的に批判しました。
 彼は小泉内閣時代の前半には良くテレビに出演していたので、NHKの不正なやり口についてはよく承知しており、非常に説得力があります(その後竹中平蔵氏の不正を追及したところ2度にわたって冤罪を仕掛けられ、テレビなどに出演する機会を奪われました)。
 それにしてもNHKは公共放送の立場からは遠く離れて、一体どこまで安倍内閣の広報機関としての役割に徹しようというのでしょうか。もはや公共放送などと呼べるものではありません。
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不況を景気回復と言い換える大本営NHK日曜討論
植草一秀の『知られざる真実』 2015年12月 6日
12月6日のNHKが『日曜討論』で経済問題を取り扱った。NHKの偏向ぶりは目を覆うばかりである。
日本の四半期GDP成長率は本年4-6月期、7-9月期と2四半期連続でマイナス成長になった。米国の定義では、リセッション=景気後退である。日本の定義でも、常識で判断すれば、景気後退である
それをNHKは「緩やかな回復が続く日本経済」と報道する。第二次大戦で連戦連敗の日本軍について、連戦連勝と報じた大本営と変わらない。
 
圧巻はTPPだ。
甘利経産相を含む5名が出演して、全員がTPP賛成論者なのだ。
NHKは事前に出演候補者に詳細なヒアリングを実施する。誰がどのような考え方を有しているのかを完全に把握する。その上で、出演者を決定する。
この資料に基づいて番組の進行台本を作成し、質問を振り当てる。したがって、その質問に出演者がどのような発言をするのかを事前に把握したうえで番組を構成する。
国会議員が出演する場合には、このような台本作りができないので、生放送の場合には、NHKにとって不都合な発言が飛び出す。山本太郎議員などの発言がその典型例である。
 
事前にヒアリングを行い、NHKが創作したい番組に適する出演者を選ぶ。完全な「やらせ番組」なのである。出演者に「やらせる」のではなく、NHKが仕組む方向に沿う発言を行う出演者を配置するのである。これも「やらせ」の一種である
放送法は、第4条に次の定めを置く。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
 
日本経済について討論するというのなら、日本経済の現状について異なる意見を持つ論者を出演させるべきである。消費税について異なる意見を持つ論者を出演させるべきである。
また、TPPについて論じるなら、TPPについて異なる意見を持つ論者を出演させるべきである。
アベノミクス万歳、消費税増税万歳、TPP万歳を演出する番組なら、政府広報番組 政府礼賛番組 と断り書きをつけるべきである。
 
甘利経済相は、実質賃金がプラスに転じたと発言したが、その最大の理由はインフレ率がゼロにまで低下したことだ。
アベノミクスは第一の矢で金融緩和によるインフレ誘導を掲げていた。これが失敗したから、ようやく実質賃金がプラスになったのであり、アベノミクスが失敗したことを認めたに過ぎない。
企業利益が増加しても労働者の賃金は増えない。安倍首相が経営者に賃上げを要請していると言うが、そんなことで賃金は増えない
とりわけ問題になっているのは中低所得者の所得低迷である。労働者の3割しか大企業には務めていない。その所得の高い大企業労働者の所得を伸ばすことが求められているのではない。
 
TPPの最大の問題であるISD条項について、何も触れないのはNHKが報道責任を放棄していることの表れだ。同一労働同一賃金も、言葉を唱えれば実現するというものでない。最低賃金の時給1000円を、罰則規定付きで法定化するなら話は別だ。
「そうなるといいね」と発言したところで、何の意味もない。
 
討論番組に意味を持たせるには、「意見が対立している問題について」、「できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」論者を出演させることが必要不可欠なのだ。
河野氏は自説を淡々と述べたが、NHKが河野氏を出演させた大きな理由は、河野氏がTPP賛成だからである。
NHKは政府に対峙する強力な論者を絶対に出演させない。公共の電波の不正な利用を放送受信者は抗議するべきである。
 
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