2015年12月28日月曜日

慰安婦問題 韓国紙が「決着は日本次第」と

 政府は28日ソウルで開かれる日韓外相会談で、慰安婦問題について最終決着合意文書を作成することを提案し、韓国側が受け入れた場合元慰安婦に対する支援策として、新たに1億円超の基金を創設するということです。日本側が「最終決着」とする意味は、今後は慰安婦問題を蒸し返さないことを双方で確認するということで、ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像の撤去も求めるとしています。
 新たな基金は、日本は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場を踏まえながら元慰安婦を支援するという趣旨で、かつてのアジア女性基金と同様の制度を構想しています。
 
 これについて27日の産経新聞は、韓国の朝鮮日報東亜日報中央日報などが、「解決策は被害者の元慰安婦女性らが受け入れ、韓国国民も納得できるものでなければならない」、「安倍首相と日本政府が慰安婦問題を『国家的責任』(日本国と軍の責任)と認めることを明確にすることが必須条件」「村山談話と河野談話で言及された慰安婦強制連行の事実認定などが守るべき最小限」、などと主張していることを紹介しました。
 
 いずれも納得できる主張であり、そうした意向に沿うことなしに戦後70年来解決されないで来た問題に決着がつくとは思われません。
 日本は1965年の日韓請求権協定(日韓基本条約)全て解決済みとの立場ですが、その協定は当時韓国でも日本国内でも猛烈な反対運動のなかで強引に結ばれたものでした。
 いずれにしても、それによって日韓間の戦後問題が解決しなかったという現実を前提にした上で今回決着を図ろうとするのですから、それなりに十分に準備されたものである必要があります。
 つまり政府は、この件について天木直人氏が26日のブログで述べた趣旨をよく理解することが重要です。
※  12月26日  慰安婦問題 新基金の創設を提案へ

 日本政府は総額1億円超の基金を考えているということですが、一体それで誠意が伝わるとでも思っているのでしょうか。
 安倍首相は今年の4月米議会で演説するにあたって、事前に原稿を米側にチェックしたもらったということです。随分と卑屈な話ですが、そうした米国への配慮のせめて数分の1ほどは韓国に対しても払う必要があるのではないでしょうか。
 
 産経新聞及び(韓国)中央日報社説、朝鮮日報の記事を紹介します。
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慰安婦問題 韓国紙「決着は日本次第」 強気の論調「国家責任認めよ」
産経新聞 2015年12月27日
 【ソウル=名村隆寛】韓国の主要各紙(26日付)は、28日にソウルで行われる日韓外相会談の議題となる慰安婦問題に関する社説を一斉に掲載した。朝鮮日報は「政治的決断だけで解決するような問題ではない。(解決策は)被害者の元慰安婦女性らが受け入れ、韓国国民も納得できるものでなければならない」と指摘。「焦点は、日本が国家次元での法的責任をどこまで認めるかに集約される。安倍晋三首相に覚悟があるのなら、最終決着の方策を日本側が持ってこなければならない」と求めた。
 
 また、東亜日報は「国際社会が日本を注視している」とした上で、「慰安婦問題を本当に解決するならば、安倍首相と日本政府が問題を『国家的責任』と認めることを明確にすることが必須条件だ」と主張した。さらに「慰安婦の強制動員が個人的、道義的な水準を超え、日本国と軍の責任だったということを明確にしなければならない」とも訴え、「問題解決は基本的に日本の態度にかかっている」とした。
 
 中央日報は、外相会談で前向きな結果が出ることに期待しつつも、「村山談話と河野談話で言及された慰安婦強制連行の事実認定などが、守るべき最小限」とし、「交渉内容には慰安婦被害者の意見も反映されねばならない」と強調した。ソウルの日本大使館前に違法設置された慰安婦像の撤去に関しては「ほとんどは韓国政府が処理できるものではない。海外で設置された少女像(慰安婦像)に韓国政府が何ができるのか」と撤去不可能を示唆した。
 
 
【社説】慰安婦会談、前向きな姿勢もマジノ線は守るべき
(韓国)中央日報 日本語版 2015年12月26日
   慰安婦問題解決のための韓日外相会談が28日ごろ開かれる。ふさがった両国関係を開くきっかけが用意されたという点で歓迎する。 
 
  政治葛藤が深まっても経済協力には影響がないという「アジアンパラドックス」まで崩れるほど、安倍首相の執権後の韓日関係は悪化の一途だった。慰安婦葛藤に日本教科書問題までが重なり、両国の感情は悪化するだけ悪化した。さらに韓流ブームまで弱まり、日本人観光客と両国間貿易も激減した。国民感情の悪化が韓日関係の足かせとなったのは間違いない。 
 
  日本は民主主義的な価値と自由市場制度を韓国と共有する最も近い隣国だ。北朝鮮の脅威にも共に向き合い、韓日米3角同盟の一つの軸を担う友邦だ。このような隣国と恨み合って過ごすというのはいかなる理由であれ不幸なことだ。したがって今回の外相会談では前向きな結果が出ることを期待する。 
 
