2025年8月7日木曜日

石破首相退陣で待ち受ける「高市早苗・右翼連合政権」の恐怖…最悪の未来に突き進む「3つのシナリオ」

 元経産官僚の古賀茂明氏が掲題の記事を出しました。
 石破首相退陣後に想定される最悪のケースは「高市早苗・右翼連合政権」です。
 10年ほども続いたアベノミクスは円安を誘導し、大々的に国債を発行してもなんの問題もないというデタラメを行って、今日の財政状況を生みました。その結果、これだけのインフレになっても国債利払い費の上昇が怖くて日銀が金利引き上げに動けず、円安がさらに加速して国民の生活が圧迫されます。高市氏はアベノミクスの信奉者なので改善は期待できません。

 また高市氏は閣僚時代も靖国神社を公然と参拝し、「仮に首相になっても適切な時期にきっちりとお参りをしたい」と公言しています。当然中国側から強硬な反応が予想されますが、それを利用して「さらなる軍拡が必要」という論陣を張る可能性があります。
 中国との真っ向対立路線となれば無謀な軍拡路線になり、民生はさらに圧迫され国民は一層困窮します。
 元々米国西太平洋のあらゆる有事において最前線で日本が戦うことを予定しています。高市氏はその任務を何の抵抗もなく担おうとするので、台湾有事だけでなく南シナ海での紛争にも積極的に日本が関与していくことになります。日本の末路は言わずもがなです

 要するに日本の将来はお先真っ暗で、「大敗北」への道を歩むしかないというのが古賀氏の見立てです
 古賀氏は日本「大敗北」のパターンは下記の3つであるとしています。
 1つ目は、台湾有事などに巻き込まれるか、あるいは自らそれを引き起こす側に入り、日中紛争が始まるが、日本は敗戦するかボロボロになるまで長期戦を続けるかで、これは敗北どころではなく破滅の道。
 2つ目は、戦争にはならないが、過大な軍拡予算の負担と野放図なバラマキにより、財政危機に陥る。物価上昇と金利上昇が極端な形で進地方財政も苦しくなり、インフラがボロボロになり、最後はゴミ収集も来なくなるほどに事態が進んで、国民がようやく財政は事実上破綻したと悟るという「大敗北」パターンも十分にありうる。
 3つ目は、原発推進と従来型産業政策の継続により、産業競争力が凋落を続け、賃金は周辺アジア諸国よりも低くなる。外国人労働者に来てもらえなくなり、人手不足が深刻でも、賃金は上げられず生活環境は著しく悪化する。あらゆるものが輸入頼みとなり、しかも普通の日本人には高価で手が出ない。(後 略)

 この救いようのない日本の姿を予想する記事は次のように結ばれています。
5年後なのか10年後なのか。早く事実上の日本破綻、大敗北の日が来た方がいいのかもしれない。この悲惨な道を避けるには、何よりも右翼連合政権の成立を阻止することが必要だ
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
石破首相退陣で待ち受ける「高市早苗・右翼連合政権」の恐怖…最悪の未来に突き進む「3つのシナリオ」 古賀茂明
                        古賀茂明 AERA 2025/08/05
 先週配信の本コラム「立憲・共産党支持者が『石破辞めるな!』と叫ぶ異常事態…参院選の自民党大敗の原因は『裏金議員』と『アベノミクスの失敗』である」の最後に、石破茂首相が辞任し、その後に大右翼連合の政治が実現した場合、何らかの形で「日本大敗北へと向かっていく」と書いた。今週は、具体的に何が起きるのかを考えてみたい

 石破首相辞任となり、小泉進次郎農林水産相ではなく、高市早苗前経済安全保障相が自民党の総裁になれば、自民の右傾化は必至だ。与党病に侵された公明党もさらに右傾化を強める可能性が高い。自公の関係が維持できても、自公だけでは衆参共に過半数を失っているため、そもそも政権を維持できるかどうかさえわからない。自民高市氏を首相候補とすれば、立憲民主党などのリベラル政党と連立ということは考えられない。
 高市氏を支持する層は参政党や国民民主党の支持層と重なることが世論調査などで明らかになっているが、仮に過半数の連立政権を作るとすれば、自公国参となる可能性は極めて高い。場合によっては日本維新の会も加わった自公国参維の巨大な右翼連合政権ができる可能性は十分にある。
 ただし、不安定な政治状況の中、いつ衆議院の解散総選挙になってもおかしくないので、野党各党は、次の衆議院選挙までは、自民との連立を忌避する可能性がある。自民補完勢力だという批判を避けるためだ。当面は、連立ではなく、個別政策で部分連合を作る可能性の方が高そうだ。衆議院選挙後には、本格的大右翼連合政権の可能性は極めて高くなるだろう。
 では、右翼連合政権または、右翼政党が力を持つ、自公と一部の野党の個別政策ごとの連携の政治によって、日本の政治はどう変わるのだろうか。
 参政党などは、かなり思い切ったことを言っているので、日本の政治が根底から変わると思うかもしれないが、結果から見ると、それほど大きな変化はないというのが、私の現時点での見立てだ。その政策の中身は、簡単に言えば、安倍政治の拡大的リフレイン、繰り返しである。そして、最後は、何らかの形による日本大敗北へと向かっていく。
 まず、経済財政政策では、アベノミクスの極端なバラマキと政府の借金拡大の程度がさらに強化される
 高市氏は、自民党の中では、アベノミクスを強化して継承する立場を最も鮮明にしている政治家だ。消費税減税に反対した石破首相とは異なり、食料品の税率をゼロ%にすることを主張している。したがって、野党の消費税減税要求を簡単にのむことができるので、連立の枠組み拡大にはプラスだ。
 財政状況自体についても、債務だけでなく資産を合わせたネットで見ればG7の中でも良好だ、などと述べており、消費税の減税以外の野党が要求する様々なバラマキにも「柔軟に対応する」だろう。何しろ、アベノミクスは、バラマキを続けて国債を発行してもなんの問題もないという出鱈目を言って、今日の財政状況を生んだ。その結果、これだけのインフレになっても、国債利払い費の上昇が怖くて、日銀が金利引き上げに動けず、円安を招いてさらに国民の生活を圧迫するという結果になっている。その悪循環から抜け出すどころか、負のスパイラルはさらに強化されることになる。

