2017年1月6日金曜日

06- 幻想空間を遊泳する安倍首相と今井秘書官

 「裸の王様」は、現在では「愚かなトップ」を揶揄する言葉として何気なく使っていますが、考えてみると「馬鹿の目には見えない織物で仕立てる」と言えばみんなをだませると考えた詐欺師の頭の良さはなかなかのものです。実際にあらゆる人がおかしいとは思いながらも、行列を見て「王様は裸だ」と叫んだ少年を除いて、誰一人それを口に出せなくなったのですから。
 もしもその少年がいなかったら一体どういうことになったのでしょうか。そう考えると一種恐ろしくもあるのですが、王様が戦争好きでも残忍でもなくて、ただただオシャレ好きだという点は救いです。
 
 5日の日刊ゲンダイに高野孟氏の「(永田町の裏を読む)手を取り合って幻想空間を遊泳する安倍首相と今井秘書官」が載りました。
 安倍首相の振付師が今井主席秘書官であることは、いまや永田町で知らない人はいないようですが、内政がだめなら外交でとばかりに、安倍首相は昨年も驚くばかりの頻度で外遊しました。しかしその結果は対米、対露を含めてことごとく失敗に終わったのはご存知のとおりです
※  2016年11月25日 無残な安倍外交における破産の数々
 
 しかし今井秘書官としてはそれでは立つ瀬がないので、必死に次々と首相の目先を変える一方で、マスメディアには絶対に批判的な記事を書かせないだけでなく、逆に持ち上げる記事を書かせてはそれを首相に見せるので、どうも安倍首相には「外交の失敗」「八方ふさがり」という認識はないということです。
 
 アンデルセンの「裸の王様」では、王様の行進の時に、一瞬「疑似 共同幻想」的状況が生まれ、それは少年の叫びによってすぐに消失しましたが、安倍首相と今井秘書官はいま、「二人で作り上げた幻想空間を遊泳している」と高野氏は述べています。その実態は勿論 今井・振付師が作りあげた幻想空間なのですが、まことに言い得て妙です。
 勿論いまはそんな夢想に浸っているときではありません。事前に十分に準備して対応すべきは、トランプ大統領体制が始動すれば直ぐにも日本に強いられる日米FTAや在日米軍費用の巨額要求の問題です。
 
 日刊ゲンダイの「トランプ強要確実 日本が強いられる安保とFTAの巨額負担」も併せて紹介します。
 
        (関係記事)
2016年11月14日  破綻している安倍首相の側近政治
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                永田町の裏を読む  
手を取り合って幻想空間を遊泳する安倍首相と今井秘書官
高野孟 日刊ゲンダイ 2017年1月5日
 アンデルセンの「裸の王様」は、「馬鹿の目には見えない不思議な布でできている」という触れ込みの高価な衣装を、家臣も王様本人も「見えない」と言えば馬鹿と思われるから、お互いに本当のことを言わず、そのため王様は裸のままパレードに出ていってしまうというお話だが、今の安倍晋三首相と今井尚哉首席秘書官の関係もそれに似ている。
 
 外務省のロシア専門家を押しのけて、対ロ外交の総括責任者に就いたのは今井で、経済協力で大盤振る舞いをした上で、ロシアのプーチン大統領を高級温泉旅館でもてなせば、北方領土で妥協するだろうという幼稚極まりないシナリオを描いて安倍に振り付け、大失敗に終わった。それですぐに目先を変えて、「戦後の首相として初めて」と銘打った安倍の真珠湾訪問を仕掛け、それがうまくいけば「真珠湾解散だ」とまで新聞に書かせてあおり立てたが、「初めて」どころか吉田茂も鳩山一郎も岸信介も訪問していたことが判明して、ずっこけてしまった。
 
 自民党中堅議員が嘆く。
「とにかく今井は、外交舞台をその場限りの派手なサプライズ演出のチャンスとしか考えておらず、うまくいけばその勢いで解散・総選挙を打って政権延命という一本やりの単純思考。5月の伊勢志摩サミットで、偽データのパネルを作って『リーマン・ショック級の世界経済危機』を演出してダブル選挙に持ち込もうとしたのも、今井。プーチン来日に大いに期待を持たせて、年末年始の北方領土解散をさんざんあおったのも、今井。それがダメなら真珠湾というのも、今井。彼は、自分の仕掛けたことが失敗だとは言えないから『成功した』と安倍に囁き、マスコミにもそう書かせる。安倍も自分が失敗したとは思いたくないので、今井の言葉や、彼が切り抜いてきた新聞記事を信じようとする。2人で手を取り合って幻想空間を遊泳しているかのようだ」と。
 
 次の場面は今月末で調整中のトランプ新大統領との会談である。同議員の言うには、これについても今井は安倍に対して「何も分かっていないトランプに注文をつけて世界が大混乱に陥るのを防ぐのが、豊富な政治・外交経験を持つ総理の役目ですから」などと、誇大妄想を吹き込んでいるらしい。それで妙に自信過剰になった安倍が、仮にもトランプを見下すような発言をしたりすると、大惨事に陥ることになろう。 
 
 高野孟(プロフィール)
   ジャーナリスト 1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
 
 
           巻頭特集 2017年世界はひっくり返る  
トランプ強要確実 日本が強いられる安保とFTAの巨額負担
日刊ゲンダイ 2017年1月4日
 2017年は日米関係が一気に悪化する可能性が高い。安倍首相の周辺は、「安倍首相とトランプ次期大統領は相性が良さそうだ」などと根拠のない楽観論を唱えているが、トランプを甘く見ない方がいい。
 今後の日米関係は、安倍とトランプとの初会談が暗示している。安倍が「信頼できる指導者だ」とヨイショした直後、トランプは「TPPから離脱する」と、平然と安倍の顔に泥を塗った。相性ウンヌンは、まったく意味がない。
 
 「歴代の米大統領も国益を優先していましたが、それでも多少は個人的な友情や信義、善悪に左右されてきました。しかし、ビジネスマン出身のトランプが大統領に就くことで日米関係はビジネスの取引のように変質しかねないと思います。心配なのは、ビジネスの取引は、立場が上の方が有利になることです。安倍首相は一貫してアメリカに従属してきた。日本は国益にマイナスの取引を次々に結ばされる恐れがあります」(元外交官の天木直人氏)
 
 はやくも懸念されているのが、2国間の「日米FTA」を強要されることだ。かねてトランプは、日本が米国産牛肉に38%の関税をかけていることを引き合いに、日本車にも38%の輸入関税(現行2.5%)をかけろと訴えている。TPPよりアメリカに有利なFTAを提案してくるのは間違いない。さらに、現在、日本が7割負担している在日米軍駐留経費を「100%負担しろ」と選挙中に主張している。
 2017年は、日本の植民地化がますます進みかねない。