2025年2月10日月曜日

知事選秘密文書と岸口実議員(植草一秀氏)

 兵庫県の出直し知事選で斎藤元彦氏が勝利しましたが、「2馬力選挙(政府も違反性を認定)」やSNSによるデマの大々的な拡散が選挙結果に決定的に影響を及ぼしたとして問題視されています。
 また「公職選挙法違反」があったとして、郷原弁護士と上脇教授が連名で兵庫県警と神戸地検に告発した件では、異例の早さで受理され、先般、検察と警察の合同部隊が兵庫県のPR会社社長の自宅などを家宅捜索しました。

 出直し選挙中のSNSのデマ宣伝では立花孝志氏が主要な発信源でしたが、最近TBS『報道特集』が「兵庫県知事選をめぐる誹謗中傷 立花孝志氏の発信“情報源” 一枚の文書を検証」『続報』番組で、「11月1日に片山安孝元副知事から面会の要請があり、立花氏はホテルオークラに出向いたが、片山氏ではなく兵庫県議会議員の岸口実氏と面会したという。その面会で手渡されたとされる『秘密文書』の内容が、11月2日以降、選挙演説で流布・拡散された」ものだと報じました。
 立花氏は岸口氏(維新)から「自分が渡したことは秘密にしておいて欲しい」と頼まれたことまで明らかにしているので、その一枚の文書を渡されたのは事実と思われますが、それにさらに、虚偽の情報を盛り込んで選挙戦で流布・拡散したこともまた事実のようで、事態をややこしくしています。
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知事選秘密文書と岸口実議員
              植草一秀の「知られざる真実」 2025年2月 9日
TBS『報道特集』が兵庫県知事問題を続報した。
「兵庫県知事選をめぐる誹謗中傷 立花孝志氏の発信“情報源” 一枚の文書を検証」
            https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1719578 
昨年3月の内部告発から動揺が続く兵庫県政。
兵庫県議会は百条委員会を設置して問題解明に取り組んだ。しかし、その結果が示される前に県議会は9月9日に斎藤元彦知事に対する不信任決議案を全会一致で可決。
斎藤元彦知事は辞職せず自動失職した。知事失職を受けて11月17日に実施された県知事選で斎藤氏が再選された。

主権者である兵庫県民が斎藤氏を信認したということであれば問題はないが、選挙に二つの重大な問題が存在した。
重大な問題の一つは選挙に際して虚偽の情報が流布され、その虚偽情報が選挙結果に大きな影響を与えたと見られること。もう一つの問題は斎藤元彦氏陣営が公選法違反を犯した疑いが浮上したこと。

兵庫県議会は百条委の取りまとめ作業に移行しているが、党派の利害が前面に出て、取りまとめが難航している模様。
この問題で見落とせないことは複数名の死者が出ていること。適正な運用がなされずに失われずに済んだ命があるとすれば重大。責任ある当事者の責任が問われなければならない。

発端は昨年3月に兵庫県西播磨県民局の地位にあったW氏が内部告発を行ったこと。
3月12日ごろに県警、議員、報道機関等の10ヵ所に斎藤元彦知事を告発する文書を送付したとされる。
斎藤知事は3月20日に外部からの情報提供によって内部告発を把握。直ちに県副知事や幹部に徹底調査を命じた。その後、西播磨県民局長が告発者である疑いが高いとの結論を得た。
3月25日、片山副知事ら県幹部が西播磨県民局を抜き打ちで訪問し、W氏の公用PCを押収するとともに事情聴取を行った。
3月27日、県は元西播磨県民局長の3月末定年退職を取りやめ保留することを発表。
斎藤知事は同日の記者会見で「業務時間中なのに嘘八百含めて文書を作って流す行為は、公務員としては失格」と述べた。
4月4日、元西播磨県民局長は、実名で改めて県庁内の公益通報窓口に内部告発文書を提出。
5月7日、県は内部調査の結果として、元西播磨県民局長を停職3ヵ月の懲戒処分とした。

兵庫県議会では百条委員会設置の動きが強まったことに対して、片山安孝副知事は、自民党県議団に対し自身の辞職と引き換えに百条委員会設置を見送るよう働きかけたが拒否された。
県議会は6月中旬に百条委員会設置議案を賛成多数で可決し、百条委員会が設置された。
百条委員会で7月19日に元西播磨県民局長が証言予定だったが、これに先立つ7月7日に元県民局長W氏が死亡しているのが発見された

元県民局長は斎藤知事の言動に対する告発を行ったのであり、斎藤知事の辞任を求める考えを有していたかも知れない。しかしながら、県民局長の告発に真実相当性があるなら、告発は「公益通報」として取り扱われる必要があり、県民局長は公益通報者保護法によって守られる必要があった。

斎藤知事をはじめとする県幹部の当初の対応が公益通報者保護法に違反するものであったのかどうかが第一の論点。第二の論点は県民局長公用PCに保存されていたデータをもとに県民局長が脅された事実の有無。
県幹部がプライバシー保護の観点から守秘義務を負うPCデータを外部に漏洩した疑い、外部の議員等が当該データを元に県民局長を脅迫した疑いが持たれている。

11月に実施された出直し知事選で斎藤氏が当選したが、この選挙戦において虚偽情報が流布された疑いが存在する。
立花孝志氏は斎藤氏を当選させる目的で知事選に出馬。
11月1日に片山安孝元副知事から面会の要請があり、ホテルオークラに出向いたが、片山氏ではなく兵庫県議会議員の岸口実氏と面会したという。その面会で手渡されたとされる「秘密文書」の内容が、11月2日以降、選挙演説で流布・拡散された

『報道特集』は立花氏、岸口氏の両者に対する取材結果を報道。
立花氏が岸口議員から当該文書を手交されたと主張するのに対し、岸口氏は当該文書を手交していないと主張している。
『報道特集』を含む媒体による綿密な取材によって、徐々に真実が明らかになりつつある。
真実に基づき、適正な事後処理策が取られる必要がある。

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