「赤旗」政治部長・中祖寅一氏による<政治考>がしんぶん赤旗に掲載されました。
総選挙で高市自民党が圧勝したのは、「30年にわたって経済成長が止まり、賃金が上がらず、少子化が止まらず、そこを襲った物価高に手を打てない自民党政治への深い失望と怒りのマグマが国民の中にたまっている」中で、高市氏が自身の高支持率のタイミングを周到に選び、国会での予算審議を飛ばした「奇襲・超短期・論戦回避という、野党による批判も、国民に考える時間も与えない卑劣なクーデター的選挙手法」で、年代や性別を超えて「高市氏なら何か変えてくれるかもしれない」という「漠然とした期待」を膨らませることに成功した結果であると述べます。
選挙演説では確かに高市氏は歯切れよく断定的な言い方をして国民を欺きました。
一例を挙げると、「日本の食糧自給率を100%にする」とか、「海底からの泥の回収に成功したのでレアアース問題はすぐにでも解決する」かのように話しました。
しかし現状30%台の食糧自給率を100%にするには、「全ての水田をサツマイモ畑に変えないと必要な総カロリーが維持できない」ということで、それではとても国民の健康は維持できません。
レアアースも泥中の成分を分析するだけで2年掛かるし、そこから各種のレアアースを分別して精製する設備(やその過程で生じる廃液の処理設備)の工業化には多大な年月を要します。
要するに威勢のいいことを口にしてもそれらが実現する可能性はないか、仮にあったとしても10年以上も先の話でとても間拍子に合いません。
高市氏が意識的に虚偽を口にしたのでなければ基礎知識の欠落であり、どちらにしても首相として失格です。
また「責任ある積極財政」を「売り」にしていますが、その実態は国債の発行に依存した無責任な放漫財政論であり、円安を加速し金利上昇を招き、現実に基礎的な経済指標が乱高下を続けています。
そんな中で高市首相はトランプが要求する通り、先行き年額20兆円~30兆円超の軍事費を飲み込むつもりのようですが、余りにもバランスを失していて正気の沙汰ではありません。
そもそも経済問題を疎かにして憲法改悪や諜報・防諜機関の設置などの極右政策に奔ろうとしても、国民はそんな要求は持っていないし、具体的に物価高や生活苦をどうしてくれるのかを見ています。いずれ「政治家としての行動倫理の欠如」も明らかにされることでしょう。
早晩、国民の支持は失望に変わり 急速に高市政権が支持を失うのは明らかです。
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<政治考> 「高市旋風」の中身は 不満のマグマ「期待」に
しんぶん赤旗 2026年2月16日
総選挙で圧勝した高市自民党。「高市旋風」といわれる高市早苗首相への強烈な支持の流れがありました。世論の動きと共に、奇襲解散、超短期決戦、論戦回避など、国民に考える余裕を与えない卑劣なクーデター的手法と高市政権が抱える矛盾について考えます。
漠然と膨らむ
「高市フィーバーだ。市井の男女、市民が首相を見ようと走っている」
選挙運動最終日の夕方、編集局に最終盤情勢の知らせが入りました。
東京JR阿佐ケ谷駅南口の演説会。駅前口ータリーは群衆で埋め尽くされ、駅のホームにまで人があふれて身動きのとれない状態の中で高市首相の演説に耳を傾ける人々の姿がありました。首相の選挙演説への人の集まりは最終盤に向かって急速に拡大。屋内では1OOO人収容の会場が1200、1300人とあふれ、地方の街頭でも5000人、首都圏では万単位の人が押し寄せていました。最終的にすさまじい突風として現れました。自民党の比例得票は昨年参院選の1280万票から2100万票超へ800万票も拡大しました。
旋風の中身は何か。新聞やテレビが、投票日翌日の報道で「高市さんなら何か変えてくれるかもしれない」という期待の拡大を共通して指摘しました。9日夜のテレビ朝日系「報道ステーション」は、高市首相を支持した人の声を紹介-「発信力がある。その言葉に期待している」(19歳・学生)、「実行力がある。日本を変えてくれそうな期待感」(20代・医療従事言、「生活が楽になるような政策をすぐ実行してくれそう」(38歳・シングルマザー)、「はっきりしていて割と好感が持てる」(45歳・男性)など。年代や性別を超えた「漠然とした期待」の膨らみが浮き彫りです。
自民政治失望
こうした「漠然とした期待」が旋風のように広がった背景に何かあったのか-。自民党閣僚経験者のー人は言います。
「国民の中に不満、不安のマグマがたまっている。石破前首相は慎重で、マグマを捉えられなかった。高市首相は消費税減税や『責任ある積極財政』というスローガンと語りかけで、マグマを期待に変えた」
