2025年2月6日木曜日

06- トランプ大統領 “米がガザ地区所有” 主張にアラブ諸国から反発

 NHKが掲題の記事を報じました。
 トランプ大統領は日本時間の5日朝、パレスチナのガザ地区について
「米国がガザ地区を長期的に所有し、雇用と住居を無制限に供給する経済開発を行い、国際的な場所にする」、「ガザ地区は何十年もの間、死と破壊の象徴であり、その近くに住む人々にとって最悪だった」、「ガザ地区に住む180万のパレスチナ人が最終的に住むことになるさまざまな場所を建設し、死と破壊、そして、不運を終わらせる」、「ガザの人たちは、別の場所(エジプトなど)への再定住を進めるべき(でその費用は近隣諸国が負担と述べました。
 それは電気や水道などが停止され、下水道もない劣悪極まるな環境の中でいつ銃爆撃で殺されるか分からないガザの住民にとっては光明なのではと思われるのですが、筋を通すパレスチナやアラブ諸国からは強い反発が起きています

 1948年、英国が主導してパレスチナ(地区)に急遽イスラエル国が建設されました。以後無数のパレスチナ人は難民としてガザなどに居住していますが、「2国家共存」という美名は一向に実行されないまま現在に至り、いまもイスラエルによるガザ人民の虐殺が行われる中、英米独をはじめとする西側諸国はその蛮行を放置しています。
 人道に立脚した国際条約が禁止している大量虐殺を行っているネタニヤフは、その根拠に旧約聖書上のアマレク人絶滅を譬えに出していますが、彼らは3千数百年前に絶滅したのですからなんの説得力もありません。アナクロニズムそのものです。

 トランプの提案が検討する余地もないものなのか、「現状の不正義がこのまま継続することに比べれば…」という思いを禁じ得ません。
 併せて櫻井ジャーナルとケイトリン・ジョンストンの記事を紹介します。
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トランプ大統領“米がガザ地区所有”主張にアラブ諸国から反発
                     NHK NEWS WEB 2025年2月5日
アメリカのトランプ大統領が、イスラエルのネタニヤフ首相との会談後に記者会見でアメリカがガザ地区を長期的に所有して再建するなどと主張したことに対し、パレスチナやアラブ諸国からは強い反発が起きています。

◆トランプ大統領 1期目のガザ開発計画
アメリカのトランプ大統領は4日午後、日本時間の5日朝、ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談しました。
その後の共同記者会見で、トランプ大統領は、パレスチナのガザ地区について「アメリカはガザ地区を引き継ぎ、われわれが仕事をする。ガザ地区を所有する。雇用と住居を無制限に供給する経済開発を行う」と述べました。
そして、所有は長期間になるとの考えを示した上で「私は世界の人々がそこに住むことを思い描いている。国際的で信じられないような場所になる。ガザ地区の可能性は信じられないほど大きい」と述べて、パレスチナの人々を含めて世界中から人が集まる場所にすると説明しました。
また、記者団から治安維持のためにアメリカ軍をガザ地区に派遣する可能性があるのか問われたのに対しては「必要であれば派遣する」と答えました。
一方、ガザ地区の住民の今後についてトランプ大統領は「ガザ地区は何十年もの間、死と破壊の象徴であり、その近くに住む人々にとって最悪だった。ガザ地区に住む180万のパレスチナ人が最終的に住むことになるさまざまな場所を建設する。死と破壊、そして、不運を終わらせる」と述べて、別の場所への再定住を進めるべきだとしています。
再定住の場所については「複数の場所になるかもしれないし、1つの大きな場所になるかもしれない」と述べるとともに、必要な費用は、近隣諸国が負担することに期待を示しました。
これについて、パレスチナやアラブ諸国からは強い反発が起きています。
イスラエルとハマスの間では、1月に停戦合意が成立し、現在は合意の第1段階として6週間の停戦期間中にハマスが人質を段階的に解放し、イスラエルが刑務所などからパレスチナ人を釈放するプロセスが進められています。
ハマスは続く第2段階と第3段階で恒久的な停戦を実現し、ガザ地区の復興に道筋をつけることを重視してきましたが、今回のトランプ大統領の主張によって、停戦合意にも影響を及ぼす可能性があります。