防衛政策のタガが完全にはずれてしまう
 また、今回の参議院選挙では防衛費を現在政府が目指している「GDP比2%」を超える水準にするべきだと考える候補者の割合が、参政(45%)や国民民主(30%)の方が自民(25%)よりも高く出た(日本経済新聞社アンケート)が、高市氏も基本的に防衛費増額論者なので、軍拡路線が強化されるのは必至だ。
 また、高市氏は閣僚時代にも靖国神社を公然と参拝していたが、昨年の総裁選の際には、首相になっても「適切な時期にきっちりと普段通り淡々とお参りをしたい」と公言していた。この言葉通り行動すれば、中国との関係は極端に悪化し、中国側から強硬な反応が予想される。高市氏はそれを利用して、さらなる軍拡が必要という論陣を張る可能性がある。中国との真っ向対立路線となれば、中国の軍事力に伍する軍備が必要ということになり、無謀な軍拡路線になるだろう。安倍晋三元首相がやりたくても、中国との関係などを考えて若干抑制していた防衛政策のタガが完全にはずれ、あらゆる意味で、軍事優先の政策に転換していくことが予想される。
 米国のヘグセス国防長官は、西太平洋のあらゆる有事において最前線で日本が戦うことになると明言しているが、高市氏は、この役割を拒否するどころか、むしろ進んで担おうとするはずだ。その場合は、台湾有事だけでなく、南シナ海での紛争にも積極的に日本が関与していくことになる

 軍拡とともに心配なのが、原発である。高市氏はもちろん原発推進論者だが、国民民主はこれに輪をかけたゴリゴリの原発推進主義である。原発「命」と言ってよいほど、その姿勢は突出している。もちろん、支援団体の連合傘下にある電力総連や基幹労連などの票と金欲しさの政策だが、既存原発の再稼働だけでなく、原発の新増設にも熱心だ。参政も次世代原発開発を唱えるなど、これに近い考えを持っている。このため、巨額の原発推進予算が組まれ、また、原発支援のための電気料金による国民負担が拡大することになる。
 右翼連合政権には、もう一つ、失われた30年で最大の問題である、成長できない経済を生み出した大国主義・メンツ優先の産業政策の失敗を繰り返すのではないかという懸念もある。さらに、トヨタに支配された自動車政策の弊害も顕著になるだろう。
 トヨタは、自民党や経済産業省の産業政策に直接介入して、自社の利益を最大化してきたが、実は、国民民主もこのトヨタに完全に従属している。トヨタ労組の影響下にあるからだ。経産省もトヨタの「支配下」にあるため、日本は極端な電気自動車(EV)の発展抑制策をとってきた。トヨタがEVを作れないことと、得意なハイブリッドで儲ける期間をなるべく長引かせることが理由である。この姿勢は変わらないと見られ、引き続き、EVへのシフトが遅れることは確実だ。

海外頼みの再エネと車載電池市場
 実は、原子力推進とEV抑制は、日本の産業競争力を劇的に落とした元凶であることはあまり認識されていない。原発を推進するために再エネへの投資が抑制されたり、休止中の原発の再稼働のために送電線を空けることで、再エネ向けの送電線確保に支障が出たりしている。再エネシフトが大きく遅れたために、世界の過半のシェアを占めていた太陽光パネルや風力発電機産業がほぼ壊滅状態となっている。さらに、その部品や材料の産業も競争力をなくしてしまった。今や中国に完全に抜かれて、もはや自力復活は無理となり、つい先日も、経産省が、風力発電機の部品を作るためにデンマークのベスタス社に補助金を出して、日本に部品製造の拠点を設けてもらうといった計画を発表するという恥ずべき状況だ。
 一方、EVの抑制は、電池産業を潰した。テスラの陰にパナソニックありと言われたのはついこの前のことだが、同社は、車載電池市場で世界ダントツの地位からあっという間に滑り落ち、もはや世界6位2024年通年)で数%のシェアしかない。その結果、絶対的優位にあった電池の部品・材料でも中国に太刀打ちできなくなってきた。
 さらに新たな問題も生じている。原発推進を正当化する理屈として、AIデータセンターの電力需要の激増という話が使われている。そのために、AIデータセンターの消費電力を劇的に減少させる技術開発には予算がつかない。電力需要が減りすぎると原発不要論につながるからだ。日本では、以前このコラムでも紹介した世界で類を見ない半導体を丸ごと水に浸して冷やすという「水浸冷却技術」が開発された。しかし、経産省が前述の理由からこれを支援しないのだ。このため、今や、この技術の開発拠点が台湾に移転する寸前だ。原発推進の大きな副作用と言って良い。
 また、経産省と自民の大国主義、メンツ重視の産業政策が引き続き失敗を重ねそうだ。
 日の丸ジェットは大失敗したのに、また新しいプロジェクトを始める動きがある。ロケットでも、世界は遥か先を行くのに、いまだに日の丸ロケットにこだわり、勝算のない賭けを続けている。
 日の丸半導体のエルピーダは破綻し、同じく日の丸半導体と言われたルネサスも復活せず、日の丸液晶のJDIも苦境に喘ぐ。失敗、失敗の連続なのだ。

 それにもかかわらず、世界最先端半導体の製造業を復活すると約束したラピダスプロジェクトがこれからますます政府資金を吸い尽くす。40ナノレベルで脱落した日本が、いきなり2ナノレベルの半導体を作ると言うのだが、大々的に行った先日の試作品発表会にも提携先や装置納入メーカーなどはゴマスリで顔を出したが、世界の主要な需要家は集まらなかった。これだけ先端半導体が足りない状況なのに、政府の助成金約18兆円に対して、民間の出資はたったの七十数億円。特に米国などのテック企業からは一円も出資が集まらない。誰も成功するとは見ていないからだ。それでも経産省は、巨額の助成金を出し続け、結果的に5年ほど経つと、失敗だが誰も責任は取らないという従来パターンが繰り返されるのは必至だ。