  外交というものは「10対0」という完勝はありえないゲームだ。こちらの要求を貫徹させるには相手の要求も聞かなければいけない。そうでなければ外交的な妥協と合意はない。大乗的な決断が必要な理由だ。 
  しかしいくら交渉で融通性を発揮しても受け入れられないマジノ線がある。村山談話と河野談話で言及した慰安婦強制連行事実の認定などが守るべきラインだ。今回の会談が安倍首相の歴史修正主義を助ける格好になってはいけない。 
  また、交渉の内容には慰安婦被害者の意も反映されなければいけない。道義的にも、実務的にも重要なことだ。被害当事者が責任認定をめぐる日本側の態度や慰労金金額などに満足できず、後にまた問題を提起すればどうするのか。 
 
  慰安婦像の処理も注意が必要な点だ。日本は国内外の慰安婦像の撤去を望むようだが、ほとんどは政府が処理できる事案でない。海外同胞が異国の地に設置した少女像に対し、政府は何ができるのか。未来志向的に大乗的融通性を発揮するものの、可能・不可能を区別する慧眼も必要だ。 
 
 
慰安婦:韓日外相会談の成否を分ける「日本国の責任認定」問題
韓日外相会談4大争点
朝鮮日報 日本語版  2015年12月26日
 今年も四日を残すばかりの28日にソウルで行われる慰安婦問題に関する韓日外相会談の成否は、「日本の国としての責任認定」問題をどう解決するかにかかっている。慰安婦交渉の各論である日本首相の謝罪書簡の文言や、元慰安婦のための支援金の性格・名称などがすべてこの問題と直結しているからだ。
 韓国政府の基本的立場は、日本がどのような形であれ慰安婦問題に対する国としての責任を認めるべきだというものだ。一方、日本は1965年の韓日基本条約ですべての法的責任は解決しているが、人道的見地から元慰安婦に何らかの措置は可能だと主張してきた。
 
(1)謝罪文に盛り込まれる「責任」の表現は?
 韓日間には慰安婦問題と関連して日本から正式な謝罪文が発表されるべきだという共通認識が形成されている。問題は、謝罪文に「責任」に関連する文言がどのように記載されるのかだ。なぜなら、これには慰安婦問題に対する日本側の認識を活字化する象徴的な意味があるからだ。
 韓国政府は「あいまいな表現はだめだ」と日本側にプレッシャーをかけてきたと言われている。日本は国としての責任を認めたものと解釈できる表現を明記しなければならないということだ。日本は韓国側の立場を理解すると言いながらも、韓国側が望む答えを出してはいない。東京の外交消息筋は「これについては安倍晋三首相の政治的決断がなければ解決不可能」と話す。安倍首相が「私が責任を取る」と言ったことがこれに関連しているのか注目される。
 
(2)謝罪文、誰が書いてどう渡す?
ということだ。朴槿恵(パク・クンヘ)政権は「形式が内容を支配する」として、形式の部分でも断固とした姿勢を見せてきた。
 元慰安婦たちは、日本の首相が個人の資格ではなく日本政府を代表して直接謝罪することを望んでいる。しかし、これは現実的に見て実現の可能性が高くない。このため、両国は交渉を通じて日本の首相が手紙を書き、これを駐韓日本大使が元慰安婦の前で読み上げるという間接的な方法を最も有力な案として検討している。これは、李明博(イ・ミョンバク)政権末期の交渉でも合意している部分だ。
 
(3)慰安婦強制連行の認定問題は?
 慰安婦の強制連行をめぐり両国の意見の違いがどのように整理されるかも関心事だ。安倍政権は昨年6月に慰安婦連行の強制性を認めた「河野談話」(1993年)に対する見直し作業を行い、この談話は政治的駆け引きの産物だと結論付けた。河野談話を毀損(きそん)し、日本の国としての責任をうやむやにしようという算段だったのだ。
 これと関連して共同通信は25日、「岸田文雄外相は今回の会談で慰安婦(連行)に強制性はなかったという確認を求める姿勢なので、(韓国側の)反発を買う可能性もある」と報道した。日本が実際にそのように出てくれば、今回の会談は決裂する可能性が高い。韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)などの慰安婦関連団体は河野談話でも不十分だとし、首相の謝罪の手紙などに「日本政府が計画的・強制的に慰安婦を連行した」という表現も入れるべきだと主張している。日本との交渉よりも、これらの団体の説得の方に手を焼いている韓国政府としては、慰安婦強制連行について譲歩する余地がない
 
(4)新助成金の性格・名称は?
 両国は、日本政府の予算を投入して過去よりも被害者の現在の医療・福祉支援を拡大することで原則的に合意している。争点は、この予算の性格と名称だ。日本は1995年に発足させた女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)を通じて国民の寄付に政府予算を加えて元慰安婦たちに補償金を支給、「償い金」という言葉を使った。日本の専門家は「日本の『償い金』というのは誤りを認めて金銭的に謝罪するという意味が込められた言葉。法的責任と道徳的責任が入り交じったあいまいな概念だ」と話す。
 このため、挺対協や大多数の元慰安婦たちは「単なる慰労金だ。日本は法的賠償責任を免れようとしている」として支援金の受け取りを拒否した。韓国政府関係者は「日本国内では知韓派の人たちでも『韓国がアジア女性基金という解決策を受け入れていたら、慰安婦問題は20年前に解決していただろう』と残念がっているが、韓国の世論を説得するには日本側の前向きな措置が必要だ」と述べた。
李竜洙(イ・ヨンス)記者