2025年2月10日月曜日

10- 忍び寄る大政翼賛政治の軍靴(植草一秀氏)

 植草氏が掲題の記事を出しました。
 大政翼賛会は、日中戦争が長引くなか さらに米国真珠湾攻撃(1941年12月)に突き進む戦争前夜の40年、政府が既成の政党、労組、農民組合などを解消して作った国民運動団体で、以後45年に敗戦するまで挙国一致型の政治が行われました。
 昨年10月の衆院選では自公は過半数割れに追い込まれましたが、国民党がいち早く自公にすり寄ったため政権交代は起きず、さらに維新、国民、立民が急速に「隠れ自公」の性格を強め 政権与党入りを狙っているため、自公側の選り取り見取り「買い手市場」になっているのが実態だということです。
 それにとどまらず今年の参院選後には、自民党旧安倍派も政権党に留まる方が利権獲得に好都合、立民左派も少数政党に身をやつすよりも政権与党の一角に加われば政治権力の恩恵に預かれるなどの理由から一斉に与党入りを目指し、そうなれば維新や国民党も与党入りを求めるので、一挙に戦前の「大政翼賛政治」=「ほぼオール与党」の日本政治体制が構築される恐れがあり、「日本政治刷新など夢のまた夢」になり兼ねないと植草氏は見ています。

 植草氏は、そんな事態を防止するためにも、彼が一貫して主張している「消費税率5%」連合を構築して参議院選挙を勝利することが必要としています。
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忍び寄る大政翼賛政治の軍靴
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年2月 7日
政界再編の足音が忍び寄っていると言われるが日本政治の今後に期待を寄せることができるのか。
昨年10月総選挙で自公は過半数を割り込んだ。衆院過半数233に対して自公の獲得議席は215.過半数より18議席も少なかった。
自民裏金議員が4名当選し、大分県と鹿児島県選出の自民系議員2名が自民入りして221議席を確保。それでも12議席足りない。

非自公が結束すれば政権交代を実現できた。
この道を模索するべきだったが、選挙後に自公政権持続は直ちに決まった。国民民主党がいち早く自公にすり寄ったためだ。
自公は維新、国民、立民のいずれかと組めば衆議院過半数を確保する。
維新、国民、立民は「隠れ自公」の性格を強め、この三勢力のすべてが政権与党入りを狙っている。

こうなると買い手市場になる自民党は実は選り取り見取りになる。維新、国民、立民のすべてが自民に秋波を送り、連立政権参画の意向をほのめかす。維新、国民、立民の側が自民に接近する姿勢を示す。これでは政治刷新の気運が盛り上がらないのは当然だ。

自公が衆院過半数を割り込んだにもかかわらず、自民内で石破降ろしは本格化していない。
背景に自民内の勢力図激変がある。これまで権勢を誇っていた安倍派が裏金事件で激減。
発言力を急激に低下させた。自民議席は激減したが、安倍派凋落を歓迎する勢力が存在する。
石破首相が、旧安倍派が主導した右路線から距離を置けば、自民の分裂も現実味を帯びる。
しかし、自民党右派だけで衆議院過半数を制する可能性はない。このため、自民党旧安倍派も目立った動きを取ることができない。

選択的夫婦別姓問題で石破首相がこれを容認する姿勢を示すなら自民党は分裂する可能性を高める。その場合、石破首相は自民右派と離別して立民と連立政権樹立に進む可能性も考えられる。
いわゆる大連立だが、この場合には自民が分裂するだけでなく、立民も分裂する可能性がある。
自民・立民大連立の下で自民右派が自民から離脱し、立民左派が立民から離脱する。
政界大再編の可能性が浮上する。

しかし、政界再編をもたらす、もうひとつの原動力を考慮しておく必要がある。
それは、与野党を問わず、政権与党に加わりたいとする利権動機。
政治屋が政権与党に加わろうとする最大の動機は予算配分に関与できること。
与党議員になれば予算計上の細目において各政治屋の要請が通る余地が拡大する。
財務省は個別予算の査定を通じて政権与党議員の意向を取り入れる。
予算配分での利権獲得のために政治屋は何が何でも政権与党入りを目指す。こうなると大連立が膨らむ可能性が高まる。

自民党旧安倍派も政権与党から離脱して冷や飯食いに転じるよりは、気に食わない首相の下でも政権与党に留まる方が利権獲得に好都合と考える。
立民左派も筋を通して大連立を拒絶して少数政党に身をやつすよりも、政権与党の一角に加わり、政治権力の恩恵に預かろうとする。
公明党も、自民が他党との連立に走り、公明の恩義を忘れる行動を示しても、野党に転落するよりは、政権与党の一角に居続けることの方がメリットが大きいと考えるのではないか。
立民との大連立になれば維新や国民は政権与党入りの機会を逃すことになるが、これを回避するために維新や国民も政権与党入りを求めるかも知れない。
こうなると「大政翼賛政治」になる。「ほぼオール与党」の日本政治体制が構築される。日本政治刷新など夢のまた夢。

本年7月に参院選があるから、参院選までは、この意向は隠されるだろう。
しかし、選挙後は自民との連立に加わりたいとする各党の動きが本格化する可能性が高いのではないか。
与野党対決というより、野党の政権与党入り競争が展開されつつあると見るべきと思われる。

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