2026年7月13日月曜日

13- 状況を好転できないまま米国はイランとの戦争を再開へ

 櫻井ジャーナルの掲題の記事を紹介します。
 イランとの停戦協定を破ってイランに攻撃を仕掛けるのは常にトランプの方です。それも湾岸諸国に設置した米軍基地からの攻撃なので、イランはすぐさまその基地周辺に報復攻撃を掛けています。トランプがいうようにイランが米国に敗北することは決してありません。
 それよりもトランプは11月の中間選挙を控えて停戦した筈なのに、なぜ停戦を守らないのかと思いますが、米国内には「なぜイランを屈服させられないのか」と批判する勢力がかなりある(側近も含め)ということで、自業自得とはいえトランプも腰の落ち着けようがないようです。
 さすがに建国250年間の殆どを戦争に明け暮れて来た史上最大の戦争国家です。

 併せて櫻井ジャーナルの記事:「イランに降伏できない米大統領はイランを攻撃しながら出口を探している」を紹介します。
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状況を好転できないまま米国はイランとの戦争を再開へ
                         櫻井ジャーナル 2026.07.11
 アメリカ空軍は7月9日、イラン北部のゴレスタン州にあるアク・テケ・ハーン鉄橋を爆撃した。イランとトルクメニスタンを結ぶ鉄道の橋だ。ロシアは2025年11月からこのルートを利用してイランへ貨物を輸送している。
 イラン、中国、ロシアはアメリカが支配する海路を避け、陸路で物資や人を輸送しようとしてきた。そうしたプロジェクトの一環として建設された鉄橋だと言えるだろう。ホルムズ海峡やマラッカ海峡を回避するため、中国はユーラシア大陸を横断する鉄道を建設したのだ。
 鉄道を使うとテヘランから上海まで15日、つまり海上ルートの半分で移動できる。イランと中露を結ぶ重要な輸送手段であり、そこをアメリカ軍やイスラエル軍が攻撃するであろうことは予想されていた。復旧作業は困難でないだろうが、この攻撃はロシアや中国に対する挑発である。この攻撃がどこから行われたのかも興味深い

 ドナルド・トランプ米大統領は7月7日、NATOの首脳会合が開かれていたアンカラでイランとの合意(MoU)は終わったと宣言、「もう彼らとは関わりたくない」と述べていた。その直前、ウクライナ/NATO軍はモスクワやクリミアを含む都市を固定翼ドローンやミサイル500機以上で攻撃、ロシア国防省によると、その大半を撃墜している。
 アメリカとイスラエルによる騙し討ち攻撃で殺された最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師やその家族の葬儀は参加するためにテヘランの通りには市民数百万人が集まり、イラクでも葬儀のために200万人以上が参加、「アメリカに死を」、「トランプに死を」と叫んでいる。テヘラン、ゴム、ナジャフ、カルバラ、マシュハドの街路は数千万人で埋め尽くされたという。シーア派の人びとを屈服させるどころか団結させてしまった。トランプはイラン人を「クズ」「病んだ人間」と呼んだが、火に油を注ぐ発言だ。
 イランを屈服させられないことを認識したトランプ大統領は攻撃を再開したと見る人もいるが、別の理由があるとする人もいる。
 トランプ大統領はアンカラで「日本・イスラム共和国」がアメリカ海軍の空母「エイブラハム・リンカーン」へ111機の対艦ミサイルを発射したのだが、艦船には命中しなかったと発言した。勿論、トランプはイラン軍がミサイルを発射したと言いたかったのだ。
 アメリカの空母にミサイルは命中しなかったとトランプは主張したのだが、実際は数発が命中、ダメージを受けたのではないかとも言われている。そこで、戦争再開がアメリカを経済的に厳しい状況に追い込む報復を実行せざるをえなくなったというのだ。
 もっとも、MoUは早晩崩壊すると言われていた。戦争を終結させる条件としてイランが求めている項目は一貫、トランプ大統領は停戦を実現するためにその要求を呑まざるをえなかった。ホルムズ海峡が封鎖されて原油などの供給が減少、それを補うためにアメリカ政府は保有している戦略石油備蓄(SPR)から石油を放出、残りが急速に減少していたからだ。停戦の実現で減少は止まったものの、回復ていない

