2026年10月22日木曜日

22- 元国対委員長・森山裕氏 「国会軽視」の高市総理に強い違和感/「高市総理のX投稿」に覚える危惧

 週刊現代の掲題の記事を紹介します。
 国対委員長として歴代最長の在任記録を持つ森山裕氏は、「言論の府」に通じそれを重んじてきた人でした。
 国会軽視が叫ばれる今、旧知の記者・後藤謙次氏に腹の中を明かしました。
 高市氏が自民党員から見ても、国会の在り方について正しい認識を持たずに 独断・独善的に対処している実態が温厚な語り口で述べられています。
 前編・後編にわたる対談記事です。
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「国会軽視」の高市総理に強い違和感…元国対委員長・森山裕氏が前回国会は「異様な運営」だったと指摘する理由(前編)
                      週刊現代オンライン 2026/10/20
国対委員長として歴代最長の在任記録を持つ森山氏。国会軽視が叫ばれる今、「言論の府」を重んじる彼が、旧知の記者に腹の中を明かした。

森山裕(もりやま・ひろし)/'45年鹿児島県生まれ。衆議院議員。鹿児島市議、同議長、参議院議員を経て、'04年衆院選で鹿児島選挙区から初当選。農林水産大臣や自民党の国会対策委員長、選挙対策委員長、総務会長、幹事長などを歴任した。現在、日中友好議員連盟会長なども務めている

後藤謙次(ごとう・けんじ)/'49年東京都生まれ。政治コラムニスト、白鷗大学名誉教授。共同通信で政治部長、編集局長などを歴任。その後TBS系『NEWS23』キャスター、テレビ朝日系『報道ステーション』コメンテーターを務めた。著書に「ドキュメント平成政治史」シリーズ(岩波書店)など

また「ゴリ押し」の国会運営か?
後藤 臨時国会が開会し、本格論戦に入りましたが、国会運営をめぐる高市政権の布陣には永田町でも強い違和感が広がっています。国会を「言論の府」「国権の最高機関」として尊重せず、「官邸の直轄地」のように扱おうとする意図が透けて見えます。

森山 そもそも行政府(内閣)と立法府(国会)は役割が違います。行政府は総理大臣がトップでおやりになればいいわけですが、立法府は衆参両院の議長を中心に、各党が話し合いのルールに基づいて運営するもの。そこは明確に区別しなければなりません。

後藤 ですが今回の人事を見ると、その原則が怪しく思えます。国会の「効率化」を訴えてきた村井英樹・前国対筆頭副委員長を国対委員長に起用。さらに、先の特別国会で委員長職権を連発し野党の反発を招いた坂本哲志・前予算委員長を、衆院議院運営委員長へとスライドさせました。野党から「強引すぎる」と批判された陣容を重要ポストに据えた形で、今後も「ゴリ押し」の国会運営が常態化するのではないですか。

森山 国会は国民から選ばれた議員が集う場です。それぞれの後ろには主権者がおられるわけですから、議論を尽くすことが大原則です。前回の国会で残念だったのは、与野党の合意がないまま全野党が欠席する中で、本会議が定時定刻に強行されたことです。あれは国会運営として異様な光景でした。

後藤 通常は国対委員長らが粘り強く交渉して妥協点を探るのが、永田町の「智慧」でした。それを放り出して進めてしまったわけですね。

森山 野党が話し合いに応じないからといって何でも予定通り開いていいわけではありません。時間を置いてでも、出席を要請する努力を重ねることこそが与党の責務です。

後藤 高市政権の一番のアキレス腱は、参議院が少数与党である点です。本来なら野党との手練れの交渉役が必要不可欠ですが、その役を担ってきた石井準一前参院幹事長を強引に代えてしまった。

森山 石井さんは議席が足りない中で野党の皆さんのご理解をいただき、まとめる努力をしてくださった方でした。

後藤 今回の臨時国会の日程もほぼ石井氏が事前に作ったものを踏襲していると言われます。海図を作った船長がいない状態で、大洋を渡りきることができるのでしょうか。

森山 石井さんが作ってくださったとすれば、よくお考えいただいた日程でしょう。それをどう動かすかは、新しい国対委員長や幹事長の下、現場でおやりになるんでしょう。

自民党と維新の微妙な関係
後藤 高市政権は参院で法案が否決されても、衆院で「3分の2以上」で再可決し、強行突破を狙っているのではないかという見方もあります。

森山 間違っても「数の力」で強行しようなどと考えてはなりません。それは二院制の否定です。制度上可能であっても、その「刀」は絶対に抜いてはならないのです。

後藤 高市総理は'18年に衆院議運委員長を務めた際、大島理森衆院議長(当時)に無断で国会改革の試案を理事に配って大問題になり、事実上撤回に追い込まれました。当時からルールを跳び越える手法の原型が見えていましたね。

森山 高市さんご自身にとっては、議運委員長だった時の思い出は不愉快だと思いますよ。そして、その時にいろいろ面倒を見たのが、現在の総理補佐官である日本維新の会の遠藤敬国対委員長です。その頃から高市さんが「遠ちゃん、遠ちゃん」と頼る深いお付き合いなんですね。

