2025年6月19日木曜日

膳場貴子・浜田敬子・藻谷浩介の備蓄米論のバイアス-マルクスの「存在は意識を規定する」

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました(バイアス=偏向)。
 同氏はコメ高騰問題について、5月19日~6月18日の30日間に6編の記事を出していて、5月31日以降は「小泉備蓄米」に特化して4編を出しました。
 因みにその6編は下記の通りです。
  ・コメ価格高騰と「オリエント急行殺人事件」- ~ (5/19)
  ・おぼろげながら浮かんできた”闇米”の真相と将来モデル- ~ (5/24)
  ・小泉劇場化する進撃の備蓄米プロジェクト- ~ (5/31)
  ・国民の生活が第一ではないのか- ~ (6/7)
  ・備蓄米に並ぶ人々に冷淡な貴族リベラル- ~ (6/12)
  ・膳場貴子・浜田敬子・藻谷浩介の備蓄米論のバイアス- ~ (6/18)

 本編では自民党が選挙のために「小泉劇場」に「電通の演出」を絡ませたのでは という考察から入っています。批判しないのは、それによって「小泉劇場」が定着するのなら良いのではと考えているからでしょう。
 当初、コメ販売システムに関わっている筋から、「コメの高騰は農家への応援になる」という視点で肯定する論調がありましたが、「小泉劇場」はそれを粉砕し5キロ2000円が可能であることを証明しました。これまで繰り返してきたように、「食糧安保」と「コメの生産で農家が自立」できる道への「政治」こそが今後のテーマであることはいうまでもありません。
 3年前まで5キロ1200円だったコメが急に4200円に高騰して良いわけがありません。一体 食べ盛りの子供たちを抱えるシングルマザーに「どうして生きよ」というのでしょうか。非正規労働者や通常の年金生活者も同じです。
 世に倦む日々氏は前回の「備蓄米に並ぶ人々に冷淡な貴族リベラル- ~」に続いて、高所得者である「評論家」たちには「現在のコメ価格が高すぎるという感覚がなく、高騰したコメ価格に庶民が悲鳴を上げているという視点がなく、むしろ不当なのは無理に政府権力を動員してコメ価格を引き下げている小泉進次郎であると見ている(要旨)」と批判します。
 そして、そうした弱者無視の感覚は「存在は意識を規定する」という名言を思い出させると述べ、評論家たちは、「公平・公正・正確な情報の発信に努め、報道機関としての使命を果たす」というメディアの行動憲章に沿うべきだと批判します。
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膳場貴子・浜田敬子・藻谷浩介の備蓄米論のバイアス ー マルクスの「存在は意識を規定する」
                       世に倦む日々 2025年6月18日
先週(6/8-15)のヤフーニュースでは、全国各地での小泉備蓄米の販売開始を告げるローカル局の映像記事が連日上がっていた。これだけ毎日ワイドショー等で情報漬けにされると、近所でいつ流通に出るのか誰もが気になるし、自分の町はまだだろうかと順番と日程を焦るのは当然だろう。前回、ヤフーニュースが並べる地方紙・地方局の備蓄米報道は、ヤラセや仕込みの要素は一切ないはずだと書いたが、一週間延々見せられ続けると印象が少し変わってくる。気づくのは、各地方局が撮って流す備蓄米の取材映像が、判で押したように同じ構成であり、同じ絵柄であり、同じメッセージだという点だ。行列を撮り、販売場面を撮り、購入客の感想を撮り、小売店のマネージャーのコメントを入れている。その内容(コマ設計)が計ったように全部同じで、やはり何らかの作為性を感じざるを得ない。無論、購入客はサクラではなく、発言はセリフではないけれど

