しんぶん赤旗の掲題の記事を紹介します。
高市政権は「国力」を総動員して「戦争国家」づくりに邁進しようとしています。
防衛省が年末に予定している安保3文書改定では、「長期消耗戦」を想定し、負傷した自衛官を治療するために民間病床や医療従事者の「確保」を検討しているということです。
自民党政権はこれまで一貫して全国の病床を削減させる医療体制の脆弱化を進めてきました。その中で戦時には負傷した兵士の治療を最優先させることになれば、そのしわ寄せを受けるのは一般国民です。
民生の安定を無視して戦争国家づくりに邁進すればそうなることは明らかなことで、戦争に奔らない国家であることこそが最優先で求められなければなりません。
医療資源が軍事に吸い上げられればどうなるのか、しんぶん赤旗が医療政策に詳しい横山壽ー 金沢大学名誉教授に聞きました。
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【「戦争国家」の実相】 自衛官治療に民間病床 安保3文書改定で政府 「長期消耗戦」想定
しんぶん赤旗 2026年7月12日
防衛省が年末に予定している安保3文書改定で、ロシアのウクライナ侵略のような「長期消耗戦」を想定し、負傷した自衛官を治療するために民間病床や医療従事者の「確保」を検討していることが分かりました。高市政権は「国力」を総動員した「戦争国家」づくりに着手しており、医療の本格的な動員も狙われています。
現行の安保3文書は、「台湾有事」など米中の武力衝突に自衛隊が参戦し、大量の負傷者が発生することを想定して、沖縄・南西諸島での「シームレスな医療・後送態勢」の確立を明記。自衛隊那覇病院の病床を50床から200床に増床するなど、自衛隊病院の拡充を進めています。
平時業務に支障
一方、3文書改定に向けた防衛省資料は「自衛隊病院等が保有する病床(2460床)のみでは不足する恐れがある」「現員の自衛隊医官等のみで衛生業務を行うことが困難」などと指摘。長期にわたって戦闘を継続する「継戦能力」を強化するため、「病床・医療従事者の確保について検討する」としています。過酷な戦場で負傷した自衛官の治療・回復を行い、再び戦力として戦場に送り込む機能を持たせる狙いです。
しかし、政府は「人口減少」を想定して全国で病床削減を進めており、医療従事者も深刻な不足に陥っています。こうした現状を放置したまま医療機関を自衛官の治療に動員した場合、民間人負傷者の治療に手が回らなくなる危険があります。また、「平時」においても医療従事者が訓練に動員され、業務に支障が出るおそれもあります。
米戦争に動員も
医療従事者の軍事動員を巡っては、2003年に成立した有事法制に基づき、「武力攻撃事態」で医師、歯科医師、薬剤師、看護師、准看護師、臨床検査技師、診療放射線技師に「業務従事命令」(自衛隊法103条に基づく自衛隊法施行令)を出すことが可能になりました。さらに、15年に強行された安保法制により、米軍の戦争に参戦する「存立危機事態」などで医療従事者が動員される可能性があります。
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医療資源が軍事に吸い上げられればどうなるのか、医療政策に詳しい横山壽ー(としかず)金沢大学名誉教授に聞きました。
金沢大学名誉教授 横山壽一さん
よこやま・としかず 1951年鳥取市生まれ。専門は社会保障論。金沢大学
名誉教授。著書に『財政危機のカルテ』、『コロナ「留め置き死」-医療
を受けられなかった人たち』、『地域の病院は命の砦(とりで) 地域医
療をつくる政策と行動』など多数。
政府は医療を戦時体制に組み込む仕組みを着実に整備しています。
有事法制に基づく国民保護法制で日本医師会が指定公共機関となり、看護師や歯科医師などの医療従事者が国民保護活動に従事する枠組みが整えられ、予備自衛官制度では医療者が自衛隊病院で負傷者治療を担うことまで想定しています。
さらに、特定公共施設利用法(2004年)や改定地方自治法(24年)に基づく自治体への国の指示権の拡大で、有事には民間の医療機関も軍事動員の対象となり得ます。
