2025年4月28日月曜日

給付金と消費減税の政局-減税をバラマキと貶め、軍事費増こそ優先と言う松原耕二

「世に倦む日々」氏が掲題の記事を出しました。
 今回は、国民窮乏への救済?策として「一時金給付方式」と「消費税減税方式」があるなかで、夏の参院選を念頭に与野党とも「消費税減税」の方向で固まりつつあることを俯瞰しています。
 こうした中で「財務省べったり」の野田・立民党代表も「蚊帳の外」ではまずいと思ったのでしょう、ナント、俄かに食品の消費税を1年間ゼロにする案を口にしました。
 それらを含めて今回も多岐に渡る事象について的確に整理されていますが、その要点はまさに題記に尽きています。因みに(ご存知の方も多いと思いますが)松原耕二氏は元TBS社員で、定年退職(20年)後もTBS番組のコメンテータやBSーTBS「報道1930」の司会者などをしています。

「世に倦む日々」氏は最後から2節目のところで、「松原耕二は、アメリカが要求してくる防衛費増額のための予算措置は必要だと言い、一方、消費減税は経済成長に繋がらない無駄なバラマキだからやめろと言っている。~ この男の妄言には、毎度のことながら腸が煮えくり返る憤激を覚える。この男は口を開けば『財源、財源』と言うのだが、防衛費増額の予算の財源はどこから手当てするのか。~ その財源は何なのか。これまでは赤字国債であり、今後は赤字国債と社会保障削減ということになるだろう。~ 」とこき下ろしています。
 それに便乗してまとめさせて貰うと、「軍備拡張指向は必然的に限りなき軍拡競争(=安保のジレンマ)に向かうものなので、『それへの国費の投入を無条件に認める』ことこそ『没論理』の極み」というべきでしょう。
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給付金と消費減税の政局-減税をバラマキと貶め、軍事費増こそ優先と言う松原耕二
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4月に入って、トランプ関税の暴風雨が吹き荒れて毎日翻弄されたが、それと並んで、日本の政局では消費減税と給付金をめぐる動きが進行した。予算が成立した直後に、石破茂が物価高対策として給付金を出す案をマスコミにリーク、そのアドバルーンに公明党が乗って補正予算という話に発展する。野党側から、それならむしろ消費減税すべきという声が上がり、そこにガソリン暫定税率の問題が加わり、選挙を目前にしての各党の熱を帯びた議論が続いた。一見して、消費減税に最も積極的だったのが公明党と維新で、次の選挙で議席を減らす公算が高く危機感が強いからだろう。自民党の中は割れていて、立憲民主党の中も割れて対立が起きた。どうなるかなと模様眺めしていたら、4/12 に枝野幸男が「消費減税を求めるポピュリストは別の党を作れ」と言い出し、立憲党内で減税論を喚起していた江田憲司らを牽制、そこからバックラッシュが始まる経過となる

予想していたことだが、マスコミが目の色を変えて「バラマキ」批判の大合唱を始め、「バラマキ」糾弾のシャワーの後に例のごとく世論調査を打ち、「国民は『バラマキ』に反対だ」という既成事実が作られた。ほどなくして石破茂が中止の意向を示し、この政局は打ち止めとなる。大山鳴動して鼠一匹。ガソリン1L10円の鼠が残る幕でお開きとなった。だが、どうやら、この話はまだ終息しておらず、7月の参院選の前にまた再び持ち上がるだろうと予想する。反石破の高市早苗が消費減税を言い続けていて、選挙に臨む自民党現職が目玉となる政策を欲しがっているからだ。何より、石破茂自身が元々消費減税論者であり、その方向に傾く素地を持っている。このまま物価高が続けば、政府与党の自民と公明は確実に議席を減らす情勢となり、選挙に負ければ石破茂は引責退陣となる。自公政権の存続も危く、公明党は諦めず懸命に模索するだろう

給付金について考えよう。「バラマキ」批判をする政治家やマスコミ論者の言い分として、給付金を出しても、貯蓄に回るだけで消費に回らず効果がないという指摘がある。いつもこの論法のナラティブ⇒言説が繰り出され、給付金策が矮小化され不当視されて議論が決着し、マスコミの世論調査結果に反映されてしまう。財務省の洗脳工作が成功する政治となる。ここはエコノミクスの一般論から正確に反論して説得する必要があるだろう。貯蓄は将来の消費に使われるのである。庶民の生活において、10万円の給付金がすぐに使われず貯蓄に回されるのは、貯蓄が少なすぎるせいであり、将来の生活不安が大きすぎるからだ。それが真実であり道理である。貯蓄に十分な余裕があれば、10万円は残さず消費に供されるだろう。だが、今の日本の庶民の経済事情はそうなっておらず、貯蓄が客観的に必要水準を満たしていない。貯蓄が不足状態にある。ゆえに10万円は貯蓄に回るのだ