どうやら、ニュース映像には共通のマニュアルがある。ガイドラインに沿って企画と撮影と編集が行われている。と、私は想像するが、仮にそうだとしたら、マニュアルを作成して各地方局報道部に配布したのは、やはり電通ということになるだろう。そう舞台裏を推測すれば、全地方局の備蓄米ニュースがどこの映像も無個性的で、複製したように同一仕様である理由がよく納得できる。なるほどと思う。前から指摘を重ねたように、この小泉備蓄米プロジェクトは、コメ価格高騰で苦しむ国民を救う経世済民策であると同時に、7月の参院選を自民党勝利に導くための選挙対策プロモーションである。そして、このオペレーションの中枢には電通がいる。電通の臭いがプンつく。だから、電通らしく、動きがテレビ・オリエンテッド⇒指向なのだ。この政策活動の第一の目的が選挙であり、7/20 がゴールだから、そこへ向けて戦略全体を設計し、日程を管理して効率的に動いている

6/8-14 の週に全力集中したのは、地方テレビ局での小泉備蓄米ローンチ⇒立上げの宣伝であり、全国各地でプリファレンス⇒優先権を獲得するCM的な作戦手法だった。選挙区は全国にある。票は全国で取らないといけない。どこかの地方が備蓄米販売で遅れたとか、放ったらかしにされたという瑕疵や遺漏があってはいけない。電通と小泉進次郎は入念にプログラムし、6/14 には徳之島や喜界島、宮古島や石垣島など離島まで隅々行き届かせ、その絵をテレビで周知させていた。全国47都道府県すべてで小泉備蓄米の販売を実現した。無論、数量的にはまだまだ微々たるもので、単に象徴的なスタートが始まったばかりだ。小泉進次郎は 6/6 の時点で「今月下旬から来月にかけて相当量が市場に出回る」と明言していた。間もなく今月下旬のタイミングとなる。参院選の公示は 7/3。今後、どれほど精米業者の設備と工程を押さえ、随契米を割り込ませ、農協・卸との角逐に勝って行くかが課題となる

6/15 のサンデーモーニングでも、膳場貴子浜田敬子が小泉備蓄米政策を牽制するコメントを繰り出し、市場をじゃぶじゃぶにしたら価格が下がって生産農家が困るという趣旨の批判を発していた。相変わらず、膳場貴子と当番組のコメンテーターには現在のコメ価格が高すぎるという感覚がなく、高騰したコメ価格に庶民が悲鳴を上げているという視点がない。多くの国民が、1年間でコメの値段が2倍に騰がるのは不自然だと思っていて、そこに流通の不当な作為が介在している事情を疑っているが、彼らはそのことを理解していない。膳場貴子らにとって、むしろ不当なのは、無理に政府権力を動員してコメ価格を引き下げている小泉進次郎であり、生産農家の利益を強引に削って、国民に安いコメをばら撒いて歓心を買い、見え見えの劇場演出手法で支持率を上げ、選挙で勝とうとしている自民党らしい。膳場貴子や浜田敬子の正義はそこにあり、彼女たちは自分が正義だと確信している

おそらく、番組の放送前にスタッフや松原耕二らと議論の場を持ち、認識を共有し、メッセージを固めているのだろう。膳場貴子や浜田敬子や松原耕二らが協議すれば、コメ問題の論点と基調は自ずから進次郎叩きの方向性になるだろう。政治的ポジショントークであり、その動機は分かる。だが、理解できないのは、物価高で呻いている非正規や年金生活者が多数いるのに、その存在と現状が彼らの視野に入っておらず、コメ価格引き下げを政治に求めている国民の意思を過小評価している点だ。彼らの中には、明らかに庶民層を無視し矮小化するバイアス⇒偏向)がある。私は前回記事で、清少納言の枕草子の農民への差別意識を引き合いに出し、膳場貴子らの貴族的視線を浮き上がらせる比喩の構図化を試みた。膳場貴子らにコミットするリベラル左翼には、意地悪な指摘に見えたかもしれないが、問題はとても根深いように思われてならない。彼らの目からは、逆に、コメ価格引き下げを求める民衆や小泉備蓄米に並ぶ庶民の方が、無知で愚劣で利己的な蛆虫的輩として見えるのだ