日本は途上国の水準でも中程度
 よく考えると、以上縷々述べてきた予想される失敗は、自民党の失われた30年、特に安倍政治の失敗のリフレイン、繰り返しだということに気づく。
 こうしたことが続けば、当然ながら、日本の経済はお先真っ暗。「大敗北」への道を歩むしかないだろう。
「大敗北」のパターンは大きく分けて3つだ。
 1つ目は、台湾有事などに巻き込まれるか、あるいは自らそれを引き起こす側に入り、日中紛争が始まるが、戦争嫌いの米国トランプ大統領は本格参戦しない。日本は敗戦するかボロボロになるまで長期戦を続けるかだ。これは敗北どころではなく破滅の道だ。
 2つ目は、戦争にはならないが、過大な軍拡予算の負担と野放図なバラマキにより、財政危機に陥る。物価上昇と金利上昇が極端な形で進む。地方財政も苦しくなり、インフラがボロボロになり、最後はゴミ収集も来なくなるほどに事態が進んで、国民がようやく財政は事実上破綻したと悟るという「大敗北」パターンも十分にありうる。
 3つ目は、原発推進と従来型産業政策の継続により、産業競争力が凋落を続け、賃金は周辺アジア諸国よりも低くなる。外国人労働者に来てもらえなくなり、人手不足が深刻でも、賃金は上げられず生活環境は著しく悪化する。あらゆるものが輸入頼みとなり、しかも普通の日本人には手が出ない。ベトナムやインドネシア、さらにはナイジェリアなど、「経済的に下とみなしていた」途上国からの観光客が高額消費するのを横目で羨ましそうに眺めながら、日本の大敗北を実感するが、生活水準の低下はどうやっても止める術が見つからない。日本は途上国の水準でも中程度の国になってしまったと気づく。緩やかな「大敗北」のパターンだ。
 その頃までには、人々の政治リテラシーが向上し、自分たちが間違ったということに気づく。もう手遅れではあるが、気づかないよりはマシ。そこまで来て微かな希望が見えるということだろうか。
 5年後なのか10年後なのか。早く事実上の日本破綻、大敗北の日が来た方がいいのかもしれない。
 この悲惨な道を避けるには、何よりも右翼連合政権の成立を阻止することが必要だ

07- 仏発ニュース19 フランスの「パレスチナ国家承認」は本物か?

 土田修氏が掲題の記事(連載No19)を載せました。
 今回は、マクロン仏大統領が「9月の国連総会でパレスチナ国家として承認する」と述べたことを巡る背景等について解説されています。
 フランスは7月のヴァカンス・シーズンに入ると国民議会は閉会し、議員の多くは自分の選挙区に帰り政治的案件はすべてストップするとうことです。そのヴァカンス真っ最中の24日、マクロン仏大統領はパレスチナ国家を9月の国連総会で承認する」ことを発表し、それからわずか数日のうちにスターマー英首相、カーニー加首相らがパレスチナ国家を承認する」意向を明らかにしました。
 マクロン氏が決断した背景にはネタニヤフ首相がガザ地区で飢餓を引き起こしヨルダン川西岸地区の併合を加速させている現状に対する憤りがありました。元々、マクロン氏とネタニヤフ首相は「険悪な関係」といわれてきましたが、今回のパレスチナ国家承認の約束によってイスラエルの外交関係は引き返せない地点に達しました。
 トランプ米大統領はカナダに対して「これでは通商協定の締結が非常に困難になるだろう」と警告しまし。しかしトランプ氏7月下旬にスターマー首相と会談した際、「ガザの飢餓が深刻な水準に達している」との認識で一致していたということでフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューでは「米国民はイスラエルを嫌い始めている」と発言しています。
 またネタニヤフ首相「ガザに飢餓はない」と主張したことに対しては、「我々は飢餓を目撃しており偽装できない現実だ」と一蹴た上で、欧州などの協力を得てガザ地区に複数の食料配給センターを設置する方針を明らかにしています

 マクロン氏がヴァカンス・シーズンを選んで「パレスチナ国家承認」に言及した背景には、極右勢力が台頭中であるという事情があると思われます。遅きに失したとはいえ、この正しい決断は貫かれるべきです。
 G7中3カ国のパレスチナ国家の承認は余りにも遅まきですが、それでも「米国追随から脱するチャンスになっています。他の4カ国はどうするのでしょうか。
 残念ながら日本政府は相変わらず従属的な姿勢を変えることはなさそうです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
フランス発・グローバルニュースNO.19  フランスの「パレスチナ国家承認」は本物か?
                       レイバーネット日本 2025-8-05
                             土田修 2025-8-05
                        ジャーナリスト、元東京新聞記者
 フランスは7月のヴァカンス・シーズンに入ると、人々が南へ西へと雪崩うって移動するためパリ市内のフランス国鉄(SNCF)の最寄り駅は連日、満員電車のように大混雑している。国民議会は閉会し、議員の多くは自分の選挙区に帰っており、政治的案件はすべてストップしている。こんなヴァカンス真っ最中の24日、エマニュエル・マクロン大統領はパレスチナ国家を承認するという約束を発表した。正式発表は9月の国連総会でのことだが、マクロン氏が切った中東外交の切り札は国際世論に大きな波紋を投げかけている。
 このフランスの発表後、わずか数日のうちに、英国のキア・スターマー首相、カナダのマーク・カーニー首相、ポルトガルのルイス・モンテネグロ首相がマクロン氏の後に続いた。これでG7内ではフランス・英国・カナダの3カ国だが、スペイン、アイルランド、ノルウェーといった欧州諸国を含む世界152カ国が「パレスチナ国家」を承認することになる。エリゼ宮(フランス大統領府)では「確実にダイナミックが生まれている」と喜びの声が上がった(7月4日付日刊紙ル・モンド)。

