アメリカはシリア国内のダーイッシュ(IS、ISIS)をせん滅するということで、有志連合を組織して実に1万回にも及ぶ空爆を行いましたが、被害を受けたのダーイッシュではなくシリアの国民であり、実に1、000万人もの難民を生み出しました。
アメリカの目的は当初からダーイッシュのせん滅ではなく、シリアの国土を徹底的に破壊し、アメリカになびかないアサド政権を転覆させることでした。その意図を知っているシリアのアサド政権は勿論空爆に反対しましたが、それには全く構わずに空爆は続行されました。
アメリカがこうした意図を遂げる上でダーイッシュなどのテロ組織は必要不可欠であって極めて便利な存在です。アメリカがせん滅を謳う一方で実はダーイッシュとは密接に関係していた(=援助していた)ことは良く知られていましたが、先のシリア・アレッポの戦闘でダーイッシュが窮地に立たされると、アメリカは外聞も憚らずにダーイッシュの逃走に便宜を図る様にロシアに要請しましたが当然拒否されました。漫画のような話です。
アメリカは史上空前の戦争国家で、1776年に建国して以降2015年に至る239年間に、実に222年間戦争をして来ました※1。
しかしさすがのアメリカも、もはや公然と侵略する国家はなくなったので、2000年以降はいわゆる「対テロ戦争」に特化せざるを得なくなりました。
戦争を続けないことには国が成り立っていかないアメリカが今後も戦争を続けていくためには、もう「対テロ戦争」しかありません。アメリカは「対テロ戦争」を継続することを今後の戦略にしていますが、それを継続するためには絶えずテロ組織を養成して、彼らに武器を与え戦闘の訓練をすることが必須となるわけです※2。
※2 2015年2月6日 テロとの戦いをずっと続けていたい それが米国の本音
何ともおぞましい悪魔小説のような世界が、いま現実に行われているということで、実に救いがたい話です。
アメリカなどが行っているテロ組織養成の実態を櫻井ジャーナルが伝えています。
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米英仏から戦闘員が今でも軍事訓練を受けているダーイッシュが
シリアのデリゾールで大規模な攻勢
櫻井ジャーナル 2017年1月19日
シリアでは約1万4000名のダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)部隊がシリアのデリゾールに対する大規模な攻撃を展開しているようだ。パルミラやイラクのモスルから多くの戦闘員が攻撃に参加しているとも伝えられている。以前にも書いたが、アメリカやサウジアラビアは、戦闘員がモスルからシリアのデリゾールやパルミラへ安全に移動できるようにすることで合意していたとされている。
シリア政府軍に投降した戦闘員の話として伝えられているところによると、ヨルダンのキャンプではアメリカ、イギリス、フランスの将校が反政府軍の戦闘員を訓練しているという。以前からヨルダンではそうした訓練が実施されていると言われていたが、それが続いているということのようだ。アメリカ主導の連合軍によるアル・カイダ系武装集団やダーイッシュへの攻撃は見せかけだという状況に変化はないと言える。訓練を受けた戦闘員もバシャール・アル・アサド体制を倒すため、投入されていくのだろう。こうした工作を続けているアメリカの好戦派はドナルド・トランプ政権の誕生を好ましく思っていないとも言える。
アル・カイダ系武装集団やダーイッシュをアメリカやその同盟国が支援してきた。こうしたことはアメリカの副大統領や軍人も認めている。例えば、2014年9月に空軍のトーマス・マッキナニー中将はアメリカがダーイッシュを作る手助けしたとテレビで発言、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で発言、同年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると語り、2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと述べている。
そうした発言より前、2012年8月にアメリカ軍の情報機関であるDIA(国防情報局)が作成した文書によると、サラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)がシリアにおける反乱の主力であり、西側、湾岸諸国、そしてトルコが支援していると指摘、シリア東部にサラフ主義者の国ができる可能性があると警告していた。ダーイッシュの出現を予測していたわけだ。
その報告書が作成された当時にDIA局長を務めていたマイケル・フリンは2015年8月、アル・ジャジーラの番組でダーイッシュの勢力拡大を防げなかった責任を問われ、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領が行うと発言した。オバマ政権の決定がダーイッシュを生み出して支配圏を拡大させたということだ。
また、2016年8月16日にアメリカ軍の広報担当者、クリストファー・ガーバー大佐は自分たちが戦っている相手はダーイッシュだけであり、アル・ヌスラではないと明言している。2001年9月11日以降、「テロの象徴」として扱われ、侵略の口実に使われてきたアル・カイダ系武装集団は「穏健派」だというわけだ。
オバマ大統領がシリアに対する軍事侵略を続ける中、ロシア政府と交渉を続けていたのがジョン・ケリー国務長官。そのケリーは昨年9月22日に反シリア政府派のメンバーと会談、その音声が明らかになった。会談の8日後にニューヨーク・タイムズ紙が伝えた内容はオバマ政権にとって都合の良い内容に編集されていたが、今年早々にはケリーの全発言が外に漏れ、アメリカ政府がダーイッシュを支援していることを認めていることも音声で確認できるようになった。
ケリーはロシアがシリア政府の要請で軍事介入したのに対し、アメリカは勝手にシリア国内で戦闘行為を始めたことを認めている。シリア政府軍を攻撃している武装勢力をアメリカが訓練、その武装勢力がダーイッシュだということも認めている。ダーイッシュを利用してアサド政権を脅し、アメリカとの交渉に応じさせようとしたことも隠していない。
「われわれは多額の資金を費やし、そうした支援をしようと大変な努力をした。そこには反対派がいる。反対派は大変よくやっていたが、ロシアが介入した。それが問題だ。」つまり、「ロシア人が方程式を変えてしまった」というわけだ。
自身の国のために戦うシリア人を助けることが目的だったとケリーは語るが、そうしたシリア人がほとんど存在しないことはDIAも2012年の段階で認識、オバマ政権へ報告している。
アメリカが中東/北アフリカを軍事侵略、破壊と殺戮の限りを尽くす切っ掛けを作ったのは2001年9月11の攻撃。ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)がターゲットで、ジョージ・W・ブッシュ政権は即座に「アル・カイダ」が実行したと宣伝しはじめた。
それ以降、「アル・カイダ」はテロリストの象徴となり、軍事侵略を正当化する口実として使われるが、その「アル・カイダ」系武装集団やそこから派生したダーイッシュをアメリカ政府が支援していることをケリーも認めたわけだ。9/11に関する公式ストーリーが崩れ始めた。