海外記事を紹介する「耕助のブログ」に掲題の2つの記事が載りました。
レアアースの生産量は、中国が圧倒的に世界一であり、世界中のレアアースの約38%を供給する中国に次いで、ベトナムは約19%、ブラジルが18.1%、ロシアが10.4%、インドが6%、オーストラリアが3.5%、そして最後に米国とグリーンランドが1.3%となっています。
精製済みレアアース鉱石で見ると、中国は世界の実に約85~95%を供給しており、1990年代後半から世界市場を独占しています。
レアアースがどんなに貴重なものであるのかはすぐにはピンとは来ませんが、識者がそう記述している以上そう理解するほかはありません。
因みに題意の「中国以外に将来のレアアースの供給の鍵を握る国」はあるのかということでは「今のところない」ということになりそうです。
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中国以外で将来のレアアース供給の鍵を握る国は?
耕助のブログNo. 2392 2025年1月14日
Beyond China: Which Countries Hold the Key to Future Rare Earth Supplies?
by Haley Zaremba
* レアアースは、クリーンエネルギー、先端技術、近代戦争に不可欠であり、地政学上の新たな力の軸となっている。
* 中国は精錬能力をほぼ独占しているため、現在、世界のレアアース市場を支配している。
* 西側諸国はレアアースのサプライチェーンを中国が支配していることを懸念しており、供給源の多様化と自国の精錬能力の開発を目指している。
レアアースは新しい石油である。この17種類の金属元素群{1}は、クリーンエネルギーへの移行や現代の製造業全般に不可欠なものとなっている。これらの元素は独自の特性{2}を有しており、テクノロジーの未来にとって欠かせない材料となっている。
「レアアースは、自動車、グリーンテクノロジー、兵器システムの精度など、あらゆるものを変える。そして今や不可欠なものとなっている」と、レアアースのコンサルティング会社であるThREEコンサルティング社の社長ジム・ケネディは言う。「プリウスが欲しい?それならレアアースが必要だ。長距離走行可能なテスラが欲しい?それならレアアースが必要だ。1メートルの精度で正確に飛ぶ巡航ミサイルが欲しい?それならレアアースが必要だ。」
レアアースの特別な有用性は、主に従来の技術や低炭素技術における触媒や磁石として使用されることにある。レアアースのその他の重要な用途としては、特殊金属合金、ガラス、高性能電子機器の製造がある。レアアースは「驚くべき物理的・化学的特性を持ち、周期表のスーパーヒーローといえる」と、鉱物コンサルティング会社Adamas Intelligenceのマネージングディレクター、ライアン・カスティルーはフォーリン・ポリシー誌に語った。
レアアースは、その名称から想像されるほど「レア(希少)」ではない。これらの鉱物は世界中で自然に産出されているが、重要なのは、時間と費用をかけて採掘する価値のあるほど十分な濃度でそれらを見つけ出すことである。
これらの要因からレアアースは世界規模での地政学上の新たな力の軸となっている。これらの元素の天然埋蔵量があり、採掘や精製を行う能力と資源を持つ国々は、今後数年間で莫大な経済的・政治的影響力を手にするだろう。
では、この新たな地政学上の序列で上位に位置する国はどこだろうか?
レアアースの生産量では、中国が圧倒的に世界一である。世界中のレアアースの約38%を供給する中国に次いで、ベトナムは約19%、ブラジルが18.1%、ロシアが10.4%、インドが6%、オーストラリアが3.5%、そして最後に米国とグリーンランドが1.3%となっている。レアアース埋蔵量が1%を超える国は他にない。
しかし、これらの国の中で、レアアースのサプライチェーンと、それらの材料に依存するすべての二次市場を地政学的に支配している国は1つしかなく、その国こそが中国である。
中国は世界の精製済みレアアース鉱石の約85~95%を供給しており、1990年代後半から世界市場を独占している。これは、北京がレアアース精製能力をほぼ独占しているためである。ご存じのように、他の少数の国々も重要なレアアースを埋蔵しているが、それらを効率的または費用対効果の高い方法で利用するために必要な確立されたインフラが欠如しているのだ。
レアアースの採掘から精錬までの工程において、中国は世界の85~90%{3}を占めている。さらに、中国の精錬所は世界のコバルトの68%、ニッケルの65%、EV用バッテリー用リチウムの60%を供給している。その結果、EV用バッテリーの実に75%が中国製となっている。
もしレアアースが豊富な他の国々が中国と競争しようとしなければ、北京に過剰な影響力を与え、自由とは程遠い市場を作り出すことになるのではないかという懸念が強くある。しかし、これまでのところ、一部の専門家は、そのような心配は誇張されていると主張している。しかし、レアアースが「新しい石油」であることは周知の事実であり、西側諸国は支配権を取り戻そうと躍起になっているのは明らかである{4}。レアアースをめぐる世界的な緊張は今後さらに高まることは確実であり{5}、市場の一方的な支配を緩和することは、バランスのとれた貿易メカニズムを維持するために不可欠である。
Links:
{1}https://www.americangeosciences.org/critical-issues/faq/what-are-rare-earth-elements-and-why-are-they-important
{2}https://www.usgs.gov/centers/nmic/rare-earths-statistics-and-information
{3}https://www.goldmansachs.com/insights/articles/resource-realism-the-geopolitics-of-critical-mineral-supply-chains
{4}https://www.reuters.com/markets/commodities/western-rare-earths-supply-chain-springs-into-gear-2024-06-17/
{5} https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0176268022001598
https://oilprice.com/Metals/Commodities/Beyond-China-Which-Countries-Hold-the-Key-to-Future-Rare-Earth-Supplies.html
レアアースとは何か。なぜ重要なのか?
