2025年8月7日木曜日

石破首相退陣で待ち受ける「高市早苗・右翼連合政権」の恐怖…最悪の未来に突き進む「3つのシナリオ」

 元経産官僚の古賀茂明氏が掲題の記事を出しました。
 石破首相退陣後に想定される最悪のケースは「高市早苗・右翼連合政権」です。
 10年ほども続いたアベノミクスは円安を誘導し、大々的に国債を発行してもなんの問題もないというデタラメを行って、今日の財政状況を生みました。その結果、これだけのインフレになっても国債利払い費の上昇が怖くて日銀が金利引き上げに動けず、円安がさらに加速して国民の生活が圧迫されます。高市氏はアベノミクスの信奉者なので改善は期待できません。

 また高市氏は閣僚時代も靖国神社を公然と参拝し、「仮に首相になっても適切な時期にきっちりとお参りをしたい」と公言しています。当然中国側から強硬な反応が予想されますが、それを利用して「さらなる軍拡が必要」という論陣を張る可能性があります。
 中国との真っ向対立路線となれば無謀な軍拡路線になり、民生はさらに圧迫され国民は一層困窮します。
 元々米国西太平洋のあらゆる有事において最前線で日本が戦うことを予定しています。高市氏はその任務を何の抵抗もなく担おうとするので、台湾有事だけでなく南シナ海での紛争にも積極的に日本が関与していくことになります。日本の末路は言わずもがなです

 要するに日本の将来はお先真っ暗で、「大敗北」への道を歩むしかないというのが古賀氏の見立てです
 古賀氏は日本「大敗北」のパターンは下記の3つであるとしています。
 1つ目は、台湾有事などに巻き込まれるか、あるいは自らそれを引き起こす側に入り、日中紛争が始まるが、日本は敗戦するかボロボロになるまで長期戦を続けるかで、これは敗北どころではなく破滅の道。
 2つ目は、戦争にはならないが、過大な軍拡予算の負担と野放図なバラマキにより、財政危機に陥る。物価上昇と金利上昇が極端な形で進地方財政も苦しくなり、インフラがボロボロになり、最後はゴミ収集も来なくなるほどに事態が進んで、国民がようやく財政は事実上破綻したと悟るという「大敗北」パターンも十分にありうる。
 3つ目は、原発推進と従来型産業政策の継続により、産業競争力が凋落を続け、賃金は周辺アジア諸国よりも低くなる。外国人労働者に来てもらえなくなり、人手不足が深刻でも、賃金は上げられず生活環境は著しく悪化する。あらゆるものが輸入頼みとなり、しかも普通の日本人には高価で手が出ない。(後 略)

 この救いようのない日本の姿を予想する記事は次のように結ばれています。
5年後なのか10年後なのか。早く事実上の日本破綻、大敗北の日が来た方がいいのかもしれない。この悲惨な道を避けるには、何よりも右翼連合政権の成立を阻止することが必要だ
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石破首相退陣で待ち受ける「高市早苗・右翼連合政権」の恐怖…最悪の未来に突き進む「3つのシナリオ」 古賀茂明
                        古賀茂明 AERA 2025/08/05
 先週配信の本コラム「立憲・共産党支持者が『石破辞めるな!』と叫ぶ異常事態…参院選の自民党大敗の原因は『裏金議員』と『アベノミクスの失敗』である」の最後に、石破茂首相が辞任し、その後に大右翼連合の政治が実現した場合、何らかの形で「日本大敗北へと向かっていく」と書いた。今週は、具体的に何が起きるのかを考えてみたい