 イランは戦争を終結させる条件として、ホルムズ海峡の通行をイランが管理し、イランの同盟勢力に対する軍事行動を停止、西アジア地域からアメリカ軍は撤退し、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定を策定、イランが被った損害を全額補償、すべての制裁および国際決議を撤廃、凍結されたイラン資産を返還、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認することなどを求めていたが、これをアメリカが呑むとは思えない。
 それにも関わらずアメリカがイランの条件を呑んだのは、それだけ厳しい状況だからだが、状況が改善されれば合意を破棄することは自明のことだった。トランプ大統領は状況が改善されない段階で合意を破棄してしまった。すでにホルムズ海峡を通過する船舶の数が急減している。通過している船舶も大半はイランが指定した航路を使っている。
 イランはアメリカに対し、ガザでの「ジェノサイド(集団殺害)」をやめるように求めていたが、虐殺、破壊、占領、つまり民族浄化をイスラエルは継続している。かつて、アングロ・サクソン系の人びとがアメリカやオーストラリアで行ったように、先住民を殲滅して自分たちに都合の良い移民に入れ替えるつもりだろう。イスラエルはすでにガザにおける支配地域を53%から70%へ拡大したという。
 その大量虐殺には欧米の少なからぬ富豪が参加しているが、その中にはシェルドン・アデルソンや妻のミリアム・アデルソンも含まれている。アデルソン夫妻は日本にも影響力を持っている。


イランに降伏できない米大統領はイランを攻撃しながら出口を探している
                         櫻井ジャーナル 2026.07.13
 キプロス船籍のコンテナ船「GFSギャラクシー号」が7月11日にイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)からの攻撃を受け、船内で火災が発生し、乗組員1名が行方不明になった。同船はアメリカ軍が管理しているオマーン寄りのコースを航行していたとされている。IRGCの発表によると、トランスポンダー(船舶自動識別装置)の電源を切り、警告を無視していたようだ。

 ドナルド・トランプ米大統領とイランのマスード・ペゼシュキアン大統領が6月17日に署名した合意文書(MoU)の第5項によると、「イラン・イスラム共和国は、商船がペルシャ湾からオマーン海へ(およびその逆方向へ)安全に通過できるよう、最善の努力を払って手配を行うものとする。なお、通過料は最初の60日間に限り無料とする。」つまり、アメリカやオマーンではなくイランがホルムズ海峡の航行を管理するというわけだ。
 IRGCは全ての船舶がホルムズ海峡を航行することを許可しないと表明、その直後にアメリカ中央軍(CENTCOM)はペルシャ湾に面したイランの沿岸地域を攻撃した。ミサイルやドローンの発射拠点、弾薬庫、レーダー施設など約140カ所が標的になったという。アメリカ軍は高機動ロケット砲システム(HIMARS)でバーレーンとクウェートからイランを攻撃したとも伝えられている。
 それに対し、IRGCはアメリカ軍の拠点を報復攻撃した。その中にはヨルダンのプリンス・ハッサン空軍基地にある弾道ミサイルによって指揮統制センター、MQ-9ドローンの格納庫、カタールのアル・ウデイド空軍基地の戦闘機整備センターや指揮統制センター、「オマーンのドゥクム港にある海軍艦艇の兵站支援センターおよびアメリカ空母の給油プラットフォーム」も含まれている。さらにクウェート、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)も攻撃されたという。イランは数週間前、カタールやアラブ首長国連邦のアブダビと凍結されたイランの資金を返還するという条件で両国を攻撃しないと保証していたようだが、この合意は崩れたようだ。

 アメリカ/イスラエルのイランに対する攻撃にはレバノンやパレスチナでイスラエル軍が実行している大量虐殺の問題も関係している。MoUの中でもその点は指摘されているのだが、イスラエルは虐殺と破壊を続けているのだが、イスラエルはイランからの攻撃で疲弊している
 そこで登場してきたのがシリアを支配しているアーメド・フセイン・アル-シャラー(アブ・モハメド・アル-ジュラニ)。この人物はダーイッシュ(ISIS、ISIL、IS、イスラム国などとも表記)を創設したアブ・バクル・アル-バグダディの副官を務めていた人物で、アル-バグダディの命令でシリアへ入り、アル-ヌスラ戦線を結成している。アル-ヌスラはAQI(イラクのアル・カイダ)の後進で、後にHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)へ改名した。
 イギリスの外相を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックが05年7月に指摘した通り、「アル・カイダ」はCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リスト。プロジェクトが決まると、そのリストから戦闘員を選ぶ。これはCIAが作った仕組みだが、HTSを雇っていたのはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンだった。
 バシャール・アル・アサド時代のシリアではウクライナ軍の特殊部隊員がドローンの操作法などをアル・カイダ系武装集団に教えていた。ジハード傭兵は顔を布で隠しているため、ウクライナの特殊部隊員が戦闘に参加してもわからない。アル-シャラー配下の戦闘員も非シリア人が多く、シリア人は弾圧されている。

 現在、そのアル-シャラー配下の戦闘員をレバノンで戦っているヒズボラとの戦闘に投入しようという動きがあるイスラエル軍が疲弊しているためだろう。そこでトランプ政権はトルコのエルドアン大統領に話をつける必要が生じ、F-35の売却という話出てきたと推測する人もいる。もしアル-シャラー配下の戦闘員がヒズボラと戦うということになると、エルドアンはパレスチナやレバノンでイスラエルが続けてきた民族浄化の片棒を担ぐことになり、イスラムの裏切り者と言われる可能性がある。