 マクロン氏はパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長宛の書簡の中に「道義的義務」と書いたが、背景にベンヤミン・ネタニヤフ首相のイスラエル政府がガザ地区で飢饉を引き起こし、ヨルダン川西岸地区の併合を加速させているという現状に対する憤りがあった。ヨルダン川西岸地区でのユダヤ人入植者による犯罪行為、骨と皮になったガザの子供たちの映像、イスラエルによる人道支援物資の搬入妨害によって引き起こされた深刻な栄養失調に関するNGOの警告——次々に明らかになったイスラエルによる残虐行為が国際世論に訴えかけた(同紙)。
 アメリカのドナルド・トランプ大統領はカナダに対して「これでは通商協定の締結が非常に困難になるだろ」と自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で警告を発したが(7月30日付)、その一方でフィナンシャル・タイムズ紙(同)のインタビューに「私の国民はイスラエルを嫌い始めている」と発言している。どうやらトランプ氏は自らの支持基盤だけでなく、アメリカの国民の多くが次第にネタニヤフ政権から距離をとりつつあることに気付いているようだ。
 実は、英国がパレスチナ国家承認の方針を打ち出すことができたのは、裏でトランプ大統領の同意を得ていたからだ。トランプ氏は7月下旬にロンドンでスターマー首相と会談した際、「ガザの飢餓が深刻な水準に達している」との認識で一致していた(7月30日付朝日新聞)。ネタニヤフ首相は「ガザに飢餓はない」と主張していたが、トランプ氏が「我々はそれ(飢餓)を目撃しており、偽装できない現実だ」とネタニヤフ首相の主張を否定していた。トランプ氏は「ガザの人道支援に取り組む必要がある」と強調、欧州などの協力を得てガザ地区に複数の食料配給センターを設置する方針を明らかにしている。

 いずれにせよ、G7の7カ国中3カ国がパレスチナ国家承認に向かうことになった。「英仏カナダのパレスチナ国家承認は遅すぎる。間もなくガザは廃墟になってしまう。ただのパフォーマンスだ」との批判もあるが、G7の残る4カ国はどうするのだろう? カナダのように米国追随から脱するチャンスなのだが、日本政府は相変わらず従属的な姿勢をを変えることはなさそうだ
 マクロン氏の約束に対し、サウジアラビアなどアラブ諸国からは称賛の声が上がったが、イスラエルと米国からは非難声明が発せられた。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「パレスチナの完全消滅」を狙ってガザ地区での軍事作戦(虐殺)を続行している。そのネタニヤフ首相は「(イスラム組織)ハマスの凶悪なテロ行為に報酬を与えるものだ」「この決定はイスラエルの安全保障を損ない、国家の存立を危機にさらす」と表明し、怒りをあらわにしている。「さらに一歩踏みだすのならフランスに報復する」と脅迫している。元々、マクロン氏とネタニヤフ首相は「険悪な関係」といわれてきたが、今回のパレスチナ国家承認の約束によって「フランスとイスラエルの外交関係は引き返せない地点に達した」(7月25日付ヌーベル・オプス誌)とされる。

「ニ国家解決」がフランス外交の基礎
 ヌーベル・オプス誌はフランスの約束について「G7及び国連安保理常任国の中で初めて『ガラスの天井を破った国』になった」と評し、「二〇二〇年のアブラハム合意のようにパレスチナ問題を解決しないままイスラエルとアラブ諸国の関係正常化を進めてきた米・イスラエルの戦略を突き崩すものだ」と書いた。
 フランス政府の発表は「奇襲作戦」といわれたが、実は数カ月前から入念に計画されたものだった。マクロン氏が4月にエジプトを訪問した際に「パレスチナ国家の承認に向かうべきだ。数カ月以内にわれわれは踏みだす」と発言していた。さらに、マクロン氏はサウジアラビアと緊密に協力しながら「二国家解決」に向けた大規模な国際会議を六月一七日にニューヨークで開催する準備をしていた(同誌)。
 それに対し、米国とイスラエルが妨害工作を行っていた。米国は国際会議に参加する諸国にパレスチナ国家の承認に向かわないように働きかけた。イスラエルは六月一三日にイランを先制攻撃し、一二日間に及ぶ紛争を引き起こした。このため、フランスとサウジアラビアが主導する国際会議の開催は見送られた。だが、両国はあきらめることなく、共同議長国となって、七月二八、二九日にニューヨークの国連総会で「二国家解決」をめぐる国際会議を開催した。イスラエルと米国は出席を拒んだ

 「パレスチナ国家承認」は一九六七年の第三次中東戦争でイスラエルが勝利して以来、フランス政府の外交政策になった。当時、「パレスチナ寄り」だったシャルル・ドゴール大統領はイスラエルを非難し、「イスラエル承認」と引き換えに、イスラエルが占領した地域からの撤退と「パレスチナ国家承認」という「二重承認」を提唱した。この原則が「二国家解決」という形で、その後のフランス外交の基礎になった。
 マクロン氏の「奇襲作戦」に対し、フランス国内では「世論の主導権を取り戻すための広報戦略だ」という辛辣な見方が流布している。マクロン政権の屋台骨である内務大臣ブリュノ・ルタイヨー氏がマクロン批判を開始しているからだ。ルタイヨー氏は共和党(LR)の党首でもあり、二〇二七年の大統領選挙への出馬をほのめかしている。
 彼はある雑誌のインタビューに「マクロニズムは運動でもイデオロギーでもない。一人の男(マクロン氏)に依存しているだけだ。マクロニズムはマクロン氏とともに終わる」と発言し、与党ルネサンスの議員から批判を浴びた。それに対し、ルタイヨー氏は「右派の立場を政府内で貫く」と一歩も譲らず、右派系議員から称賛の声が上がっている。問題は、同氏のインタビューを掲載したのは、移民排斥や「グレイト・リプレイスメント(大置換)」論を扱う極右系雑誌だったことだ。
 「大置換」論というのは、イスラム世界からの大規模な移民によって白人系のヨーロッパ住民が統計的、文化的に置き換えられるというもので、フランスの作家ルノー・カミュが提唱した。この白人至上主義の極右思想は「イスラム恐怖症」に基づく一種の陰謀論なのだが、欧米の民主主義に反対する人々に広く浸透している。2019年3月にニュージーランド南部の都市クライストチャーチのモスクで51人が死亡する銃乱射事件が起きたが、事件の容疑者は犯行前に「大置換」の宣言書をネット上で公開していた。
 ルタイヨー氏はこうした思想を共有している人物で、極右政党「国民連合(RN)」とともに、両親が外国人であってもフランスで生まれた子供は一定の条件を満たせばフランス国籍を取得できる「出生地主義」に反対している。トランプ氏が大統領就任演説の中でアメリカでも「出生地主義を廃止する意向」を示していることと相通じている。ルタイヨー氏が代表を務める「共和党(LR)」は、マクロン氏の「パレスチナ国家承認」の約束を「マクロン主義の終焉がささやかれる流れに〝火消しの対抗策を打っただけだ」と極めて否定的な見解を発表している。