この経済の法則性は、年収200万円以下の低所得層だけでなく、年収600万円の中間所得層も同じであって、例えば、大企業正社員のボーナスが特別割増で10万円多く支給された場合、やはり全額が消費に使われるのではなく、貯蓄に回る分が一部出るに違いない。が、それは彼の将来の消費の財源である。庶民の貯蓄は企業の内部留保と異なり、それ自体を自己目的で増やしているわけではない。墓場に通帳を持って行くわけではない。という論理や説明が、給付金の議論では誰の口からも発されない。正論の基本的なエコノミクスなのに、誰も言わない。かくして、ひたすら給付金=バラマキの悪性表象で塗り固められ、無意味化されてしまう。公明党の選挙対策という、叩かれやすい後ろめたい観念に決めつけられ、廃棄処分されてしまう。どうしてもすぐに全額消費に回させたいという狙いで政府が給付金を打つのなら、現金ではなく期限付き商品券で支給すればよいのだ

給付金が政局で浮上するのは、実際に物価高騰による庶民の生活苦が窮まっていて、その救済を政治に求める意識が根強く広範に存在するからである。財務省の代弁者であるマスコミは今も怨念を持って叩きまくるが、コロナ禍の際に毅然と動いて給付金を実現した山口那津男の政治は見事だった。大学教授だの、局の幹部アナだの、寺島実郎的な政治評論家だの、富裕層・準富裕層にとっては、10万円の給付金とか10%の消費税とかは自身の生活実感上、何の意味もない問題に違いない。ただ自分の任務であるところの、財務省の言い分を公論にして世論操作を成功させる支配層の仕事の首尾しか念頭にないだろう。が、庶民の生活苦と救済要求は、民主主義制度下の政治家にとって無視できないものだ。マスコミがどのように悪玉視しても、世論調査で葬り去っても、必ず息を吹き返し、現実政治に浮上するところとなる。購買力の蘇生のために給付金を選ぶことは、正しい経済政策だからである

関連してもう一点言いたいのは、いわゆる消費減税派、特にその中心にいると思われるれいわ新選組の方面が、この4月の減税論議に関わらず、ほとんど傍観に徹していた問題である。私はてっきり、この好機に、過去にない規模の財務省解体デモが挙行されると期待していた。その図は、おそらく、財務官僚も恐れ、松原耕二など緊縮派イデオローグも警戒していた脅威だっただろう。緊縮か消費減税か、立場を決めかねて風見鶏をしていた永田町の政治家たちも、財務省解体デモが起きるだろうと予期していたに違いなく、その報道と反応を注視し確認した後で、自身の態度をXで公式発表しようと思惑していたはずだ。前回の財務省解体デモは、NHKがかなり積極的に取材した。財務省解体デモは、イコール消費減税要求デモに他ならない。4/11 あたりに実施されていれば、反響は大きく、自民党と立憲民主党の党内を動かし、減税・給付金をめぐるマスコミ報道と世論調査にも影響を与えていただろう

財務省解体デモは、実際のところ主宰者の実体が判然とせず、政治思想や立脚点も様々であるように窺われる。だがしかし、普通に考えて、本当に消費減税を実現することが目的ならば、この好機を逃す手はなかっただろう。私には不思議で、あり得ない不発と言うしかない。自民党や立憲民主党の議員たちは、4/11 に空前の財務省解体デモが発生することを見通し、それを機に党の選挙前の方針が消費減税に流れる動きを想定していたに違いないのだ。デモが成功裏に行われていれば、議員たちは安んじて消費減税を口にすることができる。与野党すべての選挙公約が消費減税で統一され、あとは中身の調整(期限と税率と対象)という実務ベースに収斂していく。つまり、物価高対策としての消費減税は実施の運びとなり、参院選の争点から外れる進行になっていた。消費減税をめぐって各党が選挙で勝ったり負けたりしない構図になっていた。それは、本音ではすべての政党(自・公・維・国・立)が望んでいる図式だ

なぜ財務省解体デモが行われなかったのか。れいわ新選組に焦点を当てて観察すれば、彼らは次の参院選で躍進が確実視されている。黙っていても議席増となるから、看板としての消費税廃止を声高に叫んでいればよく、それが集票効果として機能するなら、いまムキになって消費減税の勝負に出る必要はないという計算だっただろうか。デモの主力と見られる右翼諸派については、何を考えているのか皆目見当もつかない。左翼の反緊縮派(例えば松尾匡)も含めて、正直なところ、本当に消費減税を実現しようとしているのか、それとも単に国債発行は無限に可能であるという主張を訴求したいのか、よく分からない。後者であれば、何か新興宗教の感を否めない。4月以降の給付金・消費減税の政局で、反緊縮派の論者たちは、国債増発の正当性と妥当性を(読経のように)言うばかりで、デモをやれと行動提起しなかった。消費減税の運動のリーダーになろうとせず、政治の渦を作って中心に立とうとしなかった