後藤 今回、維新が連立与党に本格参画しましたが、維新が求める「衆院議員の定数削減」など、自民党内には容易に許容できないテーマもあります。連立がおかしくなるような懸念はないでしょうか。

森山 定数削減は45名の議員を減らす話ですから非常に難しい課題です。「比例代表は何名減らし、小選挙区は何名にするのか」という具体的な割り振りから始まるわけで、一筋縄ではいきません。

後藤 遠藤氏が与党の国対をコントロールするのではないかという見方もあります。

森山 いや、議席数から言っても国会運営は自民党国対が責任を持ち、維新のご理解とご協力をいただくスタイルでないといけません。遠藤さんは非常に能力のある方ですが、国会運営の秩序や筋道というものは、そういうわけにはいかないと思います。

後藤 今の高市政権を見ていると、結論をすごく急いで、その前の議論をないがしろにしている印象があるのですが。

森山 自民党政調での議論をしっかりする事が大事です。


元国対委員長・森山裕氏が「高市総理のX投稿」に覚える危惧…「公と私の区切りがなくなってきた」強引な政権運営で「国民政党」に翳り(後編)
                  週刊現代オンライン 2026年10月21日
国対委員長として歴代最長の在任記録を持つ森山氏。国会軽視が叫ばれる今、「言論の府」を重んじる彼が、旧知の記者に腹の中を明かした。

森山裕(もりやま・ひろし)/'45年鹿児島県生まれ。衆議院議員。鹿児島市議、同議長、参議院議員を経て、'04年衆院選で鹿児島選挙区から初当選。農林水産大臣や自民党の国会対策委員長、選挙対策委員長、総務会長、幹事長などを歴任した。現在、日中友好議員連盟会長なども務めている

後藤謙次(ごとう・けんじ)/'49年東京都生まれ。政治コラムニスト、白鷗大学名誉教授。共同通信で政治部長、編集局長などを歴任。その後TBS系『NEWS23』キャスター、テレビ朝日系『報道ステーション』コメンテーターを務めた。著書に「ドキュメント平成政治史」シリーズ(岩波書店)など

人事をすべて自分で決めてしまう
後藤 政府の広報費増額や、高市総理の一方的なSNS発信も目立ちます。

森山 内閣広報官がSNSで、高市総理とトランプ大統領の電話会談について、まったく違う場面の写真を使用し、「印象操作だ」と批判があります。一方、総理の発言は公文書でずっと残っていくものですが、SNSでの発言はどうするのか。公と私の区切りがなくなってきたと感じます。

後藤 党の最高意思決定機関である「総務会」のメンバーを決める人事でも、非常に象徴的な出来事がありました。 総務会のメンバーには、党総裁が自分で指名できる総裁指名枠(6人)があります。歴代の総裁は党内の意見を調整しバランスを取るため、この枠を自分ですべて埋めずに幹事長や総務会長に判断を譲るのが永田町の常識でした。ところが、高市さんはこの枠を自分の息がかかった人物で埋め尽くしてしまった。幹事長や総務会長に任せる調整の余地を一切残さず、党の役職から国会の人事に至るまで、自分ですべて決めてしまったわけです。

森山 本来、党の役員人事はもちろんのこと、予算委員長や国対委員長、予算委員会筆頭理事といった国会運営の人事も、現場を預かる幹事長が責任を持って調整・決定してきた領域でした。

後藤 臨時国会の山場となるのが、食料品の消費税率を1%へ引き下げる法案の審議です。森山さんは一貫して健全財政の重要性と消費税の意義を説いてこられましたが、現在の自民党内は高市総理の減税論に対してすっかり沈黙しています。

森山 選挙の際、総理が「消費税引き下げは悲願だ」と国民に訴えられた経緯がありますから、約束を守るべきだという声が強くなったのでしょう。私自身は、消費税が導入されてきた歴史、社会保障や地方交付税の財源としての役割を考えれば、安易な減税は避けるべきだと一貫して主張してきました。でも党の正式な手続きで決定された以上、組織の人間としてそれに従うのはやむを得ない面もあります。ただ2年間の時限措置と言うからには、今度の減税法案の中に「2年後に必ず元の税率に戻す」という規定を絶対に明記しなければなりません。

岩屋前外相「訪中」の裏側
後藤 消費減税でさらに深刻なのは、市場の反応です。高市さんが減税を口にするたびに円安が進み、10年物国債の金利が3.1%近くまで上がっています。

森山 これまで国の財政を国債で支えてきてくれた地方銀行や信用金庫、農協などが多大な打撃を受けることになる。金利が上がれば国債の利払い費も急増し、減税しても利払いで歳出が膨らむという悪循環に陥ります。

後藤 高市総理は「財源の心配はいらない」と断言していますが、防衛費の増額や370兆円超規模とも言われる官民投資、国債の利払い増が重なる中で、まともな財源など出てくるのでしょうか。

森山 12月の予算編成に向けて議論することになっていますが、企業の利益増による自然増収などを甘く見積もっているのだとすれば危険です。不確実な試算に頼るような計画であってはなりません。

