安倍政権は昨年12月、「子どもの相対的貧困率が大きく改善した」と発表しました。しかし、それは言わば二重の欺瞞を重ねて得られたものです。
その一つは、貧困率のデータがOECDなどが採用する厚労省の「国民生活基礎調査」ではなく、総務省の「全国消費実態調査」を用いていることです。これについて自由党の山本太郎参院議員は25日の代表質問で、「総務省の実態調査は、非常に面倒な作業を対象者に求めるもので、お金と時間に余裕のある人しかなかなか対応することができず、低所得者層の実態をしっかり反映しづらいという傾向がある」と指摘しています。
同じ土俵で得られたデータで比較すべきなのに、毛色の違う資料を持ってくるのでは話になりません。
同じ土俵で得られたデータで比較すべきなのに、毛色の違う資料を持ってくるのでは話になりません。
もう一つはしんぶん赤旗の指摘で、政府が用いている2009年と2014年を比較すると、可処分所得が下から数えてちょうど10%に当たる人の可処分所得は、134・7万円から132・3万円へ2万4000円も低下したにもかかわらず、所得の中央値が下がりそれに伴って貧困線も下がったために、貧困層はその絶対的貧困の度を深めたにかかわらず、見かけ上の相対的貧困率が僅かに下がったというのが真相というものです。
貧困層を救済することなく、逆にますます貧困に追い込む・・・まともな政治家であれば絶対にやってはいけないことです。それなのに、上記の理由でたまたま見かけの数字が「改善」したことを、いかにも自分たちの成果であるかのごとく高言するとは何とも浅ましい話です。
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貧困拡大隠す安倍首相 相対的貧困率の低下 実は中間層の疲弊
しんぶん赤旗 2017年1月29日
安倍晋三首相は「アベノミクス」のもとで広がる格差と貧困の実態を覆い隠すのに躍起となっています。そのために利用しているのが「貧困率の低下」です。
2万4000円も可処分所得が減少
安倍首相があげるのは、2014年の「全国消費実態調査」(総務省)の結果です。5年前の調査結果では10・1%だった「相対的貧困率」が9・9%に減ったというのです。
安倍首相は、この数字を根拠に、貧困層が豊かになったかのように言っていますが、それは違います。同調査で可処分所得が下から数えてちょうど10%に当たる人の可処分所得は、09年の134・7万円から14年の132・3万円へ、2万4000円も低下しています。
貧困層の所得が減ったのに、なぜ貧困率が低下したのでしょうか? それは、貧困率の計算の基準となる「貧困線」が低下したからです。
相対的貧困率は、全国民を可処分所得(世帯員数による調整後の値)の順に並べたときに、真ん中の人の値(中央値)の半分の額を「貧困線」として、その貧困線を下回る人の割合として計算されます。同調査では、中央値が09年には270・4万円でしたが、14年には263・3万円になり、7・1万円も下落しました。このため、貧困線も135・2万円から131・7万円に3・5万円下がってしまいました。
所得は減ったのに「貧困層」から外れ
このため、先ほどあげた下から10%に当たる人の場合、09年には貧困層に計算されましたが、14年には貧困層ではないと計算されることになります。自身の所得は減っているにもかかわらず、「貧困層」からはずれてしまったのです(表参照)。
貧困線と可処分所得下位10%の金額の経緯
可処分所得
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貧困線
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可処分所得下
|
③の人が「貧困」かどうかの
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年
|
の中央値
|
位10%の金額
|
判定
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①
|
②
|
③
| |||
2009
|
270.4
|
135.2
|
134.7
|
②>③なので「貧困」に該当
| |
2014
|
263.3
|
131.7
|
132.3
|
②<③なので「貧困」に該当せず
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貧困率が低下したのは、貧困層が豊かになったからではなく、むしろ、中間層の可処分所得が落ち込んだためで、「貧困」が低所得層だけでなく中間層にまで広がってきたことを示すものです。日本共産党第27回大会決定でも指摘している「中間層の疲弊」が進んだ結果ともいえます。貧困率の低下をもって「アベノミクスの成果」と言い張れば、貧困の実態に目を閉ざすことになります。