2015年12月31日木曜日

31- 安倍政権「安保法制」デタラメ・詭弁ランキング

 LITERAが年末特別企画として先の「安倍首相今年のトンデモ発言ランキング」に続いて、第二弾:「安倍政権「安保法制」デタラメ・詭弁ランキング」を発表しました。
 
 今度は「安倍政権」による「『安保法制』デタラメ・詭弁」なので、さまざまなメンバーが登場しますが、安倍氏自身もやはり2回ほど登場します。
 いずれもインターネットなどで取り上げられましたので、記憶に新しい言葉ばかりです。
 
 この記事も長いので前編(10位~6位)と後編(5位~1位)に分けられていますが、ここでは一緒にして紹介します。
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憲法破壊の犯罪者たちを忘れるな! 
安倍政権「安保法制」デタラメ・詭弁ランキング(前編)10位〜6位
LITERA 2015年12月29日  
 今年2015年の日本は、安保法制の成立によって歴史的な転換期を迎えた。しかしそれはアメリカ主導の安全保障を法案化し、戦争に巻きこまれるのが決定しただけではない。だれがどう見ても憲法に反していることが明白な法案を民主的な手続きも踏まずに数の論理で押し通すという、戦後最大の汚点ともいえる愚行中の愚行を政権が犯した点もけっして忘れてはいけない。
 
 しかも、安保法制をめぐる国会審議中には、安倍政権の面々からは連日のようにとんでもない言葉が次々と飛び出した。憲法をないがしろにするわ、平気な顔をしてウソをつくわ、悪びれるようすもなくデマは流すわ……と、この国の政治レベルを疑わざるを得ない恐怖の事態が白日のもとに晒された。それはまさに「安倍“恐怖”劇場」と呼ぶにふさわしいものだった。
 
 ふつうなら、毎日、ワイドショーやニュース番組を賑わせたであろう安倍政権による失言・暴言・珍言の数々。しかしご存じの通り、官邸がマスメディアへ睨みを利かせまくった結果、そうした発言は闇に葬られようとしている。ならば、本サイトが残そうではないか。
 民主主義を殺した安保法制暴言ランキング、まずは10位から6位までを見ていこう。
 
 10位
 安倍晋三・総理大臣
 「実際、(自衛隊員の)リスクは下がっていくと思います」(7月8日、ニコニコ生放送『安倍さんがわかりやすくお答えします!平和安全法制のナゼ?ナニ?ドウシテ?』で)
 
 まずは政権の親玉・安倍首相の「絶対に笑ってはいけない」レベルのこの発言から取り上げよう。なぜ「リスクは下がる」のか。その説明はこうだ。
「今度、わたしたちがつくる法律は恒久法ですから、あらかじめ各国とも連携した情報収集や教育訓練が可能となり、いろんな事態に対応できる訓練が可能になりますから、実際、リスクは下がっていくと思います」 
 安保法制の「後方支援」とは、地球上のあらゆる戦闘場所に出かけて行って、もっとも狙われやすい “兵站”を担当する、という危険なもの。それを安倍首相は「訓練さえすれば大丈夫!」と言い張っているのだ。どんなお花畑思考かよ、という話である。
 
 しかし、どうして安倍首相はこんな楽観的なのか。それは彼の“本音”に理由が隠されている。たとえば5月14日の記者会見で、安倍首相は「自衛隊発足以来、今までにも1800名の方々が、様々な任務等で殉職をされております」「自衛隊員は自ら志願し、危険を顧みず、職務を完遂することを宣誓したプロフェッショナルとして、誇りをもって仕事にあたっています」と言っている。
 
 1800名の殉職者というのは災害救助や訓練中に亡くなった人びとの数で、戦闘で亡くなった人はひとりもいない。こうしたごまかし、議論のスリカエの詐術も醜いが、この「自衛隊員だったら死ぬのは覚悟の上」と言わんばかりの主張こそが安倍首相の本音だ。現に、すでに自衛隊は隊員全員に“戦死”を前提とした「秘密のカード」を配布して記入を命令したり(過去記事)、棺桶や遺体処理班の準備さえはじめている(過去記事)。安保法制によって戦死者が出たとき、安倍首相はきっとこう言うだろう。「国を守るために犠牲となった尊い命を無駄にはしていけない。もっと武力を強化させましょう」と。
 そういう意味では「リスクは下がる」発言は悪質極まりないが、あまりにバカバカしすぎてさすがにだれも信じてはいないと思うので10位という結果となった。まさか「リスクは下がるに決まってるだろ!」なんて本気で信じている人……いませんよね?
 