 フランス国内でネタニヤフ政権への支援を正式に表明し、反ユダヤ主義に抗議するデモンストレーションの先頭に立ったRNの前党首マリーヌ・ルペン氏は「ユダヤ人社会の守護神」といわれる、マクロン氏の「パレスチナ国家承認」の約束について、彼女は「ハマスというテロ組織への贈り物だ」と厳しく批判している。国民議会内の右派であるLRとRNは2027年の大統領選挙に向けて、新しい政治の流れを作るのに躍起になってる。
 一方、左派の「不服従のフランス(LFI)」のジャン=リュック・メランション氏は大統領が本当に行動に移す意思があるのかを疑問視するが、マクロン氏の約束を「道義的勝利だ」と評価している。フランス社会党の第一書記オリヴィエ・フォール氏は「フランスの決定はイスラエルの歴史的同盟国に方針転換を促し、平和へと進む推進力になるはずだ」と絶賛する。左派はマクロン氏が切ったカードを前向きにとらえることで自らの存在価値を低下させている。

交渉相手はアッバス氏という詐術
 だが、フランス、英国、カナダの三カ国の「パレスチナ国家承認」には根本的な問題が存在する。いずれもパレスチナ自治政府に向けられたものであり、パレスチナの非軍事化とイスラム組織ハマスの排除を前提としているからだ。フランス政府はエルサレム総領事を、ヨルダン川西岸地区のマフムード・アッバス議長のもとへ送り、大統領の書簡を手渡した。
 その際、アッバス議長の顔に何の感情も浮かんでいなかったと日刊紙ル・モンド(7月26日付)は報じている。それがどのような意味を持つのかはわからない。ネタニヤフ政権に従順なアッバス氏は、ヨルダン川西岸地区で暴力的に進むユダヤ人による入植にも、イスラエルが「パレスチナの完全消滅」をめざして軍事作戦を続けているガザ地区の悲惨な現状にも目を閉ざしている89歳と高齢のアッバス氏が今後、どのような発言をするのかにも注目したい。
 問題はイスラエルも西側諸国も、イスラム抵抗運動組織のハマスを「テロリスト」と決めつけ、正式な交渉相手として認めていないことにある。二〇〇六年一月のパレスチナ自治評議会の選挙で勝利したのはハマスだ。ムスリム同胞団のパレスチナ地区組織として出発し、社会福祉や医療、教育に関する地域活動に熱心なハマスがパレスチナを代表する正当な政体なのだ。

 だが、相次いで「パレスチナ国家承認」の外交カードを切ろうとしている国々は「ハマスの非武装化」を求めており、9月の国連総会向けの最終声明にも「ハマスはガザでの役割を終えるべきだ」という文言が入っている。「パレスチナ国家承認はハマスへの報酬だ」とするネタニヤフ政権の非難を避けるためだ。
 歴史的にパレスチナ問題に責任のあるフランスと英国が「パレスチナ国家承認」のカードを切った理由に「イスラエルに圧力をかける」ことを挙げているが、汚職体質でパレスチナ住民の支持を失っているアッバス氏を相手にしていては、真の「パレスチナ国家承認」とはいえない
 フランスは自国のイニシアティヴが影響力のある国々の支持を得たことで、9月の国連総会においてイスラエルとその同盟国であるアメリカに対する圧力を高める効果があると確信している。だが、パレスチナ住民の自主独立と国家主権の障害となってきたのは、パレスチナ人の民意を無視してきた西欧的価値観のなせるわざだったのではないか。パレスチナ人が求める「パレスチナ国家」を建設するため、各国政府が公正で実効的な政策を遂行するよう、われわれ市民が声を上げ、見守るしかない。

2025年8月4日月曜日

イスラエル首相 ガザの飢餓を否定 「倫理崩壊」と非難拡大

 イスラエルのネタニヤフ首相は7月27日、「ガザに飢餓は存在しない」と発言しました。同国のキシュ教育相はSNS上で、「ガザ住民を飢えさせる政策は存在しない。イスラエル国防軍は世界で最も道徳的な軍」と強弁しました。
 イスラエル紙ハーレツは同日、「飢餓の否定はホロコーストの否定と同じくらい卑劣」とする著名ジャーナリストのギデオン・レビ氏の寄稿を掲載しました
 その中でレビ氏は、「母親の腕の中で飢えて死ぬ子どもに、これは意図的な飢餓ではないと言い放つのは、苦しむ者を侮辱する行為」であり、「倫理の崩壊」だと非難しました。
 ネタニヤフらはよくそこまで鉄面皮にふる舞えるものです。

 ガザ地区で深刻な飢餓をもたらしているイスラエル政府に抗議するため、イスラエルの10以上のさまざまな分野の市民団体が7月31日夜、テルアビブで共同の集会とデモを開催し1万5人以上が参加しました。
 参加者たちは「もうたくさんだ」「戦争をやめよ」と書かれたプラカードや、飢餓に苦しむガザの子どもたちの写真を掲げ、ガザ侵攻の即時中止と人質の解放、そして極右政権の退陣を求めて商都の中心街を行進しました。

 しんぶん赤旗の6つの記事を紹介します。
            ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イスラエル首 ガザの飢餓否定 「倫理崩壊」非難拡大
                        しんぶん赤旗 2025年8月3日
【カイロ=米沢博史】イスラエルのネタニヤフ首相が放った「ガザに飢餓は存在しない」との発言(7月27日)に対し、同国内で強い反発が広がっています。