国民の中にたまるマグマとは何かー。それは、30年にわたって経済成長が止まり、賃金が上がらず、少子化が止まらず、そこを襲った物価高に手を打てない自民党政治への深い失望と怒りです。その怒りは依然として国民の中にマグマのようにたまっているのです。それを「期待」に変え、自民党を押し上げる旋風となったというのです。
メディア関係者のー人は「男女差別は歴然の中で、ガラスの天井を破った初の女性首相という人気はもちろんだが、高市氏は経済対策を積極的に打ち出した。消費税減税を自民党が政権公約に入れたのは制度導入以降初めて。自民党としてはルビコンを渡った」と強調します。
高市旋風の矛盾 変わらぬ米言いなり大軍拡
新自由主義継続なら期待霧蒜散
同時に見逃せないのは、期待の広がりを逆手に取った高市氏のクーデター的選挙手法です。自身の高支持率のタイミングを周到に選び、国会での予算審議を飛ばした奇襲・超短期・論戦回避という、野党による批判も、国民に考える時間も与えない卑劣な手法で、「摸然とした期待」を広げながら一気に逃げ切るやり方でした。
メディア関係者の一人は「中身は希薄だが、期待の流れが最終盤に急速に広がった」と指摘。「しかし、超短期の選挙戦の中で、首相は論戦から逃げた。SNSでのサナエ推しの風は、円安容認の『ホクホク発言』も、消費税減税公約を巡る党総裁と首相の立場の使い分けなど国民を欺隔するやり方への批判も、統一協会との関係への疑念もかき消した」と述べます。
与党入りした日本維新の会はもちろん、国民民主党、参政党など他の多くの党が「積極財政」や消費減税の財源論などで自民党への対抗軸を示せず、改憲や外国人問題で右へ右への流れを強める結果となりました。野党第1党だった立憲民主党は解党し、自民党との連立に反省のない公明党に吸収されました。
消費税減税は
一方、高市旋風は高市政権自身を脅かすジレンマも抱えます。一つは、国民の不満と怒りのもととなった新自由主義政策を強行せざるを得ず、自らへの期待を吹き飛ばしかねないからです。
国会が始まれば、自民・維新連立合意にも明記されているOTC類似薬の保険外しや、高額療養費制度の改悪、医療費4兆円削減に着手しなければなりません。
一方では、高市早苗首相は、消費税の2年間の食料品非課税を実現できなければ大きな失望を買うことになります。前出の自民党元閣僚は「やらざるを得ない」と指摘しますが、高市首相は9日の会見でも「国民会議での検討加速」にとどまり「実現」を口にしませんでした。
日本共産党の小池晃書記局長は11日の都内での演説で、首相が9日の会見で「『国民会議で検討して夏前までには中間とりまとめを行う」としたことに対し、「なぜ『夏前』なのか。消費税を本気で減税しようというなら、来週(18日)始まる国会に法案を出してその財源などを徹底論議し、一刻も早く実行すべきではないか」と即座に批判しました。
また前出の元閣僚は「トランプ米大統領は『タカイチはもはや何でもできる』と防衛費増額や装備の購入拡大を追ってくる。高市首相はNOとはいえないトランプチルドレンだ。防衛増税も考えなければならなくなる。経済で失政を深めれば改憲も防衛費増も難しくなる」と話します。
首相の「積極財政」論の実態は、国債発行に依存した無責任な放漫財政論であり、財源の不明確な消費税減税論と相まって、円安を加速し、金利上昇を招き、基礎的な経済指標が乱高下を続けています。円安の進行は物価高で国民生活へのダメージをさらに深めます。円安・ドル高是正へ協調した対応(レートチェック)をとっている日米当局の動きにも水を差しかねません。矛盾だらけです。
問われる内実
元閣僚は「今後の政権運営は簡単ではない」と指摘。「高市首相は憲法やインテリジェンス(諜報・防諜機関の設置)をやりたいのだろうが、国民はそんなことには関心は薄い。具体的に生活、経済対策で何をしてくれるかを見ている。300超の議席を取った以上、これからは野党の責任にもできない。消費税減税を進められるか、スピード感も内実も注視されている」と強調しました。
しかしその一方で高市首相は、9日の会見で「憲法改正に対する挑戦」を明言。「改正案を発議し、少しでも早く憲法改正の賛否を問う国民投票が行われる環境をつくっていけるように、私も粘り強く取り組んでいく」と視線を鋭くしました。
前出のメディア関係者のー人は「前門の虎、後門の狼というべき状況だ。膨らんだ期待は必ず縮む」とも指摘。高市首相は、新自由主義政治の転換に踏み出せなければ、国民の期待を裏切り、喝采は激しい批判へと一気に転化しかねない深いジレンマを抱え込みました。
さらに多くのメディア関係者が不安定要因として指摘するのが、NHK討論のキャンセルなど政治家としての行動倫理がずさんであること、裏金問題や統一協会問題での説明責任を果たさない姿勢です。
自民党政治の深い行き詰まりは根本のところで変わってはいません。高市圧勝の旋風は高市政権を脅かすことになります。 (中祖寅ー)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。