2026年10月17日土曜日

王将事件 京都地裁判決(植草一秀氏)

 植草一秀氏の掲題のブログ記事を紹介します。
 京都地裁の西川篤志裁判長は16日、「王将事件」(2013年12月、王将フードサービス社長の大東隆行氏が何者かによって射殺された事件)の実行犯として起訴された工藤会系組幹部の田中幸雄氏への判決公判で、「被告が実行犯であることに合理的な疑いがあり、犯罪の証明がない」などとして無罪を言い渡しました。
 田中氏が大東氏を殺害した直接証拠はありませんでした。このため検察はいくつかの状況証拠を提示して田中氏が実行犯であると主張しました。争点となったのは「たばこの吸い殻」と「2台の盗難バイクと白い軽乗用車」でした。
「吸い殻」について裁判所は、田中氏が吸った吸い殻であることを認める一方、「吸い殻が現場で吸われ、消火されたと認定できない」と指摘し、バイクとスクーターの盗難については「盗んだ犯人が全くの別人ということも十分考えられる」、「盗難現場の車と被告が幼なじみから借りたが同一の可能性は高い」としましたが、「防犯カメラに写った軽乗用車が被告が借りた軽乗用車と同一だと断言できない」と判断し、「スクーターが盗まれた当時、被告が軽乗用車を使用していたという証拠がない」と指摘しました。

 日本の刑事訴訟では有罪率が99%以上という極めて異常な状況にあります。これは「判検一体*」と言われる状況下で、判事が検事に忖度している結果としか考えられません。
(*「裁判官と検察官の間の人事交流(判検交流)によって、両者が一体化し、公正な裁判が損なわれるのではないか」という批判的文脈で使われています)
 西欧では刑事裁判の有罪率は70%前後なので仮にこれを正常値とすれば、有罪のうちの約30%が冤罪ではないかという疑いが持たれます。
 植草氏は、「直接証拠がなく、間接証拠を積み上げて犯罪を立証する場合、『被告が犯人でなければ合理的に説明がつかない』と言えなければ有罪を言い渡してはならない。京都裁判所の判断は妥当で、この種の正当な判断を示す裁判官は日本では稀にしか存在しない」と高く評価します。
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王将事件京都地裁判決
              植草一秀の「知られざる真実」 2026年10月16日
刑事訴訟法第336条
「被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。」
「犯罪の証明」がない限り、無罪を言い渡さなければならない。「疑わしきは被告人の利益に」とも言われる。犯人であることについて合理的な疑いを差しはさむ余地がない程度に犯罪が証明されなければならない。

2013年12月に「餃子の王将」を展開する王将フードサービス社長の大東隆行氏が何者かによって射殺された。
警察は2022年10月に特定危険指定暴力団工藤会系組幹部の田中幸雄氏を逮捕した。
田中氏は別の銃撃事件で服役中だった。検察は無期懲役を求刑。これに対して田中氏は一貫して無罪を主張してきた。
10月16日の判決公判で京都地方裁判所の西川篤志裁判長は「被告が実行犯であることに合理的な疑いがあり、犯罪の証明がない」などとして無罪を言い渡した。
刑事訴訟法336条の条文を根拠とする判決である。

田中氏が大東氏を殺害した直接証拠は存在しなかった。
検察はいくつかの状況証拠を提示して田中氏が実行犯であると主張した。
争点となったのは二つの証拠についての評価。二つの証拠は「たばこの吸い殻」と「2台の盗難バイクと白い軽乗用車」。
現場に2本のたばこの吸い殻が落ちていた。その吸い殻に付着していた唾液のDNA型が被告のものと一致した。検察は、待ち伏せ中に被告がたばこを吸い直後に現場で捨てたと主張した。
他方、事件に使われたとみられるバイクとスクーターが同じ時間帯に盗まれ、スクーターの盗難現場の防犯カメラに被告が幼なじみから借りた白い軽乗用車と特徴が似た車が写っていたと検察が主張した。
吸い殻について裁判所は、田中氏が吸った吸い殻であることを認める一方、「吸い殻が現場で吸われ、消火されたと認定できない」と指摘した。

「極めて用意周到に計画して遂行された犯行とみられ、関わった人物が自分に捜査の手が及ばないよう工作したことは十分想定でき」、「別の真の実行犯が持ち込んだり、被告が犯行とは別の機会に上位の者に命じられて具体的な計画を知らされずに現場に残した可能性を排斥できない」との判断を示した。

バイクとスクーターの盗難について裁判所は、「盗難の手口はごくありふれていて、盗んだ犯人が全くの別人ということも十分考えられる」、「盗難現場の車と被告が幼なじみから借りた白い軽乗用車が同一の可能性は高い」としたが、「防犯カメラに写った車は、警察が対象を絞り込んだ地域以外にあった車両の可能性も否定できず、被告が借りた軽乗用車と同一だと断言できない」と判断した。
また、「スクーターが盗まれた当時、被告が軽乗用車を使用していたという証拠がない」と指摘した。

田中氏が実行犯であることに合理的な疑いを差しはさむ余地がある。したがって、犯罪は証明されておらず、田中氏には無罪を言い渡さなければならないと判断した。
裁判所は判決で「証拠上、いかなる経緯や動機から犯行が行われたのか明らかでなく、犯行全体の実像に結び付くような事実が一切解明されていない」と指摘した。

直接証拠がなく、間接証拠を積み上げて犯罪を立証する場合、「被告が犯人でなければ合理的に説明がつかない」と言えなければ有罪を言い渡してはならない。
京都裁判所の判断は妥当だが、この種の正当な判断を示す裁判官は日本では稀にしか存在しない。

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