 イスラエル紙ハーレツは同日、「飢餓の否定はホロコースト(ナチスによるユダヤ人の大量虐殺)の否定と同じくらい卑劣」とする著名ジャーナリストのギデオン・レビ氏の寄稿を掲載しました。
 レビ氏は、ガザの飢餓否定は、ホロコーストを無かったと否定する言説と同じ論理構造であると指摘。「母親の腕の中で飢えて死ぬ子どもに、これは意図的な飢餓ではないと言い放つのは、苦しむ者を侮辱する行為」であり、「倫理の崩壊」だと非難しました。
 翌7月28日にはイスラエルの主要5大学(ヘブライ大学、テルアビブ大学、ワイツマン科学研究所、イスラエルエ科大学、オープン大学)の学長が署名した公開書簡が発表されました。
 学長らは「ホロコーストの犠牲者であったユダヤ人として、罪のない市民や子どもに対する残酷かつ無差別な加害を防ぐ特別な責任がある」と訴えました。
 さらに、ガザの破壊や住民追放を扇動する政治家の発言について、「戦争犯罪であり人道に対する罪に該当する」との法律家の見解を紹介。政権が南部ラファに建設予定とする「人道都市」についても、自制と人間性の喪失を示しており、イスラエルに回復不能な損害を与える」と批判しています。
 これに対しキシュ教育相はSNS上で、「大学学長らは(イスラム組織)ハマスのプロパガンダに加担している」との決まり文句で非難。「ガザ住民を飢えさせる政策は存在しない。イスラエル国防軍は世界で最も道徳的な軍」などと強弁しました。


イスラエル市民 ガザ飢餓で政府に抗議 「もうたくさんだ」
                        しんぶん赤旗 2025年8月3日
【カイロ=米沢博史】パレスチナ・ガザ地区で深刻「飢餓をもたらしているイスラエル政府に抗議するため、平和、人権、学術、文化、女性、ラビ(ユダヤ教指導者)など、さまざまな分野のイスラエルの市民団体が7月31日夜、商都テルアビブで共同の集会とデモを開催しました。主催者によると、1万5000人以上が参加しました
 参加者たちは「もうたくさんだ」「戦争をやめよ」と書かれたプラカードや、飢餓に苦しむガザの子どもたちの写真を掲げ、イスラエルによるガザ侵攻の即時中止と人質の解放、そして極右政権の退陣を求めてテルアビブの中心街を行進しました。
 主催団体の一つ「スタンディング・トゥゲザー」のルラ・ダヴード共同議長は、集会での演説の中で「ユダヤ人とパレスチナ人がともに声を上げてこそ、この政府の暴走を止めることができる」と訴えました。同団体は、ここ数週間にわたり、各地の商店街や交差点などで宣伝してきました。
 今回の集会・デモの主な呼びかけ団体は以下の通りです。▽平和団体「スタンディング・トゥゲザー」▽エルサレム・ヘブライ大学▽イスラエル最大の女性平和団体「女性は平和を訴える(WWP)」▽性差別に反対する芸術家団体「ピンク戦線」▽「人権のための一フビ(RHR)」▽イスラエルとパレスチナの共同遺族会「ペアレンツ・サークル家族会(PCFF)」▽「社会正義のための女性弁護士会」▽遺跡や文化遺産の保全を訴える団体「エメクシヤベ」▽非暴力の抵抗を掲げる団体「イスラエルの方向転換を」▽SNSを通じて活動する左派団体「メハズキム」


すぐには承認しない  パレスチナ国家承認巡り
                        しんぶん赤旗 2025年8月3日
 ドイツのワデフル外相は1日、パレスチナ国家承認に関するドイツの立場について説明した前日の発言をトーンダウンさせ、すぐに承認する予定はないと述べました。
 外相は7月31日、イスラエルヘ出発する前に、イスラエルの一方的な行動に対してパレスチナ国家の承認で対応する可能性があると示唆していました。
 これに対しイスラエルのベングビーール国家治安相は「ホロコーストから80年、ドイツは再びナチズムを支持する」とXで批判しました。
 ワデフル外相は31日に、イスラエルの外相、首相、大統領と会談。1日になると、「ドイツはパレスチナ国家をすぐに承認する予定はない、それは2国家解決の一環として取られる最終段階の一つだからだ」と説明しました。(ロイター)


医療物資搬入訴え イスラエルにWHO
                        しんぶん赤旗 2025年8月3日
カイロ=時事世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は7月30日、パレスチナ自治区ガザとイスラエルの境界にあるケレム・シャローム検問所に、国エジプトからトラック10台分の医療関連物資が到着したと明らかにしました。その上で、「(ガザに)継続的に医療物資を運び込むことが決定的に重要だ」と述べ、イスラエルに対して物資の搬入拡大を求めました。
 イスラエルは3月、ガザヘの支援物資搬入を全面停止。5月に部再開されたものの、WHOによれば、医療物資は6月下旬まで許可されず、依然として極度に不足しているもようです。
 テドロス氏は(旧ツイツター)で「われわれは医療物資が持続的かつ安全に、妨害されずにガザに届くこと、そして停戦を求める。和平が一番の薬だ」と強調しました。


停戦交渉で方針転換か イスラエルが米と調整
                        しんぶん赤旗 2025年8月3日
【カイロ=時事】イスラエルメディアは7月31日、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとの停戦交渉に関し、米国とイスラエルが従来方針の限定的停戦ではなく、包括的取引を進める方向で調整していると報じました。イスラエル政府高官の話として伝えました。ハマスが拘束する人質全員の解放と引き換えに、戦闘を終了させる内容とみられます。
 イスラエルのネタニヤフ首相は31日、米国のウィトコフ中東担当特使とエルサレムで会談。停戦交渉の停滞を受け、今後の方針などについて協議したとみられます。
 これまでの停戦案は、60日間の合意期間中にハマスが人質の一部を引き渡し、引き換えにイスラエルが収監するパレスチナ人を釈放。この間に残る人質の解放と恒久停戦に向けた協議を開始するという内容でした。これに対し、包括的取引では人質全員の解放とハマスの武装解除、ガザの非武装化が行われるといいます。
 ただ、ハマスはイスラエルによる占領が続く限り、武力闘争はやめない構えで、双方が折り合うのは容易ではありません。ハマスはガザの危機的な人道状況が改善するまで停戦交渉に戻らない意向を仲介国に伝えたとも報じられています。イスラエル当局者は地元メディアに、協議が進まない状況では、「軍事作戦拡大は避けられそうにない」と語りました。