ネタニヤフ首相「注目に値する」支持する考え示す
これに対して、ネタニヤフ首相は共同記者会見で「注目に値すると考え、協議している。歴史を変える可能性があり、追求する価値があると思う」と述べ、支持する考えを示しました。

《トランプ大統領発言への各地の反応》
ガザ地区の住民からは反発
トランプ大統領がガザ地区を長期的に所有して再建するなどと主張したことについてガザ地区の住民からは反発の声があがっています。
このうち北部のガザ市に住む男性は「この土地は私たちのもので、私たちはここにとどまり、どのような圧力を受けようが、ガザ地区を再建します」と話していました。
別の男性は「パレスチナ人にとってよいことをトランプ大統領に期待したことは一度もない。ガザ地区を離れるくらいなら死ぬことを選びます」と話していました。

パレスチナ暫定自治政府 “呼びかけを断固拒否する”
トランプ大統領がガザ地区を長期的に所有して再建するなどと主張したことについて、パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は5日「ガザ地区を所有しパレスチナ人を祖国から移住させるという呼びかけを断固拒否する」とする声明を出しました。
そのうえで「ガザ地区はイスラエルの占領下にあるヨルダン川西岸や東エルサレムと並んでパレスチナ国家に不可欠な土地だ」として、ガザ地区を含めた将来のパレスチナ国家の樹立を改めて訴えました。

ハマス “発言はパレスチナとガザ地区への無知を反映している”
一方、トランプ大統領がガザ地区を長期的に所有して再建すると主張したことについて、イスラム組織ハマスは5日声明を発表し「トランプ大統領の発言は、パレスチナとこの地区に対する深い無知を反映している。ガザ地区はイスラエルに占領されたパレスチナの土地の一部であり、不動産業者の考え方や力による支配の考え方では解決できない」と述べ、強く反発しています。
また、トランプ大統領がガザ地区の住民は別の場所へ再定住すべきとしていることについては「パレスチナ人は、周辺のアラブ諸国やイスラム諸国、それに自由を求める人々の支援を受けて、いかなる退去や追放の試みも阻止するだろう」と述べ、トランプ大統領の考えを強く拒絶し、抵抗していく構えを示しました。

サウジアラビア “パレスチナの権利侵害に反対”
   (後 略)

 記事全文
  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250205/k10014712901000.html 


パレスチナ人を民族浄化すると主張するトランプ大統領
                         櫻井ジャーナル 2025.02.06
 ドナルド・トランプ米大統領は2月4日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と記者会見に臨み、150万人のパレスチナ人をヨルダンやエジプトへ移住させた後、ガザをアメリカが所有するという案を2月4日、記者会見の席で提案、ネタニヤフはそれを賞賛した
 しかし、エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、パレスチナ自治政府、アラブ連盟はガザとヨルダン川西岸からパレスチナ人を移住させるいかなる計画も拒否するとする共同声明を発表ている。
 トランプの移住計画はイスラエルが「建国」の当初から主張していた「民族浄化」にほかならず、ナチスがヨーロッパで行ったこと、あるいはヨーロッパ人がアメリカで行ったことを思い起こさせる。イスラエルは計画を実現するために破壊と殺戮を繰り返し、ネタニヤフは2023年4月にイスラエルの警官隊をイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入させ、同年10月3日にはイスラエル軍に保護された832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入してイスラム教徒を挑発した。ハマスなどの武装集団がイスラエルを陸海空から攻撃したのはその後、10月7日のことだ。
 この攻撃では約1400名のイスラエル人が死亡したとされた。その後1200名に訂正されたが、イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊している。イスラエル軍は自国民の殺害を命令したというのだ。いわゆるハンニバル指令である。2023年10月7日の攻撃が突然始まったわけではない。

