破綻が明らかなアベノミクスはいわゆる軟着陸が出来ないので、最終場面では文字通り『大破綻』が起きると言われています。株式に投じた我々の年金積立金が戻ってこないのは勿論のことです。
「アホノミクス」の名付け親の浜矩子同志社大教授と経済評論家の佐高信氏が、「どアホノミクス」について討論しました。
「アホノミクス」の名付け親の浜矩子同志社大教授と経済評論家の佐高信氏が、「どアホノミクス」について討論しました。
問題は最終場面でどういうことが起きるのかですが、対談は紙面の関係からか、「日本全体が、近い将来とんでもない落とし穴にはまってしまう」で終わっています。
新年早々あまり深刻な話はできないということなのでしょうか。そういう意味で消化不良の気味は否めませんが「現代ビジネス」の記事を紹介します。
(関係記事 下記他多数)
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浮かれてる場合じゃない! 「どアホノミクス」で今年ついに起きること
二人の辛口論客が徹底討論 佐高 信、浜 矩子
現代ビジネス 2017年1月3日
安倍首相、黒田日銀、御用学者たちによる「チーム・アホノミクス」は、この国をどうしようと目論んでいるのか。大メディアの記者たちは、その目論みに気づいていて報じないのか、それとも気づいていないのか。
二人の辛口論客が徹底討論!
安倍の本当の狙い
浜矩子 アベノミクスは、すでにして行き詰まっていると言えます。屋上屋を重ねるように場当たり的な金融政策を続けているわけですが、いつそれが崩壊してもおかしくない。「アホノミクス」、いや「どアホノミクス」と言うべき状況です。
佐高信 事実、日銀の黒田東彦総裁は、すでに9月21日、アベノミクスの「総括的な検証」の記者会見で、「(金融緩和を)さらに強化して長短金利操作付き量的・質的金融緩和にした」と発言していますね。これは安倍政権の金融政策を抜本的に転換する発言で、端的にアベノミクスの失敗を意味している。
しかし、安倍総理はむろんのこと、黒田総裁自身もそのことを理解しているとは思えません。
浜 おっしゃる通りです。もはや日銀は「チームアホノミクス」の中央銀行支部になっていると言わざるをえません。日銀が中央銀行の本来の役割を放棄してしまっているので、金融政策と現実の辻褄がどんどん合わなくなってきている。
佐高 安倍総理や黒田総裁がよく使う「マーケット」という言葉も、変な言葉だなと感じます。
浜 あたかも「マーケットさん」や「市場さん」という人がいるかのごとく、「マーケットが求めている」「マーケットの言うことを聞かなければ」という言い方がなされていますが、危険な言葉ですね。「マーケット」という言い方をすることで、金に人格を与えてしまう。
安倍政権は、「自分たちは市場との対話の達人だから、自分たちの思惑通りに株も上がれば円も下がるのだ」と思いこんでいる。
しかし現実には、国民はマイナス金利政策が導入された途端に金庫を買って、そこに現金を詰め込むという自己防衛手段に出ています。株価と実体経済がまったく連動していないのです。
佐高 安倍総理が「デフレを打開するため」と言って掲げた、「一定の物価上昇率を目標として金融緩和を行う」というインフレターゲット論にも、私はそもそも疑念を抱いています。
浜 安倍政権は'13年4月に一度掲げた2%の物価上昇率目標について、「2年程度での実現」という方針を取り下げましたが、そもそも当初から本気でやる気があったのかどうか、私ははなはだ疑問ですね。
できもしない目標を掲げて、日銀による財政ファイナンス(政府の借金を引き受けること)を正当化する。そこに本当の狙いがあったのではないかと感じます。
佐高 それはズバリ、政権が触れられたくないところかもしれません。彼らは「自由主義」と言うけど、2%目標というのは完全に統制経済です。