 石破首相辞任となり、小泉進次郎農林水産相ではなく、高市早苗前経済安全保障相が自民党の総裁になれば、自民の右傾化は必至だ。与党病に侵された公明党もさらに右傾化を強める可能性が高い。自公の関係が維持できても、自公だけでは衆参共に過半数を失っているため、そもそも政権を維持できるかどうかさえわからない。自民高市氏を首相候補とすれば、立憲民主党などのリベラル政党と連立ということは考えられない。
 高市氏を支持する層は参政党や国民民主党の支持層と重なることが世論調査などで明らかになっているが、仮に過半数の連立政権を作るとすれば、自公国参となる可能性は極めて高い。場合によっては日本維新の会も加わった自公国参維の巨大な右翼連合政権ができる可能性は十分にある。
 ただし、不安定な政治状況の中、いつ衆議院の解散総選挙になってもおかしくないので、野党各党は、次の衆議院選挙までは、自民との連立を忌避する可能性がある。自民補完勢力だという批判を避けるためだ。当面は、連立ではなく、個別政策で部分連合を作る可能性の方が高そうだ。衆議院選挙後には、本格的大右翼連合政権の可能性は極めて高くなるだろう。
 では、右翼連合政権または、右翼政党が力を持つ、自公と一部の野党の個別政策ごとの連携の政治によって、日本の政治はどう変わるのだろうか。
 参政党などは、かなり思い切ったことを言っているので、日本の政治が根底から変わると思うかもしれないが、結果から見ると、それほど大きな変化はないというのが、私の現時点での見立てだ。その政策の中身は、簡単に言えば、安倍政治の拡大的リフレイン、繰り返しである。そして、最後は、何らかの形による日本大敗北へと向かっていく。
 まず、経済財政政策では、アベノミクスの極端なバラマキと政府の借金拡大の程度がさらに強化される
 高市氏は、自民党の中では、アベノミクスを強化して継承する立場を最も鮮明にしている政治家だ。消費税減税に反対した石破首相とは異なり、食料品の税率をゼロ%にすることを主張している。したがって、野党の消費税減税要求を簡単にのむことができるので、連立の枠組み拡大にはプラスだ。
 財政状況自体についても、債務だけでなく資産を合わせたネットで見ればG7の中でも良好だ、などと述べており、消費税の減税以外の野党が要求する様々なバラマキにも「柔軟に対応する」だろう。何しろ、アベノミクスは、バラマキを続けて国債を発行してもなんの問題もないという出鱈目を言って、今日の財政状況を生んだ。その結果、これだけのインフレになっても、国債利払い費の上昇が怖くて、日銀が金利引き上げに動けず、円安を招いてさらに国民の生活を圧迫するという結果になっている。その悪循環から抜け出すどころか、負のスパイラルはさらに強化されることになる。

防衛政策のタガが完全にはずれてしまう
 また、今回の参議院選挙では防衛費を現在政府が目指している「GDP比2%」を超える水準にするべきだと考える候補者の割合が、参政(45%)や国民民主(30%)の方が自民(25%)よりも高く出た(日本経済新聞社アンケート)が、高市氏も基本的に防衛費増額論者なので、軍拡路線が強化されるのは必至だ。
 また、高市氏は閣僚時代にも靖国神社を公然と参拝していたが、昨年の総裁選の際には、首相になっても「適切な時期にきっちりと普段通り淡々とお参りをしたい」と公言していた。この言葉通り行動すれば、中国との関係は極端に悪化し、中国側から強硬な反応が予想される。高市氏はそれを利用して、さらなる軍拡が必要という論陣を張る可能性がある。中国との真っ向対立路線となれば、中国の軍事力に伍する軍備が必要ということになり、無謀な軍拡路線になるだろう。安倍晋三元首相がやりたくても、中国との関係などを考えて若干抑制していた防衛政策のタガが完全にはずれ、あらゆる意味で、軍事優先の政策に転換していくことが予想される。
 米国のヘグセス国防長官は、西太平洋のあらゆる有事において最前線で日本が戦うことになると明言しているが、高市氏は、この役割を拒否するどころか、むしろ進んで担おうとするはずだ。その場合は、台湾有事だけでなく、南シナ海での紛争にも積極的に日本が関与していくことになる

 軍拡とともに心配なのが、原発である。高市氏はもちろん原発推進論者だが、国民民主はこれに輪をかけたゴリゴリの原発推進主義である。原発「命」と言ってよいほど、その姿勢は突出している。もちろん、支援団体の連合傘下にある電力総連や基幹労連などの票と金欲しさの政策だが、既存原発の再稼働だけでなく、原発の新増設にも熱心だ。参政も次世代原発開発を唱えるなど、これに近い考えを持っている。このため、巨額の原発推進予算が組まれ、また、原発支援のための電気料金による国民負担が拡大することになる。
 右翼連合政権には、もう一つ、失われた30年で最大の問題である、成長できない経済を生み出した大国主義・メンツ優先の産業政策の失敗を繰り返すのではないかという懸念もある。さらに、トヨタに支配された自動車政策の弊害も顕著になるだろう。
 トヨタは、自民党や経済産業省の産業政策に直接介入して、自社の利益を最大化してきたが、実は、国民民主もこのトヨタに完全に従属している。トヨタ労組の影響下にあるからだ。経産省もトヨタの「支配下」にあるため、日本は極端な電気自動車(EV)の発展抑制策をとってきた。トヨタがEVを作れないことと、得意なハイブリッドで儲ける期間をなるべく長引かせることが理由である。この姿勢は変わらないと見られ、引き続き、EVへのシフトが遅れることは確実だ。