後藤 外交に目を転じますと、高市総理は訪米時の国連演説で「敵国条項の削除」を唐突に求めたり、台湾有事をめぐる発言で中国側を激怒させたりと、自ら摩擦の種を撒いているように映ります。高市総理から森山さんに相談などはないんですか。

森山 特にありません。今の日中関係は容易に糸口が見える状況ではありません。ただ、日中友好議員連盟の若手議員らの訪中や、河野洋平先生の後任として日本国際貿易促進協会の会長に就任した岩屋毅さんが中国を訪問し、王毅外相や何立峰副首相らと会談するなど、現場レベルの努力は続いています。とはいえ、岩屋さんの訪中では、王毅氏との会談に日本の駐中国大使が同席できなかったようですね。

後藤 中国側の日本政府に対する強い警戒感が浮き彫りになりましたね。前任の外務大臣である岩屋さんを厚遇する一方で、現政府を冷遇する姿勢は非常に不気味です。

森山 日中はお互いに切り離すことのできない隣国同士です。'96年、日中国交正常化を果たされた二階堂進先生のお供で、私は北京を訪れました。二階堂先生は江沢民国家主席(当時)から日中国交正常化の際のやり取りを聞かれ、こうお答えになりました。「周恩来首相と田中角栄先生の合意は『小異を捨てて』ではなく『小異を残し、大同につく』だった」と。会談終盤、田中先生が尖閣諸島の問題を切り出した際、周首相が「それは我々よりも頭のいい次の世代に委ねましょう」と応じた。これこそが「小異を残す」ということです。立場や主張の違い(小異)が存在するのは当然であり、それを抱えながらも大きな共通利益(大同)のために協力する姿勢こそが今の外交に求められています。

後藤 ですが自民党内や政府内を見渡すと、威勢のいい防衛論ばかりが目立ちます。

森山 日本という国は、先の大戦の痛切な反省の上に立つ「戦わない国」です。抑止力を備えることは必要ですが、自ら戦う国になってはならない。この大原則だけは絶対に揺るがしてはなりません。

次の総理にふさわしいのは……
後藤 ここで気になるのが党内の政局です。高市総理の強引な政権運営や「一方通行」の政治に対し、党内では不満がマグマのように溜まっています。そうした中で先日、次期総裁選に立候補するとされる林芳正氏が、森山さんのお膝元である自民党鹿児島県連の政治資金パーティーに講師として招かれました。永田町では「森山氏がポスト高市に向けて、林芳正擁立に動いた」と大騒ぎになりました。

森山 それは全くの誤解です(笑)。鹿児島県連が3年ぶりにパーティーを開くことになり、実行委員会で相談したところ、県議や地元の幹部から「ぜひ林さんのお話を聞きたい」という声が圧倒的多数だったんです。

後藤 ですが、内閣人事の直前にも森山さんと林氏は会談されていますよね。

森山 「総理に役職の希望を出したか」という確認をしただけですよ。林さんは「出していない」とおっしゃっていたし、私も「出していない」と。内閣や党の人事は総理の専権事項ですから、こちらから希望を申し上げるような筋合いのものではないという考え方で、二人とも完全に一致していたということです。

後藤 昨年の総裁選で高市総理と争った小泉進次郎防衛大臣や茂木敏充外務大臣、小林鷹之政調会長らは早々と重要閣僚や党幹部に留任されました。しかし、林氏だけが意図的に外された。党幹部の間では「高市総理は仮想敵を作ることで自らの求心力を高めようとしているのではないか」という見方すらあります。

森山 政治の世界でわざわざ敵を作るような真似は避けるべきでしょう。林さんは総務大臣や外務大臣、官房長官など主要閣僚を完璧にこなし、党内でも「政界の119番」と呼ばれるほど政策通で安定感のある素晴らしい政治家です。私自身、参議院時代に6年間ご一緒してその卓越した手腕を間近で見てきましたし、私の政治の師である二階堂先生と林さんのお父様(林義郎元蔵相)が非常に近い間柄でしたから、個人的にも親近感と深い敬意を持っています。

後藤 森山さんからご覧になって、林氏は次の総理にふさわしい資質をお持ちですか。

森山 私は十分にその資格がおありだと思っています。これだけの複雑な外交や財政の深い知識と識見を持つ人材は、今の自民党を見渡してもそういません。ご本人は控えめなお人柄ですが、国の舵取りを担う総理を目指すお気持ちは当然お持ちでしょうし、その準備もできているはずです。

後藤 高市総理が「好き嫌い」で周りを固め、論議を拒否して自分の意向を押し通す政治を続ければ続けるほど、党内では実力・実績・安定感を兼ね備えた林氏への期待が高まらざるを得ません。永田町の視線は今、党内の不満を受け止める森山さんの動向に注がれています。

森山 私にそんな大層な力などありませんよ(笑)。ただ、自民党という政党は、一部の過激な意見や個人的な感情に流されることなく、常に国民全体の利益を考える健全な「国民政党」であり続けなければならない。そのための努力は、これからも一政治家として続けていく決意です。
          「週刊現代」2026年10月26日号より