 その攻撃から間もなく、ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化している。聖書の中でユダヤ人敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである。その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたというわけだ。
 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。
 ネタニヤフ政権はパレスチナ人だけでなく家畜も皆殺しにした上、彼らの存在を歴史から抹殺すると言っているのだ。そのイスラエルをアメリカやイギリスをはじめとする西側諸国は支援している
 2023年10月7日以降、イスラエルはアメリカ、イギリス、ドイツなどの支援を受けながらガザの建造物を破壊、住民を虐殺してきた。ガザ当局によると、瓦礫の下にある遺体を含めると死亡者数は6万1709名に達し、そのうち子どもは1万4222名だとしている。

 医学雑誌「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表している。同じ時期にガザの保健省は戦争による死亡者数を3万7877人と報告、これはランセットの推計値の59%にすぎなかった。
 トランプはこうした状況のガザについて荒廃し、危険で、居住不可能な場所だと主張しているが、そうした場所にしたのはアメリカ、イギリス、ドイツなどに支援されたイスラエル軍だ。不幸な自然災害の結果ではない。イスラエルの新聞、ハーレツは昨年10月、「民族浄化のように見えるなら、それはおそらく民族浄化である」というタイトルの記事を掲載したが、その通りだ。
 その時点でイスラエル軍は3週間半にわたってガザ北部を包囲、支援物資の流入をほぼ完全に止め、そこに住む何十万人もの人々を飢えさせていた。ジャーナリストがガザへ立ち入ることをイスラエルは禁じているため、内部の状況に関する情報は限られているが、難民キャンプを含むガザ北部地区は連日爆撃され、犠牲者の規模は膨大だとされている。
 パレスチナ人を強制的に移住させるというトランプの提案はアラブ諸国から拒否されることを見込んでのことで、ガザを所有するという発言はイスラエルが停戦を一方的に終わらせないためだとする見方もある。この推測が正しいかどうかは今のところ不明だ


ガザの民族浄化計画を明かすトランプ
                 マスコミに載らない海外記事 2025年2月 4日
ガザ地区を「一掃」して、住民をアメリカの属国エジプトとヨルダンに移住させたいとトランプ大統領は言っているが、これはもちろん民族浄化の教科書的事例になるだろう。
                 ケイトリン・ジョンストン 2025年1月27日

 長くはかからなかった。ガザを「一掃」して、住民をアメリカの属国エジプトとヨルダンに移住させたいとトランプ大統領は言っているが、これはもちろん民族浄化の教科書的事例になるだろう。またパレスチナ人を故郷から追い出し、その土地をユダヤ人が奪い取り、定住するというイスラエル長年の計画とも完全に一致するはずだ。

 土曜日エアフォースワン機内で、ガザ地区から大量のパレスチナ人を受け入れることについてヨルダンのアブドラ2世国王と話したとトランプ大統領は記者団に述べ、同じ問題でエジプトの アブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領とも話し合う予定だと語った。
 「エジプトには人々を受け入れてほしいし、ヨルダンにも人々を受け入れてほしい」とトランプ大統領は記者団に語り、ガザ地区は「本当にひどい状態」で「文字通り破壊現場」だと語った
 「おそらく150万人だが、我々は彼ら全員一掃するつもりだ」とトランプは語った。
 この新たな取り決めは一時的なものにも長期的なものにもなり得るが、イスラエルやワシントンがガザの不都合な住民を一掃し、再建し、全員ピカピカの新居に帰すつもりだと大統領が考えるのは実に世間知らずだ。イスラエルはパレスチナ人から土地を奪い、返還を拒否してきた実に長い歴史があり、それこそが、イスラエル国家そのものと同じくらい古い、避難したパレスチナ人のための、いわゆる「難民キャンプ」が存在している理由だ。
 「大統領としての二期目が始まって僅か五日で、ガザに対する彼の意図をトランプ大統領は疑う余地なく明らかにした」とジョー・ローリアがコンソーシアム・ニュースに書いた。「彼は自分の発言を人道的懸念として示そうとしたが、住民を強制移住させる犯罪を行うことを彼が語っているのに気づかないのはガザについて最も無知な人だけだ」と付け加えた。
 大統領が表明した計画を、パレスチナ人を不幸な状況から救うための慈悲深い取り組みだとトランプ支持者は擁護するだろう。なぜなら、トランプ支持者は、文字通り大統領のすることなら何でも擁護する頭の固いごますり連中だから。だが誤解しないでほしいのは、これはパレスチナ人の歴史的な祖国での存在を終わらせる計画の推進で、イスラエルで最も堕落した政治派閥の最も暗い願望を満たすことになることだ。