と、ここまで書いたところで、4/24 に新たな動きがあり、参院自民党議員が消費減税の要望を纏めた報告書を森山裕に提出、食料品の消費税率を2年程度ゼロにする策を参院選の公約に反映するよう求めたという報道が出た。また、その直後、4/24 深夜の産経の記事で、立憲民主党が食料品の消費税率をゼロにする旨を参院選公約に盛り込む件を決定したと報道された。自民党が食料品消費税率をゼロにする前に、急ぎ先手を打とうと判断したのだろう。自民党が決めた後で同じ策を出しても効果がなく、逆に「増税党」の悪いイメージが増幅して支持率を落とすだけだ。枝野幸男の路線を採用して貫徹していれば、選挙で壊滅的打撃を受けた。立憲民主党が食料品消費税率ゼロを公約に据えた場合、自民党だけがそれに反対して選挙を戦うことはできない。どれほど松原耕二らマスコミ論者が「ポピュリズム」だの「将来世代へのツケ回し」だのと悪罵し、この政策を潰しにかかっても、政党と議員は選挙で票を得ないと生きていけない

4/20 のサンデーモーニングの「風をよむ」は、緊縮派の代表格の小幡績を映像出演させ、「バラマキ」叩きのキャンペーンの見本のような特集を放送していた。石破茂が 4/14 に補正予算の断念を表明したのを見届けて、だめ押しを打って世論を固めるべく、財務省広報たるマスコミがこの政治に出てきた一幕だが、まさに今回の給付金・消費減税の政局を”総括”してとどめを刺そうとするテレビ報道だった。けれども、そこから一週間も経たずして、消費減税が首をもたげ、堂々と永田町で復活し、自民党と立憲民主党が消費減税を参院選の公約に設定する情勢となっている。松原耕二は焦っているだろう。その松原耕二は「風をよむ」のコメントでこう言っていた。録画がネットに上がっているので文字おこしして引用しよう。よくご覧いただきたい

 膳場貴子
今の日本に求められていますバラマキや減税にとらわれない経済対策。松原さん、どういうふうに・・(不明)・・ていますか。
松原耕二
そうですね。今の動きは、もう何度も同じものを見せられて来たんだと、という感じがしますよね。
膳場貴子
ホント、そうですよね。
松原耕二
今の日本は防衛費を上げようとしていて、その予算措置だけで汲々としちゃっているわけですよね。で、トランプ関税の交渉の行方によっては、もしかしたら更なる予算措置が必要になるかもしれない。しかもヨーロッパなんかは、アメリカが退いて行く中で独自のプランBの防衛をもう考え始めているわけですよね。日本もやっぱりそれをもう考える時期に来ているんじゃないかという見方があるし、そうだと思うんですね。となるとやはり、予算措置も必要になってくる。
膳場貴子
うん、うん。
松原耕二
そんなふうに世界を見るとですね、もう簡単に消費減税しようじゃないかということを言っている状態じゃないんだと思うんですよね。しかも、成長に繋がらないバラマキを繰り返してきたことが、失われた30年と今の膨大な借金に繋がったということを忘れちゃいけないと思うんですよね。
         2025/4/20 サンデーモーニング「風をよむ」

松原耕二は、アメリカが要求してくる防衛費増額のための予算措置は必要だと言い、一方、消費減税は経済成長に繋がらない無駄なバラマキだからやめろと言っている。松原耕二と緊縮派のいつもの主張だが、この放送の後、特にネット上(Xタイムライン)で糾弾されるという場面はなかった。この男の妄言には、毎度のことながら腸が煮えくり返る憤激を覚える。この男は口を開けば「財源、財源」と言うのだが、防衛費増額の予算の財源はどこから手当てするのか。現在、防衛費は9兆9000億円でGDPの1.8%に達している。日本はずっとGDP比1%枠の防衛費水準を維持し、防衛予算は5兆円台で推移してきた。今、それが2倍になり、さらに3倍をめざす青天井の勢いになっている。その財源は何なのか。これまでは赤字国債であり、今後は赤字国債と社会保障削減ということになるだろう。松原耕二はその政策を正当化している。その松原耕二を、左翼はリベラルだとして歓迎支持し、誰も批判しようとしない。

不愉快きわまる。日本の財政が危機に瀕している元凶は、社会保障ではなく軍事費の伸びであり、法人税減税を始めとする大企業に対する優遇税制だ。過去の給付金が経済成長に寄与しなかった理由は、給付金額が小さすぎたからで、効果が出るような本格的規模ではなく、選挙対策程度のショボいものだったからに他ならない。日本の財政で途方もないバラマキが行われているのは、米国からの武器購入を含む軍事費支出の分野であり、小幡績の言う「10兆円の赤字国債で財政破綻が起き得る」というリスクは、まさに軍事費のバラマキについてこそ指弾すべき問題だろう。