その視角は、給付金や消費減税の政策に対して一貫して「バラマキ」の語で貶め、その意義を認めず否定する態度と通底している。彼ら自身には、食料品消費税率8%(年間4万円)など何の痛痒でもなく、コメ価格が2000円から4200円に上がった負担増(年間2.6万円)など、どうってことない取るに足らない問題に違いない。それぐらい我慢したらどうなのよというのが本音で、農家さんの方が大変なんだから、みんなで広く薄く分かち合って助けましょうよと本当は言いたいのだろう。同じ東大系貴族リベラルの藻谷浩介が、6/12 の報道1930で隠さず正直に本音を述べていた。コメの値上がり分など、彼らの生活上何の切実さも実感できない事象なのだ。実感できず、内在する想像力も及ばず、想像力を及ぼす意味さえ分からない問題だから、雑音に聞こえるのである。雑音を聞くのが嫌だから、視野の外に置こうとし、困窮する大衆の主張の政治的意義を正しく認めようとしないのだ

そして、この問題で同じ見解の(準富裕層の)仲間を周囲に集め、自分たちの意見と判断が正しいと再確認するのである。貴族リベラルのその言説と態度は、ネットの5ch のリバタリアン右翼と類似している。4200円のコメが買えないんだったら雑草を食っとけという論理と本質的に同じだ。とても問題の根が深い。深刻だと感じる。このところ、格差社会とか貧困という批判語のキーワードを聞く機会が少なくなった。20年前は喧々諤々で議論していたが、すっかり沙汰止みで消えてしまった。それらの言葉が提示し告発する貧富の差や不平等の社会矛盾に対して、マスコミだけでなく全体がセンシティブでなくなり、矛盾を矛盾として捉える意識が後退した。それは裏返しとして、ネオリベ⇒新自由主義)やリバタリアニズム⇒自由至上主義)の思想が全面化し、社会の支配的思想になり、常識の観念のコアになったことを意味する。堀江貴文的な、富裕者と貧乏人とでは社会的権利に差をつけるのが当然という考え方に染まった

倫理観がなくなった。そのことが、私がサンデーモーニングのコメ問題のコメントに拘って批判する理由である。膳場貴子や浜田敬子や松原耕二の倒錯を見ながら念頭に浮かぶのは、マルクスの「存在は意識を規定する」というシンプルな至言だ。貴族リベラルの存在と空間は、嘗てはそんな呼び名は相応しくないほど、一般大衆の居住空間と接近していたはずで、所得は違っていても、発想や認識をよく共有できていたはずだ。むしろ、筑紫哲也はインテリとして国民の意見を代弁していた。今は、貴族リベラルと一般大衆とは物理的空間が隔絶していて、生活実感が異なり、関心や話題や認知が違いすぎる別人種になってしまっている。堀江貴文や西村博之の思想の病原菌が、膳場貴子や松原耕二の内部に感染し、浸透し、低所得層への見方と評価をネガティブ⇒否定的)に共通にさせている。それは、彼ら富裕層の歪んだエリート意識の裏返しでもある。マルクスは、資本論第1巻24章でこんなことを言っていた

この本源的蓄積が経済学で演ずる役割は、原罪が神学で演ずる役割とだいたい同じようなものである。アダムがりんごをかじって、そこで人類の上に罪が落ちた。この罪の起源は、それが過去の物語として語られることによって、説明される。ずっと昔のあるときに、一方には勤勉で賢くてわけても倹約なえり抜きの人があり、他方にはなまけもので、あらゆる持ち物を、またそれ以上を使い果たしてしまうくずどもがあった。とにかく、神学上の原罪の伝説は、われわれに、どうして人間が額に汗して食うように定められたかを語ってくれるのであるが、経済学上の原罪の物語は、どうして少しもそんなことをする必要のない人々がいるのかを明かしてくれるのである。