 2023年10月7日のハマス攻撃からわずか数日後、イスラエル情報省は、ガザ地区住民をエジプトのシナイ半島に避難させることを提案する文書を作成した。ほぼ同じ時期に、イスラエルのシンクタンクMisgav Institute for National Security & Zionist Strategy(ミスガブ国家安全保障・シオニスト戦略研究所)」は「現時点で、エジプト政府と連携してガザ地区住民全体を避難させる他に類のない稀な機会がある」と主張する論文を発表した
 それ以来、イスラエル政府もイスラエル・メディアも、ガザに対する民族浄化計画を遠慮なく発言するようになった。数週間前、複数の極右国会議員がイスラエル国防大臣イズラエル・カッツに書簡を送り、包囲戦と民間人攻撃で、ガザ北部の住民をこの地域から追い出す「完全浄化」を要求した。昨年11月、イスラエルがガザの民族浄化を実際進めているとイスラエル元国防大臣モシェ・ヤアロンは明言した10月、イスラエルの新聞ハアレツはもし民族浄化のように見えるなら、おそらくそうだ」と題する社説を掲載した。

 イスラエルと擁護者連中が主張したがる説の一つは、この強制的大量移住は「自発的移住」のはずだというものだが、これはばかばかしいたわ言だ。明らかに、ある場所を完全に居住不可能にし、彼らが生活できるように大量援助を急いで届けるのを拒否すれば、銃を突きつけて強制するのと同じくらい確実に、彼らに移住を強いることになる。移住するか、飢えるかの選択肢を人々に与えるのは、彼らに全く選択肢を与えないのと同じだ。
 イスラエルが民族浄化計画を完了した後のガザに対する計画は、もちろんユダヤ人入植地建設の開始だ。昨年、イスラエル軍は、過激な入植運動指導者ダニエラ・ワイスをガザ北部に潜入させ、将来の利用のために土地を偵察させ、ちょっとした論争を巻き起こした4月に、軍事作戦が完了した後にガザに入植する秘密計画がイスラエル政府内にあるとリモル・ソン・ハル・メレクという名の国会議員がイスラエル・テレビで述べた。この全てが一体どこに向かっているか更に明確に説明する必要がある場合に備え、昨年11月、多数のイスラエル当局者が「ガザへの再定住準備」という大胆な題名の催しに参加した

 トランプ発言は、先日ガザで実現できる素晴らしいことばかり熱く記者団に語ったトランプの意図を明らかにするのに役立つ。
 月曜日「ガザは興味深い場所だ。素晴らしい場所だ」と彼は語った。「海に面していて、天候も最高だ。全て良い。ガザでは何か美しいことができる。実に興味深い。あそこなら何か素晴らしいことができる。」
 ヨルダンとエジプトが賄賂を受け取ったり強制されたりして、帝国のガザに対する民族浄化計画に参加できるのかどうかはまだ分からないが、いずれにせよ、これら計画を形容する最終的な言葉は「素晴らしい」のはずだ。
                     (後 略)
記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2025/01/27/trump-reveals-plan-for-the-ethnic-cleansing-of-gaza/