耕助のブログNo. 2391 2025年1月13日
What are rare earth elements, and why are they important?
レアアースは17の元素を含む:イットリウム、スカンジウム、ランタノイド系列など
この情報は、以下の情報源をもとにしている:
米国地質調査所のニュースリリース「Going Critical」
https://www2.usgs.gov/blogs/features/usgs_top_story/going-critical-being-strategic-with-our-mineral-resources/
レアアースエレメント(REE)は31鉱種あるレアメタルの中の1鉱種で、スカンジウムSc、イットリウムYの2元素と、ランタンLa からルテチウムLu までの15元素(ランタノイド)の計17元素の総称である。
レアアースは多くのハイテク機器に不可欠な要素である。米国地質調査所のニュースリリース「Going Critical」では、次のように説明している:
レアアースは不可欠な成分で、幅広い用途の200以上の製品、特に携帯電話、コンピュータのハードドライブ、電気自動車やハイブリッド車、薄型モニターやテレビなどのハイテク消費財に使われる。重要な防衛用途としては、電子ディスプレイ、誘導システム、レーザー、レーダーおよびソナーシステムなどがある。製品に使用されるレアアースの量は、重量、価値、または容量のいずれにおいても、その製品全体に占める割合は大きくないかもしれないが、その装置が機能するためにはレアアースが必要な場合もある。例えば、レアアースでできた磁石は総重量のほんの一部にすぎないが、それなしではデスクトップやラップトップのスピンドルモーターやボイスコイルは不可能である。
1993年には、世界のレアアースの生産量の38%が中国、33%が米国、12%がオーストラリア、5%がマレーシアとインドで占められていた。残りはブラジル、カナダ、南アフリカ、スリランカ、タイなど数カ国であった。しかし、2008年には中国がレアアースの世界生産量の90%以上を占めるようになり、2011年にはその割合は97%に達した。1990年以降、中国政府がレアアースの生産量と輸出量を制限し始めたため、レアアースの供給が問題となった。中国政府はまた、中国からレアアースを輸出できる中国企業および中国と外国の合弁企業の数を制限し始めた。
詳細情報:
* REEの背景、ワイオミング州地質調査
レアアースエレメントの正確な定義と、一般的なREEの存在、世界的なREE生産、現在のREE生産に関する詳細な議論。
* レアアース統計および情報、米国地質調査所:http://www.wsgs.wyo.gov/minerals/rare-earths
1997年以降のレアアースの年間生産量、価格、用途に関する情報のポータルサイト。
* レアアースエレメント – 現代の技術とライフスタイルに不可欠(ファクトシート)、米国地質調査所
クリックしてfs2014-3078.pdfにアクセス
レアアースエレメントの起源、分布、埋蔵量、供給と需要、用途に関するファクトシート
* 米国の主要レアアースエレメント鉱床 – 国内鉱床の概要と世界的な視点(レポート)、米国地質調査所
https://pubs.usgs.gov/sir/2010/5220/
米国の鉱床、現在の供給源および国内埋蔵量、米国の主要レアアース鉱床など、レアアースの基本的な地質学の概要を提供する非技術レポート。
* クリティカルマテリアルの世界供給の追跡(ウェビナー)、米国地質科学協会
https://www.americangeosciences.org/policy-critical-issues/webinars/tracking-global-supply-critical-materials
2018年のウェビナーで、米国とEUによる、重要な原材料の世界的な生産、貿易、使用状況の監視、供給における脆弱性の特定と定量化、主要な鉱物資源の生産、リサイクル、代替に関する協力の支援に関する取り組みについて詳しく説明
関連するFAQ
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アメリカ地質学会
https://www.americangeosciences.org/critical-issues/faq/which-mineral-commodities-used-united-states-need-be-imported
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米国地質調査所
https://www.americangeosciences.org/critical-issues/faq/how-do-we-use-rare-earth-elements
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米国地質調査所
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米国地質調査所
https://www.americangeosciences.org/critical-issues/faq/are-rare-earth-elements-only-critical-mineral-resources
https://www.americangeosciences.org/critical-issues/faq/what-are-rare-earth-elements-and-why-are-they-important
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