それはともかくとして、前の話にもどれば、一方の人々は富を蓄積し、あとのほうの人々は結局自分の皮のほかには何も売れるものを持っていないということになったのである。そして、このような原罪が犯されてからは、どんなに労働しても相変わらず自分自身よりほかには何も売れるものを持ってない大衆の貧弱と、わずかばかりの人々の富とが始まったのであって、これらの人々はずっと前から労働しなくなっているのに、その富は引き続き増大してゆくのである。こんな愚にもつかない子供だましを、たとえばティエール氏は、嘗てはあんなに才智に富んでいたフランス人に向かって、所有権の擁護のために、まだ大まじめに言って聞かせるのである。

ところが、ひとたび所有権の問題が舞台に現れれば、この子供用読本の立場をどんな年齢にもどんな発育段階にも適する唯一の正しい立場として固持することが、神聖な義務になるのである。現実の歴史では、周知のように、征服や圧制や強盗殺人が、要するに暴力が、大きな役割を演じている。おだかやかな経済学でははじめから牧歌調がみなぎっていた。はじめから正義と「労働」が唯一の致富手段だった。といっても、もちろんそのつど「今年」だけは例外だったのであるが。実際には本源的蓄積の諸方法は、他のありとあらゆるものではあっても、どうしても牧歌的ではないのである。

ここでマルクスが言っている「自分自身よりほかには何も売れるものを持ってない大衆」のことを、プロレタリア(無産階級)と呼ぼう。最近の人文社会系の学問や評論では、この言葉は死語になってほとんど聞く機会がない。が、社会の現実や実態においては、かかる無産庶民の人々は膨大にいて、一つの大きな経済階を構成し、独自の論理と利害を持った社会的存在であることは間違いない。非正規労働者や年金生活者が該当するだろう。小泉備蓄米に並んでいる人々は、この階層に属するはずだ。膳場貴子や浜田敬子や松原耕二や藻谷耕二のコメ問題の言い分は、あまりにこの階層の実在と論理を無視し、そことは遠い距離の地平から発信されていると言わざるを得ない。TBSは「私たちは(略)公平・公正・正確な情報の発信に努め、報道機関としての使命を果たします」と行動憲章で誓っている。サンモニのコメ問題のコメントは、この精神に沿わず、一部の高所得者の認識に偏っているのではないか。マスコミ全体がそうなっていて、貴族目線の報道がされているように思う





















自然増収が「財源」になる証明(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 自公政権の政策を背後で仕切っているのが財務省ですが、同省の最大の目的は消費税増税です。逆に消費税減税には絶対に反対で、消費税減税を阻止できるなら何でもやる構えです。
 逆進性のある消費税は大衆課税で 所得の少ない人ほど負担感が重く、年収100万円の人は所得税が納税額ゼロですが、消費税では収入金額の1割をむしり取られる地獄のような酷税です。それに対して年収10億円の個人が1億円消費しても収入に対する税負担率はわずかに1%で、金持ちに限りなく優しい税です。
 そして庶民から消費税で資金をむしり取った金を特定の企業、業界、団体に〈利権支出〉をバラまくのが日本財政の基本構造で、それによって財務省は莫大な省益と権益を確保してきました。

 ところで政府は参院選対策として、国民への一律給付金と、子どもに対して住民税非課税世帯に追加給付金を配る方針を決めました。そして〈バラマキ〉の批判を回避するため、自民党の森山幹事長は「自然増収を財源にする」と口を滑らせました。植草氏は政府が〈自然増収は財源になる〉ことを明言したのは重大な出来事だと述べます。