米、パレスチナ高官に制裁 他のG7の国家承認と逆行
                        しんぶん赤旗 2025年8月3日
【ワシントン=時事」米国務省は7月31日、パレスチナ自治政府高官と自治政府を主導するパレスチナ解放機構(PLO)幹部に制裁を科すと発表しました。主要7力国(G7)内では、パレスチナを国家として承認する意向を示す国が相次いでいますが、米国は逆行する動きを見せました。
 制裁対象者は米国への渡航ができなくなります。国務省は制裁理由に関し、中東和平を巡ってパレスチナ側が「約束を履行せず、和平の展望を損なっている」と主張。「国際刑事裁判所(ICC)や国際司法裁判所(ICJ)を通じてイスラエルとの紛争の国際化を図る行動を続けている」と批判し、「パレスチナ人テロリストとその家族に支払いを行っている」などと指摘しました。
 イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザでは、飢餓による死者が増え続けるなど人道状況が著しく悪化しています。これらを踏まえ、フランス、英国、カナダが9月の国連総会でパレスチナを国家承認する方針を表明し、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を呼び掛けています。

パレスチナの飢餓ー既に40万人以上死亡/~パレスチナ人を大量殺戮しつづけるイスラエル

 ガザの犠牲者の数はこれまでパレスチナ側の正式発表では数万人のオーダーですが、遺体が確認されない人たちを加えればそんな数字では収まらないことは衆知のことでした。
 Moon of Alabama(アラバマの月・独のブログ)は7月25日、「パレスチナの飢饉 - 既に40万人以上死亡」という記事を出しました。これは23年10月7日時点の人口から現在の推定人口を差し引いて求めた数字です。

 併せて櫻井ジャーナルの記事「欧米支配層の戦略に従ってパレスチナ人を大量殺戮しつづけるイスラエル」を紹介します。
 こちらは「ヤコブ・ガルブの報告書」によると、同年10月7日時点のガザの人口約222万7000人から現在の推定人口185万人を差し引くと37万7000人が行方不明であると推定しています。
 そしてイスラエルへの軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されていると述べ、それらの空輸やパレスチナの武装勢力を偵察する飛行で中心的な役割を果たしてきたのは英国であることを明らかにしました。
 英国のジェームズ1世(1566~1625年)は、アングロ・サクソンをユダヤ人の「失われた十支族」の後継者だと信じ、自らをイスラエルの王だと信じていたということです。シオニズムの古典版です。
 第二次世界大戦後にパレスチナにイスラエルを作り上げたのは英国でした。英国兵によるパレスチナ人の大逆殺がその背景にありました。こうした先住民の征討は、英国を母国とする人たちが北米やオーストラリア、カナダなどに侵攻して新しい国を建てた際に等しく行われたものでした。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
パレスチナの飢饉 - 既に40万人以上死亡
                 マスコミに載らない海外記事 2025年8月 3日
                    Moon of Alabama 2025年7月25日
 シオニスト国家の狂信的植民地開拓者連中は、他の全ての人々にとって危険になっている。彼らは追い払われなければならない

 ガザは飢餓への転換点を過ぎた
この転換点を超えると、飢饉は破滅的自己強化パターンを辿る傾向があり、既にこれはガザで見受けられる。ゆっくり忍び寄る死は、臓器不全や免疫システム崩壊や生存意欲の喪失により急速な大量死に転じる。飢饉が始まると、死者数は指数関数的に増加する傾向があり、対策を講じるための技術的限界を超えたことの確認は、何千人もの人々、特に幼い子どもを死に追いやる可能性があることを意味する。
 もし何もしなければ、ガザでは数千人どころか数十万人死亡することになるだろう。
 道徳的優位性を政府が主張しながら、この問題に対して何もしようとしない「欧米」の国に暮らしているのを恥ずかしく思う

 追加
 2月、ガザに180万人残されているとトランプ大統領が発言した。
 私は次のような見出しを書いた。
 
ガザ占領を企むトランプ大統領、死者50万人と発表

 2023年時点で、国際的に認められているパレスチナ中央統計局のガザ地区人口222万6544人だった。ガザ地区からパレスチナ人全員を追放したいとトランプ大統領は考えており、その数を170万人または180万人としている。
  記者:ガザから撤退する必要がある人はどれくらいいるとお考えですか?
 トランプ:「全員だ。おそらく100万人、あるいは170万人、もしかしたら180万人だろう。彼らは美しい生活を送れる地域に定住する。」(動画)

 これは大量虐殺を行うシオニストがガザで最大50万人殺害したことをアメリカ大統領が認めたものだ。
 スティーブン・ドンジガーの計算により、その範囲が確認された。
衝撃:イスラエルはガザ地区住人の20.7%を殺害した。43万4000人 -ドンジガー・オン・ジャスティス、2025年7月22日

 昨日(7月21日)更新の最新データはこちら。権威ある医学誌「ランセット」が開発した統計モデルによると、イスラエル軍が2023年10月8日にガザ地区攻撃を開始して以来、イスラエルは同地区で約43万4800人殺害した。これは紛争前のガザ地区全人口の20.7%に相当し、その半数以上が女性と子どもだ。

 紛争の594日間にガザで起きたと同じ水準の殺害と間接的な死が、人口に比例してアメリカで起きたとすると、約7000万人のアメリカ人が殺害されたことになる。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2025/07/famine-in-palestine.html
 スティーブン・ドンジガーの計算により、その範囲が確認された。


