安倍内閣が20日召集の通常国会への提出を狙う新「共謀罪」法案(組織犯罪処罰法改定案)に対して、既に全国34の単位弁護士会の会長が反対声明を発表していることが分かりました。
この法案は当初昨年9月に開催の臨時国会に提出される予定であったために、その時点で各弁護士会の会長声明が出されました。しかし、政府はTPP協定の批准を優先させるために、共謀罪の提出を今月開催の通常国会へと遅らせました。
しんぶん赤旗の記事と併せて紹介する日弁連会長の反対声明の日付が 昨年の8月31日になっているのはそういう理由です。
これから提出される法案が8月の時点から内容的に変更があったとはいわれていませんので、基本的に各声明はそのまま生きていると考えられます。
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共謀罪 思想・良心の自由侵害 盗聴が常態化
弁護士会の反対広がる
しんぶん赤旗 2017年1月12日
安倍内閣が20日召集の通常国会への法案提出を狙う、新「共謀罪」法案(組織犯罪処罰法改定案)にたいして、全国34の単位弁護士会の会長が反対声明を発表していることが11日、日本弁護士連合会(日弁連)の集計でわかりました。反対の世論が急速に広がっています。
34単位弁護士会が声明
単位弁護士会は全国に52あります。15年1月から11日までに34の単位弁護士会と日弁連、東北6県の弁護士会でつくる東北弁護士会連合会が反対の会長声明を発表しました。
とくに、昨年8月に安倍内閣による新「共謀罪」法案の国会提出計画が報じられたことを受け、声明が次々とあがっています。
日弁連広報課は「過去の共謀罪法案についても、全てかほとんど全ての単位弁護士会が反対声明を出しており、共謀罪について弁護士会が数度にわたって反対声明を出したことになる」と話します。
声明では「広範な括(くく)りでテロ行為とはおよそ無縁な罪種についても『共謀罪』の対象としており、テロ対策目的との関連は見いだせない」(千葉県)、「内心を処罰対象とする点で思想・良心の自由を侵害するものであり、その捜査のため市民の私生活を監視することになる」(愛媛)、「電話による通話内容が犯罪を構成することになるため、これを察知するための盗聴が常態化する」(秋田)などと、問題点を指摘して批判しています。
現時点で反対声明を出していない弁護士会でも、「緊急県民シンポジウム」(静岡県弁護士会)が企画されるなど、共謀罪に反対する行動に取り組んでいます。
いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明
今般、政府は、2003年から2005年にかけて3回に渡り国会に提出し、当連合会や野党の強い反対で廃案となった共謀罪創設規定を含む法案について、「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めて取りまとめ、今臨時国会に提出することを検討している旨報じられている。
政府が新たに提出する予定とされる法案(以下「提出予定新法案」という。)は、国連越境組織犯罪防止条約(以下「条約」という。)締結のための国内法整備として立案されたものであるが、その中では、「組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」を新設し、その略称を「テロ等組織犯罪準備罪」とした。また、2003年の政府原案において、適用対象を単に「団体」としていたものを「組織的犯罪集団」とし、また、その定義について、「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」とした。さらに、犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし、その処罰に当たっては、計画をした誰かが、「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。
しかし、「計画」とはやはり「犯罪の合意」にほかならず、共謀を処罰するという法案の法的性質は何ら変わっていない。また、「組織的犯罪集団」を明確に定義することは困難であり、「準備行為」についても、例えばATМからの預金引き出しなど、予備罪・準備罪における予備・準備行為より前の段階の危険性の乏しい行為を幅広く含み得るものであり、その適用範囲が十分に限定されたと見ることはできない。さらに、共謀罪の対象犯罪については、2007年にまとめられた自由民主党の小委員会案では、対象犯罪を約140から約200にまで絞り込んでいたが、提出予定新法案では、政府原案と同様に600以上の犯罪を対象に「テロ等組織犯罪準備罪」を作ることとしている。
他方で、民主党が2006年に提案し、一度は与党も了解した修正案では、犯罪の予備行為を要件としただけではなく、対象犯罪の越境性(国境を越えて実行される性格)を要件としていたところ、提出予定新法案は、越境性を要件としていない。条約上、越境性を要件とすることができるかどうかは当連合会と政府の間に意見の相違があるが、条約はそもそも越境組織犯罪を抑止することを目的としたものであり、共謀罪の対象犯罪を限定するためにも、越境性の要件を除外したものは認められるべきではない。
当連合会は、いわゆる第三次与党修正案について、我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高く、共謀罪導入の根拠とされている、条約の締結のために、この導入は不可欠とは言えず、新たな立法を要するものではないことを明らかにした(2006年9月14日付け「共謀罪新設に関する意見書」)。また、条約は、経済的な組織犯罪を対象とするものであり、テロ対策とは本来無関係である。
そして、以上に見たとおり、提出予定新法案は、組織的犯罪集団の性格を定義し、準備行為を処罰の要件としたことによっても、処罰範囲は十分に限定されたものになっておらず、その他の問題点も是正されていない。
よって、当連合会は、提出予定新法案の国会への提出に反対する。
2016年(平成28年)8月31日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