日本の医療は長年の医療費抑制政策で病床の削減が進み、医師・看護師体制も、医療機関の経営も極めて脆弱(ぜいじやく)です。
自民党と日本維新の会の連立政権合意書は「現役世代の保険料引き下げ」を掲げ、その財源確保のために、医療費の大幅削減と病床再編を一層進める方針を示しています。
また、厚労省の新たな地域医療構想では重症や急性の病気やけがに対して集中的な治療を行う、急性期拠点病院を人口20万~30万人に1力所とする方向を打ち出しました。
戦争準備が国民医療壊す
今後、能登半島のように急性期医療が縮小し、医療空白の地域が生まれる危険もあります。
一方、自衛隊病院を中心とする「軍事医療」は病床増や診療科の新設を進め、自衛隊那覇病院では50床を200床へ増やすほか、全国の主要な自衛隊病院でも病床増と診療科の新設を推進。戦傷者の大量発生を前提にした「戦傷医療体制」を強めています。
政府は「防衛力強化資金」を創設し、その財源として、国立病院機構が422億円、地域医療機能推進機構(JCHO)が324億円もの積立金を国庫に返納し、軍事費に転用しました。医療現場から「医療費を削って軍事費に回すのは許せない」と怒りの声が上がるのも当然のことです。
平時水準に左右
小泉進次郎防衛相は国会で「国立医療機関や一般病院の協力を考えなければ、自衛隊の任務は成り立たない」(6月16日、参院外防委員会)などと述べ、民間の医療機関の軍事動員を当然視しています。しかし、まず強調すべきは「緊急時の医療は平時の医療体制の水準に左右される」という事実です。医療費抑制のために病床や医療スタツフを削減してきた結果、コロナ禍では入院できず必要な医療を受けられない人が多数生まれたことが、それを証明しています。
「軍事医療を強化すれば有事の際に死者数を減らせる」という主張もありますが、戦時には医師や看護師が軍事優先で動員され、一般国民向けの医療は後回しになります。そもそも、救急医や外科医、麻酔科医は今でも圧倒的に不足しており、これらを戦時に動員すれば一般医療は即座に崩壊します。
さらに、ウクライナやイランで見られるように、現代の戦争はドローンのような無人兵器や人工知能(AI)による大規模攻撃が主流で、従来の戦場とは全く異なります。イランでは、米軍とイスラエル軍が作戦開始後の12時間で約900ヵ所、48時間後には1250ヵ所に攻撃を拡大し、町は大きな被害を受けたと報じられています。ドローンは識別能力に限界があり、学校や赤十字病院が攻撃される危険も指摘されています。病院や患者、民間人を保護すべきと定めたジュネーブ条約が機能せず、むしろ病院が攻撃対象になっている戦争が現実に起きているのです。
現代戦の規模と性質を考えれば、防衛省が進めようとしている「戦時医療整備」で対応できる範囲は極めて限られます。
ちぐはぐの発想
厚生労働省と防衛省の医療政策は発想が根本的に異なり、全く〝ちぐはぐ″です。厚労省は人口減少に伴う医療需要の縮小を前提に、病床削減や急性期医療の集約を進め、医師数も抑制するなど「急性期をむやみに増やさない」方針です。
一方、防衛省は有事に大量の死傷者が発生することを前提に自衛隊病院の病床拡大を進めています。
しかし、地域医療が痩せ細る中で自衛隊医療だけを拡充しても、有事に十分機能するとは言えません。
急性期医療が集約されれば必要な医療資源が確保できず、軍事医療だけが突出して強化されれば地域医療はさらに弱まります。
日本国憲法が掲げる「平和的生存権」を踏まえれば、生命と健康を守る医療の最も重要な使命は、負傷した自衛官を治療・回復させて再び前線に送り込むことではなく、生命と健康の究極の破壊行為である戦争を防ぐことにこそあります。
戦前の医療者が戦争に協力した反省から、世界の医師は核兵器廃絶など平和のための行動を続けてきました。軍事医療の拡大ではなく、戦争そのものを起こさせないことが、国民の命も、自衛隊員の命も守ることにつながります。 (聞き手・土屋知紀)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。