 9位
 佐藤正久(ヒゲの隊長)・自民党参院議員
 「テレビ朝日は徴兵制に前向きなのか?」(7月17日、テレビ朝日『モーニングバード』出演後にTwitterで)
 
 元陸上自衛官で2004年のイラク派遣では第一次復興業務支援隊長を務めた経験を持つ“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参院議員。イラク派兵を知る自衛官OBという経歴を見込んで自民党は安保法制のPRアニメ動画『教えて!ヒゲの隊長』の主人公(?)にも抜擢したが、結果はパロディ版の『ヒゲの隊長に教えてあげてみた』によってコテンパンに説明のウソを暴かれ、挙げ句、再生回数も抜かれるという目も当てられない事態に。しかも当の本人は〈佐藤も思わず吹いた〉〈なかなかよく出来ている〉などとつぶやく始末で、「この人、大丈夫なんだろうか……」と心配になってしまう相当な天然っぷりを見せつけた。
 
 なかでも脱力させられたのが、この一言。『モーニングバード』(テレビ朝日)に生出演し、PR動画よろしく安保法制について安倍政権の言い分を垂れ流したのだが、コメンテーターの玉川徹と長嶋一茂から詰問を受ける結果に。ヒゲの隊長は「日本国民は憲法で守られているので徴兵されることは全体にありえない」と断言したが、逆に一茂から“国民は集団的自衛権と憲法が相反すると思っているのでは?”“女性たちがこの法案を心配しているのは、徴兵制の可能性を否定できないからでは?”などとメッタ斬りにされてしまったのだ。そして番組が終わると、「テレ朝は徴兵制に前向きなのか?」と負け犬の遠吠えのようにツイート。……いやいや、単純に国民の不安をぶつけただけなんですけど。っていうか、これぞ安倍首相の決め台詞「レッテル貼り」なのでは?
 
 ヒゲはその後も安保法制の強行採決時、意気軒昂にパンチを繰り出し、ついにはこの瞬間の写真が米・CNNの報道写真展で2015年を代表する1枚のひとつに選ばれてしまった。国辱ってこういうことだと思いますけど、この人、わかっていないんだろうなあ……。
 
 8位
 菅義偉・官房長官
 「私は全共闘世代だが当時はこんなもんじゃなかった」(7月16日、官房長官記者会見で)
 
 記者会見で「国会周辺では若い人たちが反対の声をあげているが」と訊かれて、菅官房長官の返事がコレ。どう考えても菅サンが国会前でスクラム組んでたとは到底思えないんですけど、実際に現場に行って見たこと、ほんとうにあるのだろうか。というより、今年の国会前のデモだってちゃんとその目で見た上で言っているのだろうか。
 
 しかし、反対派デモを矮小化しようとしたのは、菅官房長官だけではない。たとえば「法的安定性は関係ない」発言で一躍有名になった礒崎陽輔首相補佐官(当時)も、7月15日の大規模デモを「5千人未満ということだそうです。道路にあふれない限り、そんなに多くの人がいる場はありません」とツイート。実際は道路に人があふれ返り、警察の厳重な「道路にあふれさせない」警備によって押し合いへし合いの危険な状況だったのだが……。
 
 そもそもなぜ大規模なデモが起こったかといえば、自分たちが憲法をないがしろにしたり、一向に満足な説明もしなかったからなのだが、菅官房長官をはじめ安倍政権の面々はそのことを無視しつづけた。しかも、世論調査などで無視しきれないまでに反対の声が高まると、菅官房長官は「(反対派は)一部野党やマスコミから洗脳されている」とまで言い出した(8月22日に開かれた弘前市での講演での発言)。
 支持が得られないと「洗脳されている」と決め付ける、この鉄面皮ぶり。今年は映画監督である想田和弘氏が、botと化した菅官房長官の常套句を使えばネトウヨさえ戦闘意欲を欠かせてしまうというユニークな実験も話題を集めたが(過去記事)、まさに菅官房長官は政権を支える“安倍ロボット”なのだろう。
 
 7位
菅義偉・官房長官
「まったく違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいらっしゃいますから」(6月4日、官房長官記者会見で)
 