 植草氏は、かねてから「消費税率5%への引き下げを2024年度の自然増収15兆円を財源にして実施すべきだと唱えてきましが、もはや政府・自民党にはそれを拒否する口実がなくなった訳です。
 同氏は、「参院選の争点は〈消費税減税〉。消費税率を5%に引き下げて、インボイスを廃止する。自然増収15兆円を財源にして消費税減税を実現できる。これを明確に公約として掲げる候補者・政党に投票するべきだ」と述べています。
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自然増収が「財源」になる証明
             植草一秀の「知られざる真実」 2025年6月16日
参議院議員通常選挙は7月22日投開票の日程で実施される見通し。
石破内閣は衆参ダブル選を模索した。昨年10月総選挙で自公は大敗。過半数を大きく割り込んだ。野党人気が翳り、自民人気が回復すれば過半数奪回のチャンスになる。
野党が内閣不信任案を提出すれば、これを大義名分にして衆院解散に踏み切る構えを示した。

これにおじけづいたのが立憲民主党。いま総選挙が実施されれば立民はさらに議席を減少させる可能性が高い。そこで、内閣不信任案提出を見送る姿勢を示している。
立民は選挙で勝利して政権を奪取する見通しが立たないため、参院選後に自公政権に加えてもらう道を描く堕落した野党である。立民は自公に合流して消費税増税に賛成する可能性がある。

その参院選に自公の与党は一律給付金バラマキの方針を決めた。二転三転、一貫性のない政策運営。
選挙に際して有権者に金品を配るのは文字通りの選挙買収。白昼堂々の公職選挙法違反で突き進む構えを示している。

背後で仕切る財務省は何を考えているのか。財務省の最大目的は消費税減税阻止、そして、消費税増税。消費税減税を阻止できるなら何でもやる構え。
消費税は大衆課税。景気変動の影響も受けない。所得の少ない人ほど負担感が重い。
年収100万円の人は所得税が納税額ゼロだが、消費税では収入金額の1割をむしり取られる。地獄のような酷税
年収10億円の個人が1億円消費したとして収入に対する税負担率はわずかに1%。金持ちに限りなく優しい税である。

庶民から消費税で資金をむしり取り、そのむしり取った金で特定の企業、業界、団体に〈利権支出〉をばらまく。これが日本財政の基本構造
〈利権支出〉は〈天下り〉というキックバックを生む財政支出であるから財務省は〈利権支出〉の増大を推進する
消費税減税を阻止するためなら給付金は受け入れる。給付金の特徴は〈1回限り〉にある。
次年度以降に影響を残さない。だから、給付金には寛容なのだ。

〈バラマキ〉の批判を回避するため、子どもに対して追加給付金を設定し、住民税非課税世帯にも追加給付金を設定する。しかし、選挙目当ての〈買収〉である点に変わりはない。
しかし、自民党は決定的な失策を犯した。バラマキ給付金の〈財源〉について口を滑らせた。
「自然増収を財源にする」と言ってしまった。〈自然増収は財源になる〉ことを明言してしまった。
私は消費税率5%への引き下げを20~24年度の自然増収を財源にして実施すべきだと唱えてきた。20~24年度の自然増収が年額で15兆円に達している。
〈自然増収は財源になる〉なら消費税率5%への引き下げを実施できる。財源は自然増収15兆円にすればよい。

参院選の争点は〈消費税減税〉。消費税率を5%に引き下げて、インボイスを廃止する
自然増収15兆円を財源にして消費税減税を実現できる。これを明確に公約として掲げる候補者・政党に投票するべきだ。

詳細は新著『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』http://x.gd/nvmU9 をご高覧賜りたい。















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トランプ、「ルールを守っている」イランを爆撃すると脅す(賀茂川耕助氏)