欧米支配層の戦略に従ってパレスチナ人を大量殺戮しつづけるイスラエル
                         櫻井ジャーナル 2025.08.03
ガザの虐殺は続く
 イスラエルは軍事攻撃でガザの建造物を徹底的に破壊、住民を虐殺しつづけている。また兵糧攻めで飢餓状態。多くの住民が虐殺されつつある。そうした残虐行為を支援してきた欧米の「民主主義国」にも厳しい目が向けられている
「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書によると、2023年10月7日にイスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前、約222万7000人だったガザの人口が現在の推定人口は185万人。つまり37万7000人が行方不明だ
SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されているそうした物資の空輸やパレスチナの武装勢力を偵察する飛行で中心的な役割を果たしてきたのはイギリスだ。イスラエルは「国」というより「空母」に近い。イスラエルへの物資の輸送や偵察の拠点としてキプロスの軍事基地は重要な役割を果たしてきた

 現在、国連加盟193カ国のうち147カ国がパレスチナを正式に承認しているが、勿論、アメリカは承認していない。EU加盟国ではキプロス(1988年)、チェコ(1988年)、スロバキア(1988年)、ハンガリー(1988年)、ルーマニア(1988年)、ブルガリア(1988年)、ポーランド(1988年)、スウェーデン(2014年)、アイルランド(2024年)、スペイン(2024年)、スロベニア(2024年)。ソ連消滅前に承認した旧ソ連圏の国が目立つ。パレスチナを支援している国民が多いと言われているアイルランドでも昨年だ。
 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は今年9月にパレスチナを承認すると発表、イギリスのキア・スターマー首相はイスラエルが「ガザ地区の悲惨な状況」を終わらせるために行動しない限り、イギリスはパレスチナ国家を承認すると述べた。
 両国の政府はネオコンに踊らされ、ロシアとの無謀な戦争に突入して自国を崩壊させつつあるうえ、ガザでの大量虐殺を支援してきたことへの批判が高まっている。イメージを改善しようとしているのかもしれないが、パレスチナ人の主権を認めるわけではない。

 欧米諸国はイスラエルへ武器を供給、軍事情報の収集に協力、兵糧攻めを黙認している。つまりパレスチナ人を大量虐殺する手助けをしているのであり、共犯。こうした残虐な行為を止めたいなら行えることはたくさんあるが、行わない。ネオ・ナチやアル・カイダ系武装集団がそうであるように、イスラエルは欧米帝国主義諸国に代わって「汚い仕事」を行なっているわけで、当然だろう。イスラエルによる虐殺を嘆くだけでは意味がない。それを「偽善」と呼ぶ人もいる。
 イスラエルは軍事力を使い、先住民であるパレスチナの75万人を追放し、土地の78%の奪い取り、帰還権を剥奪した。その上でガザやヨルダン川西岸を奪おうとしている

侵略国家としての英国
 パレスチナにイスラエルを作り上げたのはイギリスだが、この国はアイルランドや北アメリカで行ったようなことをパレスチナでも行った。
 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設。その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査し、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収した。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018)
 パレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡、いわゆる「バルフォア宣言」をアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出したのは1917年11月のこと。
 イギリスは1920年から48年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強めた。
 そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。
 この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。イングランドでは、ピューリタン革命を指揮したオリバー・クロムウェルの軍隊がアイルランドを軍事侵略、多くの人を虐殺した。17世紀の半ばのことだ。

ピューリタン革命
 クロムウェルが出現する前、イングランドのジェームズ6世英国王ジェームズ1世)はアングロ・サクソンをユダヤ人の「失われた十支族」の後継者だと信じ、自分はイスラエルの王だと信じていたという。
 ジェームズ6世の息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、クロムウェルの私設秘書だったジョン・サドラーも同じように考え、彼は1649年に作成されたパンフレット『王国の権利』の中でイギリス人はイスラエルの失われた部族のひとつであり、ユダヤ人と同族であると主張している。
 クロムウェルも同じように考えていたようで、彼の聖書解釈によると世界に散ったユダヤ人はパレスチナに再集結し、ソロモン神殿を再建することになっていた。この「ユダヤ人」には「アングロ・サクソン」も含めているのだろう。この解釈に基づいて彼は政権を樹立し、1656年のユダヤ人のイングランド定住禁止令を解除、パレスチナにイスラエル国家を建国することを宣言した。海賊の国だったイングランドでビジネスを育てるためだったともいう。
 これがシオニズムの始まりだが、ピューリタン体制が倒されるとシオニズムは放棄され、クロムウェルを支持する人びとの一部はアメリカへ亡命、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、ベンジャミン・フランクリンらはその後継者だと主張したという。その北アメリカで先住民は「民族浄化」された。今、欧米の支配者は中東を新たなアメリカにしようとしているのではないだろうか。彼らはその先にロシアと中国を見ていたはずだ。

パレスチナ侵略
 ブラック・アンド・タンズはIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起。アラブ大反乱だ。
 1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。
 反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃していく。

イスラエル建国
 シオニストはパレスチナから先住民を追い出し、イスラエルなる国を建てるため1948年4月4日に「ダーレット作戦」を発動、ハガナに協力する形でテロ組織のイルグンとスターン・ギャングは9日にデイル・ヤシン村を襲撃、その直後に村へ入った国際赤十字のジャック・ド・レイニエールによると、村民254名が殺され、そのうち145名が女性で、そのうち35名は妊婦だった。
 イギリスの高等弁務官を務めていたアラン・カニンガムはパレスチナに駐留していたイギリス軍のゴードン・マクミラン司令官に殺戮を止めさせるように命じたが、拒否されてしまう。ハガナもイルグンとスターン・ギャングを武装解除しようとはしない。(Alan Hart, “Zionism Volume One”, World Focus Publishing, 2005)
 この虐殺を見て多くのアラブ系住民は恐怖のために逃げ出し、140万人いたパレスチナ人のうち5月だけで42万3000人がガザ地区やトランスヨルダン(現在のヨルダン)に移住、その後、1年間で難民は71万から73万人に達したと見られている。イスラエルとされた地域にとどまったパレスチナ人は11万2000人にすぎなかった。1948年5月14日にイスラエルの建国が宣言されている。

 国際連合は1948年12月11日に難民の帰還を認めた194号決議を採択したが、現在に至るまで実現されていない。