 そんな“安倍ロボット”が放った言葉のなかで、botで対応できず、絞り出された苦肉の一言がこの発言だ。自民党が国会に招致した長谷部恭男・早稲田大学法学学術院教授のみならず、呼ばれた3人の憲法学者全員が「安保法案は違憲」と述べたことで窮地に立たされた菅官房長官の口からついて出たのが、この壮大なウソだった。
 
「たくさんいらっしゃる」と言ってみたはいいものの、「じゃあ誰がいるの?」とツッコまれ、菅官房長官がひり出したのは「たとえば、百地(章・日本大学教授)先生、長尾(一紘・中央大学名誉教授)先生、西(修・駒沢大学名誉教授)先生がいます」(6月10日)という答え。たったの3人しか出てこなかったのだ(しかも全員が揃いも揃って安倍首相応援団メンバーのオール身内というオチ付きで)。
 さらに見苦しかったのは、そのあと。「全然たくさんじゃないじゃん!」と反撃を喰らうと、平然と「私は数じゃないと思いますよ」。人数の話を持ち出したのは自分なのに、人数は問題じゃないと言い出す……。ロボットでなければできそうもない芸当である。
 
 だが、話はこれで終わらない。追い詰められまくった菅官房長官、最後は「合憲か違憲かは最高裁が決める」と、壮大に議論を放り投げたのだ。だ・か・ら、この話の言い出しっぺ、あなたなんですけどお忘れになって?
 
 6位
 高村正彦・自民党副総裁
 「憲法学者の言う通りにしていたら日本の平和と安全が保たれたか」(6月9日、自民党役員連絡会で)
 
「たいていの憲法学者より私の方が考えてきたという自信はある」(6月11日、朝日新聞の取材に)
 菅官房長官が安倍政権のロボットなら、この人は政権イチの図太い鋼鉄男と呼ぶべきか。それほどに高村発言からは不遜という言葉がピッタリの思い上がり臭がプンプンと漂っていた。「憲法学者より考えてきた」って、一介の弁護士上がりの政治家なだけなのに、そこまで胸を張れる自信の根拠がさっぱりわからない。“オレ様こそ法律家の頂点、オレ様こそ正解”ってか?
 
 だいたい、高村副総裁も安倍首相と同様に砂川判決を合憲の根拠にしてきたが、それ自体が過去の自分の発言と論理矛盾を起こしていた。なにせこの人、1999年の国会答弁では「集団的自衛権の行使は我が国の憲法上、許されない」と断言していたのだから。
 
 高村副総裁自らが明言しているように、現在の安倍政権は「プチ独裁」状態だ(過去記事)。少数派閥から“安倍独裁体制”に丸乗りして生き残ってきた高村氏にとっては、プチ独裁のなかではそうやって過去の発言もなかったことにしなくてはならないのだろうが、「日本の平和と安全」のためには憲法はないがしろにしてもいい、なんてことがまかり通るなど絶対に許されない。なのに、この法治国家の意味さえ知らない人物が法律家を名乗ってデカい顔をする政権って……。「世も末」とはこのことである。
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 駆け足で10〜6位までお届けしたが、もうすでにどっとお疲れの読者も多いことだろう。しかし、5〜1位はこの比ではない暴言が次々にランクインしている。どうか後編も、心してお付き合いいただきたい。 (編集部)
 
 
こいつらが民主主義を殺した! 
安倍政権「安保法制」デタラメ・詭弁ランキング(編)5位〜1位
LITERA 2015年12月29日
 安保法制の成立にいたるまで安倍政権の面々から飛び出した暴言・失言・珍言の数々を振り返る、この企画。前編につづいて後編をお届けしよう。
 日本中を驚かせたあの発言、思わず唖然とさせられたあの発言も、ついに登場。今年2015年の日本の危機的状況を表す迷発言を、ぜひ脳裏に焼き付けてほしい。
 
 5位
 武藤貴也・自民党衆院議員(当時)
 「彼ら彼女らの主張は「だって戦争に行きたくないじゃん」という自分中心、極端な利己的考えに基づく」(7月30日、Twitterで)
 
 ノーマークだった安倍チルドレンがぶっ放したこのツイートは、瞬く間に問題化。それもそうだろう。なにせこれ、「戦争に行くことこそ国民の義務」「お国のために命もかけられないのか」と主張しているようなものなのだから。このツイートで武藤議員は、〈利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろうと思うが、非常に残念だ〉と、安倍首相の「日教組!」の罵声が脳内にこだまするような意見も一緒に述べていたが、たしかに戦後教育は問題があったのだろう。だって、憲法で戦力の不保持が明記されていると知らないらしい人間が議員をやっているなんて、何の冗談かって話である。
 