 耕助のブログに掲題の記事が載りました
 ここに書かれているのは、トランプがイランに対して際限のない猜疑心を抱いているという事実とそれに対してイランは、IAEA等の国際的なルールを順守しているという事実です。
 こうした猜疑心やイラン憎悪の念が米国民にも、また西側諸国にもある程度共通していることは、カナダで開かれたG7で「イスラエル擁護」の合意がなされ、イランへの先制攻撃に対するイスラエルへの批判も出されなかったことからも分かります。
 イラン憎しは歴代の米大統領の一貫した「感情」で、米国は折あらばイランを殲滅したいとして準備を進めてきました。いずれにしてもイスラエルにとってトランプはまたと望めない米国大統領像であると言えます。
 トランプは第1期では新たな戦争を起こさなかった大統領として声価を高めました。しかしいまそれが「虚名であったことが明らかにされる」方向に向かっているのは残念なことです。
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トランプ、「ルールを守っている」イランを爆撃すると脅す
                耕助のブログNo. 2567 2025年6月18日
 Trump Threatens to Bomb Iran to Smithereens for “Playing By the Rules”
                               by Mike Whitney 
もし彼らが取引に応じなければ爆撃が行われるだろう。これまでに見たこともないような爆撃が。   – ドナルド・トランプ大統領{1}
ドナルド・トランプ大統領はイランが条約上の義務の下で承認されている活動に対して、イランへの空爆を開始すると脅している。これは議論をすべきという問題ではない。核兵器不拡散条約(NPT)は、イランを含むすべての締約国に平和目的のために原子力を開発、研究、生産、利用する「譲ることのできない権利」を明確に認めている。この「譲ることのできない権利」にウラン濃縮が含まれている。
トランプは「条約」とは何かを理解していないのか、またはその条項はイランに適用されるべきではないと考えているかのどちらかだろう。わかりやすくするために言っておくと、条約とは主権国家間の正式な法的拘束力のある合意であり、国際法に準拠するものである。貿易、安全保障、核不拡散、環境保護などの問題について、相互の義務や権利、ルールを定めるものである。条約は任意ではなく、行政府の判断で廃止することはできない。条約を批准した国は、その条項を誠実に遵守する法的義務を負う。政治指導者は国家の代表として、これらの義務を守ることが期待されている

だからこそ、われわれはNPTの下での義務を明確に「遵守」している国をなぜトランプが脅すのか理解しがたいのだ。金曜日にエアフォース・ワンでトランプはこう言った:
 彼らは濃縮はしないだろう。もし彼らが濃縮するのであれば、我々は別の方法を取らなければならない。(空爆)そして私はほんとに別の方法はとりたくないが、選択肢はないだろう。濃縮することはあり得ない
トランプには、イランがウランを濃縮できるかどうかを決定する法的権限はない。彼が決めることではないのだ。明らかに親イスラエルに偏っているGrokでさえ、このことを理解している。調べてみよう:
ドナルド・トランプは、一人の私人としてでも米国大統領としてでも、イランにウラン濃縮の停止を要求する国際法上の法的権限はない。イランは主権国家であり、核兵器不拡散条約(NPT)の加盟国として、第3条の保障措置義務と国際原子力機関(IAEA)との包括的保障措置協定(CSA)を遵守することを条件に、ウラン濃縮を含む平和目的の原子力開発を行う第4条の権利を有する。イランがこの権利を行使することを禁止する一方的な法的権限は、米国を含め、国際法上、個々の国家にはない。トランプのいかなる要求も、国連安全保障理事会の決議がない限り、法的拘束力のある指令ではなく、政治的・外交的な行動であり、他の常任理事国(例えばロシアや中国)の同意が必要となる。Grok

