2025年2月3日月曜日

石破内閣の高額療養費予算修正(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 石破政権は昨年末、高額療養費の自己負担上限額の大幅引上げを閣議決定し、今国会で審議されている25年度予算案にこの制度改悪を盛り込みました。植草氏は「これが『医療の自由化』がもたらす帰結であり、いよいよ政府は国民の命綱を断つことを始めた」と述べます。
 これはアベノミクスの「成長戦略」の骨格2に挙げた「医療の自由化」の具体化で、「保健医療の範囲を限定し、一般庶民が受けられる医療をこれに限定する」ものであり、「高額で先端の医療は富裕層だけが受けられる」状況に移行するものです。
 因みに、これにより厚労省は医療費ベースで年5300億円の給付削減になり、それが間接的に軍事費倍増の原資に回ると考えれば、文字通り国民の命が軍事費に投じられることになります。
 植草氏は「予算修正の論議が浮上しているが、最優先で修正が求められるのがこの制度改悪。制度変更をまずは先送りする予算修正を決定する必要がある」と述べています。
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石破内閣の高額療養費予算修正
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年1月31日
1月12日にブログ記事「地獄の始まり高額療養費改変」https://x.gd/CbqVw 
      メルマガ記事「ホラーな日本政府の厚労政策」https://foomii.com/00050 
を掲載した。
成長戦略の美名の下に推進されてきた施策のひとつが「医療の自由化」。
「医療の自由化」によって国民生活の安全弁根幹である保険医療が破壊される。このことに警鐘を鳴らし続けてきた。

「国民皆保険」そのものが崩壊しつつある。政府は「国民皆保険」を守ると言うが、労働者の賃金が減少し続け、社会保険料の負担に耐えられない国民が激増している。
いまや健康保険証を保持することは「ステータスシンボル」とも言われている。
同時に、保険に入っている人が病気に罹患したときに必要十分な医療を受けることができるか。
これが国民皆保険の実体的な意味である。
すべての国民が病気に罹患したときに必要十分な医療を受けられる。これが「国民皆保険」の意味である。「医療の自由化」は、この意味での「国民皆保険」を崩壊させるものだ。

2012年に自民党が公表した「TPPについての考え方」には「TPP交渉参加の判断基準」として5項目が明示された。そのなかに、3 国民皆保険制度を守る。が掲げられた。
しかし、言葉に騙されてはならない。
すべての国民が健康保険に加入するという「建前」は維持されても、すべての国民が病気に罹患したときに「必要十分な医療を受けることができる」かどうかが問題なのだ。
保険に加入していても、必要十分な医療を受けられないのでは「国民皆保険」の名に値しない。

私は2013年6月に『アベノリスク』(講談社)https://x.gd/9V40U を上梓して警鐘を鳴らした。
「アベノミクス」は、1.インフレ誘導=金融緩和、2.財政出動、3.成長戦略、を柱とする政策とされたが、その核心は「成長戦略」にあった。
私は成長戦略の中身が次の五つであることを指摘した。
 1.一次産業自由化、2.医療自由化、3.労働規制撤廃=解雇自由化、4.法人税減税、
 特区創設

「成長戦略」の「成長」という言葉はプラスの響きを持つが、「何の」成長であるかが重要である。アベノミクスの「成長戦略」は「大企業利益の成長戦略」=「一般国民不利益の成長戦略」だった
成長戦略の骨格2に挙げた「医療の自由化」は医療を、1.すべての国民に提供される医療、と、2.富裕層だけが享受できる医療、の「二本立ての医療」に移行させるもの。
保健医療の範囲を限定し、一般庶民が受けられる医療をこれに限定する。
高額で先端の医療は富裕層だけが受けられる状況に移行する。
富裕層は米国の保険会社が販売する高額な保険料支払いを伴う民間医療保険を購入し最先端の高額な医療を受けることになる。これが「医療の自由化」がもたらす帰結

これまでの日本で、「すべての国民が必要十分な医療を受けられる」ことを支えてきたのが「高額療養費制度」である。
「高額療養費制度」とは、高額な治療を受けた場合に患者の負担が重くならないよう年齢や年収に応じて、ひと月あたりの医療費の自己負担に上限を設けているもの。
この「高額療養費制度」について、政府は昨年末に高額療養費の自己負担上限額の大幅引上げを閣議決定。1月24日に開会された今国会で審議されている2025年度予算案にこの制度改悪が盛り込まれている。いよいよ政府は国民の命綱を断つことを始めた。

予算修正の論議が浮上しているが、最優先で修正が求められるのがこの制度改悪。
制度変更をまずは先送りする予算修正を決定する必要がある。

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