「戦前か!」というツッコミもむなしくなる破壊力の武藤発言だが、しかしこれこそがまさしく安倍エッセンスを濃色させた、安倍政権の本音だ。彼は以前から〈戦争したくないなら国会周辺ではなく領海侵犯を繰り返す中国大使館前やミサイル実験を繰り返す北朝鮮朝鮮総連前で反戦の訴えをすべきだ〉と脅威を煽った挙げ句に話をすり替えるなど、安倍首相がほんとうは言いたくても言えない主張ばかりを開陳。雑誌のインタビューでは〈日本は自力で国を守れるように自主核武装を急ぐべきなのです〉とさえ言い切っている。
 
 だが、愕然とさせられるのは発言だけではない。この大きく問題になった「利己的」発言を自民党は不問に付し、結果的に武藤議員が自民党を追われたのは、発言後に「週刊文春」(文藝春秋)がスッパ抜いた「新規公開株を国会議員枠で買える」などと持ちかけていたという金銭トラブルが理由だからだ。ふつうなら、こんな戦前回帰の危険な発言が飛び出せば、マスコミも食いついて猛バッシングを繰り広げただろうが、もうこの国ではそんな光景さえ見られない。安倍首相や武藤議員が目指す戦前体制は、もうすでにつくられはじめているのである。
 
 4位
 礒崎陽輔・内閣総理大臣補佐官(当時) 
 「法的安定性は関係ない」(7月26日、大分市での国政報告会で)
 
 武藤議員の発言も相当に物騒だが、それを上回るインパクトだったのが、この「法的安定性は関係ない」発言だ。この言葉が飛び出した講演会では「我が国を守るために必要なことを憲法がダメだということはあり得ない」とも言い切っていたのだから、開いた口が塞がらない。なにせ礒崎氏は安倍首相の右腕と呼ばれていた人物。そんな重要ポストの人間が平然と公の場で法治国家を否定するとは……。
 
 だが、やはりこれも安倍首相の本音なのだろう。現に、安保法制推進論者の意見は「必要だからやらなければならない」という理屈に貫かれていた。安倍首相は一応、集団的自衛権行使を容認しても法的安定性は保たれると強弁してきたが、本音の部分では、法的安定性より必要性が優先されると思っている。だからこそ、側近中の側近だった礒崎氏の口からこんな言葉が出てしまったのだろう。
 
 しかも礒崎氏は“大人げない”という点でも安倍首相と共通する。たとえば、礒崎氏は6月にツイッターで安保法制について、〈「うちにはまだ延焼していないので、後ろから応援します。」と言って消火活動に加わらないで、我が家を本当に守れるのかという課題なのです〉と、安倍首相と同じく火事にたとえるという無茶苦茶な話を展開。しかし、そのアホ理論を10代の女性があっさり論破してしまった。そのとき礒崎氏は〈中身の理由を言わないで結論だけ「バカ」というのは「××」ですよ〉〈あなたこそ、一から勉強し直してください〉などとムキになって反論。ネット上では「大人げない」「情けなすぎる」と総ツッコミを受けたのだ。キレるとすぐにヤジを飛ばしてしまう親方様にそっくりである。
 この側近にして、あの首相、とも言えなくないが、それにしたって議員のレベル、低すぎやしないだろうか……(嘆息)。
 
 3位
中谷元・防衛相
「現在の憲法をいかにこの(安保)法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえて閣議決定を行った」(6月5日、衆院特別委員会で)
 
 前述の「法的安定性は関係ない」もたまげたが、もっと度肝を抜かれたのは、この言葉。中谷防衛相が何を言っているかというと、憲法を踏まえて法律があるのではなく、法律が先にあって憲法は帳尻合わせすればいい、と語っているのだ。
 
 そもそも日本国憲法第98条には、法律は憲法に反してはならない、とある。だが、中谷防衛相は「憲法は骨抜きにしてしまえ」と言っている。つまり立憲主義を見事に大否定してみせたわけだ。しかも、ツイッターや講演会でうっかり言ってしまったのではない、国会の場で堂々と防衛大臣が述べたのだ。
 解釈改憲による安保法制は立憲主義の否定だ、と多くの人が警鐘を鳴らし、反対の根拠にしてきたが、この中谷発言はその問題認識の正しさを逆に証明したかたちとなった。それくらい法治国家としてあり得ない発言だが、恐ろしいのはこの答弁は野党から非難されたくらいで、たいして大きな問題になっていない、という事実だろう。
 そして、中谷防衛相はさらに“安保法制のありえなさ”を答弁で証明している。それが次の発言だ。
 
