2017年1月7日土曜日

「共謀罪」通常国会提出へ 野党・日弁連は反対

 安倍首相は5日、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を20日召集の通常国会に提出する方針を固めました。
 
 共謀罪が適用される対象は「法定刑が4年以上の懲役・禁錮の罪」(約600を超えるといわれています)に関わることの謀議に加わることです。共謀罪は実行行為がなくても謀議に加わることだけで処罰するものなので、これは日本の刑法が「犯罪の実行に着手する」ことを構成要件としていることに反します。
 共謀罪の捜査では日常的な会話やメールの内容から謀議」や「合意」を判断するので、すでに法の改悪で対象が広げられた盗聴法を根拠に通信傍受などを行う市民監視さらに強まることになります。
 そうした監視は正に国民の思想や内心の自由を侵すものなので、捜査機関の職権乱用などによって人権が侵害されるとして、日弁連は反対しています。共産党、社会党なども勿論反対で、民進党や公明党内でも反対論が強いので、提出されれば国会で激しい議論になります実際に小泉内閣時代には3回提出されましたが、いずれも反対が強くて廃案になりました。
 
 政府は、2000年に国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約への加入に共謀罪が必要」という言い方をしますが、それは間違いで、国連の「立法ガイド」には「共謀罪」を新設することを強制しないと明記されています
 また政府は、東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策の強化のために必要だとも主張しますが、テロ対策法は既に整備されていて共謀罪は必要でなく、「組織犯罪条約はテロ対策とは無関係」で、且つ「国連越境組織犯罪防止条約はテロ対策と無関係」であるとされています(海渡雄一弁護士:テロ対策を名目とする共謀罪法案に反対する! http://nohimituho.exblog.jp/26141286/ )。
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「共謀罪」通常国会提出へ 野党・日弁連は反対
東京新聞 2017年1月6日
 安倍晋三首相は五日、犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十日召集の通常国会に提出する方針を固めた。共謀罪に関しては、国民の思想や内心の自由を侵す恐れがあるとの批判が根強い。捜査機関の職権乱用などによって人権が侵害されるとして、日弁連や共産党は反対している。民進党内でも反対論が強く、提出されれば国会で激しい議論になる。
 
 首相は五日の自民党役員会で、「共謀罪」法案の早期成立を目指す考えを示した。首相はこの後の政府与党連絡会議でも、通常国会に関して「大きな法案の提出も予定されている」と指摘した。
 与党の公明党内には、組織犯罪処罰法や通信傍受法が既に存在していることを踏まえ、「共謀罪」創設は不要との意見がある。公明党が重視する都議選が今夏に控えていることもあり、調整が必要となる。
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は五日の記者会見で、「共謀罪」法案の通常国会への提出に関して、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策の強化が必要だと主張し「テロを含む組織犯罪を防ぐことは、国民も望んでいる。これまでの国会審議の意見を踏まえ、最終検討している」と述べた。
 自民党の二階俊博幹事長は五日の記者会見で「政府の方針に従って党も協力していきたい」と述べた。
 
 政府は、国連が〇〇年に採択した国際組織犯罪防止条約の批准に向けて、小泉政権下の〇三年に初めて同法案を国会に提出した。しかし、野党や世論の反発で廃案になった。その後、小泉政権は二回提出したが、いずれも廃案となった。第二次安倍政権の発足後も提出が検討されたが、提出に至らなかった。
 
 <国際組織犯罪防止条約> 
    複数の国にまたがる組織犯罪を防ぐため、各国が協調して法の網を国際的に広げるための条約。重大犯罪の共謀や、犯罪で得た資金の洗浄(マネーロンダリング)の取り締まりを義務付けている。国連総会で2000年11月に採択。12月にイタリア・パレルモで条約署名会議が開かれ、日本も署名した。政府は「共謀罪」の法整備が条約締結の要件だとして組織犯罪処罰法改正を目指すが、成立に至っていない。世界180以上の締結国全てが法整備したわけではないとの指摘もある。
 
 
「共謀罪」法案提出へ 通常国会へ政府方針
しんぶん赤旗 2017年1月6日
 政府は5日、犯罪の計画段階で処罰可能とする、いわゆる「共謀罪」を創設するための組織犯罪処罰法改正案を20日召集予定の通常国会に提出する方針を固めました。東京五輪開催を理由として、「テロ対策」を前面に出すため、名称を「テロ等準備罪」とし、資金調達などの具体的準備行為を処罰要件に加えます。
 安倍晋三首相は5日の自民党役員会で「テロ準備罪という形の法案を出す」と明言。菅義偉官房長官も記者会見で「国際社会と協調して組織犯罪と戦うため条約締結が不可欠だ。法整備はしっかり進める必要がある」と強調しました。
 
 政府は小泉政権当時に共謀罪法案を3度提出しましたが、「犯罪の話しをしただけで罰せられるのでは」などと懸念が強まり、市民と野党の反対でいずれも廃案となりました。
 新たな法案では、名称を「テロ等準備罪」とし、「準備行為」などの処罰要件を設けました。ただ、テロ以外にも恣意(しい)的に適用される可能性があるとの指摘も野党などから出ています。