海外頼みの再エネと車載電池市場
 実は、原子力推進とEV抑制は、日本の産業競争力を劇的に落とした元凶であることはあまり認識されていない。原発を推進するために再エネへの投資が抑制されたり、休止中の原発の再稼働のために送電線を空けることで、再エネ向けの送電線確保に支障が出たりしている。再エネシフトが大きく遅れたために、世界の過半のシェアを占めていた太陽光パネルや風力発電機産業がほぼ壊滅状態となっている。さらに、その部品や材料の産業も競争力をなくしてしまった。今や中国に完全に抜かれて、もはや自力復活は無理となり、つい先日も、経産省が、風力発電機の部品を作るためにデンマークのベスタス社に補助金を出して、日本に部品製造の拠点を設けてもらうといった計画を発表するという恥ずべき状況だ。
 一方、EVの抑制は、電池産業を潰した。テスラの陰にパナソニックありと言われたのはついこの前のことだが、同社は、車載電池市場で世界ダントツの地位からあっという間に滑り落ち、もはや世界6位2024年通年)で数%のシェアしかない。その結果、絶対的優位にあった電池の部品・材料でも中国に太刀打ちできなくなってきた。
 さらに新たな問題も生じている。原発推進を正当化する理屈として、AIデータセンターの電力需要の激増という話が使われている。そのために、AIデータセンターの消費電力を劇的に減少させる技術開発には予算がつかない。電力需要が減りすぎると原発不要論につながるからだ。日本では、以前このコラムでも紹介した世界で類を見ない半導体を丸ごと水に浸して冷やすという「水浸冷却技術」が開発された。しかし、経産省が前述の理由からこれを支援しないのだ。このため、今や、この技術の開発拠点が台湾に移転する寸前だ。原発推進の大きな副作用と言って良い。
 また、経産省と自民の大国主義、メンツ重視の産業政策が引き続き失敗を重ねそうだ。
 日の丸ジェットは大失敗したのに、また新しいプロジェクトを始める動きがある。ロケットでも、世界は遥か先を行くのに、いまだに日の丸ロケットにこだわり、勝算のない賭けを続けている。
 日の丸半導体のエルピーダは破綻し、同じく日の丸半導体と言われたルネサスも復活せず、日の丸液晶のJDIも苦境に喘ぐ。失敗、失敗の連続なのだ。

 それにもかかわらず、世界最先端半導体の製造業を復活すると約束したラピダスプロジェクトがこれからますます政府資金を吸い尽くす。40ナノレベルで脱落した日本が、いきなり2ナノレベルの半導体を作ると言うのだが、大々的に行った先日の試作品発表会にも提携先や装置納入メーカーなどはゴマスリで顔を出したが、世界の主要な需要家は集まらなかった。これだけ先端半導体が足りない状況なのに、政府の助成金約18兆円に対して、民間の出資はたったの七十数億円。特に米国などのテック企業からは一円も出資が集まらない。誰も成功するとは見ていないからだ。それでも経産省は、巨額の助成金を出し続け、結果的に5年ほど経つと、失敗だが誰も責任は取らないという従来パターンが繰り返されるのは必至だ。

日本は途上国の水準でも中程度
 よく考えると、以上縷々述べてきた予想される失敗は、自民党の失われた30年、特に安倍政治の失敗のリフレイン、繰り返しだということに気づく。
 こうしたことが続けば、当然ながら、日本の経済はお先真っ暗。「大敗北」への道を歩むしかないだろう。
「大敗北」のパターンは大きく分けて3つだ。
 1つ目は、台湾有事などに巻き込まれるか、あるいは自らそれを引き起こす側に入り、日中紛争が始まるが、戦争嫌いの米国トランプ大統領は本格参戦しない。日本は敗戦するかボロボロになるまで長期戦を続けるかだ。これは敗北どころではなく破滅の道だ。
 2つ目は、戦争にはならないが、過大な軍拡予算の負担と野放図なバラマキにより、財政危機に陥る。物価上昇と金利上昇が極端な形で進む。地方財政も苦しくなり、インフラがボロボロになり、最後はゴミ収集も来なくなるほどに事態が進んで、国民がようやく財政は事実上破綻したと悟るという「大敗北」パターンも十分にありうる。
 3つ目は、原発推進と従来型産業政策の継続により、産業競争力が凋落を続け、賃金は周辺アジア諸国よりも低くなる。外国人労働者に来てもらえなくなり、人手不足が深刻でも、賃金は上げられず生活環境は著しく悪化する。あらゆるものが輸入頼みとなり、しかも普通の日本人には手が出ない。ベトナムやインドネシア、さらにはナイジェリアなど、「経済的に下とみなしていた」途上国からの観光客が高額消費するのを横目で羨ましそうに眺めながら、日本の大敗北を実感するが、生活水準の低下はどうやっても止める術が見つからない。日本は途上国の水準でも中程度の国になってしまったと気づく。緩やかな「大敗北」のパターンだ。
 その頃までには、人々の政治リテラシーが向上し、自分たちが間違ったということに気づく。もう手遅れではあるが、気づかないよりはマシ。そこまで来て微かな希望が見えるということだろうか。
 5年後なのか10年後なのか。早く事実上の日本破綻、大敗北の日が来た方がいいのかもしれない。
 この悲惨な道を避けるには、何よりも右翼連合政権の成立を阻止することが必要だ