2020年9月10日木曜日

安倍政権 生活保護を10月から減額 コロナで困窮者増のなか

 政府は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活困窮する人が増加しているにもかかわらず、食費や光熱費など「生活扶助」の支給額をこの10月に予定通り減額します。

 安倍政権は12年末の総選挙で政権に返り咲くと早速13年に平均6・5%、最大10%という過去最大の給付水準引き下げを強行しました。
 それなのに18年10にもまた生活保護の基準額引き下げました。それは食費や光熱費など「生活扶助」の支給額3年間かけて段階的に引き下げるもので、その削減額は210億円、削減される対象者は生活保護利用者の7割に及びます
 全く役に立たないアベノマスクには466億円を投じたのに、ギリギリ以下の生活扶助費を更に削るのは許されないことです。

 13年の切り下げに当たっては自民党の一部の議員らが、生活保護を不正に受給している人がいるとか、それでパチンコに耽っているなどの悪宣伝を行いました。仮にそうした人たちが居たとしてもそれはごく一部の例外であって決して主要な問題ではありません。
 それよりも問題なのは日本の「生活保護の捕捉率」(⇒ 生活保護を利用する資格がある人のうち、実際に利用している人の割合)が異常に低いことで、厚労省の発表(18年5月)でも229%に過ぎず、英国87%、ドイツ85%などに比べても圧倒的に低くて話になりません。
 これは政府が生活保護を受給するのは不名誉なこととする風潮を誘導(スティグマ作戦)し、厚労省が「水際作戦」と称して生活保護の申請を窓口が受け付けないように自治体を指導しているためです。

 厚労省がそれまでは贅沢品としていた生活保護世帯のエアコンの設置をようやく認めたのは、夜間の熱中症による死亡事故が問題になってきた18年6月でした。それ以前にエアコンを撤去させられた老婦人が、夏場の暑さを避けるためにいつもスーパーの隅にしゃがんでいたという話を、担当部署はどう受け止めたのでしょうか。
 また母一人子一人の家庭で、母親が認知症になって2時間ごとにトイレの世話をする必要が生じたため、息子は介護のため退職して生活保護を申請したものの、役所は息子に「働くように」の一点張りだったために親子心中するしかなった例など、生活保護行政の冷酷さを示す例は限りなくあります。政府も自治体も憲法25条の精神を改めて学ぶべきです。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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自公政権 生活保護来月から減額 コロナで困窮者増なのに
強行は47施策に悪影響
しんぶん赤旗 2020年9月9日

 安倍自公政権は2018年10月から段階的に減額してきた生活保護費のうち食費や光熱費など「生活扶助」の支給額について、来月に予定通り減額を実施します。新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活困窮する人が増える中、「なぜいま減額するのか」と関係団体は批判の声を上げています。(岩井亜紀)

 厚生労働省は生活扶助の基準額を5年に1度見直しており、生活保護水準未満の世帯を多く含む低所得世帯の消費支出とバランスを取るとして、支給額の削減を決めました。同省はこの削減によって保護利用世帯の67%が減額となり、国と地方が負担する生活保護費計約210億円の削減につながると17年に、試算。18年10月から段階的に減額を実施してきました。
 新型コロナ感染拡大の影響で、8月末に解雇者が5万人超となるなど雇用情勢の先行きは厳しくなるいっぽうです。そうした中、生活保護の申請件数は3月、対前月比で約5000件増加し、4月は、同460件増となりました。1人当たり10万円の特別定額給付金の支給決定後の5月は、同約3500件減に転じ、6月も同約900件減小しました。
 申請件数は減少したものの、保護利用世帯数は4月から6月にかけて微増傾向で、生活困窮が解消されていません。
 12年末に発足した安倍自公政権は、生活保護削減を強行してきました。13年8月から15年4月にかけて段階的に保護費減額を実施。これに対して全国の保護利用者が、生存権を規定する憲法25条違反だとして減額処分取り消しを求める「いのちのとりで裁判」を展開しています。安倍自公政権はそのさなかの18年10月から、新たに段階的な減額を行い、今年が最後の年となります。
 生活扶助基準はナショナルミニマム(最低生活水準)で、国民生活の土台となるもの。厚労省自身、医療・福祉、年金など47施策で悪影響が出ることを、18年1月に明らかにしています

1万人の不服審査請求を
 全国生活と健康を守る会連合会の前田美津恵副会長の話 
 第2次安倍政権は発足後、生活保護費の減額を強行してきました。利用者は、夏場は電気代がかさむためクーラーをつけない、下着など衣類の買い物ができない、友人との付き合いを控えるなど基本的な人間らしい暮らしを制約されてきました。
 利用者だれもが厳しい生活を余儀なくされているうえ、新型コロナウイルス感染症予防で消毒や衛生関係の出費がかさんでいます。にもかかわらず、さらに減額を強行することに憤りを感じます。
 2013年8月からの保護費減額に対しては、全都道府県で1万人超の利用者が不服だとして、審査請求をしました。今年10月からの減額に対して、全生連は1万人の審査請求を呼びかけます。
 「いのちのとりで裁判」をめぐり、名古屋地裁が6月に出した判決は、安倍政権に忖度(そんたく)するような判断でした。保護費改定にあたっては「国民の感情、政権与党の公約、他の政策等を広く考慮する必要」があるとして、原告の訴えを棄却したのです。
 安倍政治を終わらせるためにも、名古屋地裁判決をはね返すうえでも、今回の審査請求運動を盛り上げていきたい。