 2位
 中谷元・防衛相 
 「核兵器は核弾頭を持っており、分類は弾薬にあたる」(8月5日、参院特別委員会で)
 
 驚きのあまり言葉を失うとはこのことだ。安保法制では自衛隊による「弾薬」の輸送が可能になるが、しかし一体、何が「弾薬」にあたるのか安倍政権はきっちり説明をしてこなかった。その点を野党からツッコまれ、中谷防衛相が詰め寄られた結果、ボロボロと出てきたのがこの発言。中谷防衛相いわく「手りゅう弾は弾薬」、そして「核兵器も分類は弾薬」だと言うのだ。
 
 いちいち語るまでもないが、手りゅう弾には殺傷能力がある。核兵器にいたっては安倍首相もイラク戦争の話のなかで「大量破壊兵器」と呼んでいた。いや、どこからどう見ても、手りゅう弾も核兵器も「武器」だろう。ちなみに安倍政権は国会答弁で、クラスター爆弾や劣化ウラン弾、ミサイルも「弾薬」認定し、自衛隊による提供・輸送が可能だと述べている。
 だいたい安倍首相は、何かあるとすぐに北朝鮮の弾頭ミサイルや中国の核兵器の話を持ち出して危機を煽るが、じゃああれを「ミサイルじゃなくて弾薬」「核兵器ではなくて弾薬」とでも言うのか。んなわけあるまい。
 
 憲法上ありえないだけではなく、中身自体も支離滅裂だった安保法制。第1位に輝く暴言は、このような安保法制の無茶ぶりが表れた、あの象徴的な言葉だ。
 
 1位
 安倍晋三・総理大臣 
 「(ホルムズ海峡での機雷掃海は)現実の問題として発生することを具体的に想定していない」(9月14日、参院特別委員会で)
 
 ズコー、である。ご存じの通り、安倍首相は何度も何度もホルムズ海峡における機雷掃海を集団的自衛権行使による海外派兵の代表例にしてきた。にもかかわらず、参院特別委での法案採決を直前に控えた9月14日、突然、手のひらを返すように「ホルムズ海峡の機雷掃海は関係ない」と言い出したのだ。
 え? じゃあ集団的自衛権を行使しなきゃいけない理由って何なわけ?と問いつめたくなるが、じつは安倍首相、もうひとつウソをついていた。それはホルムズ海峡の機雷掃海と同じく繰り返し語っていた「邦人輸送中の米輸送艦の防護」、あの赤ちゃんを抱いたお母さんのイラストのアレである。
 
 安倍首相は昨年、集団的自衛権行使容認の閣議決定後の会見からずっと「日本人の命を守るため、自衛隊が米国の船を守る。それをできるようにする」と語ってきた。ところが中谷防衛相が「存立危機事態の認定に当たって日本人の乗船は不可欠ではない」と言ってしまったものだから、安倍首相にも追及の声が拡大。その結果、「日本人が乗っていない船も守る」と開き直ったのだ。
 
 ハナから存立危機事態は「一概に申し上げることはできない」で逃げっぱなしで、数少ない具体例だったホルムズ海峡の機雷掃海も関係ない、日本人の船を守るのが目的と言わんばかりだったのにそれもウソ。となれば、安保法制に立法事実などなくなってしまう。そんな重要な話を開き直ってしまうということは、安倍首相には「国民にていねいに説明する」気がなかっただけでなく、「ほんとうのことは言えない」と国民を欺いたのだ。
 
  ……こうして10〜1位まで振り返れば、おのずと安保法制がいかにデタラメなものか、おわかりいただけただろう。詭弁に次ぐ詭弁を弄し、暴言が噴出してもメディアを黙らせ、数の論理で可決へと押し切った。それが安保法制だったのだ。
 
 何度も繰り返すが、このような憲法や民主的手続きを一切無視して通された法律を受忍することはできない。どうかこの憲法と国民を愚弄した発言の数々を、来年の参院選まで忘れないでいただきたいと思う。来年こそ、こいつらをのさばらせてはいけない。(編集部)