トリタ・パルシは、トランプがジョン・ボルトンのイラン政策をどのように採用したかを説明している:
また、国際法にも国連憲章にも、ある国が『脅威となるかならないか』という主観的な認識に基づいて他国を攻撃できるような規定はない。それは非常識であり、集団行動と多国間主義を通じて平和と安全を確保するという国連の努力に反する。それにイランは規則に違反していないのだから、イランに対する信頼できる法的根拠はない。主要メディアが頑なに国民に伝えようとしないのは、イランには核兵器も核兵器開発計画もないということだ。IAEAによればイランは2003年以来「遵守」しており、核物質を兵器プログラムに転用したことはない。言い換えれば、イランに対する法的根拠はまったくない。ゼロだ。
では、トランプが憤慨するポイントは何なのか?なぜ彼は明らかに「ルールを守っている」平和な国を脅しているのだろうか?
トランプ陣営が裕福なシオニストの献金者から1億ドル以上提供されていたことを私は言っただろうか。彼らの野望はテヘラン政府を転覆させ、領土イランを大イスラエルに吸収することだ。
それが要因だろうか?トランプがイランの交渉官と5回にわたって会談し、一度も「核濃縮」の問題に触れることなく、その後、なんと驚くことに、180度急転直下して「濃縮ゼロ」を基本的な要求とし、揺るぎない支持を表明した理由を説明できるだろうか?
その突然の翻意をどう説明するのか?トランプはイスラエルのアジェンダを追求しているのか、それとも「アメリカ・ファースト」を優先しているのか?
そして、濃縮はイランが決して譲らないNPTの1つの条項であることを知っていながら、なぜトランプはこのような薄っぺらで、どうしようもない立場をとるのだろうか?

明白な答えは、トランプは合意を望んでおらず、問題を平和的に解決することを望んでいないということだ。だからこそ彼は融通の利かない1つの問題に焦点を当て、濃縮が戦争の口実として利用される可能性があると(まったく当然ながら)考えたのだ。そしてそれのゴールが、イランとの戦争なのだ
(イラン情勢を注視してきた読者なら、トランプの当初の要求が「イランは核兵器を持てない」というものだったことを覚えているかもしれない。(イランはその要求に同意している)しかし今、彼はこの2つのことが同じであるかのように、こっそりと「濃縮禁止」という表現に変えた。当然ながら、親イスラエル派のメディアは、大統領の策略が露呈することを恐れて、大統領の手際の良さに注目していない。しかし、トランプが和平を本当に望んでいるように見せかけるために交渉を利用し、「協議」が進むにつれてすぐにゴールポストを動かしたことは事実である。結論は、平和的解決はトランプの目的ではなかったということだ。

これは『タイムズ・オブ・イスラエル』(2025年6月8日付)の記事である:
イランは2003年、核兵器開発の鍵となる爆発実験を「多数」実施し、隠蔽していたことが国際原子力機関(IAEA)が5月31日に発表したイスラム共和国の核開発計画に関する報告書の分析で明らかになった。

ワシントンDCを拠点とするシンクタンク「科学と国際安全保障研究所」は、IAEA報告書の要点を分析し公表した。それによるとイランが行った活動は核爆弾開発における「コールドテスト」の準備であった。コールドテストとは、「兵器級ウランではなく、天然ウランまたは劣化ウランを核心とする、完全に組み立てられた核爆弾」を作ることである。{2}
このように、トランプチーム(とその同盟国イスラエル)はイランの完全に合法的な活動に疑いをかけようと必死なのだ。彼らは実際に、2003年(イランが「核兵器プログラムの側面」を認めた期間)に行われた調査の詳細を掘り起こした。IAEAの報告書は、現在違法なことが行われているとか、イランが活発な核兵器開発計画を持っているとか、核物質を他の場所に横流ししているとか、そういうことを示唆しているわけではない彼らが言及していることは20年以上前のことだ。これはジョークだ
そしてイラン側が過去に何度も認めてきた60%まで濃縮されたウランについても、同じルールが適用されている。彼らは何も隠していない。制裁の緩和を求めているだけだ。彼らは経済的な締め付けが嫌いなのだ。あなたは驚いただろうか?
イランがウラン濃縮を高水準で始めたのは、トランプがオバマがまとめた条約(包括的共同作業計画;JCPOA)を破棄したときだ。この条約は史上最も徹底的で厳格な核合意だった。トランプがこの条約を2018年に破棄したとき、イランは将来の政権との交渉の切り札として使えると考え、60%濃縮を始めた。残念ながら、それはうまくいっていない。主にイスラエルが「最大限の圧力」政策を継続させたいと考えているため、彼らがイランの標的に対して空爆を行う準備が整うまで、制裁は維持されている。
ところで、NPTの条項では、イランはウランを60%まで濃縮することが許されている。条約は非核兵器国に対する最大濃縮レベルを明確に定めていないからだ。これは事実だが、この問題に関する主要メディアの報道では100%省略されている。なぜだろうか