浜 このところ、そうした統制的な考え方が多方面でまかり通っているように感じます。女性の役員比率などもお国が決めていく。「2020年までにGDP600兆円」というのは、今と比べて2割増えるわけですが、これは明らかに、そうすれば国防費を増やせるという算段でしょう。
自分たちの目的を達成するために、美味しそうなことを言って人を引き寄せる。その種の人々が本当は何を狙っているかを、我々は見透かし、見据えていく必要がある。国民には、安倍総理にすっかり安心して委ねてしまっている人が多いのが深刻なのですが。
佐高 安倍総理を支えている人の中には、経済が政治や社会とは別に自立していると錯覚している人も多い気がするんです。
安倍総理のブレーンである竹中平蔵(慶應義塾大学名誉教授)などは「経済は難しいものだから、自分たちにしかわからないんだ」という言い方をしますよね。専門性を強調して人々を寄せ付けず、好き勝手なことをやる。
浜 実はすごくシンプルな話でも、簡単にわかられては困るから複雑怪奇に見せる。日銀の記者会見なんかを見ていると、メディア側の責任もかなりあると思います。
説明を聞いて報じる側までもが、相手の繰り出した訳のわからない言葉で話してしまう。「フォワード・ルッキング」だとか「オーバーシュート型コミットメント」だとか。
記者たちは一般の人の代理として質問をぶつける役割がある。どうして「そんな言われ方をしてもわかりませんよ」と言わないのでしょうか。
落とし穴が待っている
佐高 経営者が本を読まなくなり、哲学を持たなくなったことも、問題だと思います。
私は日本興業銀行のトップだった中山素平が好きで、何度か取材しました。中山さんは昭和2年の金融恐慌を見ていて、ああいうことを二度と起こしてはならないという思いが彼の原点にはあった。
危機の時代には哲学が必要なのだとわかっている人でした。それがわからない今の経済学者や経営者は危うい。彼らはアホノミクスに期待し、すりよってしまう。
浜 こんな情況になってしまったのは、ビジネススクールの存在が良くないのかもしれない。リーマンショックの後、ハーバード大学などは反省して、経営倫理をしっかり学んでもらう必要があると言い出しました。
しかし日本では、いまだに大学や高校での文系不要論がまかり通り、権力側は、さらにテクニックばかりを教える方向に持っていこうとしています。この傾向が進めば進むほど、技術は知っているけれど頭のなかは空っぽという人が増えていく。
実はそれは国家権力が望むところです。今の経団連の役員クラスに名を連ねている経営幹部たちにも、理念や倫理から発言する人がもういなくなってしまった。
佐高 今の日銀と安倍政権の関係で言うと、日銀は、小手先のテクニカルなことばかりやろうとしている。それが日本経済を殺すようなとてつもない結果をもたらす策であるわけですが、安倍総理がそのテクニカルなことの本当の意味がわかっているのかというと、まるでわかっていない。
浜 知的貧困が加速度的に進み、そこに悪い奴らがつけ込んでくる。知的貧困のどこにどうつけ込めばいいかということへの嗅覚を持っている人たちが、「三本の矢」などと言い出すわけです。
安倍政権は男性の支持、特に10代、20代の男子の支持が強いという調査結果があると聞きました。実際にそうなのだとすれば、それは彼らがいちばん自信をなくしていて、いちばん方向感を失っていて、いちばん不安感で一杯な層だからだと思うのです。
そういう不安でいっぱいの男子たちが、「強い日本を取り戻す」などと威勢のいいことを言われると、強さと力を掲げるメッセージに酔いしれてしまう。
佐高 アホノミクスは富国強兵の「国」を「会社」に変えましたが、しかし人々に尽くさせるスタイルは変わっていません。ただ反面、人々のほうでも忠誠の対象を求めているようにも感じます。
浜 安倍総理は大日本帝国会社の総帥になった気分でいるでしょう。しかし、このまま現実から目をそらし続けていると、日本全体が、近い将来とんでもない落とし穴にはまってしまうでしょう。