イランは核エネルギーを必要としている
多くの人はイランのような莫大な石油資源を持つ国に核エネルギーは必要ないと考えるがそれは間違いだ。イランの発電の多くは、ブシェール原子力発電所で行われている。ブシェール原子力発電所はイランの主要な原子力発電施設であり、低濃縮ウランを使用して大規模な発電を行い、化石燃料への依存を減らしている。
イランはまた、医療診断や治療のために放射性同位体を生産するために核技術を利用している。これは癌の診断や画像診断に広く使用されている。イランはその核プログラムが年間100万人以上の患者に同位体を提供することで医療を支えていると主張している。
イランはまた、産業利用、農業、水資源管理、科学研究、がん治療、技術、放射性同位元素の生産にも原子力を利用している。事実、原子力の「平和利用」を否定されればどの国もNPTに参加しないだろう。なぜ彼らはそうするのだろう?

最後に
米国人は、西側メディアでイランについて読まれることのすべてが信頼できないことを認識すべきだ。それはすべて、同じように悪質な反イランの憎悪と偏見に汚染されている1979年の革命以来今日に至るまで米国の対イラン政策は、執拗な非難、好戦的態度、悪魔化の連鎖である。ワシントンは、イランにふさわしい敬意をもって接したことは一度もないし、今後も接することはないだろう。というのも、根本的なレベルで、アメリカの政治家階級全体が、イランが自国の莫大な資源に対する主権を主張し、ワシントンの厄介な支配者に屈服しないことを軽蔑しているからだ。イランはアンクル・サムの命令に屈することを拒否しているのだから、経済的な締め付けや「最大限の圧力」、そして必然的に戦争で罰せられなければならない。アメリカは地方の農民を鉄拳制裁するのだ
イランのアッバス・アラグチ外相は、先ごろ行われた故ホメイニ師の追悼式典でイランのアプローチを要約した。彼は言った:
 イランの外交政策の主要な基盤は、外国の支配を放棄するという原則に基づいている。トランプの濃縮禁止は、それ自体が支配であり、これはイラン国民にとって容認できない
イランの名誉のために言っておくと、イランはワシントンの終わりのない苛立ちと妨害行為に決して「一歩も譲らなかった」。彼らは自分たちの原則を貫き、いじめや強制なしに、自分たちの開発モデル、自分たちの政治システム、自分たちの集団的未来を選択する自由な国としての権利を守ってきた
ワシントンの脅しや脅迫をはねのけ、主権独立の原則に揺るぎなくコミットしたイランは称賛されるべきだ。イランは45年間もの間、絶え間ない敵意と反目から自分たちの尊厳を守ってきたのだ。
ブラボー、イラン。
Links:
{1} https://www.politico.com/news/2025/03/30/trump-threatens-bomb-iran-00259786
{2} https://www.timesofisrael.com/liveblog_entry/iaea-found-iran-conducted-covered-up-implosion-tests-key-to-building-nuclear-weapon-in-2003/
{3} https://www.unz.com/mwhitney/the-treaty-trump-called-the-worst-deal-in-history-was-the-most-wide-ranging-and-stringent-nuclear-agreement-of-all-time/

https://www.unz.com/mwhitney/trump-threatens-to-bomb-iran-to-smithereens-for-playing-by-the-rules/